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オレだけ転生。魔女と共に異世界へ  作者: 鳴壱
序章 新たな人生

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第四話 ソル王国

 黒い竜討伐後、オレと騎士団は王国へ到着した。

 ソル王国は世界地図では中央に位置がある王国。各国や町に比べて比較的新しい方であり、現国王は五代目。王子であるカミラが次期六代目国王らしい。

 第一次人魔世界大戦で国の危機もあったとかで大変とは聞いた。この異世界の歴史は全く分からないから明日とか調べるのもありだな。

 何故か丁重に扱われ、人生初の乗馬で国内を進む。

 ボロボロで見た目もある恰好である故、これからの歓迎と祝福式で大衆に見られるので騎士団長からマントを借りて、多少なりともマシにはなったと思う。あの破廉恥で公衆の前を歩くのは露出狂だと思われるじゃんね。有難い気遣いだね。

 戦闘で疲弊と負傷をした兵士は遅く、王子と団長は彼等に歩幅を合わせている。国民達に無事に帰還したというパフォーマンスという意味でもゆっくりと歩いているのだろうが、細かい気配りができる人達だ。

 オレ達が行く道を塞がないように道端に人が多く集まる。

 皆は騎士団の活躍に喜び、いつまでも絶えない賑わいを見せている。


「国民達よ! 黒竜は討伐できた! 脅威は免れたのだ!」


 歓喜の声に包まれながら城の中へと入る。

 前にいるコウに話を掛ける。


「なぁ、 客人のオレもこの列にいていいのか?」


「あぁ? 本件の英雄様がなんで疑問持ってるんだよ」


「なんでって、たまたまあの場所に来た訳だし……」


「そうそう。皆には怪我した客人をもてなすように見えるだろうけど、僕達には感謝の意も込めて招待してるんだ。邪険には扱わないし、宿泊だと思ってゆっくりするといいよ」


 随分と高い宿泊に招待されたもんだと内心思った。

 荷台に乗せている黒竜には害はないだろうなとチラリと見る。

 これだけ大きい歓声と揺れに反応しないんだ。また動いたらオレが止めればいいし、そんな気にする必要はなさそうだ。

 城内に入り、馬から降りると案内人が現れる。所謂メイドと呼ばれる方々だ。ロングスカート、露出が少なめのメイド服で迎えているのは、二十代の若い女性とまだ学生だと思う少女と三人。

 カミラが挨拶するとお辞儀をし、服をメイドに渡して何か指示を出している。彼女等の中から少女がこちらに向かって走ってくる。


「お、お待たせ致しました! これからご案内と、メイ様のお世話になりますシルフィーと申します。よ、宜しくお願いします!」


 慣れていない様子で大声で自己紹介をした彼女に少し驚いてしまったが、平静を装い、


「オレはメイだ。短い間だが、宜しくな」


「あ、は、はい。宜しくお願いします。まずは温かい湯にご案内致します!」


 緊張で体が強張っているようだ。まだ仕事に慣れていないのだろう。温かく見守るのも一人でできるようにする勉強だ。

 長い廊下、街並みが見える大きな窓。とんでもない貴族と驚愕する。まだ発展途上とはいえ、壁があるのもあれば、かなり栄えている国だと思った。子どものオレにはまだまだわからない部分もあるのだろうが、かなり苦労しているというのは伝わってくる。


「こちらが湯舟になります」


 左側にある扉を開け、中に入るように促すシルフィー。

 ここまで丁寧だと逆に申し訳なく思えるね。


「ありがとう。ゆっくり入るわぁ」


 久方振りの湯舟にワクワクしながら扉を閉めようとした時、少女も入ってきた。


「お客様であるメイ様を丁重にもてなせ、と言われたのでお体を洗わせて頂きます」


 思いがけない事に固まってしまった。

 そりゃ同性だから可能だろうけどさぁ? 中身は少年なんだよ? それに日頃は軽くシャワーを浴びる程度には入ったけど、臭いは気になるじゃん。自分では気付かないから、周囲の目を気にしちゃうじゃん。

 

「あーその……自分でやるからいいよ?」


「いえ! しっかりとメイ様にもてなすのが使命なのできちんとさせて頂きます!」


 これは何を言ってもダメなパターンだわ。

 どうしても避けられない場面で困り果てる。正直に言うか少し誤魔化して言うかだな……。


「じゃあ、少しシャワーを浴びてから入って貰えるかな? きちんと合図は出すから」


「それなら……承知しました。扉の前で待機してますので呼んでくださいね」


「あぁ、ありがとう」


 なんとか了承を得てくれたようだ。

 未だに自分の身体に違和感を持っているものの、少しずつではあるが理解はしている。汚れてしまっている和服をそのまま籠へ置くのは抵抗あるが、他に良い場所はないので、そのまま置く事にする。汚れていたら後できちんと清掃しておこう。

