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亜空間VoiCe  作者: 瑞月 啓
面接編
3/3

Intersective Station

模索しながら書くと筆が進みませんね。

「見えない?」

「そうですね。私はこの世界の人間ではないので。」


言っている意味が分からない。狼のお方はこの世界の人間ではないらしい。ということは異世界の人間ということになる。


「とりあえず入ってください。あまり長く開いておくものではないので。」

2人は(とびら)の中に入った。


(異世界があるというのか。そもそも人間なのか?)

穂月は狼のお方に問うことにした。

「あなたはその、異世界の人間ということですか。」

「そうです。」

「つかぬことをお聞きしますが、人間ですか?」

「その反応は見えているということですか。」

(見えるだろう。隠したつもりか?)


見せたくないものだったら申し訳ないと穂月は謝っておいた。そのあと狼のお方は自己紹介をしてくれた。名を狼衣(ろうい)というらしい。因みに電話の相手ではなかったそうだ。

(だから何も聞いていないと言ったのか。)

狼衣によると、ここはまだIntersective Stationではないらしい。駅までは少し歩くのだそうだ。複雑極まりないところに応募してしまったものだと穂月は少し後悔した。

「もうすぐ着きますから。」



Intersective Stationはとても広かった。近未来的というか無機質でありながら穂月の心を昂らせる作りでたくさんの人が働いていた。

(人というか、異世界人だな。)

そこにいたのは穂月が住んでいるところでは見ない様相をしていた。

獣の耳やしっぽ、ファンタジー的な羽や角が生えている者、魔法が使える者もいた。他国の伝統的な衣装をまとっていたり歴史の教科書で見るような衣服を着ていたりする者もいる。穂月の見た目もここでは珍しいと思えるほどに様々な者が働いていた。


「どこに向かっているのですか」

フラフラしてしまっている穂月に、狼衣はたまらず声をかけた。穂月は自分の世界に入っていた。色々な闔を見たり、働いている人を追っかけたり、机の上の書類をのぞいてみたり。気づけば全く違う道を進んでいたようだ。好奇心を制御する理性を育成中なので大目に見てほしいところでもある。しかしそれにしても無意識とは恐ろしい。


穂月はこれでも本人なりに好奇心と付き合っているのだ。幼少期は好奇心につられていたが、一度触れると好奇心はいくらか収まるようだ。最近はめっきり好奇心の化身になることは減っていたのに――。

(ここは甘未(かんみ)のようだ。)


中学時代の穂月は、勉強マシーンだった。

好奇心が勉強に振り切っていたので、教科書を暗記したり模範解答と違う解き方で解いてみたり。

学校帰りに甘未に寄って入り口からは見えない奥まった席で勉強していた。甘未とは穂月行きつけの喫茶店だ。街の雰囲気とは一味違う、俗に言う昭和レトロのようなお店。穂月はそこで毎日勉強に明け暮れ今の高校に合格した。

店主は優しいお爺さんだった。穂月に差し入れと言ってケーキを出してくれる人だった。毎日頼む紅茶と日替わりのケーキ。穂月はその2つを見ると今も温かさを感じる。高級パティスリーよりも美味しくて勉強が捗るのだ。記憶の定着にも効果がある。

店主にレシピを聞いたりしてみたけど「何もしていないよ。()()かね。」と微笑まれた。未だに美味しさの秘訣はわからない。今でも甘未は好奇心の巣窟である。

帰ったら甘未に行ってみようと穂月は店主の顔を思い浮かべながら考えていた。


「大丈夫ですか?」

また自分の世界に入ってしまった。思考を始めるとどうも周りの声が聞こえなくなる。思い出を引っ張り出すだけでもこうなってしまうのかと穂月は密かに呆れた。

「大丈夫です。思い出に浸っていただけなので。」

「そうですか。面接会場に着きましたよ。」


そこにはとても大きな扉があった。穂月が縦に3人並んでも扉のほうが大きいかもしれない。

(門番まで要るようなところなのか……?)

狼衣は門番に何かを見たり話したりしていた。すると扉が開く。

「行きましょう。あの人が待っていますから。」

「あの人?」

「はい、あなたが電話で話された人です。あの人が面接官ですよ。」


”素質”があるとか何とか言っていた人だ。うさんくさい飄々とした声をしていた。

(説明不足の御仁か。あの時はお互い困惑した。)

穂月と狼衣が認識の齟齬を感じたとき、両者は5分ほど固まっていた。頭が切れると言っても困惑しないわけではない。受け入れるのに相当時間がかかった。

本当なら説明不足野郎とでも言ってやりたいがこの空間ではどんな人がいるかもわからない。一応自分の上司になるかもしれない人だ。あまり悪く言うものではない。

このような場所に来ても穂月は穂月なのである。


扉の中では5人が働いていた。大きなモニターの前で様々な言葉で話している。

「異国語ですか?」

「そうです……あー、これをお渡しするのを忘れていました。」

狼衣は穂月に小さな箱を渡した。

「その中にはイヤホンなるものが入っています。それをつけるとあの者たちの言葉もわかるでしょう。」

高性能なイヤホンだ。つけてみると内容が聞き取れた。


煌苑(こうおん)は今日も安定していますね。」

()()が直々に向かっているのだ。そうでなければ消されてしまうぞ。」

「クウェンは不法侵入者が多いな。」

「人員を派遣しています。できれば()()に行ってもらいたいのですが……。」

「そういうわけにもいかない。あの人過労死するぞ。」

「そうだな、一応()()だし。」


「いっそがしいんだなー。」

「面接官は今出かけているようですね。少し待っていていただけますか。」

(説明不足の御仁はやはり御仁らしい。)

妙なところで当たる。よくないことが起きそうだ。


「いやー待たせて悪いね。さあ始めようか!」


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