規律。
「なぁ、ここで皆で住むからにはいくつか規律を決めようと思うんだ」
「賛成です! 」
「そうですね」
高志さんは俺と愛ちゃんが賛成の意を示すと、意気揚々と語り始めた。
「まずは……」
高志さんは几帳面な性格らしく細かいところまで決めていった。
皆の部屋の真ん中にある大きなフロアの掃除は毎日やること。
高志さん、俺、愛ちゃんの順にやる事に決まった。
各部屋は一日一回自分で必ず掃除機をかけること。
生活ゴミは毎日一つに集めて、外に出て少しいったところにある岩地のくぼみに捨てること。
とにかくその内容は多岐に渡った。
高志さんは紙にボールペンで全て記入してフロアの壁にテープで張り付けた。
俺は途中から眠くなってきて聞いていなかったので、張られた規律表を見て大体のことを確かめた。
「高志さん、凄く計画性ありますね」
「そうかい? 一緒に暮らすならこれくらい普通だよ」
高志さんは愛ちゃんに褒められて機嫌をよくしたのか、ご満悦といった表情をしている。
「そういえば、アンナって子いるんだっけ? 」
「あ、え? 」
僕は突然話を振られて驚いたのもあったが、アンナの存在をすっかり忘れている自分にも驚かされた。
完全に彼女のことが頭になかった。
「実は彼女行方不明で……」
「なんだって? この何にもない荒野を女の身でどこかへ言ったっていうのか? 」
「そうなんですよ、何処にも姿がないんです」
「お前、ちゃんと、見に行ってやってたのか? 」
「いえ、なんかちょろちょろ一人で勝手にどこかへ行くし、僕らと交流をもとうってことしないから、なんかあんまり構われたくないのかなって思って……そう考えたら、なんだか行きづらくなって……」
あの時、家を与えたのは良かったが、彼女は俺たちの家にくることは全くなかった。
俺は俺で愛ちゃんが引きこもって大変だったし。
一度だけ彼女の家に行った時には、既にもぬけの殻だった
「あー全く拓は適当だなぁ……、でもまぁ仕方ない、とりあえず、その話は後で考えよう」
「すみません」