 浴場へ繋がる扉を開けると、目を疑った。広いのだ。一人ではかなり余すであろうこのお風呂が貸し切り状態なのである。

 大人数が入るであろうここを使うのが申し訳なく思えるが、折角の利用していいと許可を得たのだ。遠慮なく使わせて頂こう。

 ある程度は全身を洗った後、シルフィーを呼んだ。

 彼女は濡れても構わない程度に着替えており、懸念していた全裸とは違ったので内心ほっとする。慣れた手つきで洗剤で泡を作り、丁寧に洗ってくれる。


「痒みとかありませんか~?」


「大丈夫。シルフィー上手だね」


「ありがとうございます! 実家の方では妹と弟にご飯や洗濯、お風呂の事やってましたからその延長みたいな感じですね。親は共働きなので子ども達の世話はいつもやってました」


「へぇ、できたお姉ちゃんだな」


「えへへ、お褒めの言葉を頂けるのは嬉しいです。あ、こちらに向いて頂けますか?」


 前も洗われるのも恥ずかしい気持ちだ……まぁ、致し方あるまい。


「…………」


 顔を背けているオレに気付き、


「自分でやりますか?」


「えっ、あぁ、出来れば……」


「では私は服の準備してるので出てますね! ごゆっくりどうぞ~」


「あぁ、ありがとう」


 そう言い、手を洗って消えていった。

 さてと自分でゴシゴシと洗って流す。少し臭いが気になるのでもう一度同じ事を繰り返して、湯舟に浸かる。

 全身の緊張が一気にほぐれていくのが分かる。久し振りのお風呂でおっさんみたいな声が出てしまった。

 転生に戦闘、使命にまだまだ理解が追い付いていない。それでも、気掛かりなのは転移したクラスの皆の事だ。あれから何日経ったのかは忘れてしまったが、こんな血生臭いような世界を生き抜いているのだろうか?

 もしかしたら魔法でやっていけているのかもしれないな。それだったら、心配は無用だろう。しかし、有希はそうでもない。

 新垣有希とは幼馴染だが、気が強いとはいえ、昔からお化けは苦手な所もある。こんな世界では泣き崩れているだろう。ハンターでもないオレ達が猪や熊に勝てる訳がないという話だ。

 集団で転移したならば、パーティーを組んで旅に出ているはず。なるべく早めに手掛かりを見つけて安全に過ごせているか確認したいな。


 少し考え込んでしまったようだ。

 のぼせてしまう前に風呂から上がろう。


「メイ様、湯加減は如何でしたか?」


 扉を開けるとシルフィーがバスタオルを差し出しながら立っていた。

 広げやすいように両手で持っているようだ。


「ありがとう。あぁ、いい湯だったよ」


 さっと済まし、着替えの方を見るとドレスがあった。

 高価そうなドレスに戸惑い、


「あの、どうされましたか……?」


「ドレス以外ない? 騎士達が着てるような服装で」


「あ、わ、わかりました。少々お待ちください!」


 急ぎ扉の外へ行き、シルフィーは行ってしまった。

 このまま裸で待つと風邪引きそうなので、タオルを巻いて待機する。

 数分後、彼女は戻ってきた。


「お、お待たせしました……こちらで宜しいですか?」


 ぜぇぜぇと息を切らして戻ってきたようだった。あの騎士の服とはいかずとも、こちらが困らないズボンタイプと露出が少なめの黒色のシャツ。貴族とは思われなくともこれぐらいがいいな。


