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小さな陰謀といつものお客 3




燃え盛る火の向こうにいる黒ボラボラが、ゆらりと体を揺らした。


その動き一つで、ぞくりとするような歪みが見えることがあるが、まさにそのような動きだった。

ネアは、義兄な魔物と使い魔な魔物が合流した後だったことに感謝しつつ、その悍ましさに眉を寄せる。




「高位の方がいらっしゃったということはお任せ出来るのかとも思いましたが、………あれは、そちらの系譜とはなりませんでしたね」 



そう呟いたのは、アイザック扮する痩せぎすの男である。

名前は知らないが、アルビクロムでは蛇の紋章を持つようだ。

こちらは初めて聞く紋章だが、諜報部の軍人となれば公にされている紋章ではないのかもしれない。



(そして、ボラボラなのに、アルテアさんの系譜のではない………?)



なぜだろうと首を傾げたネアに、アルテアがこちらを見たので思わず尋ねてしまう。

これだけ白っぽい魔物が現れたのに、黒ボラボラはまだ先程の位置から動かずに、ゆらゆらと体を揺らしているばかり。

ただ、悪変したばかりの生き物は暫くの間意識が混濁しており、活動を活性化させるのはその混乱が落ちついてからだと聞いたことがあるので、そのような猶予なのかもしれない。



「あのボラボラそっくりさんは、アルテアさんの系譜のものではないのですか?」

「いや。森の系譜の民だろうな。あの界隈は、最初の大型ボラボラを出したこともあってボラボラに転じ易い」

「………ボラボラにしか見えないので、少し混乱してきました。成り損ないと言われていたのは、それでなのです?」

「よーし。お兄ちゃんが説明してあげるよ。ボラボラになるとアルテアの系譜で、ボラボラじゃない頃は違うんだ。えーと、ボラボラしかアルテアの系譜じゃない?」

「まぁ。………アルテアさんの顔色が冴えません」

「……………放っておけ」

「系譜の特定の氏族が迫害されて、ボラボラになった訳じゃないんだよね。怨嗟の過程で本来の姿を捨ててボラボラになることを選ぶんだけど、それが完了した段階で選択の系譜になるみたいだよ。あと、怨嗟の分岐でボラボラにならないっていう選択をして選択の系譜に入る場合も僅かだけどあるみたいだね」



(ああそうか。そのような意味での顛末なのだわ)



「そしてあちらの個体は、ボラボラにも、ボラボラにならなかった存在にも、なりきれていないのですね…………?」

「うん。今回は、ボラボラになろうとして祟りものが勝ったって感じだね。ボラボラって、本来は祟りものと同じ経緯で転じるけど、復讐よりも隔絶を望んだ生き物の顛末なんだ。だから、魔術的には祟りものの一種にしてもいいんだけど、顛末がボラボラになった祟りものの亜種ってされることが多いかな」

「ふむ。憎しみに走らずに、過去を捨てて隔絶された場所でひっそりと己の趣味に生きることを選ぶと、アルテアさんの系譜なボラボラになるのです?」


ネアの言葉に、アルテアが顔を顰めた。

ここには選択の魔物が苦手なボラボラはいないが、ボラボラそっくりの生き物はいる。



「おかしいだろうが。なんであれなんだよ」

「そんなアルテアさんが、系譜の王様なのですよ?」

「やめろ」

「アルテアとしては、結局どこに結んでも複雑なんだよね。………選択の顛末で、選択肢がないところに辿り着いてあれだもんなぁ。そういう末路を辿ること自体が嫌いでしょ。………まぁ、僕はそこまで嫌いじゃないけど」

「そうか。お前にくれてやる」

「わーお。それは無理じゃないかなぁ……」

「とにかく、成り損ないとなった以上は俺の領域じゃない。こいつに自分がどうにかすると言った以上は、お前が責任を持てよ」

「おやおや。困りましたね」

「お前の部下とは、縁がありそうだろ」



うんざりした様子のアルテアにそう言われて、アイザックは肩を竦めている。


はたはたと炎の巻き上げる風に軍服の裾を揺らし、シモンは困惑を滲ませてそのやり取りを見ていたが、どうも、自分の上官が欲望の魔物だということを知らない風の困惑ではないような気がした。



(…………でも、そうすると何かがおかしいわ)



ふと、ネアはそんなことを思った。

だがすぐに、何に違和感を覚えたのかが分からなくなってしまう。



黒ボラボラもどきの対処を任されたアイザックはシモンと短く言葉を交わし、胸ポケットから黒い手帳のようなものを取り出している。


直前までは困り果てているように見えたが、その手帳の影でふっと愉快そうに歪んだ微笑みを浮かべた口元を見てしまい、ネアは、欲望の魔物が珍しい術式を好むことを思い出した。


