スープと千切れた絨毯
「…………エーダリア様が?」
その声はとても低く慎重で、困ったなと思った。
いっそ静かなくらいの瑠璃色の瞳といい、すっかりヒルドは迎えに行く気でいる。
でも、擬態の得意ではない妖精には向かない土地なのだ。
そう言うのは簡単だけど、エーダリアを案じるヒルドの思いを傷付けずに、どう言えばいいのだろう。
(だって、僕の方が近くにいたのに、ネア達が攫われるのを防げなかったんだ)
そう思えば胸が痛んだ。
結局大事な者を守れないのかと誰かに言われたようで、体温が下がるのが分かる。
守ると誓ったし、幾つも手は打ってある。
それなのに。
それなのに。
ネアとエーダリアが、梱包を解かれた絨毯の中に吸い込まれた。
そんな報告が入り慌てて駆け付ければ、そこには深い青色の藤の模様の見事な絨毯があった。
絨毯と聞けばカルウィの物が有名だが、この織り模様はヴェルクレアで作られた物だろう。
カルウィの織り模様は幾何学模様が多く、大陸のこちら側では曲線をふんだんに使った植物などを模した模様が多い。
絨毯一つでも、扱われる模様に大きな違いがあるのだ。
「ほお、エーダリア様が。…………絨毯って事は、絨毯のあわいだな。またあの野郎が癇癪を起したか」
ヒルドをどのように説得すればいいのかを考えていると、そんな声がヒルドの後ろから聞こえた。
鮮やかな赤い髪は、ギルドの代表を務めるバンルだ。
エーダリアの会の会長でもある。
今日はきっと、それとない祝いの品をリーエンベルクに届けに来たに違いない。
「…………バンル?」
「ヒルド様、俺は失礼させていただきますよ。ああ、ギルドからのどうしても今日お持ちしたかった試作品類は、お祝いのカードと一緒に置いてゆきます。エーダリア様が戻ったら、お渡しいただけますか」
「バンル!何か、思い当たる節があるのなら、教えて下さい」
踵を返して立ち去ろうとしたバンルの腕を掴み、ヒルドが呼び止める。
動きを止められて初めて、バンルは自分が大事な情報を明かしていない事に気付いたようだ。
はっと息を呑むと僅かに目元を染め、申し訳ないともごもご呟く。
胸に手を当てた優雅な一礼のちょっとした所作が、ウィームの王国時代のものだと気付く者はどれだけいるだろう。
その上彼の持つ作法の癖は、ウィーム王宮のものなのだ。
「第四王子だと、思われますか?」
「いえ、恐らくジュリアン王子の仕業じゃないと思いますよ。…………あの絨毯は、どう考えても人外者の持ち物だ。アクスの贔屓もないようなあの第四王子に、あそこまでの質と魔術階位のある絨毯を手に入れ、おまけに仕掛けとして手放す事は出来ないでしょう。………ずっと昔にも、一度あったんですよ。絨毯の精霊が、絨毯を粗末に扱う場所や、然るべき場所でありながらなかなか高価な絨毯を購入しない場所に、こうした嫌がらせをしたことは」
(…………絨毯の精霊?)
