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焼け焦げた星と優しい歌




大好きな人の手のひらで撫でられ、優しい子守唄を聞く。


その歌声には毒のようにしたたる災厄と、どこか安らかでさえある終焉の温度があったけれど、大事に思われていることは伝わってきた。

こてんと眠ってしまいつつも、大事にされていることをふくふくと噛み締める。



黒焦げになって空から落ちた小さな卵は、花の香りと綺麗な水の香りのする部屋で育った。



大好きな人を見上げて、その微笑みに幸せな気持ちになる。

さりさりと頭を撫でてくれる手に、子守唄の代わりに聞かせてくれる幾つもの物語。

いつだって守ってくれて褒めてくれて、ふわふわとした温かな手の中で守ってくれる。



ああ、大好き。

とても大好き。

すごく、すごく好き。



ずっと一緒にいたいけどいられなくて、でも、ずっとずっと大好き。




「ねぇ、ほこり。星鳥って星の系譜なんだよね」

「うん。でも僕、違うみたい。真っ黒だった時に何かあったのかな」



そんな話をしながら歩くのは、あまり来ることのないガーウィンという街並みだ。

ゼノーシュが青年の姿に擬態しているのは、この街では子供だけで歩かないからだという。

ウィームでは平気なのにと思ったが、今は人間に擬態しているからこれが正解なのだろう。


訪問先が特殊な立場の人間の屋敷だったので、今日のゼノーシュはガーウィンの貴族のふりをしている。

勝手に入り込めばいいのではと思ったが、人間の組織では面倒なこともあるのだそうだ。


もし、今日訪れた屋敷に高位の魔物による侵入が確認された場合、調査がガレンに依頼されると、結果としてゼノーシュの大事なグラストも忙しくなる。

そう説明して貰うと、そんなものなのかなとも思った。



「僕ね、卵が焦げたら死んじゃうと思うから、仮死状態から、魔術の祝福が強いネア達の部屋で回復しながら、ゆっくり属性や系譜が変わったのかなって思うんだ」

「じゃあ、そうかもしれない。ネアが、いつも沢山撫でてくれたんだよ」

「うん。ネアは撫でてくれるよね。僕、グラストの次に、ネアに撫でて貰うの好き」

「うん。僕も、伴侶を見上げている時と、ジョーイに手を繋いで貰う時の次に好き。………でも、ずっとですごくなんだよ」

「ルドルフはいいの?」

「……………ネアの次かな。ルドルフ、時々変だもの」

「うん。変だよね」

「だよねぇ」



なぜそんな話になったのかと言えば、ずっと、本来の星鳥と自分が何か違うような気がしていたので、ここ一年ほど、他の星鳥との違いを調べてきたからだ。


リーエンベルクのネア達の部屋で生まれ育ったせいで、魔術耐性が上がり本来の種族性を越えて階位を上げたのは間違いないし、アルテアの説明では、食べてきたものも大きく影響しているらしい。