ボラボラのなり損ないがその範疇なのかはさて置き、少なくとも現在のこの展開は、煩わしさよりも興味深さの方が勝っているようだ。



その表情を見て、また考える。



「………むぅ」

「どうした?」

「何かが引っ掛かったのですが、何が気になったのかが良くわかりません」

「……………シルハーンに、いつもと違うと話しただろう?」

「ええ。今回は、上手く危機回避が出来ませんでした」

「他の可能性も排除は出来ないが、あの成り損ないの障りに巻き込まれた可能性がある。………その上でお前が違和感を覚えるのであれば、絶対に俺から離れるなよ」


背中に添えられた手に僅かに力が入り、ネアは小さく息を詰めた。


「それは、………良くないことなのでしょうか?」

「俺の領域に転ばずとも、それを望んで仕損じたことで、選択の喪失の障りが出ているからな。お前のような選択の領域でこそ引きの強い人間には、影響が大きい。選択が揺らぐと、その利点が反転するぞ」

「アルテアさんに、ぎゅっとしていますね………」



(選択の喪失…………)



それは、選べなくなったり、選び損ねたりするのだろうか。


アルテアの側にいれば回避出来るのかもしれないが、ネアは、自分の思考や意志に影響があるのだと思うと怖くなる。

魔術的な影響を直接紐解けないので、なんだか分からないが制限があるという認識なのだ。



(………私は、他にもまだ、何かを見落としていないだろうか)



黒ボラボラもどきへの対処はアイザックが行うようだし、今はもうしっかりとアルテアが持ち上げてくれているので、考え事に集中していても良さそうだと考え、ネアは記憶を辿った。



(きらきら光る糸に呼び落とされて、……いと…………)



そしてネアは、そこで躓いた。


慌ててアルテアの耳元に唇を寄せると、ぎくりとしたようにこちらを見てから、優秀な使い魔はすぐに音の壁的なものを立ち上げてくれたようだ。

話し始めていいぞと、短く頷いてくれる。



「アルテアさん。私がこちらに落とされる前に、きらきら光る糸を見たのです。願いの糸のようなものであれば、それはボラボラ特有のものではないのでしょうか?」

「お前を召喚したのは、シモンだな」

「はい。因みに、黒ボラボラもどきとなった方は、同郷の出だそうです」

「あいつは、ボラボラにならないという選択を済ませた上での選択の系譜に入った個体だ。元はあの成り損ないと同じ種族なのだろうが、選択そのものを強いられていなかった個体と、済ませたがボラボラにはならなかった個体との違いだな」

「という事は、ボラボラにならなくても、きらきら糸は使えるのです?」



てっきり、ボラボラにならなかったシモンがあの糸を使ったことに違和感の原因があるのだと考えていたネアは、そんなアルテアの返答を聞いて目を瞬いた。


視線の端では手袋をはめ直したアイザックが、黒ボラボラの鎮圧に動き出しており、そちらはノアが様子を見ていてくれるようだ。



「ああ。ボラボラとなるかどうかはさて置き、その経緯に挟む犠牲の魔術から取得する固有魔術の一つだからな。…………お前が気になるのは、シモンか?」

「………今の説明を聞くと問題がなさそうですので、ただ混乱しているだけかもしれません」



(そうか。シモンさんは、既に選択を済ませた人だったのだわ。だからこそ、ボラボラを輩出しやすい一族という表現ではなく、ボラボラと祖を同じくしているという表現だったんだ………)



この口調だと、アルテアはシモンを知っているのだろう。

ギルラーゼ大尉の攻撃からは守ってくれたし、悪い人ではなさそうだ。

加えてアイザックの部下であれば、そちらの面でも手綱がかけられているとも言える。


ただ、問題なのは、アイザックがそもそも決して味方ではないということだろう。

そちらとは、元々、商会の代表と仕入れ元兼顧客という関係でしかない。

だから不安要素が残るのかなとも思うのだが、それでも何かがしっくりとこなかった。



(今日は、間違って呼び落とされてボラボラと縁深いシモンさんと出会って、ギルラーゼ大尉に襲撃されて、このボラボラ事故が起こって、アイザックさんが現れて、なんだかずっとやることなすことが後手に回ってしまっていて……………)



どうしても違和感が拭えずにここまでの経緯をもう一度辿り直したネアは、おやっと目を瞠った。

アルテアの視線を感じながら、よく考えるとあんまりな流れに目を凝らす。



(……………だとしても、不確定要素ばかりだった筈なのに、都合が良過ぎるくらいに綺麗な展開だわ。だから私は、その集合点となっているシモンさんを、ハンマーで排除してしまおうとしたのかもしれない)



あの時になぜそうするべきだと思ったのかが、今はもうよく分からない。

それこそが、選択の障りという弊害なのだろうか。




「ネア?」

「……………この状況が揃ったこと自体が、都合が良過ぎるような気がしてしまいます。………ギルラーゼ大尉は中立派ですよね?なぜ、この反ウィーム派の方々が多い施設に、偶然いらっしゃったのでしょう。蛇の紋章さんを見た時に驚いた風だったので、手を組んでおられたこともなく、最初にシモンさんが上司だと騙っていたフェルディアート卿と連携している様子もありません。それなのに、全ての突発的な事故や事件が、こんなに綺麗に整合性が取れた着地になっています」

