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165. それは望ましくない顛末です(本編)



「ローレン!」


馬車が近付いてくるその不穏な気配の中で、涼やかに響く呼び声はどこか切実で寄る辺なく聞こえた。

その光竜もどきめはどこにいるのだとネアがやきもきしていると、どこかを見てはっと身構えたバーレンが素早く飛び出してゆく。


ざっと光の花びらが散るようにして竜化し、空に飛びあがったバーレンは、曇天の空を切り裂く聖なる光のような淡い金色であった。

ネアは、光の系譜の者に相応しいその姿の美しさに目を瞠り、慌ててバーレンを追いかけたダナエが、漆黒の竜姿に転じた凛々しさにおおっと目を丸くする。


そうして、一同が固唾を飲んで見守るその中で、バーレンが何かへしゃげた灰色のものを捕まえて帰ってきた。


光竜は、所謂、にょろりとした蛇妖精にも見える姿の最も古い竜種だ。

咎竜のような禍々しさはなく、見慣れてしまえばこちらの姿の竜種もどこか神々しさを感じるのだが、手足が小さな分、今回のような運搬では体を巻き付けるのだとは知らなかった。


バーレンはどこか満足気な様子で、そうして運んで来た何かをぽいとネア達の前に落とす。



(……………あ、)



よく見ればそれは、灰色だが、鱗の一枚一枚に透けるような淡い金色の滲んだ、バーレンと同型の竜であり、すっかりよれよれになってはいるものの、力なく顔を上げたその瞳は暗いかの国で尊ばれる色彩の赤色であった。



「……………ローレン?」


困惑し、怯えてもいるようなその生き物にかけられた柔らかな声に、ぼろぼろの灰色竜はふるりと瞳を揺らしただろうか。

全身をさざ波のようにざあっと光った淡い金色の光は、紛れもなく光竜そのものの色彩だという気がした。



「ローレン!怪我を…………!!」

「お待ちなさい。これから馬車が来るのに、お嬢さんの足場の魔術を崩す訳にはいかん。その者にこちらに来るように伝えられるかね?」

「は、はい!………ローレン、元の姿に戻って、こちらに来てくれ。何て姿になってしまっているんだ、そんなにボロボロになって……………。っ、……………ローレン」



伸び上がり、エーダリア達の姿の向こうにあの少女を探したネアは、吹き始めた風に灰色の髪を揺らし、必死にこちらを見ている灰色の竜に呼び掛けているあの少女の姿を見た。

ぎくりとしたのは、その足元がけぶるような魔術の靄に転じている事だ。

出会った時には普通の人間にしか見えなかったが、今は、どこからどう見ても人ならざるものにしか見えない。


とは言え、隣の封印庫の魔術師はとても落ち着いているように見え、ディノから、呪いの安定は精神状態に左右されると聞いていたネアは、そんな人が寄り添ってくれている事に感謝する。


心がいっぱいになってしまったのか、声を詰まらせた少女に、うううと、鳴いたのは灰色竜だろうか。


細長い体をくねらせ、尻尾を神経質に揺らしている。

それはまるで、こちらに来たいのにまだ混乱の収まらない野生の獣が、混濁する意識を整えられずに途方に暮れているようにも見えた。

馬車の到達の前にローレンスを見付けてくれたバーレンが、しゅわりと金色の光の粒を纏わせて人型に戻り、やれやれと一族の高位の者らしい溜め息を吐く。



「ほら、お前の宝はここにいただろう。自分で自分の宝も探せないとは、馬鹿な竜だ。さっさと人間の姿に戻って、宝を安心させてやるといい。そのままにしておくと、これから近付いてくる馬車の本体に飲み込まれてしまうぞ。早々にその守護を契約魔術に再構築したらどうだ」


その言葉は、魔物の薬のようによく効いた。

びゃんと飛び上がった灰色竜が、千切れ舞う雷雲のような不思議な光を纏わせてしゅわんと人間に転じる。

貴族めいた服装はあちこちがぼろぼろになってはいるものの、灰色交じりの赤い長い髪の、はっとするような美しい男性だ。



「サラフィア!」



(……………!!)



