イブメリアの音と必要な損失
魔術の実る祝福の音がある。
その中でも格別に美しいと言われるのが、祝福の庭の王と言われるイブメリアの音だ。
得も言われぬ澄んだ音は、見た事もない美しい聖堂の鐘の音とも、万象の影を宿した雪からつくった結晶石のベルだとも言われている。
しゃりんとその音が響くと、そんな音は聞き慣れた今でも足を止めて振り返ってしまうのだから、イブメリアという祝祭が宿す魔術は如何ほどなのか。
そんな音を遠くに聞きながら、斬りかかってきた一人の男の足場を崩す。
風向きが変わると、祝祭の音は聞こえなくなった。
ここはもう、あの音の外側なのだ。
この土地に伝わる特徴的な片手剣を振るったのは、所謂、剥離手と呼ばれる人間だ。
だが、どれだけこちらの抑えの効かない面倒な相手とは言え、その特異さが有利となるのはやはり、襲撃時こそである。
予め敷いておいた罠に誘い込まれれば、やはり筋書き通りに刈り取られるばかりであった。
(……………これで、七人目か。面倒なところは出揃ったな)
さすがに一度に相手をするのは骨が折れる数だが、今回はここに終焉の系譜が来ている。
ウィリアムやナインであれば、ある程度腕の立つ剥離手がいても対処可能だろう。
そちらはどうだろうと思い振り返れば、ウィリアムが、丁度、八人目を斬り伏せていたところだった。
視線に気付いたのか振り返り、白金の光の尾を引くような目を細める。
この眼差しをするウィリアムに遭遇した際には防壁を立てるようにしているが、今日ばかりは問題ないだろう。
獲物は剥離手なのだ。
それも、アルテアがわざわざ、私財を損なう形でこの場を設けている。
そこまでしてなぜクラヴィスの日に内乱が必要であったのかを、ウィリアムも理解している筈だ。
「……………本来であれば、首を刎ねてもいいところですが、今回は俺も懸念していたところなので、見逃しましょう」
「お前は、一度自分の顔を鏡で見てみろよ」
「どんな表情をしていると?……………俺は人間が好きですが、博愛主義ってこともありませんからね」
薄く笑い、そう吐き捨てたウィリアムは、死者の行列の先頭に立ち国や街を滅ぼす時の目をしていた。
その全てが理想的な環境だとまでは言わないにせよ、終焉を司る以上はそれを齎すのも資質の内だ。
避けようもない破綻がどれだけ憂鬱さや絶望を運んでも、剣を振り下ろす時に、必ずしも終焉の魔物が悲しみに暮れているとは限らない。
これは、微笑んだまま、愛する者を殺すこともある男だ。
本人には、その自覚がなかったとしても。
「ったく。大振りはやめろ。血飛沫を飛ばすなよ」
「うーん。そうならないように、出来るだけ細かく刻んでいるんですけれどね…………。まさか、処理的な意味でも魔術を弾くのは意外でした。完全に死なないと、こちらの要素を受け入れないんですね」
「だからこそ、植物の系譜は有効だったんだろうよ。…………まさかの盲点だったが」
「まぁ、取り敢えず今は刻んでおけば事足りるでしょう。死ねばただの亡骸ですからね」
その呟きには振り下ろした剣が肉を断つ鈍い響きが重なり、元は人間だったものがばらばらと地面に散らばってざあっと灰になった。
魔物が殺した人間は専用の死者の国に落ちるばかりだが、それが終焉の魔物の手による粛清となれば、事情が変わってくる。
ここで排除された剥離手たちは、死者にもなれずに滅びるばかりだった。
(ウィリアムが排除したのは、三日月の剥離手か。駒にせずに潰す以上は素材にもならんな。…………素材になるものだけはこちらで回収として、面倒な連中はウィリアムに任せておいてもいいだろう)
