表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/197

梶原ビル。

よく分からない物書いています。

 

 梶原さんのビルの入り口には管理人室があり、そこを通り抜ければエレベーターがあった。一階は管理人室以外は椅子が置いてある憩いの場があるくらいだ。ちなみに管理人室に人がいることはめったにない。ごくたまに階上へあがるのさえ億劫になった梶原さんが畳の間で寝転がっている時があるくらいだ。

「さーてっと」

 俺は気合を入れなおしてエレベーターの階上方向のボタンを押した。二階へ上がる時はいつも戦場へ出かけるような緊張感が付き纏う。深呼吸をして、1階のパネルが点灯するのを待ち受ける。

 しばらくして、甲高いチーンという音が鳴って、赤褐色の自動扉が開かれた。


「うわ……」

 2階に到着直後、異臭が鼻をついた。とてつもなく嫌な予感が胸底を満たしていく。

 帰りたい。このままエレベーターの扉が開かなければいいのにと心底願った。だが、無常にも重い扉はあっけなく開き、凄惨な現場を俺に見せ付けるのであった。

 鼻をハンカチで塞ぎながら、2階の泥地を踏みしだく。安っぽい運動靴できたのは正解だった。

 しかし、この目の前に広がる薄暗く饐えた匂いのする空間は一体……

 俺は周囲の足場を慎重に見定めながら、状況の把握のため散策を試みることにした。

 沼地の畔でも歩いているような粘着質の泥地は、中央部の山のように盛り上がった堆積物を取り囲むようにして続いていた。

「梶原さん~~! 」

 半ばやけくそ気味に大声を張り上げた。声は方々の壁や堆積物にぶち当たって反響した。

「いないのかー? 」

 返事がないので、これが最後だと決めて腹から声を絞り出した。

「帰っちゃうよ! 」

「ま、待って、いることはいる……」

 しゃがれた声が上の方から降ってくる。

 陰に篭ったその声を聞いて、やっぱりなっと思いが嘆息となって口から漏れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