蒸留所と箱祝いの妖精 1
その日、ネア達が訪れていたのは有名なウィームの穀倉地帯で、周囲を囲むように聳える山々の冠雪が白いヴェールのよう。
秋には黄金の麦畑となる場所には、湖水魔術で張り巡らされた清廉な水が湛えられ、早春の祝福を集めていた。
「……………ほわ、何て綺麗なんでしょう!」
水が張られた畑は淡い淡い藤色がかった水色に煌めき、時折、水を飲みに来たムグリスやもふもふした謎生物達が触れると魔術陣のように波紋が広がる。
周囲には春の小花が咲き乱れ、冬から花をつけているローズマリーの茂みが今も薄紫色の花を咲かせていた。
森に面した場所には、小さな作業用の小径があり、敷かれた石畳はうっとりと見惚れてしまいそうな淡いミントグリーンだ。
ネアはむずむずする心を何とか宥め、本日は仕事を兼ねた観光なのだときりりとする。
例え、有名酒造所に蒸留酒を買いに来ていようと、その近くにある美味しいおつまみ屋さんを網羅しようと意気込んでいても、まずは仕事を終えてからなのだった。
(しかも、アイザックさんから、リーエンベルクへの依頼は珍しいな………)
アクス商会からの依頼は、どうしてもネアの手を借りたいという事で、正式にリーエンベルクへの申し出があったものだ。
先日ネアがアクス商会に卸した生き物を、新たな就業先に送り届ける仕事なのだ。
その就業先はウィーム領の中にあり、ネアが、以前から訪れてみたかった場所である。
だが、ヴェルリアからの客も多い土地なのでと、訪問のタイミングを図っていた。
今回はアクス商会の依頼という事もあり、また、ヴェルリアでは海で働くもの達を労う祝祭がある。
ネア達が安心してこの土地を訪れる事が出来る数少ない機会だと知ったエーダリアが、仕事を受ける事を推奨してくれた。
(なので、勿論エーダリア様達にもお土産を買って帰るのだ!)
ふんすと胸を張って心の中でそう宣言をしたネアは、手にかけた籠の中でじたばたと暴れた生き物に眉を寄せる。
「この、箱にゃーんは早々に届けてしまいましょう」
「にゃーん」
「むぅ、懐いてみせても無駄ですよ。なぜに酒造所で働くのが主な妖精さんがあんな危険な場所にいたのかは謎ですが、蘇生させたアイザックさん曰く、酒造所で派生した妖精さん達は、お酒造りに携わってこそ輝くようですので、…………む」
酒造所の話が出ると、ネアが籠に入れた白い箱状の生き物は、四角い体でぷいっとそっぽを向いた。
これはもう、仕事が嫌で逃げてきた口だなと頷き、ネアは、そんな箱生物の大好物である乾燥葡萄を見せてみた。
「にゃ!にゃーん!!」
「食べ物は、きちんと労働を修めた方にこそ、与えられるものです。働かずに逃げ出しただけのあなたは、乾燥葡萄を永遠に得られず彷徨う定めなのですよ」
「にゃーん?!」
「それとも、大人しく国内有数の醸造所にお世話になりますか?」
「……………にゃ」
「あら、お返事がないと言うことは、乾燥葡萄はいらないのですね」
「にゃーん!!」
美味しい乾燥葡萄を目の前でぱくりと食べてしまった邪悪な人間に、箱生物はびゃんと飛び上がるとわなわなと震えていた。
しかしネアは震える箱を甘やかすつもりはなく、素知らぬ顔で、見えてきた醸造所に向かう。
箱生物は荒ぶって飛び跳ねていたが、ディノがしっかりと魔術で籠の中に収めているので、出られずに怒り狂ってもがもがむがーと暴れている。
「嫌がっているのかな………」
「むぅ。あの場所よりは余程いいと思うのですが………」
「凄く跳ねるのだね……」
「それにしても、アイザックさんの推薦でお仕事を貰えるだなんて、箱にゃーんは波乱万丈ですねぇ」
「にゃーん!!」
