5月17日
昼休みです。
あれは、部長と主任……。どうやら外に食事に行くようですね。
しかし、主任は13時から課長と共に中途採用者の面接を行うようなことを言っていたはずですが……。外で食べて戻ってくるのでしょうか?
面白そうなので、後を追っかけてみましょう。
部長に見つかると厄介ですが……。
こ、ここは……。よりにもよって注文してから作ることで有名な石窯焼きのピザ屋に入っていきました。
私は遅刻したくないので、向かいのうどん屋に入ることにします。
おお、ここからだとピザ屋の様子がよく見えます。しかも都合が良いことに二人は窓際です。
とはいえ何を話しているのか耳を澄ませて聞こえるものではありません。
なので勝手にアテレコします。
『部長、まずいですよ。間に合わなくなりますよ』
『大丈夫、俺、早いけん』
『でも、俺にはこの後約束が……』
『なんだ? 俺との関係はお遊びだというのか?』
『いや、そうじゃないですけど。でも、俺には心に決めた人が……』
『なんだと! そんなことは許さん! お前は俺のものだ!』
部長が怒鳴ったようですが、主任が立ち上がって帰ろうとしていますね。
『もう、付き合ってられません! 僕はもう帰ります』
『待って! 行かないで! 私、あなたに捨てられたら生きていけない!』
部長の威勢はどこに行ったのでしょう。主任にすがるように袖を引っ張っています。
おっと、もっと見ていたいですが、このままでは私の方が遅刻します。急いで最後の卵をすすり帰ることにしましょう。
ふぅ、間に合いました。が、二人はいません。どうやら間に合わなかったようです。普段温厚な課長がイライラしているのが、ここまで伝わってきます。
面接も無事(?)終わり、課長の雷も主任に落ち切ったようです。さて、主任に何があったのか聞いてみましょう。
「部長さ~、課長が対応するから大丈夫だ、って。で間に合わなかったら俺から課長に言っておくから、というから、付き合って上げたのにさ。見てよ」
まだ、課長のイライラは治まりきっていない様子なのに、部長は暢気に新聞なんか読んでいます。課長に一言言う気配はありません。
明日、部長が誰を誘うのか……。自分に来ないことを祈るのみです。
まぁ、自分に声をかけてきたら、斉藤君を身代わりにしますが。