仕組み。
黒い門を後ろ手で閉めると、道路に足を踏み入れた。
横並びの三軒を分断する道を俺は道路と名づけているが、なぜそう呼ぶのか?
答えは単純だった。なぜか道の真ん中に真っ直ぐ白い線が引かれているからだ。車はこの世界には存在しないのに、なぜ道路があるのか。その理由は定かではない。ただ、道路というものを知る住人には不可思議なものであるし、知らない住人には確かに珍しいものだが、特に気にかかるものでもなかった。
今から訪ねる梶原さんは後者の部類に属する。
梶原さんの家に行く前に食糧コンテナの中を確かめてみることにした。
道路のほぼ真ん中に設置された縦長の黒い金属のコンテナは、形状は学校や職場にあるロッカーを彷彿とさせる。この中には3日に一度食物が湧いて出てくるようになっている。俺は正面に回って両側の取っ手を握って外側に開いた。形状から耳障りな金属音が聞こえそうだが、実は全く音を立てることもなくすんなり観音開きの扉は開いてしまう。
3段目の棚をみると食糧は湧いていなかった。
このなかは棚が5つ取り付けられていて、6層に空間が分けられている。各層の空間はあらかじめ各世帯に宛がわれているようで、自分たちの棚の中身にしか手をつけることが出来ない。つまり、俺の家族の棚は3段目であり、そこからしか食物を調達できないようになっている。他の棚に触ろうとしても、何か電磁波のようなものが邪魔をして弾き返されるのだ。
まぁ、道路やコンテナの存在だけみてもここがパラレルワールドであることは間違いない。無論俺が作ったわけだけど、各種設定自体はランダムになっているので、俺自身もこの世界の仕組みを把握しているわけではなかった。
さてと梶原さんちに向かうか。