「………ほお。あの女は、最初からシモンと共にいた訳ではないんだな?」

「ええ。口裏を合わせていたのだとすれば、なぜ私にそれを隠さなければならなかったのかが疑問です。だとすれば、どこかが偶然ではなく必然だからこそ、この状況が揃ったのではありませんか?」



魔術の叡智や仕組みを理解しきれていないネアの手元には、当然、全て推理の為のカードがない。

だから、無責任に違和感を拾い上げるだけだ。

とは言えこちらには優秀な使い魔がいて、頼もしい義兄だっている。


そしてそんな仲間達は、こちらの疑問に根気よく耳を傾けてくれるのが、こんな時はなんて頼もしいのだろう。



「確かに、グラーゼラが……ビルラーゼが、今回のような騒ぎを起こしたことには、俺も違和感がある。…………お前がここに呼び落とされたことが必然で、尚且つそれを成果としないのであれば、この状況からすると目的は俺だろうな。ノアベルトを招き入れる材料がない」

「私も、そう思っていました。ノアに共有しておけます?」

「ああ。こちらに来る前に、場を繋いである」



ふっと冷ややかな微笑みを浮かべたアルテアは、既に何らかの答えを得たのだろうか。

ネアは、鮮やかな赤紫色の瞳が足元に向けられ、すぐに戻されるのを見て、きっとそこに何かの答えがあるのだろうなと考えた。

何しろ、先程からノアも、時折足元を見て何かを考えこむ様子を見せているのだ。


未だに火の手が衰えていない場所は少し離れてはいるが、爆発の後に散らばった瓦礫が燃え続けて風を孕み、大きく揺れる炎の影がこちらにも伸びている。

引き続き誰も脱出を促さないとなると、ここにいてもひとまずは安全なのか、それとも今は出られないのか。



(………誰かが今回の件を仕組んだとして、ここにアルテアさんを招き入れたかった理由はどんなものなのだろう)



恐らく、ディノが伴侶の保護をアルテアに任せてくれたのは、ネアとの使い魔の契約があり、既に足場を持っているアルビクロムでもあるからだろう。



(そんなことくらい、アイザックさんは知っていた筈だわ。こんな風にボラボラもどきが現れたのが偶然だとしても……………いや、アイザックさんは確かに笑っていた)



不確定な要素の上でも、愉快だと思えばあの魔物は笑いそうだが、全てが計画通りなのだとしたら、裏で糸を引けるのは、こちらの動きを読めるアイザックだけだ。


そうなってくると、ネアが、ビルラーゼの有用性を見越して彼女への反撃を収めることは想定出来たかもしれない。

ビルラーゼの配置も、誰かにとっては計画の内である可能性が出てきた。



しかし、そこまでを考えても何かが腑に落ちない。



アイザックをどこかに配置しようとしても、欲望の魔物の駒が置けるのはこの最終局面だけ。

どうしても、あの魔物が、他の場面には馴染まないのだ。




「ああ、成る程ね。僕の妹は流石だなぁ!」



だが、ここでネアの拙い推理を飛び越えて答えを出してくれたのは、ノアだった。

義兄は振り返らなかったので、にっこりと微笑んだ横顔には炎の影が落ち、ネアは今更ながらにこの魔物が炎を苦手にしていたのだと気付いてひやりとした。


だが、その横顔と青紫色の瞳に煌めくのは魔物らしい美しさばかりで、少しも脆弱さも窺えない。



「ボラボラになる、ならないの分岐あたりの顛末はその当時に集めただろうし、あの祟りものは本来の結びを失って術式が崩れた例だから、そういうのは嫌いだと思うんだよね。………となると、アイザックが好きそうなのは、選択の資質の再付与で、あの壊れた魔術の顛末の回復が出来るかどうか、かな」


ぱちぱちと燃える火の音の中、ノアは朗らかにそう告げる。

黒い軍服の裾を揺らしてゆっくりと振り返った痩せぎすの男が、暗く静かな瞳をこちらに向けた。


「……………やれやれ、あなたは本当に厄介だ」

「君の好きなものは、その多くが僕の領域にあるからね。さて、となるとこちらは、君が魔術式の回収なんかを優先している間に、僕の妹を釣り餌にされたってことなんだけど?」

「おや。それは事故だった筈ですが。とは言え、部下の不手際ですのでお詫びはいたしましょう。シモンはアルテア様の系譜におりますので、ネア様とも、魔術が結びやすかったのでしょうね」

