息抜き4
あ、ピエールとかアンリとか誰って思われても仕方ないのですが、
えーっと、拓が昔創造した貴族風の従者と元気な女の子だと思ってください。
詳細を知ろうなんて奇特な人はいないと思いますが、一応、俺的ファンタジーに俺を送り込むのほうの小説で登場した人たちです。
気まぐれに登場させてしまって後で後悔してしまいました。
まぁ、息抜き実験小説なので、お許しください。
ピエールとの再会の感動も長くは続かなかった。
「この世界は混沌に満ちています、そこらじゅうにうろうろしている得体のしれないたちの悪い輩、形をなさない流動体、秩序のない時間の経過、今までいた世界とは成り立つものの質が違っています」
眉間に細い縦皺をつくって話すピエールの表情は以前より神経質に見えた。
随分会っていなかったが、過去のピエールは少々の事では取り乱さない男だった。
その彼がこれほど深刻な顔で……
「よく分からないんだが、おそらく……」
確かにピエールがこの世界に存在する自体普通ではない。
世界がおかしくなった原因をあげるなら一つしか思い浮かばない。
「世界を成り立たせている者の精神がゆがみ、多重構造の世界の境界が曖昧になってきているんだよ」
この世界は俺が創った仮想世界であり、その出所は俺の精神世界だ。つまり、俺が現実世界で鬱になっているために仮想世界にもその影響が及んでいるに違いない。それしか考えられない。
「この世界の主とは? 」
「しらない、ただ、神といえる存在だろう」
ピエールには俺が神だとは教えていない。これからも教えるつもりはない。ピエールのことは信頼しているが、俺が神だと知ることで彼の心にどんな変化が現れるか未知数だからだ。
「とにかく、拓様、ここから少しいったところに街を発見しました。そこへ急いでまいりましょう」
「おう、あ、そういえば、アンリ元気? 」
確かピエールの世界にはアンリっていう天然少女がいたはずだ。
「残念ながら……」
ピエールは唇をかんで、細い目を固く閉じた。
「え……? 」
俺の頭の中に、不吉な感情とともにアンリの無邪気な顔が浮かび上がる。
アンリに何か……
「ピエールな、なにがあったんだ!」
気がつくと俺はピエールの両肩を激しく揺すっていた。