クラン。
頭から煙でています。
イストの街の中央にある小高い丘で、俺と謎の少女カマクビとヤドカリは、
話し合いをしていた。
「拓様、例の件いかがしますか? 」
「しらんがな 」
「え……」
俺はカマクビに未だ不審を抱いていた。
いや、彼女は疑惑の塊だ。
どこから現れたのか、何者なのか、その肩をだした紫色のパーティドレス姿は何なのか。
更に言うなら、俺の素性は正しいのか、あらゆる疑問の総合商社だった。
ゆえに、まともに会話をする気になれなかった。
「ヤドカリ……俺の正体は他の村のものには……」
「分かっております」
「ハーフの小娘ばらしたら、首チョンだからね」
しかし、俺が偉い人間だということは本当らしいので一応。
ヤドカリのマジ顔を見ると、そう思えてならない。
となると、このカマクビとやらも偉い人間なのだろうか。
「なぁ、ヤドカリ、お前なんでこの怪しい奴の言葉信じたの? 」
「だ、だって、五聖は精霊が宿る首輪をしているっていうから」
「その精霊みたことあるの? 」
「はい、このお姿そのまんまです」
「俺にはただの派手な服を着た少女にしかみえないが」
ヤドカリはもう借りてきた猫のように大人しかった。
俺にも敬語しか使わなくなった。
精霊とか何の話か分からないが、俺はとても偉い人間だということだけは分かった。
それだけ分かれば俺の中では無問題だ。
「ヤドカリ荷物運べや」
「で、カマクビ、俺はここへ何しに来たんだっけ」
「ええ」
「さっさと答えろ!」
俺は即答を要求した。
「拓将軍様の部隊に、ガラパゴスを引き入れに交渉にきたのでは」
「そうか、よし、そいつの家に行こう」
俺は深く考えることをやめていた。
なぜ? とか愚問だ。
沈滞した流れを断ち切るのだ。
エストでは三派閥の勢力に分かれていた。
ガラパゴスを首長とする、ギアスクラン。
カルバンを首長とする、ジアナクラン。
マルクを首長とする、サラダクラン。
この国ではクランに所属する人間にだけ名前が認められていた。
クランはいわば、エストの武力集団だ。
名前を名乗ることができるということは、この国の男たちにとっては、大きなことだった。身分的にもハーフでは最上位の地位は得れるし、ダルのお偉方と接触することもできるようになる。あらゆる利権を手にすることができるのだ。
ダルがクランを認めたのは対フレ用のハーフ戦士を育成するために他ならない。
ハーフは人間と違って身体的能力は優れている。
植民地にはしたが、有能な人間は手なずけておいて損はないのだ。
で、カマクビの話じゃギアスクランの首長ガラパゴスは鋼のような肉体を武器にする、屈強のハーフらしい。拓将軍はそいつをパーティに引き入れるためにここへやってきたということだ。
まぁ、設定はそういうことになっている。
俺の記憶に反映されていないせいで、面倒なことになっていたが。
「カマクビ、それで、ガラパゴスを引き入れてどうするんだっけ? 」
「そんな事も忘れたんですか? 簡単ですよ、他の兄妹達がそれぞれ集めたパーティと競争するんですよ。今度フレに宣戦布告するので、その時五聖の誰が魔王を先に倒すか競うんですよ」
「えぇ……」
俺は絶句した。そんな大事な事は早く言えよ。