「それだけで済ませられるかっていうと………って、えええ?!ネア?!」



ざざんと、壊れて崩れるものが地面に落ちる音がした。


魔物達とシモンがはっとしたようにこちらを見た時にはもう、ネアは無言で掲げた紙を紙挟みに戻し終えた後である。



「ふむ。祟りもの方向に向かっていても、三つ子頭の妖精きりんさんは有効なようですね」

「…………わーお。え、…………あのボラボラもどき、灰にしちゃったってこと?!」

「アルテアさんと相談して、ひとまず動くと厄介なものは滅ぼしました!」

「術式回収が目的の一つなら、あれも必要な素材だろうからな。…………もうしまったな?」

「はい。金庫に戻したので、もうこちらを見て大丈夫ですからね」

「………ったく」



持ち上げていた人間が視認型の邪悪な武器を取り出していたせいか、アルテアは若干青ざめている。

ノアがうっかり目にしないように角度をつけてスケッチブックを開いていたが、この効果を見ると今後の運用は慎重に行った方が良さそうだ。



ややあって、ふうっと溜め息が落ちた。



温度のない瞳でこちらを見たアイザックは、不機嫌そうではなかったので、ネアは少しだけほっとする。

とは言えこの可憐な乙女とて被害者なので、怒るべきなのはネアの方なのだろう。


では、シモンはどうなのだろうと視線を巡らせると、どっと疲れたように肩を落としているので、やはり画策したのはアイザックなのだろうか。

けれどもネアは、まだそうだとも言い切れないような気がしてならなかった。



「それにしても、よく、祟りものの盤上にあったものを滅ぼせたものですね」

「まぁ。私の狩りの腕前はご存じかと思いましたが。………これで、そちらで見込んでいた成果の一つは回収出来なくなった筈です」



冷ややかな声でそう宣言したネアに、アイザックは薄く苦笑する。



(何も言い返さないのだから、ノアの言うように、アイザックさんは、ここで何かの魔術を手に入れようとしていたということなのだろう)



そんな視点はネアにはなかったし、ノアが指摘した魔術の回収とやらがどのようなものなのかは分からない。

だが、どちらにせよこちらを巻き込むものであるのは疑いようもなく、皆をここに足止めしていたのはあの黒ボラボラだった筈だ。

よってネアは、今後のことも考え、足枷は早々に取り払い、尚且つ、取り分などひと欠片も渡すまいとするのが最も手っ取り早いと考えた。


なお、このような局面なので、三つ子きりんの使用にあたっては、使い魔の監修を受けている。



「お前は、よくこの状況下で、術式の回収なんぞ始めようと思ったな………」

「これでも、事態の収束に向けて誠実に対応させていただいていたつもりでしたが」

「悪変後の混濁が晴れて動き出したら、さっきのボラボラもどきは、多分アルテアを狙ったよね。魔術の結びに仕損じたものってさ、大抵は、欠落した資質を取り込もうとして暴れるでしょ。それなのに、動くのを待ってるっておかしくない?仮にも、責任は取るって言ってなかったっけ?」

「きちんと収めさせていただくつもりでしたよ。術式の回収の方を優先するなど、まさかそんな」


微笑んで否定したが、アイザックはこちらを説得するつもりすらないようだ。


「派閥の手入れも兼ねて、ある程度の動きを静観したようだが、この後始末をするのはどう考えても鷹の紋章だろうが」

「おや、そちらについては善意ですよ。先日の漂流物の問題で、領主派が欠けましたからね。この施設を崩しておけば、ある程度の問題を先送りに出来るでしょう。念の為に補足させていただきますと、私としてはそちらの調整を主軸に置いているつもりだったのですがね」

「上手い調整ではある。お前の活動に邪魔な派閥の動きをそれぞれに抑え、尚且つ、反ウィーム派については、身内の商会を優遇し、アクスとの取引を排除した派閥への意趣返しも兼ねたか」

「それぞれの派閥が均衡を保っておりませんと、商売に差し支えますからね。流動的な土地には、多様性があった方が良いでしょう。そのあたりは、あなたも同じ意見だった筈ですが」

