昙花引
はしがき
翼を失う花よ
闇月の影のみに低吟する
人知らずれの歌を唄っいる
無知な人々よ
世俗の欲望の中で待ていて
自分の手で血みどろな誓いを書いた
そして私はようやく
その物語の中で唯一の語手になった
昙花引。
「お待ちください、お嬢さん。すでに夜明けと言えるが、雪が降ったばかりだった。こんな細身に見えそうだから、私のマントを着てください。これは燕北で遊学した時に着たものだった、とても暖かいですよ。」
真冬の太陽は物柔らかで屈強であり、音無くしてこの静かな書斎を撫でている。徹夜の長話後青い服の娘さんの顔にはまだ倦色を見えない。彼女にとってこのような思い切りの談話は久しぶりだった。王生も同じく、こうして平生を共話すことは、まるで人生初めてのようであるが、また親しくて恰も昨日のようになる。
「では遠慮なくいただくよ。これで夕方に来た時、手が寒くて琴を弾けないことを避けるね。それに、こう見えても、あたしのことを弱い小娘にしないでね。何か燕北とか漠北とか、いろんな所へ遊歴したんだよ。」
「その自由の身は実に羨ましい。残念ながら僕の婚儀が近つくので、今後恐らく遠遊することが難しいだろう。それらの世間巡りは、お嬢さんから聞いてくれて本当に良かった。」
「あたしに何者かを聞きたくないの?」
「来たら我が友人である。お嬢さんと前世で見たような感じがするから、何者とか構わない。」
「ではまだ今夜だね。」
「約束した。」
残雪は風に吹き飛ばし、冬日に細やかな光を輝きして、散らぬ朝霧の中に紛れて、枝先の万花になった。この静かなる花海がいなければ、大地を俎板とし衆生を蹂躙する烈風は、どれほど寂しいになるだろう。
静寂な冬暁には鳥鳴が聞こえない。もし霜気か凝結の音を夢中していなければ、王生はきっとこの幻のメロディよりもっと軽い羽音を聞こえ得るでしょう。
冬は必ず物音ひとつしないと言ったのは誰でしょうか。その人は必ず王生のように、書斎後の油桐の木には枯れ枝に隠された穴があって、一匹の虚弱な青鳥が合羽を羽織って休憩していることを知らなかったはず。小さな鳥にも夢を見るたんて、誰にも想見できないでしょう。あの幻と真が入り替わって朧げな光景は、本当に実在するでしょうか。
【昙花引:昙花とは、日本において、「月下美人」と呼ばされ植物である。伝説上、3000年に一度咲き,咲いたらすぐしぼむという想像上の花です。故に、昙花一现と言う成語があり、珍貴な事物が現われてはすぐ消え去ると意味する。引は薬、薬酒などの飲み物である。小説に出る「青鳥」は、中国の伝説生物。中国の古典伝説では、青い鳥は千山万水で隔てられた恋人たちの思念を伝える神鳥です。青い鳥を見る限り、思う人もあなたを思っていることを示す。
青い:日本で、青はブルー色であるが、中国語には違って、シアン色であります。
漠北:ゴビ砂漠の北の地域。モンゴル国にあたる。】
*******
城塞は、黒雲に圧され
「将軍様、我が軍はもはや最後の一日しか支えできるんだ。」
「一日でも時間を稼げば、平民たちは一日も早く遠いまで逃げ得るんだ。もし関内へ入り中原に定着できれば、これ以上戈壁の砂風に晒されなくなるかもしれん。」
夜空は、燕脂の色にかたまり
「小さい青鳥よ、また来たわ。おまえのような小鳥は、安定な場所で暮らしてはずだが、何故このに戈壁来て苦しを堪えるんですか。俺についたこの間、日々低唱したから、おまえのことをよく覚えておくわ。明日から血の嵐を避けられないだろう、あの羽を血に汚されたくない、一刻も早くここから離れろう。」
朝日は、鎧に煌めく
「もう明けたよ、青鳥。昨夜はずっと唄っていて、負傷した兵士達は君の歌声を聞き、また一夜中安らかに眠ていた。君が離れたくないなら、共に死を迎えよう。」
浩々たる砂海は、境界も人の姿さえも見えず
無定川の辺り、死骸は程無く砂風に葬られた。まるで遠い昔から、人はここに殺し合ったことは一切も無いのようだ。
