崩壊、息抜き。
タイトルのまんまです。
だるい。
ひたすらだるい。
夏ばてもいいところだ。
あ、前の世界は展開がどうしようもなく詰まらないので潰した。
いつものことだと思って諦めてくれ。
また荒野で一人芋虫ごっこをしている。
照りつける日差しはそれほど強くはない。
気温は23度設定にしてある。
現実世界の暑さと比べれば随分ましだ。
この仮想世界にはさっきログインしたばかりだ。
特に何もする気が起きないので芋虫よろしく身体の蠕動運動でゆるやかな移動をしている。
あーここはいい。
何者にも束縛を受けず、頭をからっぽにして幼児退行ができる。
俺を萎縮させる他人の視線などというものはないのだ。
なにをしようが干渉してくる人間はいない。
少し飽きてきた。
芋虫移動は続けると思ったより身体の疲労が激しいことに気づいた。
体の全面が砂と土にまみれているし。
もうやめだ。
「ここはどこですか? 」
「荒野だよ」
俺は携帯で同い年くらいの女の子を作り出した。
栗色の髪が肩まで伸びている。目はぱっちりしているが、鼻と口はやけに小粒。
薄桃色の唇は微妙に微笑みを含んではいるが、どこか気弱で神経質な雰囲気を醸している。
彼女は外敵の存在に常に脅えている小動物のように、辺りに不安げな視線を散らしていた。
「愛ちゃん、大丈夫だよ」
「で、ですよね~、拓さんもいますしね」
「うん、俺は君の保護者みたいなものだ、悪い風にはしないよ」
何か曰くありげな契約で、女性を風俗業に引っ張ってきた山師みたいな台詞だ。
「これからどうします? 」
白いワンピースの裾が風に巻かれて踊っている。
俺は砂埃が目に入ったので、不機嫌な小言を並べながら、
「まずは建物の中に避難しようか」
「はい」
彼女は俺の言葉に半信半疑といった面持ちだったが、とりあえず首を縦に振った。