親王。
テキトー。
俺は一時的に破壊衝動を抑えて、怨霊君と今後の方針について話し合う事にした。
「あのさ、怨霊って言えば、平安時代とかの菅原道真の怨霊とか有名だよな、大宰府に左遷された恨みで、天皇家の皇太子祟って殺したとか、雷神となって建物に雷落としまくったとか」
「ああ、それは濡れ衣というもの、あの時代は天変地異が凄くて、疫病もはやってたし、いっちゃなんだけど、生活環境も良くなかった。だから、若死にしてもおかしくなかったし、そんな自然死のようなのをなんでも菅原道真公に押し付けて酷い話っすよ」
「まぁ、昔はしらないけどさ、俺が言いたかったというか、知りたかったのは君の実力がどの程度かなってことだよ」
召還した怨霊君、何が出来るかで遊びの幅も変わってくる。
凶暴と銘打ったのに、何だか穏やかな奴なんで、まさか、憑依しかできない無芸な奴なのでは。
そんな思いに駆られて今コミュニケーションとって、彼を値踏みしている最中だ。
「じゃあ、ちょっと2、3人殺してみましょうか? 」
「え……」
彼の声色がさっきとは別人のように重々しさを増した。
と、次の瞬間――
目が眩むような白い閃光が視界に満ちた。
思わず目を瞑ってしまうが、間髪いれずにかなり近くで凄まじい轟音がこだました。
堅い岩に鉄球でも落ちたような、ゴツンっていうような音だ。
俺の立つ位置からそう遠くない場所にある家々に炎と煙が立ち上っている。
闇に赤々と照らす炎は否応がなく、俺の興奮を掻き立てた。
「おぉ、今の君がやったのか? 」
『はい、やっちゃいました、スカッとしましたよ』
だんだん、口調が変わってきている怨霊。
内の凶暴性が抑えきれないといった様子だ。
最初はご主人様に気を遣って猫を被ってたな。
「良く分かった、親王、仲良くやろう」
「親王ってなんですか? 」
「これから君に敬意を表して名前をつけてやったんだ」
「あ、ありがたき幸せ」
こうして、また俺達は何を企てるか、子一時間話し合う事にした。