この兵士たちが持つべき人生、たとえ悲しいとか喜びとか、今は砂のように、冷たくて、無名で、瞬刻に吹き飛ばられ、時間の埃になった。かつて存在しなかったのように。
将軍には知り得ないだろうが。あの小さな青鳥が出した涙は霊識と混ぜられ、彼の胸の傷に垂らす、その魂の完全を守って往生に行った。
【関内:古代中国には北の少数民族の侵攻を防ぐため、長城を建ってました。一般的、長城以内は関内と呼ばれる。
中原:中華文化の発祥地である黄河中下流域にある平原のこと。
戈壁:モンゴル語で「沙漠、乾燥した土地、礫が広がる草原」などを意味し、日本では「ゴビ砂漠」で定着している。中国の内モンゴル自治区からモンゴルにかけて広がる地域。
臙脂色とは、黒みをおびた深く艶やかな紅色のことです。】
*******
「王公子、今日は元気?」
青という娘さんは、今日も月光を踏まえて軽やかに書斎に来た。
雪晴の夜、月光が書物上の文字を明らかに映し出した。澄んだ月光は、書斎前の垣根の影を積雪に映しいる。こうして世間問わずの二人が生じた。
「お嬢さんはなぜ夜になってから来なければならないのか。早くお茶を飲んで体を温めてください。これは昨夜の詞の為に作った曲です。別に難しくないから、お嬢さんならきっとすぐに習い得るでしょう。」王生は急いで琴譜を取り出した。この一日中、彼はずっと青さんにまた会おうとを望んでいた。
「よかったわね。君が琴を弾いて、あたしは歌ってみよう。」
「でも、ちゃんと声を抑えようね。夜更けですから、琴の音は前庭の親まで届かないように。」王生の書斎は庭の奥地にいるだが、今夜はさがかに静か過ぎる。
「分かった、分かったよ。貴方の婚約のお陰さまで、親様たちはすごく苦労していました。婚約のおかげで、ねえ。」
「これは…まあ…余儀ないことだろう。蘇氏のお嬢様は父上の目に入ったから、親に従えば良い。心を繋げるなんて求めてないが、唯さえお互い尊敬し、親に安心すれば何よりです。もし僕は選ぶ機会があれば、毎日家で琴を弾い曲を作るとか或いは名山を訪ねるとか、何ともこの家計生活より自適だろう。」
「君さあ、本当にあたしと共にこの世を巡りに行くべきよ。世間の広さは、胸にはどんな重荷が積んでも、すべて解消できる。」
「そうね、もし手を携え同遊し得れば……」
「ただし王公子、あたしは川西に行ったことがない。もっと教えてよ、あそこの山上はどうな光景であるか。」
「ハハハ、あの川西には、馬に乗って山を上るしかないよ。あれは数万年も溶けない氷山で、極めて寒いんだ。高処に登って遠望して、雲海が翻っていた。浩然たる快適な気分が胸に上がり、まるで浮世万般に笑って向かえ得る。まさに中原には見えない景色だった。ですがあれは数年前のことだ、雪山との別れが、もはや多年経たな。」
「無念だね、もし川西の異族も中原の伝説を信じれば良かった、あたしも見に行きたいのに。」
「やつらの伝説は中原のものより、もっと粋狂奇麗ですよ。」
「じゃ、早く教えて。」
「では、これを聞いて…」
……
月も彼等の話を静聴している。書斎に真白な月光が盈たす、まるで異境の如く、宏壮な雪山、芒洋たる海原、すっかり目の前に近く見えるのように。但し、この昔話を聞いているのは、そもそも尋常ではない存在も知れない。
*******
陰謀の地は、常に勇敢な心と切り離せない
「これら宗流門派の連中はいつも言葉を曖昧して、どうやら例の海上の销金窟を狙ったようだの。蝙蝠島の主は心深いやつだ、天下門派の連中はまだ甘すぎるんじゃ。」
「でもよ、あの噂の人物は目に掛かりたいものだが、各門派が心やすいで本門の不伝を差し出した理由は一体なんだろうな。」
「ちっちゃい青鳥よ、俺と一緒に乗り出せよう。俺様にはわかっているぞ、おまえは何も怖ずな小鳥だぜ。」
「なるほど、蝙蝠洞の中には光が全く無かった、これでいろんな人物が正体を知らずのままに取引をできたんだね。」
「蝙蝠公子はすでに各流派の武学伝承を貰えたわ……闇の中なら私には勝てない…ここからもう出ないだろう、青鳥よ…お前だけは、お前だけで、帰ってくれよ、ここに残れんぞ。」
