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死神退治はオルタナにっ!  作者: ねめしす54
第一章 死神へと贈る噺
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一章第2話  【心に花を持った者】

「まぁ、とにかく立てよ」


 そう言った(きょう)(ざき)(やなぎ)はその少女に手を貸した。

 少女は不屈そうな顔をした。


「……君に手を貸されるほど私は弱くないよ」


 少女は柳の手を振り払って立ち上がる。

 せっかく親切にしてやったのにと思ったが、小さなことだし気にしないでおこう。


「君の方こと腹の傷は大丈夫なの?」


 少女は手や服についた砂利を払いながら言った。


「ん? あぁ、『オルタナ』が痛みを和らげてくれているからなんともないさ」


 その柳の発言に少女が首をかしげる。


「その……さっきから言ってる『オルタナ』って何?」


「なんて言ったらいいんだろうな、まぁ、とにかく俺のもう一つの心の名前って言ったらいいんだろうか」


 柳はそう言いながら心臓のある場所に手を当てる。

 少し寂しそうな顔をしながら心の中で思う。


 ―――もうあの子には会えないのか。


 この戦いを機に少し昔のことを思い出した柳。

 かつては一年前、『オルタナ』と言う少女が居た。


「そうだ、結局あんたの名前はなんなんだ?」


「えー? でも個人情報だし……」


「いいから早く言え」


 柳はナイフを拾いあげ、その少女に見せつける。

 少し脅すような形になって悪いとは思ったが、こうでもしないと教えてもらえないだろう。


「……(こと)(づき)(りん)よ、凛ちゃんって呼んでもいいよ?」


 凛、確かに名前に合った風貌をしていると思い感心する柳。

 この言葉はこの少女のために生まれたのかもしれないと思ったが「それは違うな」と、頭の中でツッコミを入れる。

 普通の女子高生なら初対面の男子高校生にナイフを刺さないか……


「なんで黙ってるの?」


「あぁ、ごめん、考え事してた」


 そんなそっけない返事で会話を終わらせる柳。


「そういやなんで俺のことをナイフで刺したんだ?」


「そうだったわね、その話をまだしてなかったわ」


 その少女……如月は少し険しい顔をした。

 すぐ次に人差し指をピンと立てて、柳を指した。

 それで柳は少しドキッとしてしまった。

 何か起こっているのだろうか、その場合少し情緒不安定だなぁとも思い、何を言われるのかを待ち構える。

 だが、如月が放った言葉は意外だった。


「君、昔に『死神』と戦ったことあるんだって?」


 そう言われた瞬間、柳の身体中に衝撃のようなものが走った。


 ……『死神』


 そんな言葉、もう聞くことはないと思っていたが、なぜこの少女が知っているのだろうか。

 正直もう聞きたくもないと思ったほどでもある。


「なぜあんたがその言葉を、『死神』の存在を知っているんだ?」


「私はあんたじゃない、ちゃんと如月って名前があるの」


「今はそんなのどうでもいい! なぜ如月が『死神』を知ってるんだ!」


 その声に如月は少し体をビクッとさせる。

 柳自身もは声を荒げてしまったことに少し反省する。


「ごめん、少し興奮しすぎた」


「大丈夫、私もちょっとふざけすぎたよね」


 如月も如月自身で反省する。


「とりあえず、私が『死神』を知っているのは……」


 如月は少し間をあけ言った。


「その『死神』に、私のお母さんが殺された」


 如月はそう透き通る声で言った。

 今の如月は少し悲しそうな顔をしていた。


 少しまずいことを聞いてしまったかもしれないと思う柳。

 この空気を変えようとし必死に言葉を探したが何も出なかった。

 柳の中でも如月の言葉は深く刺さった。

 お互い大切な人を失った同士、如月の気持ちもわからなくもない。


「そうか、それは災難だったな……」


「そんな感じだと君も同じようなみたいね、その『オルタナ』って子でしょ?」


 柳の表情で察したのか、如月はそう言った。


「『オルタナ』って子はどんな子だったの?」


「あぁ、とても可愛い子だったよ」


「じゃあ、君が『死神』が戦った時の事と、その『オルタナ』って子の事を詳しく教えてくれる?」