嗚咽混じりのその声に、ネアはぎくりと息を飲む。

ネアの遠い昔に亡くした家族の名前の響きを僅かに宿し、見知らぬ人が転がるように駆けてゆく。


懐かしい響きに、一瞬混同しかけてしまい、ぐらりと揺らぎそうになった心をしゃんとさせ、ネアは、改めて引き離された二人の再会の現場を見守った。


駆け寄るのは祟りものになるのを案じられていた竜の先祖返りなのだが、小粋なベレー帽姿の封印庫の魔術師は、臆する事なく、隔離結界の内側に彼を受け入れたようだ。


わぁっと声を上げて少女を抱き締め、そのまま、涙が落ちるのにも構わずに号泣し始めた男性は、何を企んだのだと問い質したいこちらの毒気を抜いてしまいそうなくらい、くしゃくしゃになってしまっている。


それでも、わぁわぁと声を上げて泣いてる姿には、愛している、愛していると伝えるような不思議な温かさがあって、ネアはすっかり胸がいっぱいになってしまった。


だが、ローレンスは声を上げて泣くばかりで何も話せていないので、サラフィアという名前だったらしい少女の方が、そんな従兄弟をぽかりと叩き、封印庫の魔術師に謝っていた。



「やれやれ、早くあの魔術の状態を安定させてやらないといけないのに……………」


そう苦笑したのは、見事にあのローレンスを捕獲してくれたバーレンだ。

微笑みには幼い弟を見るような柔らかさがあって、ネアは、ああ、この出会いは彼にとっても嬉しいものだったのだと唇の端を持ち上げる。


「手助けをしに行くのなら、私も行くよ」

「それなら、先程上空から叩き落したのがダナエだと、気付かれないようにした方がいいぞ……………」

「そうなのかな。では、私が先程の竜だと分からないようにしよう」


そんなやり取りから、ダナエが空から叩き落したあの竜を、バーレンが捕縛したのだなとネアは頷く。

そちらは問題なさそうだと椅子になったディノを振り返れば、ネアの大事な伴侶も、どこかほっとしたように頷いてくれた。



ごうっと、強い風が逆巻く。


その向こうに黒い染みのような物が見え、ネアはぎくりとした。

同じように馬車の接近に気付いたダナエ達はエイコーンの二人に駆け寄り、サラフィアが呪いに取り込まれないように、隔離して固定する作業を手伝ってくれるそうだ。


にっこり笑った封印庫の魔術師が、こちらを手伝い終える迄は暫し留まりますと話しているので、あの少女の問題が片付けば、その段階で引き上げるつもりだったのだろう。

小柄な体でまだわんわん泣いている男性を容赦なく少女から引き剥がし、年長者らしい表情で何かを言い含めている。



(ああ、良かった……………)



彼女があの名前を持つのであれば、尚更に幸せになって貰わなければ。

そう思ったネアは胸を撫で下ろし、けれども、物凄い勢いで近付いてくる馬車に視線を戻す。

呪いを迎え撃つ最前線では、既にエーダリアの詠唱が開始され、再会の瞬間を微笑ましそうに見ていた騎士達が視線を前に戻した。



「むぐぐ。あの方達は、早々にこちらから退避させた方がいいのではありませんか?」

「恐らく、呪いに取り込まれないようにと、封印の魔術で固着結界を使っていたのだろう。この場で状態を安定させてしまわなければ、ウィームには入れられないのだろうね」

「まぁ、……………そうなのです?」

「うん。それに、もう一度ここで呪いに近しくなってしまった以上、ウィーム中央に戻す事は避けた方がいい。リモワの小箱との縁を繋いでも困るし、状態を安定させてエイコーンに連れ帰らせるのが一番なのだけれどね……………」


その言葉に、ネアは、そうだったと目を瞬いた。

うっかり、早くウィームに連れ帰ってしまわなければと思ったが、迎えが来たのであればエイコーンに帰るべき人なのだ。

淡い金色の光が弾け、おおっだとか、わぁっと声が上がるそちらはさて置き、ここからは呪いの馬車の討伐が待っている。



(だから、どうか間に合いますように…………)


再会の感動で失念しかけていたが、その中には、サラフィアの息子もいるのだと思い出したネアは、一刻も早く彼女達にここから立ち去って貰わねばならない。

喪ったものと向き合い、その悲劇に引き摺られないよう、一刻も早く、彼女をしっかりと引き離してあげて欲しかった。


エーダリア達の表情が依然として固いのは、それもあるのだろう。

対する封印庫の魔術師が、穏やかに接してあげているのは、まだ不安定な二人の心を揺らさない為かもしれない。



ごおん。

ごおん、ごん。



(………っ、)



響いてくる不思議な音は、普通の馬車の走行音とはまるで違う。

鉄橋を走る列車の走行音のような奇妙な音は、ぞっとする程に重く、そして冷ややかだった。

ふうっと息を吐き、ネアを抱えたディノが転移したのはエーダリア達がいる排他結界の中だ。

ネアはここで、家族と一緒にディノを待つ事になる。



「では、私も行こう。ノアベルト、この子を頼むよ」

「うん。勿論、あんな呪いには触れさせないし、配達人なんか近付けさせないからね」

「ディノ、くれぐれも気を付けて下さいね」


ネアがそう言えば、立ち上がったディノは、ネアを隔離結界の敷かれた地面に下ろしながら薄く微笑む。


擬態をせず揺れ靡く髪は薄闇で光るような真珠色で、この場にいる者達は、もしディノが魔物としての力を大きく振るう場合は、そんな万象の魔物の精神圧にも耐えねばならない。