「おい、青鳥よ……この技「天地同寿」を見ろう……一番すげえ武技だろう……」
「鳥にも…涙を出せるのね…付き添えてくれて、ありがとうよ」
【銷金窟:金を払って、裏取引をする、或いは思いのままに快楽を味わうことができ、隠密な場所。
天地同寿:自分のすぐ後ろにいる敵を刺すための技で、自分の腹に剣を通し、敵の腹に突き刺す。すごく残酷な技だから、その死を怖ずな精神を誇るため、天地同寿という美名を呼ばれた。】
*******
琴音は遠くに届けなくでもいい、油桐の木まで聞こえ得れば結構。月光はあまり明るくなくでもいい、お互いの目をはっきり照らせ得れば充分。
「王公子、昨日の曲についてが、どんな詞が相応しいなの?」
「曲を聴いて何か思い出したら、これを詞に入れよう。」
「例え、夏夜薫風とか、静和夜遊とか、夏夜星河とか、だね。」
「これだよ、これ。僕は正に夏夜の星河を思う時この曲を発想したのだ、青さんはやっぱり僕の知音だよ。」王生は青の目を見ている、あの瞳は千万年輝くしている星のように。
「では一緒に詞を書こう、そして『星河』という名を付けよう。」
「いいだろう。そういえば、あの星たちの物語を知ってるか。」静まり返るな夜には、王生は常に一人で雲海星河を巡っていた。
「いっぱい知ってるよ、よく一人で星を見たから。ほら、あれが参宿七だよ。あの星について教えてあげよ。」
「これから、一人で星を見るのはさせないよ、僕も同じ」王生はそう思っていたが、何も言い出せなかった。
……
広げ星河には、永遠に会えない星がある。参星は冬にしか見えないもので、而も商星は夏のみに見える。また会えると思っていた人々は、結局、この参と商と如くの宿命になった。ですが別れる時、彼らはまだ知らなかった。
*******
埠頭はいつも玉石混交であり、又も面白い所である。ここにいるため、一番予想外の気配を嗅ぐことができる。
男の何ヶ月も換えず靴、女の粗悪な頭油、生き魚の旨み、死ぬ魚の生臭い、海風の塩辛さ、店中の偽酒、海産物の雑煮、賭博屋の金臭い、遊女の安い脂粉、若僧の胸の汗、各国からの香料が奇妙な交雑、各種の貨物は長い時間に密封された腐る臭い。
それらのものは、好奇心が深い若者を次々引き付けていた。
「ハハハ、またおぬしかい。我らは出海の準備をしている。東海の極みに少昊の民があってと聞いた。または金烏の神木、岱與員嶠、度朔の桃木、さらに人間の万般真理を記した奇書がある。あの素晴らしくて壮大な景色は人間に似ず。万巻の書を読みながら、あとは万里の道を歩くべきだからの。」
「何か嵐とか難波とか、我輩には怯えないだぜ。外に乗り出せしないと、人生は槁木死灰とは何が違うの?」
「あれ、小鳥よ、おぬしもいくの?こんなに勇敢な奴とは見えなかっただわ。まさか、おぬしは精衛鳥から転じたものかよ、ハハハ…」
「雨は大きいだぞ。小鳥よ、ちゃんと我輩の腕の中でぐっすり眠れ。」
「ほら!あの魚、山の如くだわ!あれは舟吞みの魚だ!我等は少昊の国に来たんだ。」
「この目で伝説の物を見るのは、もう悔いはなし。朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり、ワハハハ」
命を失ってもあの世間絶景を探そう大胆な若者はいつもいる。または勇敢な友人と一緒に天上天下までに行く人もいる。人生には一体、危地を探ね行為は愚かなのか、それとも悠々自適の暮らし生活は愚かなのか。たぶん、知己と付き添ってさえれば、愚かであろうかどうか、誰が気にするでしょう。
【精衛鳥:古代中国の伝説上の鳥。夏をつかさどる炎帝の娘が東海におぼれ死んで化した、くちばしが白く、足の赤い鳥。西山の石をくわえてきては東海に落として海を埋めようとしたという。】
*******
「お座りんさい青さん、この曲を聞いてください。」
王生は言い切れないことを全部曲に入り込んだが、その中には、たぶん口に出せない思いもあるでしょう。
「ただ一日だけで、よくこんなに曲を作ったのね。」