「もう一度言うが、中立派に火の粉が飛んでいるだろうが」



アルテアとアイザックの冷え冷えとしたやり取りを聞き、ネアは、この駆け引きがいつぞやの盤上の駒取りの、延長線上のようなものなのだと気付いた。

今回の事件の解決を図りながら、今の会話は、そのまま選択の魔物と欲望の魔物の駆け引きにもなっている。


目的は同じでも、それぞれの陣営や、その背後にいる選択の魔物や欲望の魔物がより損害の少ない方法をとなると、相反する部分もあるのだろう。



ネアはこの隙にとノアの方を見たが、気付いておやっと眉を持ち上げた塩の魔物は、まだ魔物らしい眼差しのままだった。


どうやらまだこの場から動けないらしいぞと心の中で溜め息を吐き、ネアは、地面に倒れたままの赤毛の女性大尉の方に、火の粉が飛んでいないかを確認しておく。

慌てて助け起こす相手ではないが、燃えてしまわないようにはしておきたい。



「………考えてみれば確かに、ビルラーゼ大尉とは、目的を同じくしていらっしゃったのですね」

「…………おや。どうして、そのように思われましたか?」



ビルラーゼを見たことで思わずそう呟いてしまうと、視線をこちらに戻したアイザックの口元が、ゆっくりと笑みの形にカーブした。

擬態していてもなお、他の魔物達よりも暗く老獪な、魔物らしい魔物の微笑みだ。



「憎しみに駆られて衝動的に暴れる方は、相手の背景や事情などを慮りません。あのように私に手を上げた方が、最後の瞬間にのみ、突然少しだけ冷静になるでしょうか。ご自身の感情と籍を置く派閥を分けられる方なのに、不確定要素の多い場面で状況の確認すらせずに私を襲ったことも、とても………人物像に不似合いでした」

「憎しみや怨嗟というものは、案外、そのように作用するのかもしれませんよ」

「であれば、あの方はただ私を殺そうと躍起になるばかりだったでしょう。そちら側に転ぶだけなら少しもおかしくありませんが、そこにまっとうな冷静さなどはさして挟む余地がないだろうというのが私の持論です。人間が誰かを殺したい程に憎んだ時は、その行為が後に自分をどのように追い込もうと、相手が誰だろうと、知ったことではないんですよ」


何しろあの場には、ネアを害してもどうにでも誤魔化せる条件が整っていた。

そして、あんな理由で踏み留まれるくらいであれば、最初から自分の立場を危うくするようなことなどしない筈だった。


「では、ギルラーゼ大尉と、私が、共謀して動いていたと?」

「かもしれません。きっと、………私を襲ったのは、何らかの理由があり、そうせざるを得なかったからなのでしょう。憎しみに我を忘れたのではなく、ご自身の持つ憎しみを利用して、私や誰かの気を逸らす必要があったのでは?」


ネアとしては踏み込んだつもりだったが、アイザックはさらりと受け流した。


「…………ふむ。人間の側からの見解というのも、なかなかに興味深いですね。とは言え、ご指摘されているのは感情の予測です。他にも、より確信を持たれる理由があったのでは?」

「私が着ているドレスは、支給されたウィーム風のドレスです。ウィームで暮らしていた方であれば、このようなドレスともなると、公的な職に就いている者の正装であることくらいは、想像が出来た筈です。まさに、その点に於いて私は、感情よりも優先させなければいけない要素を持つお客なのですよ」

「……………ああ」


ここでようやく、アイザックはそれは気付かなかったという顔をしてから、小さく笑った。


「種族的な価値観の差異ですらないのに、それは失念しておりました。さすがの私も、本日のあなたの服装までは推し量れませんでしたので、……………そのあたりは、やはり選択というものの因果に恵まれておいでなのでしょう。いやまさか、今日に限ってそのような装いだとは」

「…………そしてシモンさんは、同郷の方がこのような顛末になっても、それで良しとしたのですね」



アイザックの言葉には答えず、ネアは、シモンの方を見ていた。

話しかけられたと気付き。居心地が悪そうに瓦礫の中に立っていた紅茶色の瞳の男が目を瞠り、困ったように眉を寄せる。



「止めてやれなかったのは事実だが、なんの疑問もなく献身の喜びに目隠しされていれば、彼は、遅かれ早かれこうなっただろう。こればかりは資質なので、上手く立ち回れない者は、最後の分岐に立つまで引き返すことも出来ないそうだ」

「そんな方を犠牲にした今回の実験で何かを得られるのであれば、シモンさんは、どなたかに戻ってきて欲しかったのですか?もしくは、その分岐に立ってしまった時に、助けてさしあげたい方がいたのですか?」




ネアは、もう待たなかった。


誰ももう帰ろうと言ってくれないのには理由があるのだと分かっていたし、だとしてもネアはもう、帰宅して大事な魔物を安心させてあげたかった。

そうして待ちきれなくなった人間が容赦なく踏み込んで問いかけると、シモンは小さく息を詰めたようだ。


ぎくりとしたように周囲を見回せば、ノアやアルテアだけでなく、アイザックですら何も言わないことに気付いたのだろう。



途端に、顔色が変わった。




「………君をこちらに呼び寄せてしまったのは、事故だった」

「まぁ。突発的な遭遇から、後から起きた予期せぬ事故までが、なぜか綺麗に着地する不思議ですね。加えて、ボラボラさんも使うきらきら糸の召喚は、願い事と対価のどちらもが必要な魔術なのだとか。私は既に一度巻き込み事故に遭っているので、その対策だって済ませてあった筈なのですよ」

「何が言いたい…………?」

「ありゃ。まだ認めないのかぁ。君が偶然で呼び落とすには、この子にかけた守護は重過ぎるんだよね。それこそ、願い事と対価が、よほどしっかりしてない限りは、そうそう呼び落とせないくらいにね。つまりさ、…………最初から最後まで、出来過ぎているんだってこと」