グラスト達はもう慣れたかもしれないが、アンゲリカや封印庫の魔術師も大丈夫なのだなと、ネアはそんな事を今更考えてしまう。


残された陽はゆっくりと翳り始め、周囲はますます暗くなってくる。

その中で、アンゲリカの持つ槍が青白い光を帯びるのが見えた。

ずっと無言で、騎士達と同じ線上に立ち並んでいる漆黒のスリーピース姿の魔物は、本日は統括の魔物としてこの場にいる。



ごおん。ごおんごおん。



ぶ厚い金属の板を打ち鳴らしたような一際重く大きな音が響き、僅かな傾斜を乗り越えて真っ黒な馬車が姿を現した。



ぐっと周囲の気温が下がり、ぱきりと音を立てて霜が下りる。

吐きだす息は白く、けれども体には不思議な熱が籠ったままなのはどんな魔術の働きの影響なのだろう。

ぴきぴきと虚空にひび割れのような白い線が入るのは、排他結界の表層が凍り付いてゆくからであった。



(……………ああ、あれが、……………呪いなのだ)



今やもう、馬車は最前線の騎士達に肉迫していた。

ゆっくりとそちらに向かうディノの三つ編みが揺れ、白い装いが暗闇に浮かび上がるよう。

アルテアは闇に紛れるように暗くけぶり、けれども、足元にぼうっと赤紫色の光が揺れた。


元々は豪奢な馬車だったのだろう。

屋根の部分や扉部分の装飾は華やかで、御者台には、冷たい青い光を宿すランタンを吊るしている。

御者妖精がいたというその部分は空っぽであったが、捻じれて歪んだ妖精の羽のような不思議な造形が、馬車の屋根の部分から生えていた。


べったりと黒い馬車の窓の奥は見えない。

だが、その向こうに何があるのだろうと目を凝らしてはいけない気がして、ネアは身震いする。


鋭く風がうねり、はっとする程に眩い光がざあっと草原を薙いだのはその直後だ。

それが、あまり目にする事のないグラストの魔術だと分かり、ネアは息を詰める。



(……………いよいよ、始まってしまった)



がおんと、馬車はその光を嫌がるように弾んだかに見えた。

馬車など走らない草原である。

窪みなどに車輪を取られたかにも見えるが、それにしては動きが大きい。

であればきっと、あの馬車そのものがこちらの魔術に反応したのだろうと思うと、まるでそれは大きな黒い獣のようであった。



どこかで馬の嘶きが聞こえ、サラフィア達がはっと顔を上げる。

そちらの撤収は間に合わなかったようだが、今のところは呪いに引き摺られてしまっているような様子は見えない。

目を見開き、馬車を食い入るように見つめるサラフィアの顔を、灰赤の髪の男性が抱き締めて自分の胸で覆うようにした。



どおん。

今度は青白い光が弾ける。


爆撃を受けたようにばらばらと散らばる下草混じりの地面の欠片に、真珠色の淡い光が、精緻で美しい模様を描き重なるのが見えたような気がした。

続いて広がったのは、暗い魔術の光を宿した波紋のようなもので、赤紫色の輝きはアルテアの魔術だろうか。


ネアはエーダリア達の背後に控え、何も出来ない上にその影に隠れさせて貰っている。

サラフィア達についても、前線のディノとアルテア、そして騎士達の戦いも、見守る事しか出来ない。

ぎゅっと指先を握り込んで奥歯を噛みしめ、ただ、目を見開いていた。




こつこつ。



「………っ?!」



その時、こんな状況に不似合いな、ひどく静かな音が響いた。


ぎくりとしたネアは慌てて周囲を見回したが、なぜか、ノア達はその音に気付いた様子がない。

戦う騎士達を支援するエーダリアの詠唱を助けているらしいノアの注意を引く事に一瞬だけ躊躇い、けれども、ここで何かがあってはまずいぞとぐっと拳を握り締めてから声を上げた。



「ノア、………ノックの音が聞こえました」

「……………っ、僕の手を掴んで。絶対に離さないようにね」

「は、はい!」


慌ててノアの手を掴み、しっかりと握って貰う。

けれども、そうして繋いだ手の温かさがここにあるのに、その声は届くのだ。



“届けよう。………届けよう。まだ一つも任務を遂行していないではないか。誰から始める?欠員が出ているのであれば、それを補わねばならない。長い長い、待ち時間であった……………!”