「まだは断片だけです、まずは聞いてみて。気になる部分があれば一緒に完成しよう。」
美し音律が軽く奏でていて、月光はしだいに隠れる、誰にも時の流れを気ついていなかった。思う人はそばにいるのに、どうしてなぜ、満月から新月までのように日々痩せていろんだろう。青はまた、王生に言い切れない言葉がいっぱいある。王生も同様、言い出せない思いを胸に様々積んでいた。
「全部素敵と思うよ。こんなに素晴らしい考えは、一体どうやってが生じたのか。」青はこれらの譜を一枚づつ巡っている。曲からの些細な低語は頭の中に廻っている、それぞれの物語を話している。
「言いたい話が山ほどあったが、今まではずっと独りに思索して上達してだった。すごく辛いですよ。もし誰かがそばに居て、一緒に分け合えれば、これわ何よりのことだろう。」
「あたしよ、本気ですて、あたしはいるからね。」興奮したので、青の顔は少し赤くなった。一緒に音律を研究することができて、本当によかった。
「正に君のことを言ったんだよ。」王生は目を細めて、優しく笑っていた。
「では風鈴があるかな。早く窓辺に掛けて。これであたしがいなくても、風はあたしの思いを持ってきてよ。あたしを抱え込んだ風は、どんなに曲折があっても、いずれもあなたを抱きに来るよ。」
「いいだろう。たとえ青さんは何処にいても、風は僕に教えてくれる。」
たぶん、伝えなかった言葉が、いつまでたっても、風は彼らの代わりに覚えているんだろう。
月の下に、彼は風鈴を掛けて、冬籠りの夜には仲夏の序章を音絵しました。
雲の上で、彼女は夢から覚めたのよう、蝉羽より薄い紙に雲海星河を書きました。
*******
草芥ごときの命になれば幸いである。この乱世において、命が草芥さえも及ばないのは普通のことである。
乱世には、夢を追いかける人は生存できないと言う
この乱世こそが、夢を追いかける人は一番純粋な夢を描く
「この乱世にあって、生きるだけは何よりだ。メシを求めさえも難しい故、この琴を誰も大切しなかったのは当然だ。もちろん琴音も、気になる人がいないだろう。」
「けど、ちっさい青鳥よ。見ておる、この万里まで延びる層雲、千山まで織る暮雪、琴音以外、これを描く言葉はないんだ。世間には、飽食以上に努めるべきことがあるはず。」
「青鳥よ、知ってるかい、この人間、とても素晴らしいぞ。柳が青衫を撫でる江南、無限で雄大な戈壁、峻険で陸離な黔貴、気象万千の東海、全部琴音でこれらの景色を描きたい。だけど今国は破れ、餓死者が野に満ちている。私自身にも落ちぶれていて、浮苹のように定まれない、各地に流離う。この世は今殺戮の禍が横行し、私は報国の将軍剣を支えぬ、救世の相国筆も持っていなかった。こうして人間のすべてをこの琴音に記録するしかいない。早くこの山河散を完成しないと、私はおそらく……これは私ができた唯一の、この人間の美しいさを残すことだから。」
「将に心事を瑤琴に付さんと欲すれども……いつも伯牙子期が見つからないと思っている私が陳腐だった。青鳥よ、あなたこそ私の知音ではないですか。私と共に千山万水を過ごしたあなたは、誰よりも私の琴音を理解できるだろう。」
「ちっさい青鳥よ、これわ最後の食糧だ、あなたにくれよ…この人間はすでに煉獄に近い、あなたは変わらずに澄んで美しい。遥かに燈前の雨を同聴ことを記する、転じて雪後の霽を共赴ことを憶える。…あなたは私と一緒に死ぬべきではない、ありがとう…そばに居てて…泣くなよ。」
【江南:古称は「呉の地」であり、古から人材が多く出る。
将に心事を瑤琴に付さんと欲すれども:出典は宋詞『小重山』南宋岳飛。自分の心の中に考えたことを琴に付す、曲によって想いを伝える。
伯牙子期:共に中国古代の人にして、伯牙は弾琴の妙手、子期は善く之を聴けるものなり。
遥かに燈前の雨を同聴ことを記する、転じて雪後の霽を共赴ことを覚える:漢文で、遥记同听灯前雨,转忆共赴雪后霁。遥か昔、二人は共に燈のそばに居て雨音を聞いたことをまだ憶えている、そして記憶を一転して、又は雪後の晴れを浴びることを思い出した。】