ネアの言葉を引き取ってくれたノアに、シモンは眉を寄せた。



(とても冷静だわ。………この人は最初からとても冷静で、ずっと計画通りで、だから私は、この人に出会ってからずっと、いつものような判断が出来なかった)



シモンは何も間違えず、ネアが警戒せず、納得するようなことしか言わなかった。

だから疑わしくなかったけれど、そのせいで、ずっと彼だけが異質な駒だった。

アイザックを疑いもしたが、アイザックが最初から関わっていたと想定すると、欲望の魔物という駒はどこにもうまく収まらないのだ。



爆発事故を画策した誰かが黒ボラボラもどきに転じてしまう前から、ネアは既に上手くこの場から逃れられなくなっていたではないか。

そして、都度のネアの選択を誘導したは、シモンであった。




「………やれやれだな。お前の部下だろ。適度に使えるようにはしておけよ」

「ですから、シモンの組んだ術式を回収した上で処理に入ろうとしたのですが、せっかくの術式の魔術の核そのものが消失してしまいましたね」

「その場合は、お前が一人で利益を得る展開だろ」

「ご推察の通り、信頼の出来る方を介してギルラーゼ大尉に事態の回収を依頼しておりましたが、今回はシモンの状況管理の器用さが裏目に出ましたね。その辺りの才能は、あなたの系譜の付与が大きいのでは?」

「運用はお前だろ。……………何だ?」

「……………気付いておられたのですか?」



呆然と問いかけたシモンに、アルテアは顔を顰めた。

それは決して冷淡な表情ではなかったが、アルテアが視線を向けた途端に、シモンはがくりと地面に膝を突く。

真っ青になってはくはくと息を吸う様子からすると、相当な精神圧がかけられているのだろう。



「ギルラーゼの介入を泳がせたのなら、それをどう利用するのかまでは見てやろうと思ったが、期待外れだったな。まさか、こいつが、わざわざお前の不手際の後始末をしてくれるような男だと思ったのか?」

「…………っ」

「そのように思われていたのであれば、心外ですね。私の利益を損なわずとも、今回の一件は、私の、個人的な評判に響きかねません。いやなに、ウィームの周囲では評判を落としたくない事情がありましてね。ですから、ここにあった愉快な術式の回収の後には、道具か素材にするつもりでしたが」

「アイザック様………」



思わずその名前を呼んでしまい、シモンは喉の奥から潰れたような呻き声を上げる。

すっと瞳を細め彼を見下ろしたのは、もはや痩せぎすの軍人ではなく、細身の煙草から紫煙をたなびかせる長い黒髪の魔物だった。



「やれやれ、加えて教育も満足に出来ておりませんでしたか。まさかここで、驚きを以て私の名前を呼ぶとは。…………こればかりは、私の責任ですね」

「最初から最後まで、お前の管理責任だろ。道具にするなら、調整には手を貸してやる」

「………その程度の提案は、受け入れるしかないでしょうね。どうぞ、シルハーンにはよしなに」

「知るか。自分で挨拶に行けよ。言っておくが、俺の取り分とシルハーンの取り分は別だぞ」

「はは、となると、これはこれは契約主を大事になされているようで。とは言え今回は、私としてもまさかネア様を囮にするとはと、冷や汗をかきましたが」

「………むぅ。その割には、出てくるのが遅かった印象です。きっと、部下の後始末の慰謝料代わりに珍しい魔術とやらを貰って帰れるようになるまで、じっくり待つつもりだったに違いありません」

「間で介入されたビルラーゼ大尉も、それなりに加減なされた筈ですよ。不確定要因として、シモンを混乱させる為だけの役割でしたから」

「残念ながら、私に守護がなければ粉々になるくらいの扱いでしたので、どちらかと言えば、シモンさんが血迷うのを止めようする為に割って入られたのでしょう。ご依頼の主語が、伝わっていなかったのでは?」

「おや。気に入られていたようですよ」



朗らかにそう言ったアイザックに微笑みかけられたが、シモンは、真っ青なまま頷くばかりだった。

だが、そればかりで済まさなかったのが塩の魔物である。



「さてと。…………君もさ、アルビクロムで働いているなら、どこかで塩の魔物の話を聞いたことがあるかな。塩の魔物はさ、こちらの領域を損なう相手は容赦なく呪うものなんだけど、君には、大切な人っている?」

「………つ、妻は関係ない!!」

「ありゃ、やっぱりそういう感じかぁ。それが、君にここに敷いてあった魔術式を書かせた動力か。月並みな理由で考えるなら、さっきのなり損ないと同じ氏族でそろそろ転びそうって感じなのかな」