(どこかで上映されている、映画の音声が聞こえてくるみたいだ………)



相変わらず、視線の先では騎士達が前進しようとする馬車と交戦している。

馬車と戦うと言う表現もおかしなものだが、そうとしか見えない様相であった。

馬車を牽くのは首のない四頭の妖精馬達で、その嘶きは、どこか遠くから響くようで、また馬車が不思議な音を立てて跳ねる。



そんな中、どこからともなく聞こえて来る声は、先程ネアが遭遇した配達人とは別人のもののようだ。

もう少し老成していて、だが、力強い。



“何という荒い運転だ。これでは荷物を落としかねない。……やはり、炉が失われたのが手痛いやもしれぬ。……………おまけに配達人も足らないか。………ああ、そうだ。お前!お前が運べばいい。お前からは、復讐を成就させた我らの同胞の匂いがする”



「……………っ、ノ、ノア!」


声の主の姿は見えなかったが、その呼びかけは確かにこちらを向いていた。


竦み上がったネアは慌ててノアの手をぎゅっと握り締め、得体の知れない異変が起きていることを訴えた。

こちらを見た青紫色の瞳に浮かんだ焦燥感に、ああ、ノアにはこの声が聞こえないのだと怖くなる。


今はこうしてしっかりと手を握っているのに、あの声に捕まってしまったらどうなるのだろう。

怖くなって何かを言おうとしたネアは、いきなりノアに口に押し込まれた物を、むぐっと目を丸くしつつごりりと齧る。

乾燥させた檸檬の皮のような苦みの残る酸っぱさに、舌先がじんわりと痺れた。


「こ、これは?………むぐ」

「アレクシスの薬草だよ。多分これで、君への道筋は剥離出来る。存在を確認された以上、暫くは声は聞こえるかもしれないけれど、もう少しだけ我慢していてね」

「は、はい!」



そうして、聞こえてくる声を聞き流せばいいのだと覚悟を決めたネアだったが、その声は、次なる標的を見付けてしまったようだ。



“なんと、そこに、逃げ出した呪いの炉がいるではないか。あの小娘を馬車の中に取り戻せば、我々の任務が遂行出来るだろう!”



歓喜に満ちた声は暗く、そして歪で、ネアは息が止まりそうになる。


ノアにしっかりと抱き寄せられたまま、慌ててサラフィアの方を振り返り、先程まであんなに歓喜のムードであったのに、抱き締めていた大事な竜の事などすっかり忘れてしまったかのように、結界の上から身を乗り出さんとしているサラフィアに、そちらでも異変が起きているのが分かった。


必死に抱き止めているローレンスに、ダナエやバーレンもサラフィアの体を押し留めている。

だが、呪いと引き合う力が強いのか、竜と竜返りの三人がかりでもかなり苦労しているように見えた。



“逃げるつもりだろう、哀れな小娘め。いいか、この中には、あの使用人だけでなく、お前の子供も残されているのだぞ?まさか母親が、我が子を見捨てるのか?!”



「卑怯者!!」



思わずネアは、頭に来てそう叫んでいた。

呪いの中の何かがこちらに注意を向けるかもしれないが、こればかりは我慢出来なかった。


毒のように染み込むそのたった一つの言葉を、なぜ、やっと愛する人に出会えたばかりの彼女に伝えてしまったのか。

彼女はきっと、ウェルバに助け出されるその時までは、我が子を助けてくれと声を上げていた人なのだ。

ここで、その事実を思い出させられたなら、母が子を思い手を伸ばしてしまうのは当然ではないか。



「サラフィア!!」

「っ、そちらに心を傾けるな!!もう一度あの中に逆戻りするだけだぞ!!」



切羽詰まったような、ローレンスとバーレンの声。

なぜかそこにだけ嵐のような風が吹いていて、目を閉じて詠唱を続けている封印庫の魔術師のケープがばさばさと音を立てている。

馬車に向かって伸ばしたサラフィアの手が、指先から煙のようになって崩れて飲み込まれてゆくのが見え、ネアは息を呑んだ。



「嫌だ、行かないでくれ、サラフィア!!サラフィア!!僕はここだ。ここにいるだろう!!!ああ、僕を置いて行かないでくれ!!!」

「……………でも、ローレンス。あの中に、オーレムがいるんだ。………怖がりのあの子が、泣いていたらどうしよう。痛い思いをしていたら?…………私の息子なんだ。助けてあげないと………」