視線を戻せば、まだ息をしている剥離手がこちらを見上げていた。
砂色の髪に特徴的な赤い瞳を持つ美しいと言っても差支えのない少女だが、今後の活用方法は、せいぜい浸食負荷特性の構築に使う条件付け程度か。
祝福の剥離手としての役割を魔術に置き換えることも出来なくはないだろうが、そのようなものを世に出せば、いつか巡り巡ってネアに戻ってくるかもしれない。
あの可動域で祝福や守護を剥されるとどんなことになるのかは、射手の事件で判明済だ。
その切っ掛けとなるような魔術を、新たに構築する訳にはいかない。
使い魔としての契約がある以上、望まない形でアルテアが作った術式が戻ってくる可能性は、それ以外の魔術との偶然の邂逅よりも確率が高くなる。
因果や結びの魔術は、何かと道を繋ぎたがる特性があるからだ。
声にもならない声が、悲鳴のように上がった。
長い髪を乱して頭を揺らし、用意しておいた足場の上で砂色の髪の少女が自分を掻き抱くようにして両手で体を抱き締めている。
地下室などの魔術探査を行いながら、どのような動きに出るのかを見ていた。
ふうっと、煙草の煙を吐けば、まだ明けきらない夜空に白い筋が立ち昇る。
「……………私達が何をしたというのよ!!あなたは、………だって、あなたは私の事を…………」
「何もしていないが、ただ邪魔になったと言えば理解するのか?拾い上げた駒を廃棄する為に必要な理由は俺自身のもので、お前達が何を思おうとも、それは今回の顛末には関りがない」
「アージュ!」
その名前を呼ばれ、うんざりと顔を顰めた。
いつもであれば余分なものは遠ざけるのだが、さすが剥離手というだけあって、張り上げた声までが騒音の排除用の魔術の壁をすり抜けて真っ直ぐに届く。
とは言え届いた声に何かが揺れる事もなく、煩わしく思うばかりだ。
(……………何も選びもしないか)
失望という程に期待をかけてもいなかったが、その他のものとは違う素材だったのは確かだ。
せめて最後に、何か愉快な変化を見せるだろうかと思っていたが、そうでもないらしい。
「どうして…………。やっと、………やっと私が生きていけるところを、見付けたと思ったのに。やっと、愛する事の出来るものを、この世界で初めて私を生かす場所を見付けたと思ったのに!」
べたべたとした闇色の敷かれた地面に座り込み、髪を振り乱して泣いている剥離手は、そう叫ぶ。
唸り声を上げ、取り落としていた剣を手に立ち上がる姿は苛烈な程だが、やはり、この展開では少しの物珍しさもない。
寧ろ、全ての魔術効果を無効化し得る個体なのだから、こちらの精神圧を物ともせずに立ち上がる才能くらいは、初期値として備えていなければおかしいくらいだろう。
「どうして!!」
「……………どうしても何も、なぜ俺が、お前達と同じ価値観で動かなければいけないんだ。理解も結論も示さないか。まさか、選択の欠片もないとはな」
そう言ってもきっと、目の前の人間は理解しないだろう。
同じような形をしているのであれば、同じように言葉を交わせていたのであれば、訴える言葉の何かを理解するだろうと願うから、最後までこうも喚くのだ。
知った事ではないし、知りようもない。
所詮こちらは魔物であって、救済も絶望もその価値観に準拠したものでしかないのだから。
そもそも、目の前の人間がこちらの事情を理解する必要すらないではないか。
そういうものだと割り切って、抗うか諦めるか、せめてそれならまだ良かった。
(多分あの人間も、やっと居場所を見付けたというようなことは言うだろう)
