ひとりぼっちのうちゅう
第七星系、という場所をそもそも発見したのは俺の父だった。
というのも、不完全なコールドスリープが引き起こした病に倒れ、未到の宙域であるということが最後まで立証できなかったからで、つまりは、『到達者』として持て囃された俺はただの金魚のフンだった訳だ。
親父の夢を、理論を、検証する為の道筋を引き継ぎ、無事に未到の地であると証明できたところまでは良かった。
無念を晴らせたと心から嬉しかった。
ただ、親父の夢という補助翼が外れ、肉親の死因が気になって調べてみて、心が折れた。
親父の死因がコールドスリープ装置の故障であり、これが致命的な不具合で、装置の修理ができる宙域までは、コールドスリープしなければ人の寿命が200回ほどあってもままならない。
つまりは、もう帰れないということだ。
コールドスリープ以外の装置はバッチリ動いているし、情報データの遅延はほとんどない。
衣食住に娯楽やストレス発散の術は残ってる。
それこそ、帰る術以外は、みんなこの船にある。そう思っていた。
親父の仕事について行くようになってからはもうほとんど地上に降り立つこともなかったし、人との付き合いは今や全宙域に張り巡らされたネットがあるから、何も変わらないと思っていたけど、今となってはそれがまやかしだったと気付かされる。
「あ゛ーー......」
帰れない、帰れない、栄光、発見、未知、夢、探求。
取り止めのない思いと共にため息を吐き出したつもりだったが。それは乾き切った喉笛に阻害され、腹の中に帰ってきてしまう。
最初から親父の発見した場所だと、連合への報告書には書いた。
だが、死者を発見者とは認められない、利権が絡むらしい。
それを聞いてから、帰れないことを報告した。
奴らは嬉しそうに、同情する顔を作った。
そりゃそうだ、跡をついていけば間違いなく儲かるし、第一発見者にマージンを取られずに済む。
『何か力になれる事があったら、何でも言ってほしい』、だと?
未到の地まで追いつけないのに力になれる訳がない。
今までのフライトログを全て消して、奴らへの意趣返しにしてやってもいいかと思ったけど、それは親父の夢を潰すことになるからやめた。
一部では俺のことを悲劇の主役に仕立てる奴もいれば、密室ミステリの主犯と揶揄する奴もいるらしい。
ただ、多くの者は新たな世界の開拓に賛辞を送ってくれている。
俺だって、ここに辿り着く事ができたのは誇りだ。素晴らしい事だ、そう、帰れない事以外は、何も問題はなかった。
初投稿です、どうぞお手柔らかに願います。