携帯発動。
「母ちゃん、飯は? 」
「冷蔵庫に冷凍ピザでもあったから食べなさい」
「分かった」
一階の台所にある冷蔵庫からピザを取り出し、オーブンに入れた。
10分ほどでできるだろう。
俺は木目のある円卓の傍にある椅子に腰掛ける。
まぁ、異世界にいながら、自宅で寛げるのは不思議な感覚だ。
あまり居心地がいいと、現実の世界に帰りたくなくなるかもしれないな。
ピザができたので大きめの皿に移した。
隣には紅茶を入れたティーカップがある。
まぁ、腹減ってたので食べ飽きたピザではあるけど、いつもより美味しく感じる。
紅茶の最後の一滴を飲み干すと、俺は二階に上がって自分の部屋に戻った。
デジタル時計が机の上にある。
2010年5月2日。 GWの真っ只中だ。
時刻は23時17分。
もう寝る時間だな。
俺はベッドに仰向けに寝転がり、携帯を開いて画面を凝視していた。
この見知った世界に、何を持ち込もうか考えていた。
宇宙人でも降臨させようか……それとも、凶悪な殺人鬼でも街に放とうか。
考える事は凶悪な方向に流れていく。
ただ、凶悪ではあるが、まんねりだな。
使い古されたパターンだ。
もっと何か面白いことないかな。
うーん、浮ばないな……
散々考えたが、マンネリ打破ができない。
仕方ない、外に出て夜の景色を眺めながら歩いてみよう。
何か浮ぶかもしれない。
深夜の散歩か。
うちの母ちゃんに見つかったらまずいな。
深夜に外出しようとしてるのがばれたら、怒られるに決まっている。
俺の家は高校生の深夜の外出を許すような親じゃないんだ。
うーん、いきなり携帯が役に立ちそうだ。
『俺に瞬間移動の能力付与』
決定を押す。確定した。
何ら変わったエフェクトはなかったが、
既に俺の体にはその能力が宿っているはずだ。