だがそれは、特定の人物に向けて言うのであれば、シルハーンだけが知るものに違いない。
誰かとの感情の共有や自身の考えとしての言葉ではなく、それを枷や免罪符のように振りかざすのだとしたら、ネアを呼び落し自分事としたシルハーンにだけ、有効な言葉なのだ。
そしてあの人間は、そんな線引きを決して見誤らない。
というより、しっかりと記した線の内側と外側を切り分けるのは、いつだってネア自身なのだから。
そうして、あの人間は絶対に言わない言葉だなと思いながら、少しばかり感慨深く剣を振り上げた女の足場も崩し、崩れ落ちた体を丁寧に折り畳んだ。
恐怖の色を濃くした悲鳴が響き、嗚咽になってやがて途切れる迄の時間は、魔術を使って同じような処置をした場合よりは少しばかり長いだろうか。
その時間を計り記録してから視線を巡らせ、こちらで回収する予定だった駒までばらばらにしているウィリアムを見付け、片手を額に当てる。
「……………おい。使える素材は残しておけ。これでも、アイザックと競り合って手に入れた畑なんだぞ」
「余分な処置をしている間に、怨嗟は買わないようにして下さいよ。律儀に答えているだけ、アルテアの方が酔狂だと思いますが?」
「俺は選択だからな。選択の意味を問われれば、答えることもあるだろう」
呆れてそう言えば、ウィリアムは冷ややかな微笑みをこちらに向けた。
形ばかりは柔らかいが、ひと欠片も愉快ではない時の冷淡な微笑みだ。
「死に際に下手に魂を歪ませると、何を残すか分かりませんよ。…………それと、漂流物に近いものに転じると判明した以上は、今後、剥離手で辻毒を作るような真似は控えて下さい」
「俺はもう廃業だ。あとは、カルウィあたりの連中に言ってやれ。あちらの土地にいる剣がある程度は対処するだろうが、あいつも気紛れだからな…………」
「……………まさか、剥離手が漂流物に近しいものに成るとは、想像もしませんでしたね。…………これまでの時代では蓄積が足りなかったものが、これからは変化の時期に入るということは他にもあるのかもしれないな。…………クライメルが生きていなかっただけましだと思うしかなさそうだ」
ウィリアムの声は、呆れる程に冷たい。
ばたばたと白いケープが風に揺れ、その裏の深い赤が夜明け前の光にはっとする程に鮮やかに映えたが、また翻る。
アルテア達が立っているのは剥離手を多く輩出する小さな海沿いの国で、先日のリルベンでの事件を受け、港から少し離れた位置にある慈善家で知られる子爵邸を中心とした、小規模な殲滅が行われていた。
国内で虐げられてきた剥離手達が内乱を企て、その鎮圧を行う国内の正規軍が動いたという火種を用意したのはアルテア自身だが、今回は終焉の系譜の高位者達にも、剥離手が漂流物に近しいものに成るという情報が入ったばかりだ。
もしそれが人間の祟りものになど変化すればどれだけ危うい事態に至るかなど、強い危機意識がある。
よって、高位の者達程積極的に参加していたし、普段であればこの手の人間を好むアンセルムですら、表情は晴れないままであった。
「…………あいつが辻毒を使ってやっていたのは、迷い子と悪変や悪食、そして剥離手と漂流物の混ぜ物だからな」
「悪趣味にも程がありますが、………今なら、それに近いものがどれだけ稀有なのかも分かるような気がしますね。もしかすると、…………クライメルはそのようなものをどこかで、目にしたのかもしれない」
(……………あんなものが、他にもいるものか)
そう思いはするのだが、近しいものであれば在り得ない事でもない。