でも、最初からだいぶ違うのはなぜだろうと思って、調べてみたのだった。



「今日の星鳥は、今までで一番階位が高いかな」

「あの星鳥、怒ってたね」

「家は、伴侶との巣だからね。…………ええと、エスメラルダって名前だったっけ」

「うん。でも大好きな人と、二人だけでずっと一緒にいられるのも、幸せだね。僕、グラストとなら二人でもいいよ。……寂しくなっちゃうかな」

「僕達が用があるのが、伴侶の人間じゃなくて良かったなって思う。もっと怒ったかもしれないから」

「うん。でも、ネアの真似をしてクッキー缶をあげてきたから、大丈夫だと思う」

「クッキー缶だったら、絶対に大丈夫だよ」

「だよね。僕も、クッキー缶を貰ったら仕方ないかなって思うこともあるもの。でも、グラストを僕から取ろうとするのは、絶対にだめ」

「うん。絶対にだめな事もあるよね」



この国の中で出会う星鳥は、これで五人目だ。

どんな風に生まれて、どんな風に暮らしているのかを聞けば、やはりほこりは、みんなとは少し違う。

それと、ネアは、星鳥は一羽と数えるのかもしれないと話していたけど、やっぱり一人二人と数えていいらしい。


教会の多い不思議な街の中には、様々な信仰の魔物の施設があって、不思議な香の匂いがする。

真っ赤なスープを売っているお店があったが、ゼノーシュがそれはあまり美味しくないと教えてくれた。

雨樋の石の人形は他の生き物の巣になっているかもしれないので食べない方が良くて、木の棒に刺して衣をつけて揚げた食べ物は美味しいらしい。



「僕ね、今迄に色んな事を調べたりもしたけど、星鳥の事を調べたの初めてなんだ」

「あんまり興味なかったの?」

「うん。でも今は、ほこりが友達だから」


そう微笑んだゼノーシュは、見聞を司る魔物だ。

ほこりよりもずっと階位が高いけれど、そんな友達は、特定の分野や領域では、ほこりのほうが階位が高いみたいに過ごせることもあるかもしれないと言う。


「僕、やっぱり普通の星鳥じゃないみたい。でも、ゼノーシュが言うみたいに、犠牲の魔術の属性の方がいいかも。ネアもディノも、犠牲の魔物とは仲がいいから」

「うん。僕もグレアムは好きだよ。……………昔に少し壊れちゃって、色々な事がよく分からなくなっていた時もあったし、その時は僕も追いかけられて凄く怖かったけど」

「そう言えば、どうして犠牲の魔物のことを、灰かぶりって言うの?」



少し前から不思議になっていたことを聞くと、こちらを見たゼノーシュは不思議そうな顔をする。

今は二人とも擬態しているので、ゼノーシュの瞳は蜂蜜色だ。


因みに、ほこりは淡い金髪に緑の瞳にしてある。

擬態はあまり得意じゃないので、ジョーイにやって貰ったのだ。



「あれ、ほこりは知らないの?ジョーイも昔の魔物だから、グレアムのこと、灰かぶりって呼ぶよね。……………少し前までは、魔術の障りで名前を封じられていたからずっと忘れてたけど、僕みたいにまた思い出してると思う」

「ジョーイは、あまり犠牲の魔物の話はしないんだよ。多分、伴侶を亡くした時のことを思い出すからじゃないかな。でもね、グレアムには幸せになって欲しいって時々言うんだ」

「うん。それは僕もそう思う。でも、ディノがネアと一緒にいると幸せそうだから、それでいいかな」

「うん。ネアは凄いんだよ。僕も、お話しして貰うと幸せになるの」

「僕も、クッキー貰って頭を撫でて貰うと、嬉しいなって思う」



少し昔の話だから、音の壁を作るねとゼノーシュが言う。


ほこりはそのような魔術は得意ではないので、こんな時、ゼノーシュは凄いなと思うのだ。

その代わり、ゼノーシュやグラストを怖がらせる悪いものは食べてあげられるので、ちゃんと友達同士で得意分野があるのがいい。



「灰かぶりはね、グレアムの色を示す通り名なんだ。グレアムは、犠牲の魔物だけど、対価と引き換えに願い事を叶えてくれることも多いから、犠牲の領域の他でも沢山呼ばれちゃうんだ。だからね、グレアムだけを呼ぶ通り名が考えられたんだって」

「そうなんだ。僕、悪口じゃないといいなって思ってた。灰かぶりでいいの?」

「うん。悪口じゃないよ!ずっと昔の、どこかの国の語り部が、灰かぶりっていう名前の人間が出てくる、願い事が叶う話をしていたんだって。灰かぶりは灰色で、でも願い事を叶える素敵な話みたい」