「乾燥葡萄はなしです。働かない悪い箱ですものね?」
「にゃ、にゃーん……………」
「ふむ。では、このまま一生、乾燥葡萄はなしですね」
「にゃーん?!」
この生き物は、エーダリアを陥れようとしてリーエンベルクに届けられた、一通の手紙の中にあった併設空間の中で、ネアが狩った生き物だ。
よく分からないが取り敢えず売っておこうと思いアクス商会に持ち込んだところ、アイザックがこれを見るなり目の色を変えた。
査定と称してその箱を持ち去ったアイザックが戻ったのは暫くしてからで、欲望の魔物の蓄えた膨大な数の魔術の中から見合うものを選び、ネアが滅ぼしてしまった箱生物を蘇生させたのだ。
(とは言え、仮死状態だったみたいだけれど………)
「頑丈な妖精なのかもしれないね」
「にゃーん!!」
「ふむ。ここで、アクス商会もお付き合いのある醸造所で働くのならという約束と引き換えとは言え、すぐに生き返りましたものね」
「……………にゃ」
「それなのに働かないのであれば、もう一度滅ぼしておいてもいいのでは。幸い、良い畑が近くにありますので、これはもう栄養源として…」
「にゃーん?!」
箱型の白いものは籠の中でじたばたと荒れ狂い、畑の肥料になるのは嫌だと必死に訴えている。
しかし、そんな箱生物を見下ろすネアの眼差しは冷たかった。
「アイザックさんと約束をしたのに、働きたくないのですよね?ここに来るまでに何度も逃げようとしましたし、その後は不貞腐れて寝ていました。あの怖い場所から救って差し上げた私への恩も忘れ、蘇生させてくれたアイザックさんへの恩も忘れた悪い箱です」
「にゃ………ん?」
箱生物からすると、ネアには狩られた記憶しかないし、アイザックにもよく働くようにと言い含められた記憶しかないのだろう。
何かがおかしいと首ならぬ体を傾げていたが、ふと気付いて顔を上げると、醸造所がもう真近に迫っている事に気付いてびゃいんと飛び上がった。
「…………まぁ、綺麗なところですね」
「おや、ジンの魔物がいるようだね」
「それは、お酒のジンですか?」
「うん。彼はよく旅をしているから、あまり出会うことはないのだけれど」
「まぁ、そのお酒の名称は、私の暮らしていた世界と同じなのですねぇ」
とは言え、ジンは、ネアが好んで飲んでいたようなお酒ではない。
ネアはお酒には強いものの、好んで飲むのは甘めの口当たりの柔らかなものが多い。
こちらには、グラッパのような食前酒を求めて来たので、ジンとなるとお土産用にした方が良さそうだ。
(あ、…………)
しゃわんと、美しいレース模様のような木漏れ日が落ちる。
醸造所の建物は大きな石造りの建物で、煉瓦のように見える石材は酒蔵鉱石という変わったものであるらしい。
灰色がかったウィスキー色の石材は、なんとも言えない繊細な色調で、床にはローズウッドのような木材が床材として敷かれていた。
開け放たれた扉にはステンドグラスの飾り窓があり、扉を留める為の金具は真鍮だろうか。
その前に立った一人の男性は、牛乳をたっぷり入れたような珈琲色の肌に、ウェーブがかった黒い髪を肩口まで伸ばしている。
給仕のような服装を少し崩し、柔和な微笑みを浮かべた。
(…………あ、瞳の色が)
綺麗な檸檬色の瞳は多色性で、僅かに水色も混ざっているので、見た目以上に、階位が高い魔物なのかもしれない。
「お待ちしておりました。シルハーン。箱祝いをお連れいただき、有難うございます。ご伴侶様も、本日はおいでいただき有難うございました」
「アイザックが引き取り手がいると話していたのは、君だったのだね」