クライメルが見たのはそのような物で、バーンディアが誘導箱を作ってまで誰かを待ち続けているように、かつての白夜も誰かの面影を追っていたのだとしたら。
そう考えると興味は湧いたが、今更確認のしようもない。
動機を知る為だけにあわいに下りても、もう一度顔を合わせたい相手ではなかった。
どこかで火の手が上がっていて、ぱちぱちと焦げ臭い匂いがする。
痕跡を消し去る為や敵の侵入を阻む為に火を放つという行為は安易にも程があるが、人間はなぜか、これを好む事が多い。
屋敷は再利用予定であるので燃やされては堪らないと、溜め息を吐いて火を消した。
(もう、良さそうだな)
手に持った杖をくるりと回して消すと、子爵邸の中庭を覆っていた闇色の絨毯が消え失せた。
後には、終焉の系譜の者達が排除した剥離手達の亡骸だけが残っている。
国の正規軍では、武器を取る事を知っている剥離手の組織の鎮圧に足りる筈もなかったので、屋敷の外には、軍関係者達の亡骸が積み重なっていた。
そちらと相討ちだと言うには苦しいが、終焉の系譜の粛清が内乱を引き起こした側の者達に向いたと分かれば、国内はさして混乱もなく落ち着くだろう。
(最初に戦事があり、その結果、死者の行列が動いた。その説明に事足りれば問題ない)
慎重に情報は管理してきたつもりだが、それでも、この屋敷に暮らしていた元孤児達が剥離手だと気付いていた者がいないとも言い切れない。
剥離手のどこかに終焉の系譜や高位の人外者の粛清を促す要素があると拡散されると、これも面倒ではないか。
皆が良く知る月並みな理由を用意しておけば、その追及が入ることもないだろう。
かねてより、国内での剥離手たちへの差別は問題視されてきたので、火の気はなくとも、その説明に足りる背景があれば民衆は満足する。
「……………これで全部なんだろうな」
ウィリアムと入れ違いになってこちらに来たのは、大鎌を手にしたナインだ。
聖衣のまま来たらしく呆れるばかりだが、この時期は教会内での書類仕事も煩雑なので、そのせいだろう。
現に、問いかける声音の暗さには、面倒ごとを一刻も早く片付けたいという思いがありありと現れていた。
「教会の方には、この手の連中はいないな?」
「教会の嗜好には合わないからな。生活の中で必要な手順や規律の殆どをまともにこなせないどころか、沈黙の魔術で仕切られた境界も気付かずに踏み越えかねない。排除こそされ、喜んで受け入れられる人材ではないだろう」
「異端審問官にも、一人いただろう」
「あれは問題ない。完全な剥離手ではなく、僅かに魔術誓約を可能とする余地があったからこそ、雇い入れた男だからな」
言われてみれば確かに、ナインは慎重な男だった。
どれだけ剥離手の才能が有用でも、いつ寝首を掻かれるのか分からないような相手であれば、自分の組織に組み込みはしないだろう。
「やれやれ。折角明日はイブメリアだっていうのに、酷い仕事でしたよ。僕は、久し振りに人間から蹴られましたからね」
「そうか。良かったな、アンセルム」
「……………ナインはこの通りですが、あなたは、少しは感謝して下さいよ」
「ウィリアム。この門の魔術は壊すなと言っただろう!」
「俺じゃないと思いますよ。……………あれ、そこも通ったかな」
「……………成る程。ナインだけでなく、アルテアも僕には興味がない事が分かりました」
「さて、私はそろそろ帰らせて貰おう。今日は、日記が届く日だからな」
「………は?」
「日記……………。ナインがですか?!」
「ああ。ギードとの交換絵日記か……」
「絵日記?!ナインが?!!