*******
「青さん、今日は遅かったね。」王生はこの風のような娘さんがいつか約束を破れことを恐れっているから、毎日早く夜になってそして青さんが早く来てくれることを心待ちにしている。
「すまないね、あたしはこれを探しに行ったんだ。ほら、これ…」青は、古いそうな竹簡を取り出した。
「これは…琴の譜、珍しい物ですね。これらの曲は聴いていないものばかりだった。」
これらの譜は、当然世間には伝わっていないものばかりだ。しかし、どんな紆余曲折があっても、譜を世に伝えるという願望を実現する人は必ずいる。その曲は、怨むが如く慕ふが如く、何年を経ても消えない想いが軽くて話せている。まるでこの月光のように、世間の滄海桑田によって変わらず、遠い昔からずっと澄んで明るくて、そして今はまた王生に照らしている。
ですが、この月光よりもっと執拗で、もっと優しくて、もっと堅固なものがある。頑丈的に時の流れを越えて、時間の埃を吹き飛ばす、やがて彼女が向かう所へ行く。
「ほら、この『山河散』、まさに千の気相であり、または万の心耐えを感じた。そしてこの『旧夢令』、世間に対しての美し望みを話す尽くした。大変えらいものだ。一体どうの時代の古物ものだろう。」王生はひたすら譜をめくってばかりので、卓上に積まれた書簡に気をつけなかった。
「あれ、これはなにものですか。」この琉金な赤帖は本来赤くて眩しいものだが、今は月光に照らされて清冷となり、喜びな気配が一切もなかった。「これは...婚儀の納品書だよ。」複雑な儀式は、唯さえ「完璧」という名目を付けられた人生を祈るの存在。但し青はずっと、「本心」というのは儀式に拘り必要がないと思っていた。「本心」は幸せをはたせないかもしれないが、後悔もしない。
「あ、これ、ついここに置いたんだ。君に見られたくないのに。」
「まあ、ほとんど得やすいものばかり。だがこの碧血の赤昙とは何ものですか。聞いたことがないですね。」
「あの蘇氏は香料を作る名門だから、多分なにか貴重な香料であろう。ですが昙花はとても珍しいもので、保存も難しい、聞いたこともない碧血の赤昙はなおさらだ。僕の庭には昙花を植えているが、こんな寒い冬にはたとえ玉昙もないだろう。」
「王公子、君は本気で成婚をしたいなの?」
「ただ親に安心するのため。」
「それで、蘇氏のお嬢様は無念そうになるでは?」
「それはそうだけど、お互い尊敬できれば充分だと思う。」
「君は、自分が欲しく人生を過ごしたいですか。」青はずっと聞きたいが、言い出すことも怯えている。彼女は、王生が己の思ような少年かどうかを知るのは怯えている。
「欲しいです!但だ知己と人間を共に攬ることを求める。青さん、もしこの僕は自由の身であれば、僕と一緒にこの人間を観に行こうか。」
王生は熱い目線で青を見ている。彼はその答えを知りたいが、その答えを恐れている。
「我は君與相知りと欲す、長命絶え衰ふること無からん。」
その気持ち、青は何百、何千回もう成り続けった。
但だ知己と人間を共に攬ることを求める。これはたぶん、人間のすべての美の具像だろう。たとえ須弥蓬莱だろうか、あるいは忘川黄泉だろうか、人生人生全ての選択において、彼女は常に背くせずに、彼と共に居て、そしれ夢の終わる時を迎う。天地は常に不仁、至美の長存を許さない。ただ一瞬把握すれば、ありがたいことであろう。上邪のその一瞬、一生一番永遠に近い時だろう。既にこの永遠を持たせれば、これからの人生には、怯えるものはいないはず。
【我は君與相知りと欲す、長命絶え衰ふること無からん:出典は「詩経 上邪」。我欲与君相知,长命无绝衰。私は君と知り合って、死ぬまで続ける。
須弥:古代仏教の世界観の中で中心にそびえる聖なる山である。
蓬萊:古代中国で東の海上(海中)にある仙人が住むといわれていた仙境の一つ。道教の流れを汲む神仙思想のなかで説かれるものである。
上邪:神様へ誓いという意味である。】