「ふうん。灰色好きだから、灰かぶりはきっと綺麗だと思う」

「ネアもグレアムも灰色で、僕も二人とも好き」

「うん」



そのお話を最初に聞いたのは誰なのだろう。

そして、そのお話を作ったのは誰なのだろう。

そのどちらの答えも分からないけれど、誰かがグレアムの通り名を灰かぶりにした。


或いは、本人が、その名前を知って、いいなと思ったのかもしれない。



「ディノは、その呼び名の方が気に入っていたみたい。名前を呼んでグレアムに繋がらないようにしている時はいつも、犠牲じゃなくて、灰かぶりって呼んでたもの」

「願い事が叶うお話だから?」

「そうだと思う。ディノはきっと、グレアムを対価を示す犠牲じゃなくて、本当は、願い事の魔物にしてあげたかったんじゃないかな。だから、灰かぶりって呼んでいたんだと思う」

「そっか。ディノは優しいから、そうなのかも。だけど、願い事じゃなくて犠牲になったのは、最初の願い事に対価が必要だったからかな」

「うん。そうかもしれないね。最初は願い事の魔物だったのに、誰かが対価を捧げ過ぎて、犠牲の魔物にしちゃったのかもしれないし」



(………そっか。だから僕、犠牲の系譜に近いのかな)



そんな事を考えながら、高く聳える教会の屋根を見上げる。


信仰の系譜にも祈りはつきものだけど、彼等は願いが叶うことよりも祈りの作法が好きなのだ。

だからこそ信仰は、多くの儀式や祈りを司るけれど、願い事は殆ど叶えない。



(もしかしたら信仰は、修復の魔物が崩壊した時に、叶わなかった願い事で資質が変化した魔物だからかもしれないな)



犠牲の領域とは別に、多くの願い事を有するのは、星の系譜だ。

星の系譜にも、星祭りのように願い事を叶えてくれる力を有する祝祭がある。

実は、星の系譜の中にもその力を持たない者達も多く、けれども楽しい事が大好きな星の系譜の生き物達は、自分達に出来る範囲で願い事を叶えてくれることもあるそうだ。


だからもし、お気に入りのお菓子を食べたいと願って枕元にそのお菓子があったら、それは魔術が叶えた願い事ではなくて、星の系譜の誰かがおこづかいで買い与えてくれたものかもしれない。


そして、そんな星の系譜に属する星鳥は、その願い事の領域に於いて、財産を授ける魔物だとされてきた。

他の系譜や属性も持つけれど、やはり、名前に戴く星の領域にはしっかり組み込まれている。

本来は階位が低く、ほこりのように白持ちになる可能性というのはないに等しかったと言われた。




「あのね、僕思ったんだけど、……………星鳥としてのほこりを孵したのって、ネアなんだと思うけど、ネアがこの世界の生き物とは少し違うから、ほこりは、沢山宝石が吐けるのかもしれないよ」

「ネアのお願いって、凄そう…………」

「うん。ディノ達に出来ない事をお願いするんだもんね。それに、星鳥が宝石を少ししか吐けないのも知らないし」

「ほこりって、元は屋敷妖精の名前なんだよ」

「ほこりが小さかった頃に、ネアに教えて貰った。妖精の名前って凄いよね。もしかすると、妖精の名前のお陰で、複数の種族特性持ちみたいになってるのかもね」

「僕、羽はないけどいいのかなぁ」

「ほこりに妖精の羽があったら、妖精の粉、美味しいのかな」

「美味しかったら、自分で食べられるね」

「うん。いいよね」



こつこつと踵を鳴らして石畳を歩き、魔術の道に入って擬態を解く。


ネアが星に願いをかけた日に空から落ちたようなので、ゼノーシュの言うように、ほこりはネアの願いが育てた星鳥なのかもしれない。

そう思うと、何だか本物の家族のようで素敵なことのような気がした。



(一緒には暮らせないし、たまにしか会えない。僕にはもう伴侶がいるから、僕から会いに行かなきゃって思う事は沢山じゃないけど、でも、ネアやディノの誕生日には会いたいし、僕の誕生日をやって貰うのも大好き)