そう言われて随分昔に出会ったその精霊の姿を思い出そうとしたが、上手くいかなかった。
とは言え、バンルが思い描く相手と、ノアベルトの考えている相手が同一人物とは限らない。
かの精霊は、一族で派生している筈だ。
「ですが、今回は王都からの荷物でした。送付にあたり、こちらへの押印と書類もしっかり揃っていたのですが、それでもその精霊が犯人だと?」
「誰かに成りすまして高価な絨毯を送りつけることを、元々の生き甲斐にしている奴ですからね。因みにあいつの住まいはヴェルリアですが、送り主はヴェルリア貴族では?」
「…………その通りです」
「であれば間違いないでしょう。俺が、知人と共に捕獲してきますから、もう少々お待ちを。それと、書類なんかを悪用された者には、一報を入れた方がいいでしょうね。あの精霊は、送り主情報を盗むと使い倒す傾向がある。なにせ、商人の系譜の精霊ですから」
そんなバンルの忠告に、ヒルドはすぐにグラストに視線を向けた。
頷いたグラストは、すぐに騎士棟に向かったので、王都の宰相家に連絡を入れるのだろう。
ネア達が消えたと連絡を入れてくれた時には青ざめていたが、隣のゼノーシュのお陰で落ち着いたようだ。
「追いかける方法は、俺よりも魔物方が詳しいでしょう。では、こちらの結果が分かり次第連絡します」
「頼みましたよ、バンル」
「勿論ですよ。…………やっとのエーダリア様の誕生日に、こんな事をしでかしやがって。あいつの末路はスープでしょうよ」
(……………ありゃ)
それはきっと、スープの魔術師ではなく、アレクシスという人間の妹による調理だろう。
あの規格外の人間の第二席に、妹はなかなか恐ろしいと言わせるだけの才能の持ち主で、最近に役職を上げ、エーダリアの会の副会長になったらしい。
じわりと手のひらに汗が滲むような気がして、片手を持ち上げた。
今はここから動けないのだが、それでも、あの絨毯に残された魔術証跡の中に飛び込みたくなる。
だが、ノアベルトは繋ぐ側であった。
ここで残された足跡を固定出来なければ、何があっても入れるのは自分一人となってしまう。
そして残念な事に、このような不測の事態にあたり、一人だけでは足りないという事は、少なくはないのだった。
「…………ヒルド、落ち着いたかい?ネアも一緒だから、きっとエーダリアは大丈夫だと思うよ。あの外套も持っているし、ブーツだって持っている筈なんだから」
「…………ええ。ネア様がご一緒であれば、危険はないでしょう。絨毯のあわいは、階位を上げたい魔術師達が集まる場所だという事も知っています……」
「うん。それなら、まずは深呼吸しようか。それと、君が迎えに行くのは駄目だ」
「…………ネイ」
こちらを見たヒルドの眼差しは冷ややかで、どう言おうと絶対に行くという意思しか伝わってこなかった。
どうすれば諦めさせられるのだろうと途方に暮れたところで、ふっと鍛錬場に影が落ちる。
僅かに揺れたのは、とても綺麗な真珠色なのだとネアが言う、長い三つ編みだ。
「ヒルド、君はいけないよ。私もこのあわいとは相性が悪い。あの子を迎えに行きたいけれど、我慢をしようと思う」
「…………ディノ様」
「シル………」
「今回は、アルテアが向かってくれるそうだ。それと、どうしてだか分からないけれど、アンセルムというあの精霊が一緒のようだね」
「…………あの、ガーウィンのでしょうか?」
「うん。ネアから連絡があったんだ。エーダリアも無事だよ。二人ともきちんと警戒しているから、あの精霊に足元を掬われるような事はないだろう。その上で、誰も知り合いのいないままにあの街に入るよりは、あの精霊なのだとしてもいた方がいいのは確かなのだろうね…………」
「え、何であいつが一緒なのさ」
本当はもっと別に言わなければいけない事があったのだけれど、思わずそんな疑問を声に出してしまう。
こちらを見て顔を顰めたのは、既に出かける準備を済ませたらしいアルテアだ。
黒髪にし、黒いジレと白いシャツの上に、仕立てのいい黒いウール地のロングコートを羽織っている。