「ええ。彼から連絡を貰い、こちらに。この醸造所はお気に入りの一つでしてね。ですが、ここで作られる新しい酒に向いた祝福がなくて、アイザックに相談していたんですよ」
「にゃーん?!」
「その箱祝いは、いささか反抗的だと聞いていますので、柱にでも繋いでおけばいいでしょう」
「にゃーん?!」
ネアは獲物には心を傾けない主義だったので、まだ躾が終わっていないのを残念に思いつつ、箱祝いという名前だったらしい生き物の入った籠をディノからジンの魔物に渡して貰った。
籠から出られずじたばたしている箱生物は、そのままひょいとジンの魔物の手に籠の持ち手をかけられると、ぴたりと黙る。
とても震えているので、ジンの魔物は怖い上司なのだろう。
(……………わぁ、)
入り口から建物の中を見上げれば、醸造の為の、ネアが初めて見るような立派な設備があり、けれどもその造りが決して工業的ではなく、どこか魔法学校を思わせるような光景である事に感動してしまう。
あちこちに吊るされているラベンダーの束に、醸造の為の道具にはきらきらと光る祝福結晶が育っていた。
天井に枝を広げるのは、屋内で育てられている大きな葡萄の木だ。
その奥では小さな泉がこぽこぽと湧き出していて、鮮やかな藤のような黄色い花が咲いている区画もある。
わぁっと走り抜けて行ったのは小さな毛玉たちで、その奥では、小麦色の髪に緑色の羽が美しい妖精達が仕事をしていた。
「なんて綺麗なところなのでしょう!ここで、美味しいお酒を作るのですね」
「ええ。それぞれの酒に合わせた祝福を持って来ていますから、どうしてもこのように賑やかになってしまうんですよ」
「この子は、甘い酒が好きなんだ。食前酒の揃えを見たいのだけれど、こちらでは扱っているかい?」
「そのような物も、幾つか作っておりますよ。妖精細工の瓶に入れて売っておりますので、女性のお客様にも好評です」
少々お待ち下さいねと微笑み、ジンの魔物は籠に入れた箱生物を連れて奥に向かった。
ネア達は、彼の背後に立っていた美しい妖精に紹介され、醸造所の中にある琥珀石のテーブルに案内して貰う。
テーブルの上には、空いた酒瓶が何本も並び、森や畑の横の小道で摘んで来たような美しい春の花々が生けられていた。
気取らない雰囲気が、何とも素敵でネアは目を輝かせてしまう。
おまけに、案内してくれた妖精はうっとりとするような儚げで美しい妖精で、ネアは、なんて綺麗な女性だろうかと見惚れてしまう。
ふくよかな黄金色を紡いだような長い髪をゆったりと編み込み、澄んだ緑色の瞳は春の草原のようだ。
しかし、ぎゅっと括れたウエストと豊満な胸元の対比を見てしまうと、ネアは慌ててお腹を引っ込ませなければいけなかった。
「こちらでお待ち下さいね。本日は、私達の醸造所に良い祝福をお持ち下さり、有難うございました」
「まぁ、こちらの経営に携わっておられるのですか?」
「ええ。私はこの醸造所の主人の代理妖精なのです。主人は今、足を悪くして療養所に入っておりまして、ご挨拶が出来ない事をお詫びするようにと申しつかっておりました」
「いえ、箱生物を届けただけなので、どうぞお気遣いなく。後はゆっくりとこの辺りを観光して帰ろうと思っているんですよ。経営者の方は、お怪我か何かで………?」
「はい。酒蔵を狙った精霊と交戦して怪我を負ったのです。勿論、私の主を傷付けた精霊には、すぐさま麦畑の養分になって貰いました。うふふ」
「…………む、むぅ。悪さをしたのであれば、致し方ありませんね」
目の前の妖精がヒルドと似た気質だと知ってしまい、ネアは慌てて頷いた。
どれだけ綺麗でも、決して怒らせてはいけない気質の妖精だ。