「……………僕は、ネアの願い事で生まれ変わったんだったらいいな。転属でもいいし、練り直しでもいいよ」

「ネアが星の歌を歌って落ちちゃったなら、練り直しにも近いのかもしれないね。……あの歌、星鳥だと死んじゃうかもしれないし………」

「じゃあ僕、ネアの願い事を叶えてあげた方がいいかな」

「友達が欲しかったみたいだから、もう大丈夫だと思う。ほこりは名付け子だし、僕の友達だからきっとネアにとってもあまり変わらないと思うよ」

「子供と友達って同じ?」

「ちょっと違うけど、ネアとの仲良しさは同じだと思う」

「それなら、友達にもなっちゃうね」

「うん」



大好きな大好きな甘い声。

頭を撫でてくれる優しい手に、ちくちくのセーターの話。


大好きなネアには沢山の宝石を吐いてあげたけど、そのくらいならもっと沢山出せるから、もっと違う願い事も叶えてあげられたらいいのに。


ほこりには大好きなものが沢山あるけど、ネアは時々食べたくなっちゃう可動域だからあんまり会いに行けないけど、それでもずっと特別で大好きだ。




「だからもっと、大事にするんだよ」

「それは妬けるな。だが、名付け親は確かに特別な存在だろうな。俺にも出来る事があれば教えてくれ」

「うん」



一緒に他の星鳥に会いに行ってくれたゼノーシュと別れて、アルテアに貰ったお城に帰ってきた。

伴侶のいる部屋は絶対にだめだけど、他の部屋には、ルドルフが暮らしていたり、ジョーイがよく泊まりにきたりもする。

今日はジョーイもいるので、そんな話をしてみた。


どうして他の星鳥と違うのだろうと考えて調べ始めたのだが、ぐるっと一周して元の場所に、星鳥として生まれて名前をつけてくれたネアのところへ戻ってきてしまった。

だから多分もう、本当にネアの願い事で何かが変わったかもしれないのだ。



そんな話を静かに聞いていてくれたジョーイが、頭を撫でてくれる。

とても幸せで温かいけれど、ネアとは違っていて、どちらも大好きだ。



「それと、ルドルフが何かおかしなものを見付けたらしい。障りに近いらしくて、俺は近付けないんだ。ルドルフに対処出来るものらしいから、指示を出してやるといい」

「そっか。だからルドルフはお城にいないんだ。いつもなら、僕が帰ってくると飛び込んでくるのに」

「いつもなのか………。練り直しと言うのなら、ルドルフ程に変わった魔物もいないだろうな」

「僕ね、ネアに悪さしたから、前の白夜の魔物は嫌い」

「俺も嫌いだ。………初めて白夜の夜を見た時には美しいと思ったが、クライメルも以前のルドルフも、近寄りたいとは思わなかった」

「今のルドルフも?」

「うーん、………どうだろうな。彼は、………白夜としての残忍さや享楽の質は変わらないにせよ、以前の彼とは随分変わった。最近は、一緒に酒も飲めるようになったからな。………殆ど愚痴しか言わないが」



ジョーイはそう言って苦笑してみせたけど、この前、ジョーイの土地に変な災いが落ちた時に、ルドルフが文句を言いながら片付けていたことを、ほこりは知っている。


ほこりが知っているのなら、ジョーイも気付いた筈だし、きっと驚いただろう。

ジョーイの一番の友達は白薔薇なのだと思うけれど、ルドルフはもう、近寄りたいと思わない魔物ではないのだと思う。



『ほら、こんな風に同じテーブルを囲む事で、お互いの事が好きで堪らないというのではなくても、足並みを揃えたり、話題を共有出来たりするようにもなるのですよ。ほこりも、白夜さんや白百合さんと、同じテーブルを囲めると楽しいかもしれません。ですが、これは人間である私の考え方なので、ほこりなりの居心地のいいお家の作り方を探してみて下さいね』



ネアに言われた事を思い出し、きっとこれがそうなのだと考えて微笑んだ。

にっこりすると、ジョーイが刺激が強いなと目元を片手で覆ってしまったが、いつもこの理由がわからない。



(アルテアやゼノーシュも、ディノやエーダリアも色々と教えてくれたけど、僕はネアが教えてくれた事が一番好き)



