9月13日
前回に続いて、またもや紙が張り出されています。
『我が社に社内FA制を導入する。社員は行きたい部署の所属長に面接に行くことを自由とする。その際、現在の所属長の許可は不要とする。面接をした所属長は欲しい人材であれば好きに配置させることができるものとする。なお、抜けた部署に補充は行わない』
またもや奇抜なことを……。社長は日K新聞あたりを読んで、どこかの会社の真似をしているに違いありません。
「先輩! ぼやいている場合じゃありません! 主任が早速営業部に異動しました!」
ナンデストー?
我が企画部の主任と言えば、何回でもかさぶたをはがす快感を味わうことのできる『無限かさぶたはがし君』や、何回でもニキビをつぶす快感を味わうことのできる『無限ニキビつぶし君』をヒットさせた張本人。そして、今度は何度でも鼻毛を抜く快感を味わうことのできる『無限鼻毛抜き君』がもうすぐ販売開始だというのに……。
「元々営業をやりたかったけど、主任のアイデアは次々とヒットしていたので企画部が手放さなかったみたいですよ」
こんなFAなんて導入して我が社は大丈夫なのでしょうか?
補充なしということは業務量は変わらないのに人は減る→一人当たりの仕事が増える!?
これはまずいです。課長に何とかしてよそから引っ張ってきてもらわないと。
「さっそく課長は前から目をつけていた人物に声をかけているみたいですよ」
さすが課長。私が心配するまでもありませんでした。
「あ、でも先輩を主任に昇格させると言ってましたよ」
ナンデストー?
「だって主任が抜けたら、第二企画課としては先輩が一番古参ですよ」
気づいていませんでしたが、確かに周りを見回すとそうです。入社は私より早い人がいますが、みんなよそから来た人ばかり。企画畑としては私が一番長いです。
「おし、あいつが抜けた分の変わりは何とか確保できたぞ」
課長が二人ほど連れて帰ってきました。元々人望が厚い課長で良かった。しかし、いつ誰が抜けるかわからないので、第二企画課は魅力的であることをアピールしないといけません。それなのに私が主任って……。
「頼むよ、新主任! 目指すのは『無限鼻毛抜き君』を超えることだ!」
そ、そんな無茶な。そ、そうだ……何度でもカメに割りばしをくわえさせて首を引っ張り包丁でぶった斬る快感を味わえる『無限斉藤君首ちょんぱ』なんてどうでしょうか?
「『君』の位置がよくないね。却下」