記憶が戻ったのか、サラフィアも泣いているようだった。

そして、そんな彼女に、呪いの中に取り込まれた配達人が呼びかける。



“そうだ。その息子が、どのようにして無残に殺されたかを思い出してみろ。お前だけがこの仕事を投げ出して逃げ出すなど、許されるとでも思ったのか?………お前の息子は、手も目もなくなっているではないか。そうしてしまったのは誰だ?お前の前で、お前の子供に剣を立て、その体をばらばらにしたのは”



その瞬間に響き渡ったのは、ネアが友達になりたいと思った優しい少女の、胸を引き裂くような絶叫であった。

長く長く掠れて、絶望にひび割れるその声に、ネアも胸が潰れそうになる。



“復讐したいだろう?復讐しなければならないだろう。それなら任務を遂行し、もっともっと、沢山の人間を食らわなければならない。お前も所詮、無残に殺された死者なのだ”



「…………オーレム!」




なぜ、その時にそう出来たのかは分からない。

気付けばネアは必死に手を伸ばして、馬車の中に飛び込もうとしていたサラフィアの手を掴んでいた。


そんなネアの体を、背後から抱き込むようにしているのはノアだろう。

辺りにはごうごうと強い風が吹き荒れ、エーダリアやヒルド、リーナなどの近くに居た者達の気配は感じられるが、どこか曖昧でよく見えなかった。



暗い、暗い、靄の中。

ここは、あの呪いに続く道筋なのかもしれない。

或いは、ネアもあの呪いに呼ばれたのかもしれなかった。



「……………駄目です!立ち止まって、振り返って下さい。あなたはもう、あの中に戻る必要はありません!!」



掴んでいる手には温度があって、ネアはなぜか、それが堪らなく悲しかった。


もしここで彼女を取り戻せても、それは元通りではないのだ。

人間としての彼女は既に殺されてしまっているし、恐らくもう、その息子は二度と戻らない。

襲われて殺されるまでの恐怖や苦痛は、どれ程だったことか。



絶望や憎しみは。

そして、驚愕や落胆や、例えようもない苦痛や悲しみは、如何程だったことか。

そう考えると、車の中で焼け死んだ両親の棺が思い出されてしまう。


それは、ネアの元には二度と帰って来なかった最愛の人達で、ネアが守れなかった大切な家族なのだ。

ネアの大事な人達はもう、救う事も出来ずに殺されてしまった。



「……………君か。何を言っているんだろう?ほら、戻る必要ならあるじゃないか。あの中にはまだ息子がいるんだ。私が生まれた時から、ずっとずっと大事にしてくれたジャバスもいる。彼等を助けに行かないと………」

「酷なことを言いますが、そちらはもう間に合わないでしょう。…………ですからせめて、あなたはこちら側に残らなければ」



そこで初めて、サラフィアは振り返った。

乱暴で酷い事を言ったネアに、こちらを見た少女は澄んだ灰色の瞳をしていたが、その眼差しはどこか遠くを見るかのよう。


でも、遠くでエーダリアの詠唱が聞こえ続けていて、ネアの体はノアにしっかりと抱き締められている。

だから、こうやってサラフィアの手を掴んでいても、そちらに飲み込まれてしまうことはないような気がした。



(………そうか。私も呼ばれていたから、彼女と同じところにいられたんだ。…………だとすればもう、この人を止められるのは私しかいないのかもしれない)




「………嫌だ。息子達を取り戻さなければ。……………それに、………そうだ。もっと殺して食べないと。だって、…………私達は、ただ湖の近くの別荘に遊びに行こうとしただけなのに、あんな風に無残に殺されてしまったのだから。…………だから、絶対に、…………その不公平さを許してはならないんだ」



サラフィアは自由な方の片手で胸を押さえ、激昂に震える声でそう返す。

声音は静かであったが、ひたひたと満たされて溢れ出た怨嗟はあまりにも暗く、息が詰まりそうな程に重い。



(……………その息苦しさを、私は知っている)



あまりにも馴染み深いそれは、絶望と孤独の苦痛を和らげる唯一の甘美なる毒であった。

それを少しずつ少しずつ飲み干し、異形のものに成り果ててゆく。




「………悔しいでしょうし、苦しいでしょう。けれども、その先に向かう事は果たして、あなたが欲しい物を手に入れる為に必要なことでしょうか?」



残酷な言い分だが、とは言えネアの一番は彼女達ではない。

だからこそ、その為の説得はまだ冷静さを保てるのだろう。


大事な人達に障りがあるのならこの手を離してしまうべきか悩んだが、耳元で、そのまま続けていいよとノアが言ってくれる。

そうして寄り添って捕まえていてくれる家族の頼もしさに、ネアは安堵の息を吐き、小さく微笑んで頷いた。




「必要、………?」


ネアの問いかけに首を傾げたサラフィアは、もう、そうして引き止めてくれる人の事を忘れてしまったのだろうか。

彼女を呪いの道筋に引き戻した配達人の声は途切れたが、それでも、この強い風が吹き荒ぶ暗がりの向こうにはあの馬車があるのだろう。


連れ戻されて取り込まれたら、もう二度と元には戻れない。

ウェルバの手を借りられたような奇跡は、何度もある訳ではないのだ。



(……………冷静に。冷静に。受け答えが出来ているのなら、まだ正気でいてくれるのだろう。ここで説得を途切れさせて、この人の心を、向こう側に持ち去られてなるものか…………)