「お待たせしました。こちらが、この蒸留所で出している食前酒なのですが、まずは試飲をどうぞ」
「…………瓶が」
「はは、この瓶は美しいでしょう?三年に一度新しいものにしているので、収集家もいるそうです」
戻ってきたジンの魔物が並べたのは、香水瓶のような優美な瓶であった。
全部で四種類あり、左側から水色、淡い菫色、無色、青色となる。
その奥に置かれたラベルの絵柄がとても美しいもののシンプルな幅広の円筒形の瓶は、この醸造所の看板商品の蒸留酒だろうか。
「ご覧になっている水色の瓶が、雨の祝福と木苺、隣がラベンダーと朝靄、雪と砂糖、夜葡萄と流星となっております」
「………ふぁ!どれも、素敵でぜいぜいしてきました」
「ネア、落ち着いて。全部買ってあげるよ」
「い、いえ、試飲させて下さるという事でしたので、お味を見てからにしますね」
そう言えば、ジンの魔物と醸造所のオーナーの代理妖精が顔を見合わせてにっこり微笑む。
酒造りに携わる彼にとって、どの商品も大切なものなのだろう。
見た目で取り敢えず全部という買い方よりも、きちんと味をみて気に入ったものを買ってくれる方が嬉しいようだ。
「………むぐ!………む、………むぅ」
ネアは小さなグラスで四種類の食前酒を試飲させて貰い、結果として一番瓶を気に入っていた夜葡萄のものはあまり得意ではないという結論が出てしまった。
その代わり、雨の祝福と木苺のものと、雪と砂糖のものはこれまでにあまり飲んだことのない美味しさで、リーエンベルクへのお土産も含めて六本入りのものを箱買いをさせていただく事にした。
(エーダリア様達とノア、この前のことがあるから、最近は甘いお酒も飲むことのあるアルテアさんにも。ゼノとグラストさんにもあげて、ウィリアムさんとオフェトリウスさんには、この醸造所の看板商品のものを買ってゆこうかな)
「それと、一緒に並べていただいた物の中から、騎士さん風の二名の方にお土産を買いたいのですが、助言をいただいてもいいでしょうか?」
「オフェトリウスなんて………」
「ディノ、先日のお礼ですので、荒ぶってはいけませんよ?」
「浮気…………」
「おや、オフェトリウスでしたら、こちらが良いかと。五十年ほど前からよく一緒に飲むのですが、彼の気に入っているもののラインの新商品なのです」
「まぁ!ではそちらにしますね」
ジンの魔物が勧めてくれたのは、透明な瓶に入った淡い水色の酒であった。
ラベルは星空と雨だれが描かれており、細やかな書き込みのある繊細な絵柄の美しさも、この醸造所の商品の魅力だろう。
それはただのラベルかもしれないが、やはり商品のパッケージとして、購入する客達の心を高めるのだ。
(この醸造所のお酒は繊細な味わいだから、こうして、ラベルからもその雰囲気が伝わる方が分かりやすいのかな………)
例えばここで、ごつごつとした描写の髑髏などの絵柄であれば、ネアは購入を見送ったかもしれない。
また、そのラベルを見て買いに来た客にはきっと、繊細な味わいの酒は物足りないだろう。
詩的で繊細な味わいの食前酒を、妖精の瓶に入れたこの醸造所のオーナーは、そのような点に於いても自身の作る物をよく理解している御仁なのだろう。
アクス商会と取り引きがあるのも分かるなと考えながら、ネアは、続けてジンの魔物が押し出してくれたお酒に目を瞠った。
「…………こ、これは!」
「可愛い。弾んでる………」
「夏夜の祝福とワルツのものです。こちらは、そのままでもいいですが、グラスに注いだ後に、輪切りにした乾燥オレンジを入れて飲むと良いでしょう。雪や雨の土地というよりは、乾いた夏の夜や、熱帯の森などに似合う酒ですね」