 如月にそう言われ、少し戸惑う柳。

 だがその答えも柳の口からスッと出た。


「あぁ、教えてやろう」


 柳がそう言った瞬間、学校のチャイムが鳴った。


「あ! 私教室にカバン置きっぱだ!」


「あ、俺もだ」


 柳と如月は急いで教室まで走った。

 なんとか鞄を取って急いで校門を出た。


「もうこんな時間だったのか」


 時間を見るととっくに五時を過ぎまわっていた。

 急いで走ったからか少し腹の傷に痛みが走った。

 制服も破けたから治さないといけないな、と思う柳。


「……行くのが早いって」


 後から如月が校門から出てきた。

 さっきまで時間に必死だったため、すっかり如月を置いて走り去ってしまった。

 柳は「ごめん……」と一言いい、歩き出した。


「はぁ……明日って学校休みでしょ? そしたら私三時に駅前の喫茶店で待ってるから、ちゃんと時間通りにきてよね」


「いきなりだな……って明日かよ」


「何? なんか不満でもある?」


「……いや、特に」


「じゃあそれで決定ね、じゃあまた明日」


 そう言って如月は帰っていった。


 柳は明日の予定を少しめんどくさそうに感じたが、自分が生きていた中で初めて『死神』を知っている存在が現れたことの方に天秤が傾く。

 如月が見た『死神』はどんな容姿をしていたのかや、どんな武器や能力を持っているのか。

 無論、楽しみにしているわけではない。


 ただ、如月も『死神』が干渉して大切な人を失っている。

 如月はお母さんを、柳も大切な人を失った。


 明日はどんなことを話そうか、と帰りながら考える柳であった。


 ◇◆◇◆◇


 あれから翌日、柳は支度をして家を出た。


「よっ」


 三時丁度に喫茶店に行くと、如月はもう席に座っていた。

 後から柳も席に座り、如月と向かい合わせになるようになる。


 私服姿の如月は、上半身は少し首元が見えるる真っ白なパーカーに、下半身は水色のショートパンツだった。


「何見てるのよ」


 如月の私服を見ていた柳にそんな冷たい言葉が飛んだ。

 メニューを取り出して誤魔化そうとする柳。

 それを横目にスマホをボーッと眺め出した如月。


 ―――とても気まずい。


「もう何か頼んだのか?」


 こんな気まずい空気をなんとかしようと、柳がそう如月に聞く。


「いや、君を待っていたから何も頼んでないわよ」


 そんな如月の言葉に柳は返事をし、再びメニューに目を通す。

 柳は今まであんまり家から出ない性格だったので、こんな喫茶店に来るのは初めてのことだった。

 メニューを見て、まず驚いたのは値段だった。

 パンケーキ一つで九百円もする、事前にこの喫茶店を調べておいたら、と後悔した柳。


 とりあえず比較的に安い物を頼もうと、店員を呼ぶ柳。




 あれから数分が経って、柳と如月の分の料理が届いた。

 とりあえずコスパの良かったハニートーストとメロンジュースを頼んだ柳。

 如月は少し贅沢をしてパンケーキとショートケーキを頼んだ。


「そんなの食べたら太るぞ」


「失礼ね、君も一概には言えないでしょ」


 そんなことを言って如月はパンケーキを頬張る。

 柳も、何も言い返せなくなってしまったのでメロンジュースに口をつけた。

 ふと柳は前を見ると、如月がスマホを取り出して写真をパシャパシャと撮り始める。


「自撮りか?」


「そうよ、私だってSNSとかやるんだから」


 そう言いながら色々なポーズをとる如月。

 ピースをしたり、パンケーキを頬張る瞬間だったり、キメ顔をしたり色々だ。

 数枚とって満足したのか、ウキウキな顔で写真を投稿する。


「よし、これでおっけー」


 満足してケーキを頬張り始める如月。

 柳はそれを見ながらハニートーストを頬張った。


「それじゃ、そろそろ聞くけど」


 如月はフォークを置いて、柳の目を見る。


「君が会った『死神』の話と、君の心にいる『オルタナ』って子の事、教えてくれる?」


 少し真剣な表情になった如月を見て、柳は顔を向ける。

 そして柳もフォークを置いて、如月の目を見た。


「よし、話してやろう。一年前に起きたことを……」


 そして柳は一年前にあった、とある事件を話始めた。

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