冷たい汗を背中に感じ、強い風に足元が心許なく思え、しっかりと敷かれた魔術を踏み締める。

でも、もしこの足が地面から離れても、ノアがしっかりと捕まえていてくれる。



「ええ。不必要な苦しみであれば、そんなものをわざわざ手にするのはお勧めしません。美味しい料理をいただけるのに、なぜ、苦しめられたばかりのあなたが、また苦いばかりの泥などを啜らなければいけないのでしょう?そう考えると、そちらの方が何だかむしゃくしゃしませんか?不公平さや理不尽さは心から憎むべきものですが、その天秤を釣り合わせる事にばかり夢中になれば、折角の美味しい料理を食べ逃してしまいます。そしてそれは、二度と取り戻せないかもしれないのですよ?」



ネアはここで、敢えて、子供の事も事件の事も、直接的な表現は避ける事にした。

こんな時は、その言葉から喪ったものを想像出来てしまうという事こそが、心をばらばらにする程に痛いのだ。

そうして一度囚われたら、恐らくもう元通りにはなるまい。



「…………だが、」

「その料理はあなたのもので、そんな素敵なお料理を用意して貰えるあなたは、とても幸福で、そして狡い人なのでしょう」

「……………え、」


突然の恨み言に途方に暮れたようにこちらを見たサラフィアに、ネアはしっかりと頷きかける。


「私はかつて沢山の泥水を啜り、砂を噛み、石ころを飲み干しました。それは、他にお腹を満たす為に必要なものがなく、選択肢がなかったからです。それだけが私の生かし方だった。…………ですがあなたには、幸運にも、まだ美味しい料理が差し出されています。………勿論、そのような物に最早価値は見出せないと、差し出されたお料理を滅茶苦茶にして、あなたを取り戻したいと願う人の未来をずたずたにするのもいいでしょう。所詮、自分の心は自分のものですし、あなたの嘆きや苦痛を、その人が同じように理解する事は出来ないのですから。そうですね、もしかしたら、こちらに残ってあなたを喪いたくなくて泣いている人の事などぽいとして、その願いをずたぼろにするのもいいかもしれません」



そう言えば、目を瞠ったサラフィアは、ゆるゆると首を横に振った。

ふと、どこかでローレンスが彼女を呼ぶ悲痛な声が、聞こえたような気がした。

ネア達を取り巻く何かが、元の階層に戻りつつあるのかもしれない。



「……………彼は、そんな思いなんて知らなくていい。………いや、彼にはそんな思いはさせたくない。ヴィンセントも、ミルディも………、もう誰も悲しませたくないし、不幸になって欲しくない」

「まぁ、それなら馬車の方に行くのはやめにしませんか?あなたは、いつかの私とは違います。選択肢があるのなら美味しい物こそを選ぶべきですし、そこにいるのがあなたの大切な方ならば、そのような方の手は離してはなりません。おまけに、さては他にもまだ大切な方がいますね?………誰かを愛せるという幸運は、誰しもに与えられる自由ではないのに、幾つも大切な物があるだなんて、なんて贅沢な方でしょう!」



そう荒ぶってみせると、サラフィアはひたりと静かな目でこちらを見た。

悲しげな眼差しは美しく、やはりどこか静かな雨を思わせる。



「……………君は、愛せなかった?」

「ええ。ずっと。………ずっと、いつかの私は誰も上手に愛せませんでした。絶対にそんな風にはなりたくありませんでしたが、まるで閉じ込められているかのようにどうしてもそこから出られずに、結局のところ一人ぼっちで暮らしてゆくしかなかったのです」

「……………君は、復讐をしたんだね」



その問いかけに、ネアは微笑んだ。



「ええ。それが私の願いでしたし、とてもすかっとしましたが、あの行為はどこかで確かに、私の何かを壊したのでしょう。………多分、心のどこかでそのように失う物もある事も、きちんと分かってはいたのです。…………でも、そうして引き返せなくなり、選択肢を奪われるという事は、想像以上にとても惨めで疲れる事ですから、選べるのなら他の道をゆくべきだと私は勝手に思ってしまいます」

「…………そうか。君から見たら、私は狡いか」



(……………笑った!)