以前にその話をゼノーシュにしたところ、教える内容が違うので、ネアが話してくれることは、ほこりの心に寄り添うようなものばかりなのだろうと話していた。


言われてみれば確かに、アルテアはお説教ばかりだ。




「ルドルフ、何か見付けたの?」


お城を出てルドルフがいる場所に向かうと、真っ黒なコートを羽織ったルドルフが夜空の下に立っていた。

夜は白夜ではないけれど、入り湾の多いこの土地は、ルドルフが古くから治めてきた白夜の領域だ。



「…………ガーウィンはどうでしたか?」

「ゼノーシュと、沢山串揚げを食べて、教会の置物も食べちゃった。後ね、ガーウィンにいた星鳥は、やっぱり僕と違うみたい。でもね、違うならそれでもいいかなって思ってる」

「ええ。勿論そうでしょう。あなたは、あなたであるだけで充分です」

「うん。見付けたのって、…………その、車輪みたいなもの?」



ルドルフの足下には、古びた黒塗りの車輪が落ちていた。

馬車の物に違いなく、古びているけれど、魔術を潤沢に宿して禍々しい。

呪いなどを宿しているのだろうなと感じ、美味しいかなと首を傾げた。



「先代か先々代の頃に作った呪いの欠片のようですね。この造りは恐らく、ウィームの馬車だった筈だ」



そう呟いたルドルフはどこか物憂げで、いつものように目元を染めて傅いたりはしない。

一柱の王として、足下の車輪を見つめている。



「ウィームに、呪いを持ち込もうとしてるの?」

「…………これだけ古く力のある呪いであれば、この魔術的な再顕現を助け、より大きくしてから解放してもいいでしょう。それは愉快なことに違いなく、この思考や指先が馴染んだ趣味でもある」

「ふうん」



ルドルフがそんなことをするのなら、あの車輪は食べてしまうし、ルドルフも少し齧った方がいいのかもしれない。


そんな事を考えていると、ルドルフが春の森のような色をした瞳でもう一度こちらを見た。



「…………どう思われますか?」

「ルドルフがそれをウィームに戻すなら、僕はルドルフのことがちょっと嫌いになるかも?」

「…………でしょうね。それを不快だと思うからには、この、折角再顕現した呪いは、手放した方がいいのでしょう」

「迷ってるの?」

「ええ。………俺の資質と、俺の願いが少しだけ違う方向を向いているみたいです。だからジョーイに、俺が迷っている事を伝え、どうなるか賭けました。ジョーイはあなたに話さないかもしれないし、あなたがここに来ないかもしれない。或いは、あなたはこの車輪には何の興味も持たないかもしれない」



ずっと昔に、世界には沢山の分岐と選択肢があると教えてくれたのはアルテアだ。

どうやら今回は、その分岐が望ましくない顛末を避けてくれたらしい。


ほこりだって、そんな事を考えたりするのだ。



「ルドルフ、それ、僕のおやつにくれる?」

「……………ええ。そうしましょう。今はもう、あなた程に大切なものはないのだから」

「うん。僕も、………ルドルフは結構好きだよ。帰ったら、ガーウィンのお土産をあげるね。……………泣いているの?」

「今日を記念日にします!」

「……………何でだろう」



後日、少しだけ考えてその日のことをディノに伝えに行くと、ディノは少しだけ驚いた顔をして、頭を撫でてくれた。

有難うと言ってくれたので嬉しくて弾んでしまったら、また撫でてくれたので幸せな思いでいっぱいになる。


ゼノーシュにも話したら、その呪いはネアやエーダリアにとってとても良くない物だったかもしれないので、食べてしまって良かったのだと喜んでくれた。




「じゃあ僕、ネアが願い事をする星になれたかな」

「最初からなってると思うけど、ネアはすごく喜ぶよ」

「やったぁ」




帰り際に、話を聞いたネアが慌てて追いかけてきてくれて、頭を撫でて沢山のお菓子とカワセミをくれたので、カワセミを千切って齧りながらお城に帰り、待っていた伴侶にも報告した。



とても素敵な気分なので、貰ったお菓子はちょっとだけルドルフに分けてあげてもいいと思う。
















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