十二月二十七日
十二月二十七日
今日は会社の大掃除です。
いくつもの中小企業が入った雑居ビルの五階に事務所があります。
「よーし今日も頑張っちゃうぞー」
今日は、の間違いでしょ。
普段はろくに動きもしないのに、こういう身体を動かすときだけ張り切る筋肉男は困ります。
といいつつそういう男を利用しなければならない事情もあるのですが。
そう、ここに立ち並ぶロッカーの連合艦隊こそ、同じビルの二階に入っている、否、入っていた安田電気産業株式会社様の置き土産。
民事再生法の適用をうけることになったため、備品の一部を格安で我が社が引き取ることになりました。
二階から五階へ。エレベータなし。
オー シビーア!
こんな重い物を階段で持って上がるのかい? イッツ・クレイジー!
嘘です。本当はエレベータ付きのハイテクビルですので台車に乗せて楽々スイスイです。
「先輩、現実逃避してないでそっち持ってくださいよ」
嘘だと言ってよ、後輩君。ここはエレベータで運ぶべきだと思うがいかがかね?
アイキャントスピークイングリッシュ?
「無い物ねだりしても、エセ外人のふりしても、ここはエレベータのエの字もない築三十五年の雑居ビルですよ」
オーケー斉藤君。君の甲羅に乗せて運ぶことにしよう。頑張って階段を上ってね。
「僕、甲羅なんて無いですよ」
う、突然声をかけて来たのは営業部の齋藤君。
チッ
どこにでもいるような名前をペットにつけるものじゃないですね。
斉藤と齋藤。漢字は違っても読み方は一緒なので誤解を周りに与えかねません。
それはさておき齋藤君には頑張って運んでもらいましょう。
「え? 僕一人でですか?」
もちろんです。
齋藤君はウチの斉藤君の生まれ変わりに違い有りませんから、助けてもらったお礼は返すべきです。
まぁ、斉藤君はまだ生きてますけどね。