目を瞠ったアンセルムに対し、あのおぞましい日記帳かと思い至り、ひらりと手を振った。
こんな場所に届くとは思えないが、一応は、絶望がいてもおかしくない戦場である。
ギードが交換絵日記とやらを届けに来る前に、帰らせた方がいいだろう。
文句を言いながらではあるがアンセルムも帰っていき、屋敷の方に姿の見えていた死の精霊王も既に立ち去ったようだ。
短くなった煙草を指先で取り上げて燃やし消すと、煙草の煙で結んでいた魔術の幾つかを解いて開く。
「意図的に集めたものは、ここで全部だな」
「まさか、あなたが剥離手を集めていたとは知りませんでした」
「質はいまいちだ。ごく稀に自然派生する、飛び抜けた才を持つようなものではないがな。………この国のように、集団的に生まれる下地があるということは、取り込む要素が分散されているからに他ならない。追いきれない、単一派生する剥離手の方が厄介だぞ」
「だとしてもと思ったからこそ、排除に至ったのでは?」
「……………あいつが身を守れているのは、こちら側で得た守護や道具があってこそだ。そこに障る」
巡り巡って戻ってきた縁が、この契約を道標にたった一つのものを殺しては堪らない。
このような懸念は得てして多くの者達がそんな筈はないと言うし、その舌の根も乾かぬ内に、自分の手で育んだ縁に殺されるのを、これまでに何回も見てきた。
不利益を理由に躊躇えば、その僅かな時差が何かを奪うかもしれない。
どうしても失う訳にはいかないものを、運命が選り分けるかどうかは怪しいものだ。
「……………かもしれません。でも、……………もしかすると、その身が漂流物に近いものになるのであれば、ネアこそが最も有効な切り札かもしれませんよ。…………向こう側には、祝祭を辻毒のように練り上げた何かがいたようですから」
ぽつりと、ウィリアムがそんなことを言った。
目的地は同じなのだが、それぞれに転移の薄闇を踏みながら、とある人間が暮らしていたここではないどこかを思う。
そこで、あの人間は本来得るべきだった祝福や安寧から切り離され、恐らくは本来はそちら側にはない筈だったものを取り込み、正常な世界の盤上から弾き出されたのだろう。
(まるで…………)
考えてかけてやめると、手袋を外した。
片手で前髪を崩しいつもの髪型に戻すと、やれやれと肩を竦める。
(そうだとしても、あんな特異なものが他にもあるとは思えないがな)
転移を踏んでウィームの風に触れると、またイブメリアの音が聞こえた。
祝祭の内側に入り、ふくよかな祝福と潤沢な魔術の清しさを吸い込めば、それだけで充分な魔術洗浄となった。
部屋を訪ねると、なぜか出掛ける支度をしているネア達がいる。
まだ歌劇場に向かう時間ではない筈なのだが、どうやら、重ねて祝祭の気分を楽しみに出かけるらしい。
「これから、ディノとリノアールに出掛けるところなのですが、お二人も来ますか?」
「いや。俺は部屋で少し休んでおくよ。さすがに疲れたからな」
「俺も事後処理が幾つかある。二人で行ってこい」
「うん。ではそうしようか。……………ネア?」
「二人共お疲れのようですし、私がいない間に何かあるといけないので、きりんさんのぬいぐるみを渡しておきますね」
「やめろ。絶対にだ」
「ネア。仕事が終わったばかりだが、自分の身くらいは守れるから、安心してくれ。それは、……………何かあると危ないから、金庫から出さないようにな」
「大丈夫ですか?…………お部屋に置いておけば、きっと守ってくれますよ?」
「ネア。……ぬいぐるみだと、………二人も見てしまうのではないかな?」
「では、べたべた玉を置いていきますね。怖がっている獣さんを宥める用の、がらがらも手に入れたばかりなのですが、鳴らしてあげましょうか?」
「……………やめろ」
「ネア、それはまさかノアベルト用じゃないだろうな…………?」
「む?」
ネアはべたべた玉という道具を置くと満足したのか、シルハーンと共に出掛けていった。
相変わらずの勘の鋭さだが、同時に気遣いの方向は完全に災いに振り切っている。
「がらがら…………?」
「あいつは、また妙な道具を買ってきたな………」
「うーん。作っているのが、このウィームの住人かもしれないのが、妙に怖いところですけれどね」
廊下でウィリアムと別れ、それぞれの部屋に向かった。
露払いというよりは自衛の為だが、これで憂いなくイブメリアの夜に向かえるだろう。
得た守護を思うに、漂流物の要素を強めた剥離手が相手でも、もはや、害される事はないのかもしれない。
だがしかし、トマトやトマトソース関連の問題に直面するよりは、確実にましな筈だった。
当面の間、あの系譜には大人しくしていて欲しい。
だからこそ、自衛でもあるのだ。