ここに帽子をかぶれば、階位の高い魔術師にも、羽振りのいい商人にも見える上手い擬態だ。
優美過ぎず実用的な仕立てのコートは、僅かに使い込まれた風合いまでもが擬態の内と、とても手が込んでいる。
「恐らくは、擬態名を辿るような仕掛けをしていたんだろう。合流次第、引き剥がしておいてやる」
「ってことは、まだネアに執着してるのかぁ。………彼は、仕事中にそちらに向かったのかい?」
「ネアの話し方では、彼も呼び込まれたようだね」
「ああ、だから名前を辿る仕掛けって訳だね」
「ナイン経由で教区に確認を入れた。神父としての勤務時間中だな」
「よし。それなら、ガーウィンと教会の規約で、エーダリアには害を及ぼせないね」
「…………王族及び領主への制限魔術ですか」
ふっと胸の底から安堵にも似た吐息を吐き出すように、ヒルドが呟く。
まるで独り言のような小さな声だったけれど、それに頷き、既に経路の追尾と解析に入ったアルテアの背中を見つめた。
全てを説明しなくても、アルテアならばこちらがネア達の証跡を捉えている事は承知の上である。
同じ場所に向かう時でも、同じ場所を通るのはあわいに行く際の鉄則だ。
向こうに着いた後で、時間軸や層に違いがあったと嘆いてももう遅い。
必ず、同じ場所に辿り着けるよう、しっかりと手を尽くさねばならないのだ。
「あ、因みに今回の一件は、絨毯の精霊の仕業かもしれないって、バンルが凄い剣幕でヴェルリアに向かったみたいだよ。あっちの会で、絨毯の精霊狩りをするみたいだね」
「おや、あの王子ではなかったのだね」
「うん。僕もてっきりあいつのせいだと思ったけれど、過去にも騒ぎを引き起こしたみたいだし、バンルの言う通り、この絨毯はあの王子が手にするには上等過ぎるんだよなぁ…………」
「では、私の方で誰かに聞いてみよう。今回は、…………待っている事しか出来ないからね」
どこか悲し気にそう呟いたシルに、あわいに潜ろうとしているアルテアに一歩近付きかけたヒルドが、ぐっと息を詰めるのが分かった。
細い肩が強張り、ふうっと深い息を吐く。
無理やりにも追いかけてしまわないかとはらはらしていたが、その吐息を吐き終える頃にはもう、アルテアの姿は消えていた。
「可能であれば、…………私が行きたかったのですが」
「うん。街を出る資格を得られてから、門迄は君が迎えに行けばいい。私と違って、君はそのくらいの接触なら可能だろう」
「…………ディノ様」
その言葉に振り向いたヒルドに、何だかわぁっと抱き締めたくなった。
ご免と言いたいけれど、アルテアの気配がまだ入り口に辿り着いていない。
この絨毯に残る魔術の軌跡を見失わないよう、その階段を維持し続ける為には、今はまだここから動けないのだ。
大仰な魔術ではないが、こんな繊細で嫌になるくらいに頼りない気配だけしか残されていないからこそ。
だからこそ、この糸だけは、絶対に失う訳にはいかない。
「あのあわいは、絨毯の職人達が多い。森と湖のシーである君がそのまま近付くのは危険だから、ノアベルトに擬態をかけて貰うといい。迎えに行くくらいの時間であれば、あわいの中でも保てる擬態を作れるのではないかな」
「うん。あのあわいでも、それくらいであれば可能かな。………アルテアが向こうに降りたね。どれだけの時差があるのか分からないけれど、それも調べておいた方がいい。絨毯のあわいの滞在や訪問記録があるかどうか、ダリルに探して貰おう」
「…………っ、ダリルに連絡をいれてきます。すっかり失念しておりました」
「あ、…………」
慌てたようにその場を離れたヒルドに、手を伸ばしかけ、はたりと落とす。
後で話をする時間が取れるだろうかと落ち込んでいると、隣にシルハーンが立った。
「シル、…………ネア達は大丈夫だよね」
思わずそう言ってしまったのは、ずっと考えているからだろう。
あの時にもう少し早く、外回廊に向かっていれば。
そうするつもりだったのだから、そう思ったところですぐに二人を迎えに行っていれば、こんな事にはならなかったのに。
