6月7日
改めて先日退職した部長の送別会をすることになりました。
全く……。いなくなってしまった人のことなんてどうでもいいじゃないですか。
大事なのは今目の前にいる人だと思います。
と言いたいのですが、わざと誰も企画しなかった送別会なのに、何と本人が企画してみんなのところに招待メールが送られてきました。
さすがに行かないのもかわいそうなので、みんなで申し合わせの上、全員行かないことにしました……。と言えれば楽なのですが、課長命令で全員行くことに……。ちっ、斉藤君を代わりに置いておきましょうか。
しかも何を考えているのでしょう? こんな季節に鍋……。このチョイスに脱帽ですが、用意できる店も店ですね。
どうでもいい会なので、ろくに聞いていないのですが幹事がなんか言っていますからそろそろ始まるのでしょう。うちの課長が立ち上がりました。乾杯の音頭を取るのでしょう。
ぴぴっぴん、ぴぴっぴん。
こ、この特徴あるアラームは……。部長の着信音。
まさか……
まさかまさかまさか……
電話を取った! 部屋から出て行った!
うっそ~ん?
みんなビールが注がれたグラスを手に持っています。
鍋には火がつけられています。
主役(?)が出ていきます。
「課長、もう始めましょうよ」
「彼のための送別会だ。待ってあげようじゃないか」
12分の1日、言い換えれば7200秒、あるいは120分が経過しました。
部長は……戻らない。
ビールはぬるい。
鍋は煮えたぎる。
私たちは満腹度レッドゾーン。怒りゲージもレッドゾーン。
「いやぁ、遅くなって申し訳ない。新しい会社のプロジェクトで問題があっ」
嘘だっっっ!
今、全員にレナが憑依しました。
だって、あいつと事務の子の二人の会社に新しいプロジェクトの問題が起きたなんて内容の電話があるわけない。
ちょっと着歴見せてみろ。あれは着信音じゃなくてアラームだろ。
そんなに仕事が忙しいふりをしたいか。
ちょっと部長に酌するふりして彼の鍋に斉藤君を放り込みたいと思います。