*******
済生な盛名が響いているので、薬師は一番辺鄙な秘境に居ても、医を求める人が尋ねに来た。
「乱世に流離って、衆生は皆苦してる。私は既に薬学を幾ら習得し、少々懸壺の志を持たせ、門庭を広く開け、救済を多く行えば更に良かろう。」
ですが、ただ独りの若い薬師は、救え得る人は有限である。それに、とある人が求めているのは、薬ではなく、どこでも取り得ないものだろう。
「うーん……今日はある少年から、体の病気が治すが、心の病気が治せないと聞いた。彼は私にそう問うた、この世には人を生きている希望を持たせる薬があるかどうか。青鳥よ、色々遊歴したお前なら知っているか。」
「私は口下手だから、人を慰めることができぬ。ですが、何かあっても、生きているこそ希望がある事は分かっていろんです。」
「あの少年の言うことは正しだろうか。」
「西辺には王母の山があると聞いた、そこに沃ノ国がいる。数えない霊薬が生きて、仙人からの導くも受け得る。私はそこを探す訪ねに行きたい、道中で病気を治す人を救う。青鳥よ、一緒に行けよう。」
高山大河、荊棘泥沼、真心を持つ人を止めるものがない。しかし、凡骨な人間は、力を尽き果てた日がある。もともと希望というものは、千里を超えて、探す必要がないだろう。だって、あれは薬師の胸の中に存在するためです。
「青鳥よ、君は道中で歌っていて、霊薬のように病人を慰め、私にも励ましてくれた。あの落ちぶれた少年は、君の歌を聞いて郷里の月光を見たのようだと言った…私も見えたそうですね…この王母の山、さすがに探ね得ないだろう…私も故郷に帰れない…泣かないで…青山のいたるところに忠節の骨が埋められている…あなたがそばにいると…私は、孤独ではあるまい。」
【王母:中国で古くから信仰された、すべての女仙を支配する最上位の女神である。】
*******
「今夜は、すごく雪が降りましたね。青さん、お疲れ様でした。」王生はこのような大雪を何年も見えなかった。この大雪は、何かを示しているのではないか。
「そうね、大地は真白で荒はてる。」
「青さん、なぜこんなに落ち込んでいる?」
「なんでもないわ。ただ急に思い出したの、雲が散る音も、雨がおちる音も、風が吹く音も、もしこれらの声をもう聞かなければ、どんなに残念なことになるだろう。」青は目を閉じた。彼女がかつて聞いた天地間の万物の音は、年輪のように心の間に流れ回して、細かくて、その時の話を話しているようだ。
「そうね、昔の僕なら、独りで風花雪月を巡った時、寂しいさを感じていなかった。しかし今は…君と共に人間風月を攬れえないと、例え瑶池仙境、龙肝凤髓でも意味がない。」
「本当にそう思うのか」青は本気で聞いた。
「君さえいれば、何も言わないでも、静かに雪が落ちる音を聴いているのは、心が安いですよ。」
静かに雪を聞いて。この天地間は、こんな静かな一隅を許すことができて本当によかった。まるで蝉が殻を抜けたのような、塵世外の小天地の中で独り清めりして、静かで、雪音を聴いて。
「ほら、聞いて、梅の花が咲いたのよ」
「そうだね。あの梅は、昨年十七本の花を咲いた。」
青の心が、すごく動揺した。独自で梅の花を数えていた彼女なら、その寂さをよく分かっていた。
「これからは、君一人に梅が数えることをもうさせないよ。」
王生は青の手を挽いて、「これから、一緒に天下の梅を見廻にしよう。」
これは、一つの約束にしようか。
*******
無数の夢が交錯し、如露亦如電。
薬師、琴師、将軍、遊侠、書生、浪子、名士、道長、彼は輪廻の中で渦巻き中の葉のように往復転生して、あるいは熱血の嵐となり、あるいは筆舌に尽くし難い。
或いは戯夢のごとき人生を経て、野良仙人の如く自由である、草芥の如く無名である、忠臣の如く心を尽くす、謀士の如く野望を叶う。
誰になろうと、何になろうと、青鳥はずっと彼のそばに居て。
「千山万水、あなたはどこに居ても、必ず出会うでしょう。私ならできる。」
青は呪われた鳥かもしれない、永遠に恋の炎に燃えさせ。
彼女は彼を恨んでいた、そして彼を深く愛していた。