サラフィアの口元に僅かな苦笑が浮かび、ネアは、内心では喜びに飛び上がる。

ここで手を抜かずにまだ、説得を続けなければならないが、漸く、彼女の心がこちら側を向いたように思えたのだ。


ネアにはもう配達人の声は聞こえないが、そちらは、馬車と戦っているディノ達が抑えていてくれるのかもしれない。



「まったくです!そして、やはりあなたは、出会った時からずっと迷子だったのかもしれませんね。こうしてお迎えも来たので、そろそろ帰ると良いでしょう。…………その代わり、私の、ご近所に暮らすお友達を得る計画は頓挫しますが、私はとても寛大なので特別に解放して差し上げます」



ネアのその言葉に、サラフィアの顔がくしゃりと歪む。


それは、沢山の事を理解し、我が子やきっと家族のようだった妖精を取り戻せないと知った、理知的で悲しみに暮れた人の表情だった。


でも、二人はそれを決して口にはしないのだ。



「…………うん。……………すまない。私も君と友達になりたかったが、そろそろ帰らないといけないらしい。君が君の伴侶の為ならどんな事でもするように、私は、私のローレンスの為なら何だって出来るんだ」

「ふふ。では、こんなお誘いなどぽいです。きっと竜さんの背中に乗って空中散歩でもする方が、何百倍も素敵ですし、とても楽しいに違いありません」



そう言った途端、ネアは、横から誰かにぎゅっと抱き締められた。

係留役が交代したようだが、馴染みのある体温と真珠色の三つ編みに、驚いて暴れる事はない。


「竜なんて…………」

「まぁ、私の魔物はここで荒ぶってしまうのです?」


くすりと笑ってそう言ったネアに、サラフィアは、もう完全に馬車の方には背中を向けてしまい、ふうっと強張る息を吐いて、周囲を見回したようだ。

その途端に黒い靄がざあっと晴れて、ネアは、いつの間にか自分が、エーダリアの側の隔離結界の中ではなくサラフィア達の結界の中にいることに気付いて目を丸くする。



「……………ディノ」

「あちらはもう大丈夫だよ。ノアベルトが君を捕まえていてくれて良かった」

「………はい。ノアがしっかりと捕まえていてくれましたし、ディノも来てくれたのですね」

「馬車については、まだ調伏や討伐とはなっていないけれど、こちら側へ介入しないように隔離された。彼等が炉と呼ぶ物があちらに戻されていたら、もう少し困ったことになったかもしれない。結果としては、君が止めてくれて良かったのだろう………」

「…………でも、怖がらせてしまいました」

「うん。…………竜なんて」

「むむ、そこなのです?」



隣では、またしても泣き崩れてしまったローレンスに抱き締められ、サラフィアが謝っている。

一度だけ、苦痛を堪えるように馬車の方を見たが、そんな彼女を気遣うように、すかさずローレンスが抱き締めていた。



「…………また君に助けて貰った」



ネアの視線に気付き、ぎゅっと抱き締める大事な人の腕の中からこちらを見て、泣き笑いのような顔で、サラフィアがそう微笑む。

あらためて、幼さを残した姿でも美しい人なのだなと思い、ネアはそんな仮の友人候補に微笑みを返す。


きっともう記憶も戻り、取り戻せない者と、自身の身に起きた悲劇を理解したばかりの彼女は、どれだけの悲しみを堪えているのだろう。

それでも、もう前に進まなければならない。



「私が、そうしたかったのです。なので、その我が儘が通り、あなたが踏み止まってくれて良かったです。……………先程のあなたに触れて、生まれながらのウィームの民ではなく、あなたと血を分けてもいない筈の私が、どうしてこんなにもあなたに親しみを覚えたのかが分かりました」

「不思議だよね。なぜか私も、君には親しみを覚えるんだ。…………ローレンス、どうして唸ったのかな?」

「だって…………」

「いいかい、少し我慢して欲しい。私を助けてくれた彼女と話したいから」

「うん…………」


サラフィアを抱き締めているのでこちらから顔は見えないが、そう頷いたローレンスの声が拗ねている時のディノに似ていて、何となく第一席の気質が見えたような気がする。


サラフィアが呪いに取り込まれずにほっとしたのか、へろへろになったダナエ達は、封印庫の魔術師と労い合っていた。



「この親しみを感じるあなたは、いつかの分岐に立つ私で、私のようにはならずに済んだ私なのでしょう。そして、あの日に私が喪った、私の守れなかった全てでもあった。………だからどうか、幸せになって下さいね。それを願った方々が戻らなくても、その方達にとっては、あなたが幸せになればそれで勝ち抜けたようなものですから」