「……………ボラボラになど、…………あんなものになってしまって、何が幸せなんだ。そんな風に失う訳にはいかないのに、妻の雇用主は、彼女をどんな要望にも応える便利な使用人程度にしか思っていない。このままでは……」



(……………そうかしら)




ネアは、さすがに夫婦の問題は他人事なので口は出さなかった。

正直なところ、シモンの主張そのものにもさして興味はない。


だが、これまでに見てきたボラボラ達が不幸せそうに見えたことは、一度もなかったのになと考える。

手芸品を作ったり、系譜の王様に歌や踊りを捧げたりして、みんな何だか伸びやかで幸せそうだった。

地上に出たボラボラは精霊の季節の味覚にされてしまうかもしれないし、その後何かがあって祟りボラボラになるもの達もいるが、それはまた別の問題である。



だから、ノアが魔物らしい凄艶な微笑みを浮かべて、シモンを地面にぺしゃんこにしてしまっても、ネアはその措置についても何も言わなかった。



「あ、そう言えば、ここにあった術式の残骸は、もう掃除し終わったから動いて大丈夫だよ」

「術式の残滓も、解析と回収が終わったな。…………やれやれ、やっと帰れるか」

「ふむ。それで皆さん、なかなかここを動かずにいたのですね。…………アルテアさんは、シモンさんを取っておきたかったのですか?」


持ち上げられたまま尋ねると、睫毛の影も見えるくらいの距離で、アルテアは凍えるような目をした。


「どれだけ有用だろうが、俺の契約の先を損なっておいて、それを残すとでも思うか?」

「では、アイザックさんのように、何かを毟り取ってからぽいするつもりだったのです?」

「…………素材として使える部分はあるからな。前提としても話したが、原種とされるボラボラ達は、使い勝手の良さのせいで磨耗された結果、祟りものの経緯を辿る事が多い。それだけ、有用なのは確かだな。………あの軍人が、お前の保護よりもシモンに揺さぶりをかけることを優先したのも、そちらの需要を満たしてはいたからだろう」



(そうか。シモンさんは、それだけ優秀な人材ではあったのだ。だから、彼が犯人だと知っていた人たちも、何とかこの人を思い留まらせようとしたり、シモンさんが行おうとしていた魔術の成果の回収をと動いたことで、ややこしくなってしまったのだわ)



だが、ビルラーゼについては、シモンを揺さぶるにしても、あの方法はない。


ネアは、すんっと真顔になった。

こちらの人間は、雰囲気的には好きな御仁だなと思った相手にでも、自身の苦痛を齎されたとなればとても執念深いのだ。



「…………ビルラーゼさんは、ひとまず背中が痒くて堪らなくなる呪いをかけます」

「アルビクロムは慢性的な人材不足だ。来月まで待て」

「ぐるるる………」

「ありゃ。もう僕が少し呪っちゃったけど?」

「おい………。アルビクロムは、お前の担当じゃないだろうが………!」

「え、担当って何………?そんなのあったっけ?!」




リーエンベルクに帰ってからノアが教えてくれたことによると、シモンは、魔術の特等である塩の魔物をも唸らせるだけの術式を、あの場に構築していたらしい。



「あいつはさ、僕の妹も巻き込むことで、確実にアルテアを呼び込んで、尚且つ、アルテアが契約相手の僕の妹に向ける守護の魔術の証跡を、あの術式で採取するつもりだったみたいだよ」

「とても計画的でしたが、どちらにせよなしです」


必要だたのは、釣り餌としてのネアと、そのネアが危険に晒されることであった。

アルテアが駆けつけ、なおかつ守護を切り出すことまでが想定の範囲。

ただ、フェルディアート卿として駆け付けると思っていた選択の魔物が、本来の姿で現れたことはシモンにとって想定外だったようだ。


だからこそ、彼が容易した術式は作動不良に陥っていた。


(そして、その術式を気に入ったアイザックさんは、自分であれば術式を動かせると考えて、シモンさんの用意したものを引き継いで持ち去るつもりでいた…………)



アイザックは当初、シモンが術式や魔術の成果を回収してから取り上げることも考えていたのだろうというのが、アルテアの見立てだ。

しかし、ネアが術者にあたるシモンをハンマーで粉砕しようとしたので、慌てて出てきたらしい。



「だが、その男は、なぜ選択の魔物の魔術証跡が、伴侶に必要だと思ったのだろう?」


不思議そうに尋ねたエーダリアに、ノアがにっこり笑う。

リーエンベルクの会食堂の窓からは、この季節らしい白っぽい陽光が差し込んでいた。


「ほら、ボラボラ化って選択の顛末でしょ。それを選択の障りだと思っていたことで、手に入れようとした採取物なら、ボラボラ化を止められるって思ったんだろうね。まぁ、ボラボラにならないことを選んだ個体だからこその理論な訳だけど、効果を測る為に、あのボラボラもどきはわざと悪変を進行させられたんだろうね。………って、僕、今何回ボラボラって言った?!」