毎回、彼女は希望捨てて、追いかけることを放棄したい時に、あの因縁の輪が体を潰して、もう一度予知できなくて、変えることもできない運命を編んでことをいつも見える。
彼女は運命を恐れながらも、望むを持って両手を広げて運命を抱きしめた。
幸福が存在するわけではない
この変えれない運命から、彼女は、愛することを辞めない、追いかけることを止まらない自分は、こんなに、永遠までに近付いている。
愛の様に如く
永遠に止まれない
追いかける勇気は、答えよりもっと重要なものだある。
彼女はこんなに頑固で、自分の信念によって、時空の垣根を越えて来た。たとえどれだけの孤独、及び苦し時間を耐えなければならなくても、彼女は依然として愛する気持ちを騒がして、追いかける勇気を解放していた。
たとえすべてを失うでも、輪廻の苦しみでも、理解されないでも、千百年を経ても
彼女がこれからも追いかける
振り返らない
前にしか行かない
【如露亦如電:仏語 出典は「金剛般若経」 。露のようにはかなく、電光のように一瞬の間に消え去るの意で、すべて因縁によって生じたものは実体がなく空であることをたとえた語。】
*******
城外、白帝祠
「青鳥よ、汝は千百年を超えてずっと追いかけている、何か悟ることがあるのでは?」
「崇明様、私が何を求めているのか明らかにした。」
「ならば良い、良かろう。あなたのその澄む心は、この人間の世界に経っても、一度も尘に被ったことがなく。人はいつも愚かなものだが、あなたこそは、純粋を境界を超えた。全ての修業を尽くして人の形になって、無駄なことではないだろう。」
「崇明様、七日の期限はきた。この私が消え去る前に、何どぞ昙花引を賜ってください。」
「これを人間に使うと、及び神使いに使うとの効果は違うのじゃ。汝は決めたのか。」
「私は、覚悟した、怯えがないし、後悔もしない。」
(すべての鳥を支配する神である。)
【白帝:中国神話の中の五天帝の一つ。西方をつかさどる神。また、秋をつかさどる天帝。秋の神。
崇明:すべての鳥を支配する神である。】
「青さん、来たよね!よかった。今日は早いだね。」王生は、微かに不安な感覚が生まれた。何か命をかけても守りたいものがあるようだが、どう守ろうかが分からなかった。
「そうよ、今日は一緒に夕日を見たいです。」
「僕は昔四海には夕陽を対する人が無いと思ったのに。」
「この言葉、早すぎるわ」青は笑った。
「そうだよね。人生無常、誰かがはっきりと言えるだろう。君がいるとよかった。」
夕陽はいつも短くて、一炊の夢まで及ばない。ですがただ一瞬だけで、美しいさが足りないとは言えないのだろう。この一瞬だけの美しいさはどこの誰の悲しい人生を支えることができるだろう。
「青さん、見るう。この庭は今は荒れているが、春の時には、私が育った花が満開になってるよ。今、この庭に落ちた雪は、その時、花になるでしょうか。」
「花になる、ね…しかし…この世に散らぬ花はない…でもね、過ぎ去らない冬もない。ただ一瞬で咲いてでも、残念なことではないでしょう。それぞれの瞬間こそが、永遠に組み合わせた。」
「そうだね。永遠は、たくさんの瞬間によって組み合わせたものだからね。君がいれば、私は何も怯えないよ。」
春が来たらいいんだ。
春はきっと来る、花もきっと咲くでしょう。
「早くこれらの詞を見て。『星河』、『見破れ』、『一念』、『十年期』、『少年遊び』、全部完成したよ。最後のこれ、『折柳枕上書』、すごく気になるわ、早く見て。」青はこの詞を一枚ずつ回って、間に合ったよかった。
「『折柳枕上書』…これは離別の詞ですが、中には別れの苦はなし、あるのは共にいた時の優しさのみ…これは、僕たちのことではないか。」
「君以外また他の人がいるですか。お前さ、誇りを感じなさい。」青は目を細めて笑った。
「ハハハ、とても誇りますよ。」
「でも、曲のことは頼むわ。」
「あれ、一緒に作れないのか。」王生はぼんやりした。
「あたし…恐らく残り時間はないよ。」