「やっと気付いたよ。……………君は、ただ私の苦しみに寄り添ってくれるだけの優しい人ではなかった。私と同じなのだな。…………かつての君は、…………私と同じように間に合わなかったのか」



そう言われ、ネアは静かに微笑んだ。


この不思議な感情が胸を凪ぐのはとても久し振りだ。

その心は、熱く冷たく、どこまでもがらんどうで静まり返っている。

かつてのネアハーレイはその中に佇み、そこから逃げ出す為の手段を失い、ずっと一人きりで生きていた。



「ええ。………私は間に合いませんでした。呪いのようなその顛末の中で生き続け、最後に、その中からディノに引っ張り上げて貰えたのです」

「……………うん。不思議だ。こんなによく似たひとに出会えるなんて。…………有難う、君。君に出会えたから、そして私を呼び止めたのがかつてのその道筋を知る君だったからこそ、私は踏み止まれたのだろう。だからこそ、君の名前は呼ばない方がいいね。…………私は呪いから剥離したもので、その呪いを君に紐付ける事は出来ない。……………友達になれなくて残念だ。長年の悲願の、女の子の友達だったのに。でもどうか、覚えておいてくれ。私は、君がとても好きなんだ」



そう言ってくれたサラフィアに、ネアは、さっと手を伸ばしてしまいたくなる気持ちを抑え、にっこりと微笑んだ。


まだ馬車の討伐は続いているが、サラフィアの足元はもう魔術にけぶるようにはなっていない。

しっかりと両足で立ち、ローレンスにへばりつかれている彼女は、何らかの形で己の存在を固定させたのだろう。



間に合えたのだ。



「…………ええ。私もそうだったと覚えていて下さいね。そして、どうぞ、沢山幸せになって下さい。喪ったものが戻らなくても、幸せにはなれるのだと私が自信を持って保証しますから」

「……………うん。有難う」

「そして、あなた方はもうここから離れた方がいいような気がします。………ディノ、きっとまだこの方達には、影響がありますよね?」

「いや、使い魔として契約の魔術で己の領域としてしまったのであれば、もう引き摺られる事はないと思うよ。君が呼び止めている間に、そちらの術式も間に合ったようだ」

「いやはや、他の魔術の扱いは舌を巻く程なのに、単純な契約魔術の扱いがあまりにも下手でひやひやしましたがな」



そう笑ったのは封印庫の魔術師で、こちらはもう大丈夫だからと、仕事を終えてこのまま帰るという。

サラフィアが呪いに呼び込まれそうになった時、この魔術師が足場を守り続けてくれた事で、ネア達に邂逅の時間が許されたと聞けば、やはり偉大な魔術師だったのだろう。

そして彼には、三人揃ってこそあの封印庫の守りとなる、本来の仕事があるのだった。



その足場を残していってくれるのでと、サラフィア達は今回の一件が片付くまでは、ここで待機する事になる。

見届けなければと言われて少し不安になったが、ダナエ達が付いていてくれるそうで、ネアはほっとして頷く。




(まだ、続いているのだ………)




最前線では、まだ、黒い馬車と戦う騎士達がいる。

ディノは内側の呪いに触れないようにその要素をこの場に繋ぎ止める作業を終えたからこそこちらに駆け付けられたようで、ここから先は、選択を司るアルテアの役割なのだそうだ。


さっきまでネアをしっかりと守ってくれたノアは、エーダリアの詠唱を支える役割に戻っている。

その結界にへばりつき、ヒルドが剣で切り捨てた小さな黒い生き物は、強い呪いに当てられ、悪変した生き物であるらしい。



「思ったよりも時間がかかるのですね………」

「あの箱を、馬車から分離しなければならないからね。その作業にはアルテアが向いている。私があれを閉じ込め、グラスト達で呪いの輪郭を削り取り、あの扉を開かなくてはならない。…………扉を開くと箱に取り込まれ配達人にされた者達の姿が見えるかもしれないから、何か聞こえたらすぐに言ってくれるかい?」

「あの卑怯な配達人めは、絶対に許しません………」

「ご主人様………」



馬車がこれ以上前に進む事はないので、引き続きこのまま呪いを削り取り続け、箱を分離した後は呪いを討伐する事になる。

分離させたリモワの小箱は、慎重に一時的な封印管理をし、ガーウィンの側に引き渡す予定であった。



「…………は!」



ここでネアは、とてもとても大切な事をやっと思い出した。

ずっと、何かを忘れている気がしていたのだ。



しかし、ネアが失念していた大切な事を、ゼノーシュはしっかりと覚えていたようだ。

ネア達には、もっと早くに気付くべき、最大の対抗手段があったのだ。








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