「助かるよ。シルフィーは着替え終わるまで椅子に座って休憩してて」


「い、いえ……客人の前で座るなど……」


「いいからいいから。この後の業務に支障が出るでしょそれじゃ」


「……ありがとうございます……」


 大人しく呼吸を整えて待っているようだ。

 少し貴族っぽいのかな? 冒険者らしい方がいいな……目立つし。もう少し楽な服装でマントあればいいな。

 まぁ、ここで不満があると言ってしまえば、シルフィーの負担が増えるから今はこれでいいか。


「よし行くか」


「あっ、髪の毛乾かします!」


 ブラシをしてもらい、完全に乾いた。

 次は国王への案内。黒竜の事で呼ばれているようで緊張が走る。

 長い廊下を歩き、国王がいる間に着く。

 開かれる扉の先は広く、何人ものの騎士が並び、奥には国王とカミラが座っている。

 シルフィーとはここで離れ、一人でカーペットに辿って歩く。階段がある前で止まり、国王を見上げる。


「よく来たな。我が城の湯は如何だったかな?」


 口を開いたのは国王。


「とても良き湯でした。お気遣いいただきありがとうございます」


「そうか。メイ殿、そなたの活躍は聞いておる。黒竜討伐の協力に感謝するよ」


「あ、ありがとうございます」


「うむ。聞けば野宿を続けているようだが、それは何故かな?」


「はい、それは強くなる為です。理由は」


『ストップ!』


 頭の中で響く声。

 これはネヴィラのだ。


(どうしたんだよ)


『今はスルウ達の情報は言わないで。これが彼等の耳に入る可能性があるから』


(じゃあ、どう言う?)


『んー……メイが考えて』


(……わかった)


「如何した?」


「…………理由は、守りたい人がいるからです。その為に力を付けていきたいと思い、黒竜に挑んだ次第です」


「そうかそうか。まあ良い。そなたの活躍に報酬を送りたいと思うのだが、何かよいか?」


「報酬……では、服が欲しいです。今現在着用しているこれでは、少々動きにくいものですから、冒険者らしい服を頂きたいです」


「分かった。早めに準備をしておこう」


「それと冒険を再開する為に装備等を整えたいので準備とそれまで宿泊の許可をお願いします」


「良い。恩人であるそなたが一年でも泊まってくれても構わない」


「そ、そんなには泊まりは希望してないです……お気遣いありがとうございます」


「はっはっはっは、さて、堅苦しいのもここまでにしよう。遠征で疲れている騎士達とメイ殿を招待して、パーティーを開こうか」


「そうだね。開催はすぐにしようか。皆の者、申し訳ないが準備をお願いするよ」


 その後、城内にある広場でパーティーが行った。

 大量のご馳走が並ぶ光景に驚愕と久々の美味しそう飯によだれが出る。

 なるべく行儀は良く食べたつもりで、騎士達が酔って歌う様子を見て楽しそうだった。

 日が暮れ、二十一時が過ぎた頃にベットの上でダイブして寝転ぶ。

 ようやくのふかふかのベットに懐かしさと安心が出てきた。


「メイ」


 パーティーの間も黙っていたネヴィラが影から現れる。


「おーどうした?」


 横になりながら彼女へ体を向ける。


「黒竜の事なんだけど……」


 なにやら深刻そうな顔で話を始める。

 そんなネヴィラに思わず、眉を寄せる。


「黒竜に何かが?」


「実はね、黒竜には私と同類の魔力が感じたの」


「それって……」


「あれは元々、無差別に襲うような魔物じゃないよ。竜一族の方針で人々と魔物の生活に脅かすような事をしてはならないと、第一次人魔世界大戦から決めた事なの。その法を無視してしまえば、その者の命はないとはわかっているはずなのに、今回は起きてしまった」


「つまりはなんだ。魔女の者が操って嫌がらせでもしてきたという事か?」


「……うん」


「ネヴィラがそんなに深刻そうにしてるのは?」


「以前から魔女というのは嫌われているからね。力に溺れていく子や離反した子とかもいたけど、その度にお姉さま、始まりの魔女の次に入ったベルナ姉さまが規則などに厳しく処罰してきたからお咎めなしにはなってきた。でも、友達が消えるのが辛いのが本音だよ」


「……そっか。言わなくてもいい。一応聞くけど、その目星は付いているんだな?」


「…………うん。名前はベルナ・クスブルク。爆裂の魔法を使い、マリ様に恨みを持っている魔女なんだ」


 なるほどねぇ。

 どうも訳ありの子なのは理解できたな。

 彼女が今、何処で何をしているのかは知らないが、今後とも敵として出てきそうな予感がする。

 

「わかった。もしも敵対する時が来たら、戦うしかないだろ」


「でも、その子には手も足も出ないよ。今の私が加勢しても勝てない」


「なら、もっと強くなるしかねぇな。オレは殺すのは無理だから、殴れるまでに強くなればいい。それで断罪できれば、ネヴィラもそんな落ち込む事もないだろ?」


「ありがとう、メイ」


「明日に備えてもう寝ようぜ。おやすみ」


「うん、おやすみ」


 こうして夜が更けていった。

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