9月6日
会社に何か張り出されて、一目見ようと人だかりが出来てます。
どれどれ内容は?
『アイデア特別休暇を創設する。休暇申請は直接社長に行うものとし、その際に口実を述べること。社長が面白いと思えば休暇を認める。口実は嘘でも構わない。』
有給休暇ですらとりにくいこのご時世。なかなか思い切ったことを……。みんな半信半疑のようで、休暇申請に行く様子はありません。
「みんな申請しないのか? よし、上司が模範を見せないと部下は続かないからな!」
うちの課長が早速行ったー!
どうなるのでしょうか? ドキドキします。
おっとうなだれて帰ってきました。ダメだったようです。口実は何だったのでしょう?
「ゴルフに行ってくるじゃダメかぁ」
そりゃぁ普通の有給休暇か土日に行ってください。
「課長の仇は僕が!」
北村君が行ったー!
おっとガッツポーズで社長室から出てきました! 許可が下りたのでしょうか?
「今の角界を復興させるため秋場所で全戦全勝してきます、と言って四股踏んだらオッケーでした!」
ブッ!
正月以来横に急上昇中の北村君ならではのネタですね。これはいっぱい食わされました。
今の彼なら全戦全勝もできそうです。
その後も次から次へと行きますが許可が下りたのは北村君一人。審査は厳しいようです。
さて。そろそろ私の出番です。
「あ、先輩。社長が『斉藤君に乗って竜宮城に行ってきます』は却下だ、と言ってましたよ。」
ナンデストー?
何故、言おうとしたことがばれたのでしょう? いや、それ以前になぜ社長が斉藤君を?
「何言っているんですか? 先輩の『斉藤君との同居日記』はみんな読んでいるんですよ」
ナンデストー?
ということは、課長が会社に住んでいるネタや、節約の話などモロバーレ?
「はい、ばれてます」
何てことでしょう。ショックです。いつばれたのでしょうか?
そこへ突然社長が扉から出てきました。
「お前たちなんてざまだ!」
は! すっかり休暇申請に夢中になって、今日はだれ一人仕事しないまま昼になろうとしています。社長が怒るのも無理もありません。
「自分が休みたい、という欲求を満たす目的ですら良いアイデアを出せないような奴に、我が社がこの不景気を乗り越えられるようなアイデアを出せると思っているのか!」
じーん……。この特別休暇にそのような深い意味があるとは……。面白半分でやっていると思っていました。
「全く。最近のお笑い芸人がつまらないから、休暇というエサをぶら下げれば誰か面白い一発芸すると思いきや……」
オーケー社長。
社長のその考え自体が口実だったのですね。






