表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/197

怨霊召還。


 俺は夜も深い静まり返った住宅街を歩いていた。

 特に行くあてはない。

 ただ、深夜に外出すると血が騒ぐのだ。

 その昂揚感たるや、狼男が満月の夜に変身するときの高ぶりと似ている――かもしれない。

 手がかじかむような夜気が体に纏いつく。

 俺は肌寒さに体を竦めて、左右をきょろきょろしながら歩を進めていた。

 青白い闇に沈む家々が通りの両側に林立している。

 この辺りは住宅街といっても、郊外の高台にあり市の中心地より離れていた。

 深夜2時の通りは当たり前のように人影はなく静まり返っている。

 

 またしても俺は携帯の力を頼ることにした。

 瞬間移動の力だ。

 頭に思い浮かべる事で、一度行った事のある場所へ移動できる超能力。

 仮想世界の日本でまで、律儀に歩く必要はない。

 ここでは俺は神様なのだ。

 神様といえば、古来より人知を超える力を行使できる者と相場は決まっている。

 だから、俺はこの街でその力を存分に奮うつもりだ。

 そうでなくては、仮想世界を作った意味がないのだ。


 さぁ、派手にやるぞ。

 まずは一人は嫌だ。

 話し相手が必要だ。

「凶悪な怨霊だが、俺とは主従関係にある、人には見えない」

 これを携帯のディスプレイに文字うちしてOKを押す。

 今打ったものがこの世界に反映された。

 と、同時に己の軽薄さを悔いる。

 夜の基地外じみたテンションの高さに任せて、えらいものを……呼んでしまった。

 

『い、いるの? 』

『はい、ご主人様、あなたの背後に憑いています』

 彼とは心の声で話す事ができた。

 既に背後霊と化しているらしい。

 特に肩が重いとか、背筋が寒いといった感覚はない。

『よ、よし』

 俺は不思議と怖いという思いはなかった。

 相手の声が妙に澄んでいて、想像とは違っていたからだ。

 まぁ、設定反映の正確さを信じているせいもある。

 もうこの携帯とも長い付き合いだ。

 

 さぁて何しようか。

 取り合えず、彼と会話かな。

『お前さ、特技ある? 』

『特技ですか、そうですね、憑依にかんしてはエキスパートだと自負しています』

 誰かに取り憑いて、好き勝手に他人の体をもてあそぶって事だよな。

 俺は短く刈った髪を左手で弄りながら、辺りを見回した。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