「むむ。…………爆発事件も、シモンさんが仕組んでいたのですか?」

「うーん、それはもう少し政治的で込み入った理由があるっぽいね。面倒だから経緯は省くけど、あの施設を管理する連中が、わざと引き起こそうとした政治的な事件の一環だったみたいだ。ただ、殲滅式になったのは、シモンとかいうあの男が手を入れたからだと思うよ。ほら、さすがの彼も系譜の王から魔術証跡を奪うには、かなりの贄が必要だったみたいだから」

「……………まぁ。このスープにも入っているくらいなのに、そんな大掛かりなことをしようとしたのですねぇ」

「ご主人様…………」



ぽそりと呟いてしまったネアの前には、アレクシスから届いたお見舞いスープがある。

選択の喪失の障りの近くにいたからということで、選択の魔物魔術証跡を香辛料的に使ってあるらしい。


スープの説明を聞いてから固まっているアルテアと、そのアルテアをちらりと見て固まっているエーダリアは、まだスプーンを手にしていないようだ。

牛乳とチーズに、とろとろ玉ねぎたっぷりでお酒の香りがあるスープはとても美味しいので、冷めない内にいただくのがいいだろう。



「ネアが、もう願いの糸に盗まれないようにしよう………」

「ふふ。そこは、私の伴侶に任せてしまいますね!なお、ビルラーゼさんはダリルさんと仲が悪いそうなので、ダリルさんが慰謝料を捥ぎ取ってきてくれるそうです!」



ビルラーゼ大尉は、ネアを自分の側の獲物として奪うことで、シモンの計画のタイミングをずらそうとしていようだ。

施設内に大規模な魔術式の動きがあることには気付いており、彼女は、ネアがその核になると考えたらしい。


もっと穏やかにネアを回収する方法もあったが、こちらの動きに気付いてシモンが計画を変更しないように、冷静さを欠いた振る舞いをしてみせたのだという。

とは言えやはり、ウィームの小娘などは若干どうなってもよく、シモンを思い留まらせることを優先したようなので、ネアはダリルの報告を楽しみにしていようと思う次第だ。



「そうなのだね。…………その人間は、まだいるのかな………」

「後継が育つまでは減らすなよ。俺の方でも、渋々残してあるんだぞ………」

「なお、アルテアさんは今日はもうこちらにいた方がいいのでは?どうも、今日はとてもボラボラな日でしたので、帰り道で一人になったところを、ボラボラに攫われてしまうかもしれません」

「やめろ…………」

「やめてやらないか!言葉の魔術の結びがあるのだぞ!」

「………エーダリア様。ご自身でも触れられておりますよ」

「っ………?!」




エーダリアはぎくりとしたように背筋を伸ばし、慌ててスープを飲む作業に取り掛かったが、ちびふわだったらけばけばだなという目をしたアルテアは、その日ではなかったが、よりにもよってボラボラ祭りの当日に事故ったようだ。


珍しく、一緒に巻き込まれたのがウィリアムだったので、少しだけボラボラの村が心配にもなったが、か弱い乙女としとは、アルビクロムの軍事施設の爆発に巻き込まれただけで充分である。

だが、そこでボラボラ関連の行事は打ち止めとなったようで、ネアはその年、初めてかなというくらいに穏やかなボラボラ祭りの日を過ごした。



その後、シモンがどうなったのかは知らないし、ネアは相変わらずボラボラが苦手だったが、やはり、ボラボラは幸せなのではないかと思いは変わらなかった。


グレアムによると、シモンと祖を同じくするボラボラになった者達が望んだのは、もう誰にもその能力を摩耗されずに隔絶された場所で生きていくということだったのだそうだ。

系譜の王としてボラボラを受け入れざるを得なかったアルテアからすれば、それはうんざりするような選択の顛末なのだという。

そして、ボラボラになる前の彼等を愛していた者達からすれば、悲劇であるのも頷ける。



だが、復讐もせずどこにも行けないままでも、ボラボラ達は今日も、攫ってきた小さな伴侶のお世話をしたり、刺繍やパッチワークなどを楽しみながら、系譜の王様を敬ってのんびりと暮らしているのだろう。

伴侶を探しに出てきた先で精霊の季節の味覚になったりするが、それはただの自然の厳しさに他ならない。



ネアは、そんな生き方も悪くはないなと思うのだが、口にすると使い魔がけばけばになるので、黙っていてあげようと思う。




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― 新着の感想 ―
[良い点] アルテアさんはやっぱりカッコイイなと思います! いつも助けに来てくれるからですかね? それともネアを自分のテリトリーに入れていることが自然と伝わってくるからですかね?笑 アルテアさんは、カ…
[良い点] 選択の系譜の籍にボラボラがいるのはそういうことだったんだーと納得しました。隠者みたいなものなんですね。
[一言] ウィリアムが巻き込まれたボラボラ祭のお話がとっても気になります!
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