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プロローグ

 今日もカーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で物語を考える。

 ずっと同じ景色を見続けていると周りと一体化したかのように、今は昼なのか夜なのかすらわからなくなる。

 周囲の状況を探ろうとずっと鳴り響いていたカタカタとした音を止め、目を瞑り窓の外にじっと耳を澄ます。

 コツンコツンと窓をたたく音が聞こえる。きっと今は雨が降っているのだろう。もう最後に靴を履いたのはいつなのかも思い出せない。

 だからあの日以来、ずっと玄関には彼女へ渡そうとしたプレゼントが置きっぱなしになっている。


「私が幸せになれる物語を書いてくれませんか。」

 あの日、桜満開の中で佇む彼女が放った言葉だ。あの一瞬の風景と言葉は今でも脳に深く刻まれ忘れられない。

 僕はその日交わした約束をきっかけに彼女との思い出を物語にしている。そう、彼女が幸せなエンドロールを迎えられるように。


 だけど、彼女の物語は大事なエンドロール手前でずっと止まったままだ。

 どれだけキーボードをたたこうとも彼女の物語は少し進んでは後退する。

 それは書いても書いてもどうしたら彼女が幸せになれるのかわからなくないからだ。

 このままではバットエンドにもハッピーエンドにもならない小説が出来上がってしまうだろう。

 こんな物語を見て彼女は喜んでくれるのだろうか。


 そうして行き詰った僕は進まない物語を無理やり進めたくて彼女へメールを送る。

 To .咲葵さん

 物語が進みません。

 この物語のエンディングはどこですか。僕はどうやってあなたを幸せにしたらいいですか。

 僕に続きを教えてください。


 だけど何度メールを送ったとしても受信ボックスに反応はない。

 反応があるのは送信件数が26から27と表示される程度だ。

 彼女との思い出だけを物語にしてきた僕には行きつく先がわからない。

 だからどうか教えてほしい。あなたはどう終わりを迎えたいんですか。理想のハッピーエンドは何ですか。どうか…どうか…

 僕がどれだけそう願ったとしても彼女から続きは教えてもらえそうにない。


 それはそうだ、物語の針を進めてくれる人はもう、いないのだから。

初校読んでいただきありがとうございます。

コメントの記載方法はわかりませんが、ダメ出しでも文句でもいただけると嬉しいです。

2日に1話のペースで更新予定ですので、気になった方はすみませんがお待ちください。


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