「むむ、………ウィームという感じではありませんが、砂漠のテントで飲むのにはいいかもしれませんね」
「ウィリアムなんて…………」
「おや、ウィリアムへのものでしたか」
透明な瓶の中に入っているのは、綺麗に澄んだ青紫色の酒だ。
このお酒をグラスに注ぎ、乾燥させたオレンジの輪切りを浮かべるのだと想像すると、ネアはもうその想像だけで心が弾んでしまう。
色合い的にとノアの分も纏めていそいそと購入を決めると、うっかり目に入ってしまい、買わざるを得なくなった赤紫色のウィスキーのような酒もそっとお会計に押し出した。
こちらは、さくらんぼを使ったお酒であるらしく、香りは甘いが飲み口は甘くなく、喫煙者にも好まれるらしい。
「沢山買えたね」
「むぐぐ、…………今日はひとまず撤退でふ」
「おや、他の醸造所を見なくてもいいのかい?」
「よ、予算の三倍になりました。あまりにも素敵なお酒の揃う、恐ろしいところでした………」
「幾らでも買ってあげるのに…………」
「ですが、近くに、買ったお酒を飲みながらいただける、美味しいお肉のお店があるそうですので、そちらで簡単なおつまみなどをいただきつつ、買った食前酒を一緒に飲みませんか?」
「ご主人様!」
お出かけの時間が続くと分かり、ディノはぱっと笑顔になった。
ネアとてそんな伴侶の気分を察せる良いご主人様であるし、お酒のおつまみ系の料理が大好きなので、ここは譲れないところである。
とても重たい荷物は、ディノにひょいとリーエンベルクに送って貰い、手元には買ったばかりの雪と砂糖の食前酒をひと瓶残した。
もう一つのものも気になったのだが、まだ肌に触れる風が冷たい事もある今の季節の内に、こちらの食前酒を楽しんでしまおう。
「ディノ、箱にゃーんの入った籠がなくなりましたので、手を………むぐ」
「はぐれるといけないから、三つ編みを持っておいで。……ネア?」
「手を繋ぎませんか?」
「…………ネアが大胆過ぎる」
「むぅ。試飲でちょっぴりほこほこしてきましたので、ここは遠慮しません!えいっ!!」
伴侶に容赦なく手を繋がれてしまったディノは、目元を染めて恥じらってしまっていたが、そんなディノを見てしまった買い物客達は、美麗な魔物の無防備な姿にざわざわしている。
中には胸を押さえて座り込んでしまったご婦人もいるので、ネアは、髪色の擬態しかしていない魔物をじっと見上げた。
「……………かわいい」
「むぅ。相変わらずですが、手を繋ぎたいのでこのままでいる事にしました」
「虐待…………」
もしここで、周囲に及ぼす影響を抑えるように言えば、その言葉選びによってはディノを傷付けてしまうだろう。
かつてのネアであればいざ知らず、今のネアはもう、この魔物が、自身の与える影響で孤独を招き寄せていた事を知っている。
なので、周囲の事はぽいっとやってしまい、ただ、伴侶な魔物の手をにぎにぎしておくに留めた。
「さて、お店に向かいましょう!」
「うん。…………ずるい。引っ張ってくるなんて……」
「ふふ、私はもう、燻製料理の盛り合わせと、大麦のかりかりビスケットに三種のパテは決めてあるのですよ!」
この辺りには有名な醸造所が五軒あり、その販売店の他にも、飲食店が幾つも立ち並んでいる。
歩道沿いには春の花が咲き乱れ、街路樹の落とす影はなんとも涼やかだ。
ネアは、出来るだけ周囲のお店を見ないようにしながら、お目当ての飲食店に向かった。
昼時で飲食店も多いので、春先のこの日はなかなかの客足である。
こつこつと石畳を踏みながら歩いていた時にふと、どこかで見た事のある人影が過ったような気がしたが、あっという間に人波に紛れてしまった。