「そんな、これから朝々暮々、時間はいくつもあるはず。」
「朝々暮々…あたしたちは、又は朝々暮々に豈在るでしょうか。君は、縁を信じるでしょうか。」
「信じています。この世には、全ての出会うこと、別れることは、縁によって定めただから。」彼は信じている、彼女と会ったその日から、宿縁の意味を分かってきた。
「じゃ、信じてくれますか。前世、前々世、前前前世、あたしたちは出会うことがあった。」
「そこ言葉、君の前世から聞いていたよ。そして聴いて、後世、後後世、後後後世には、僕たちはまた知己になるだろう。」王生は笑って言って。彼もこれを深く信じていた。
「それなら手を出してくれ。後世の君はこの約束を誤魔化せないように書付を立てておくよ。」
王生は手を伸ばして、筆と墨を差し出した。「どうやって立てるの。」
「あたしたちは互いに相手の名前を手に書いて。掌紋は人の運命が結ぶことという話を聞いたから。ほら、墨は掌紋に沿って沼いた。これで相手の命の糸の中に、自分の名前が溶け込んでいた。こうしてあたしたちの宿命が付き纏うことになった。運命が纏い、生々世々、永遠に忘れない。」そう言って、青は自分の名前を大きくて、王生の左掌に書いた。
王生は自分の手を見ていて、心はすごく騒ぎして、感動の気持ちが胸の中に上る。何かとんでも無いことをしたように、もし声を荒らげば、すべてが夢のように覚めるかもしれない。彼は自分の名前を青の右手に書いた。「よし。運命が纏い、生々世々、永遠に忘れずに。今世から、あなたの手を引いて、もう離せない。」
「しかし私は今世、君を見つけるのが遅すぎた。」
「なんでそう言うの。僕たち相携るの日々はこれからだよ。夜が開けば親に申しあげに行く。どんな汚名を受けても怖くない。君のような知己を得るのは人生一番な幸せなことだ。これから、一緒に世間を巡ってにしよう。これは僕の選択であり、僕たちの選択でもある、後悔はしないよ。」
「後悔はしないと聞いて、あたしはには充分だ。」
夜空の参星は、千万年以来ずっと静かで明るいに、人間の離合を照らしている。
「王郞、この酒を飲んでみて。夜は寒そう、体を温めて。」
「これはなんのを酒ですか。とても爽やかな匂いですね。」
「昙花引よ、これは、昙花引です。」
月は聞きました、鳥が徹夜で歌っていた。
日中に近いまで、机に伏せった王生は目が覚めた。日光に照らせ、連日の雪を溶かした、まるで一度も雪が降ったことがないようになった。雪が降ったばかりなのに、そう簡単に忘れられた。それでは雪を踏んで来た人は、この雪よりもっと速くに忘れさせたかどうか。
朝日の下で油桐の木は枯れてしまったが、この冬には誰も気にしない。ただ桐の下にあるものが、太陽の光よりもっと輝くして、王生の目を光らせている。
「あれ、これは昙花だと。それに鮮血のように真赤くて、人間に咲いた花とは見えない。こんな冬で昙花が咲いたなんで、奇景だわ。この燃えそうな赤色、赤血の昙に間違いない。こんなに珍しいものは自家の庭にいるなんで、何処でも見つかれない物はこんなに得やすいのは本当に驚いた。早く取れないと。これは神様が送ったの結納品だ、僕の婚姻の順調を守りのため。なんで油桐の枯れ枝にはたくさん小鳥が立っているの?きっと何かいいことがあるようだ。早く親たちに伝えろ。」
鳥たちの歌は本当に美しいものだ。
だって、小鳥たちが知っている、この世には赤血の昙なんかがない。
あるのは痴心な小鳥のみ、昙花の根の中で最も尖った棘を、心臓を貫いて、全ての血を流れ尽くして、やっと精誠の血で花を育つだし、冬に咲いた。
そして小鳥たちはまだして知る、あの痴心な鳥は、自分の形が消えても昙花引を飲んことをしたくない。たとえそうしたら、霊識を尽くして命だけを守って、そして無知無覚であり普通な鳥になる。ですが人間は違って、昙花引を飲んだら、この酒を渡す人のことを忘れただけだ。
噂によって、あの小鳥たちは、『星河』という曲を世に流布した。その曲を聞いた人は、必ず一生離れない人と会え得る。あなたは、聞いたことがありますか。