(それに今回は、…………僕のせいだ)
「あのあわい自体であれば、土地そのものが悪影響を及ぼす事はないだろう。…………ネアがね、君かウィリアム達と一緒にいるようにと言うんだ」
「それなら、ここにいてよ。………シルにも、謝らなきゃいけないかもしれないから」
「ノアベルト?」
不思議そうにこちらを見たシルハーンに、先程のバンルの言葉をそのまま伝えた。
どうして絨毯の精霊がこんな事をするのかを共有すれば、こちらを見ていたシルハーンが、困ったように首を傾げる。
もっと素直に謝るつもりだったのだが、上手く言葉が選べなかった。
どうしてだか分からないけれど、胸が苦しくて言葉を整えられないのだ。
「絨毯を大事にしなかったのは、自分だと思っているのだね」
「…………ほら、狐の時に爪で引っ掻いちゃうからね。………考えられる要因は、それくらいしかないと思うんだ。絨毯を買って欲しくて送り付けてくるなら、ネアとエーダリアをあわいに落とすのは、悪手でしかないし」
「……そう、……かもしれないね。でも、…………あの姿の時は、どうしようもないのだろう?」
「ありゃ、慰めて貰ったのに、何でかな余計に悲しくなった…………」
「ノアベルト…………」
(…………だからこそ、ヒルドには謝らないといけない)
大事な友人に、あんな顔をさせてしまった。
それも、今日はエーダリアの誕生日なのだ。
近くにいて守り切れなかっただけでなく、もし、その要因にすらなっているのだとしたら。
あの第四王子を許さないと憤っていた少し前の自分の愚かさに、顔を上げるのも億劫なくらいに落胆していた。
(ああ、今年のエーダリアの誕生日は、色々楽しい事を考えていたんだけれどな)
リンデルを貰えたから。
大事な家族の居場所をくれる大事な契約者だから、やっとリーエンベルクで祝える今年こそは、色々な事が出来ると思った。
それなのに、このざまなのだ。
一年に一度しかない日にこんな目に遭い、エーダリアはどれだけ落ち込んでいるだろう。
「…………あの方は、…………」
けれども、広がってしまった絨毯の周囲の魔術整備が終わり、繋いだ痕跡をシルがその場に固定してくれて屋内に戻ると、なぜか頭を抱えたヒルドがいた。
どうしたのかと思い恐る恐る尋ねると、ネアに倣ってヒルドがエーダリアと分け合っているカードに、連絡が入ったらしい。
何かあったのだろうかとぞっとしたが、どうも、ヒルドの頭の抱え方が違うような気がする。
「ええと、…………何があったんだい?」
「………絨毯のあわいで、雪と祝祭の絨毯を買ったようです。すぐにでもあちらで交換にかけ商人としての階位を上げればいいものを、それはどうしても持ち帰りたいので、すまないと…………」
「…………わーお。買い物を楽しんでるぞ」
「ネア様に言われ、その経緯をカードに書いたようですね。質のいい絨毯を手に入れておきながら、…………あの方は…………」
「…………で、でもさ、ネアも一緒なら、きっとそこで他にも絨毯を買ったんじゃないかな?」
「だといいのですが…………」
思わず振り返ってシルハーンの方を見ると、困ったようにカードを開いている姿があった。
少しだけ嫌な予感がして表情を窺うと、こちらを見て悲しそうにしている。
「え、…………まさかネアも?」
「いや、あの子は、購入した絨毯を別の店で売り、新しい物と交換するようだよ。…………ただ、最初の店にあった絨毯が、どれも素晴らしいものばかりだったのだそうだ。道具を使って織ったものなので織り模様の魔術階位は高くはないそうだが、随分と気に入ってしまったようだね。…………あの子は、気に入った品物を手放すのが、とても辛いんだ。こちらに来る前の、家族の遺品すら売らなければならなかった生活を思い出してしまうのだろう。…………とても悲しんでいるのだけれど、………最初の絨毯を買い戻すように言ってあげるべきなのかな」
「…………うわ、究極の選択なんだ?………え、どうしよう?」
