女2
自宅を建築してから数週間が経った。
「愛ちゃん、ご飯ここにおいておくからね~」
「…………」
俺はいつものように白い扉の前の床に、食事を載せたお盆をそっと置いた。
愛ちゃんは現在室内でヒキコモリ中だ。
なにが原因かは分からないが、いつしか彼女は心を閉ざし室内から出てこなくなった。
未知の土地で暮らす不安が募って、精神が蝕まれたのだろうか。
それとも俺に不審を抱き、同棲生活に嫌気が差したのか、真偽の程は定かではないが、彼女はしばらくそっとしておいた方が良さそうだ。
「あなたは誰? ここはどこ? 」
また女の子を懲りずに創造してみた。
特に条件は定めず、ただ、どこかから召還されてここへやってきた少女とだけ携帯に文字を打った。
「俺は拓だよ、ここは俺の家」
彼女はおかしな格好をしていた。
なんと表現したらいいのやら、頭の上に乗っているストローハットみたいなものと、サングラスみたいなものが特徴的だ。みたいなものというのは、そうとは断言できないので。
肌は衣類によってことごとく隠されてはいるが、かろうじて臍のあたりに露出した部分が褐色だと分かる。
「えーっと、名前は? 」
「アンナ」
言いながらも、室内をちょろちょろしている。まるで遺跡を調査しにきた考古学者のようだ。
「何してるの? 」
「ん? 」
彼女は振り向き様に一足飛びでソファーに飛び乗ってきた。
「聞きたいの? 」
「うぉ、あ、ああ」
俺の顔にくっつぎそうなくらいに顔を近づけてきて覗き込んでくる。
サングラスかと思っていたが、その色眼鏡は透けていた。奥に潜む瞳は大きく見開かれていてる。
「ここ変わっててすっごい楽しいから、目移りしてたのよ」
「な、なるほど」
ソファーからすっと立ち上がったアンナは、大きくその場で伸びをすると、
「ちょっと外見て来る! 」
とだけ言い残して、外へ飛び出していった。