「アルテア様は、まだ合流されていないようですね。…………ネア様には絨毯を手放させておいて、あの方は…………」
「おっと、こっちもか。…………ヒルド、僕さ、ちょっと考えたんだけど、雪と祝祭ってことはウィームでは失われたウィームの織り模様なんじゃないかな?」
「だとしても、このような状態です。守るべき女性に我慢を強いておいて……」
そう呟くヒルドはとても怒っていたが、先程のように、血の気の引いた今にも崩れてしまいそうな顔はしていなかった。
いつものヒルドだと思えば、ほんの少しだけ、エーダリアがそんな我が儘を通した事に感謝してしまう。
エーダリアが、怖がってもいないし傷付いてもいないから、ヒルドはやっと安心出来たんだろう。
うん、ほんの少しでもいい。
それでもこんな風に安堵して、怒るだけの元気を取り戻してくれたのなら。
それだけで、どんなに安心出来るだろう。
「僕さ、ヒルドに言わなきゃいけない事があるんだよね?」
「ネイ?…………少し待って下さい。バンルからですね」
だがそこに、バンルからの連絡を受けたアメリアが駆け込んできた。
「どうでしたか?」
「犯人は、あちらで確保されたようです。少し…………煮込んだところ、自分がやったと罪を認めたそうです」
「…………え、早速煮込んだんだ…………。僕が報復するまで、生かしておいてくれるのかな…………」
「煮込んでしまったのだね…………」
「その精霊は、理由も話したのですか?」
アメリアにそう尋ねたヒルドに、しまったと思った。
先に謝っておきたかったのに、この後では意味がない。
「ええ。一度絨毯のあわいに迷い込ませれば、絨毯への執着が生まれ、高価な絨毯を購入する上客になるだろうと思ったようです」
「………成る程。バンルに、その精霊は残しておくようにと伝えて下さい」
「ええ。…………あちらの組織が総動員で向かったようなので、まだ残ってるといいんですが…………」
途方に暮れたように戻ってゆくアメリアを見送り、シルハーンと顔を見合わせる。
「…………ありゃ、そんな理由?」
「まさに、そんな理由というような理由でしたね。ディノ様、絨毯の精霊が不在となっても、絨毯のあわいに影響は出ないものなのでしょうか?」
「……うん。絨毯を司る者は、一人ではないからね。送られてきたあの絨毯を見る限り、相手は王族か王なのだろう。けれども、その精霊がいなくなっても、他に同族の高位の者は残っている筈だよ。あのような品物の精霊は数が多いからね」
「では、…………こちらに届く部位があるようでしたら、心置きなく処理出来ますね」
「わーお、酷い目に遭わせようとしてるぞ。僕も報復したいんだけど…………」
「ネイ、そう言えば、話とは?」
「…………あ、…………えっと、ほら、絨毯だからさ。…………僕が狐の時に絨毯を傷付けたから、エーダリアが狙われたのかなって思ったんだよね。…………ごめんヒルド」
視線を彷徨わせながらそう言えば、ヒルドは目を瞬き、呆れたように苦笑した。
「もしそれが理由だとしても、私が、あなたを斬り捨てはしませんよ?」
「うん。…………でも、僕のせいでって憎まれなくても、…………僕がやったのかって、失望されたりしても嫌だからさ」
「であれば、私の室内履きを早く返して下さい」
「…………ありゃ。…………ええと、どこに隠したっけな」
「ノアベルト…………」
「え、シルもそんな目で見ないで…………」
それから暫くして、リーエンベルクには、ぼろぼろになった千切れた絨毯と、鍋いっぱいのスープが届いた。
騎士達が騒然としたのは勿論だが、シルハーンも怯えてしまうくらいの仕上がりである。
幸い、千切れかけた絨毯は何とか蘇生出来たので、ヒルドが引き取って詳しく話を聞いたようだ。
その後はどうなったのかと言えば、なぜか笑顔でその聴取が終わるのを待っていたエーダリアの会の連中に再び戻され、どこかに連れて行かれたらしい。
アルテアから、無事に合流したと連絡が入ったのは、それから一刻後の事であった。




