見知らぬ天井とムグリスのお酒
その朝、ネアは体がぎしぎしと軋んで目を覚ました。
明らかに寝台ではないとても硬いところに寝ているようで、恐ろしいことに首筋には寝違えたに違いないという嫌な痛みがある。
どれだけ深酔いしても、最後は寝台ですやすや寝たい人間は、あり得ない状況に怒り狂い、世界を滅ぼすのも吝かではないという心で周囲を見回す。
「……………むぐ。むぐるるる!」
高貴なる淑女が、快適な寝台を諦めることなど考えられないので、恐らくこれは敵による睡眠妨害だろう。
体を低くして敵に見付からないようにすると、はらりとこぼれてきた髪に視界を遮られてまた小さく唸る。
しかし、どれだけ警戒していても物陰から襲いかかってくるものはおらず、そして、明らかに浴室着であるという悲しい現実も変わりはしなかった。
(どうして…………)
どうして、ここにいるのだろう。
いや、そもそもここはどこだろう。
見上げた天井には、見たことのないシャンデリアが吊り下げられていた。
どこを見ても装飾は繊細で手が込んでおり、けれども角度的なものがまずいのかあまり視界は良好ではない。
このままでは、座りもたれていた謎質感の壁と頭上のシャンデリア、窓の方が少し見えるくらいだ。
ぐぬぬと眉を寄せ、ネアはそろりと視線を下に向け、驚愕に目を丸くした。
「ぎゃ!」
するとそこには、明らかに肌色の率が高過ぎる男性が転がっているではないか。
おまけに一人ではなく、二人もいる。
たいへんいかがわしいので、少しでも早く距離を置かなければならず、ネアは力の入らない体に鞭打って立ち上がろうとした。
なので、そこから先に起きた事件は不可抗力であったと主張させていただきたい。
「むぐ?!」
立ち上がろうとした途端、なぜかネアの膝はかくんと曲がってしまい、力が入らず立ち上がりに耐えられなかったか弱い乙女は、陶器のような不思議な質感の寝台の中でつるんと滑った。
そのままくしゃりと倒れたネアは、目の前の肌色の海にずしゃっと崩れ落ちる。
突然上から可憐な乙女が落ちてきてしまい、倒れていた人物達はびくりと体を揺らしたようだ。
ごすっと鈍い音がしたような気もするが、そこは気にしないことにした。
「……………っ、くそ……………なんだここは」
「……………アルテア、俺の上からどいてください」
「俺な訳がないだろうが。これは……」
「むぎぎぎ。ここはどこなのだ……………。しかも誰かにお尻を触られました。おのれ許すまじ………」
「っ、ネア?!」
ぎょっとしたようなウィリアムの声に、ネアは肌色のお布団の上でじたばたした。
しかし、腕に力が入らずに体を持ち上げることはおろか、立ち上がることも出来ずに弱々しく蠢く事しかできない。
もはや、生まれたての仔馬ですらない。
気分は、飛べないタオルハンカチ生物こと雷鳥である。
「ネア、少し待ってくれるか。まずは俺が起き上がってから、引っ張り上げるからな。因みに、………その、君の体を触ったのはアルテアで、今は固まっている」
「ぐるるる!」
「おっと、落ち着いてくれ。その場所で動かれると、……………俺も少々まずいんだ」
「むぐ。今の最終奥義で力尽きました。私はもう、転がる丸太なのでふ…………」
「おい、………ここはどこだ」
「俺に聞かれても知りませんよ。………っ、シルハーン?!」
なかなか聞くことのない困惑と恥じらいに満ちた魔物達の声を聞きながら、邪悪な人間は少しだけ安心していた。
ここがどこだか分からないとしても、ウィリアムとアルテアがいればきっとどうにかなるだろう。
明らかに服をどこかにやってしまっているが、この際魔物は裸でも頑張るに違いない。
しかし、そんな楽観のバチが当たったものか、聞こえてきたウィリアムの声に、ネアははっと息を飲んだ。
そう言えばと、さあっと青ざめる。
普段であればこんな時には必ず助けてくれるはずの大事な魔物が、どこにもいないのだ。
ぞっとしてじたばたすれば、ずるりと胸の下から引き抜かれた腕が、うつ伏せのままもがもがしていたネアの体を起こしてくれる。
「ディノ!!」
「……………おい!!大人しくしているんじゃなかったのか?!」
「むぎゅ。私は筋肉が営業停止中なだけですので、誰か、先にディノを助けて下さい!」
「……………いいか、お前はさっさと服を着ろ」
「そのご指摘は、使い魔さんとウィリアムさんにお返しします。なぜにはだかなのだ。しかし今はそんなことはぽいです!まずはディノを………」
「とうとう情緒が地下に潜り込み出したな………」
「この状況で、そんな事を気にしている余裕はありません!ウィリアムさん、ディノは無事なのですか?」
「……………ああ。寝ているだけみたいだな。……………奥はノアベルトか」
「なぬ。寝ている………?」
そう呟き苦笑したウィリアムは、幸いにもとても布面積が少ないとは言え、ぴちぴちの水着のようなものは着てくれているようだ。
なお、残念ながらアルテアは完全なる肌色で、奥でうつ伏せに倒れている義兄は綺麗にお尻が見えている。
特にアルテアは近くにいるので視界の暴力と言わざるを得なく、ネアは懸命に見ないようにする努力は投げ捨て、これは大自然に暮らす野生の生き物なのでこんな事もあるのだろうと脳内変換した。
(私は既婚者……………。私は既婚者……………)
ネアは、己の可憐なる乙女の無垢なる心を慈しみそう言い聞かせると、ちょっぴり肌色が過ぎたものは見なかったことにした。
都合の悪い記憶を封じることくらい、身勝手な人間には容易いことなのだ。
「……………ネア?」
「ディノ!……………良かった、私の伴侶が生きています。すぐにそちらに、…………むぎゃ?!」
「………そんなに、浴槽の底に顔を摺り寄せたいのかお前は」
「ぎゅう。少し自立しようとしただけなのに、なぜにお顔が床に向かってしまうのでしょう………ぐるる」
またしてもばすんと倒れそうになったネアは、素早く手を伸ばしたアルテアに肩を支えて貰ったことで、なんとか命拾いした。
既に、ウィリアムもアルテアも立ち上がってしまい、肌色の敷物がない状態で陶器のような床石に顔から倒れると、少なくとも鼻はへしゃげていたに違いない。
それなのに、せっかく助けて貰った人間が唸り声を上げているのは、思うように動かない己の体にむしゃくしゃしているのである。
脇の下に両手を入れて持ち上げられる子供の立ち上がらせ方方式で直立補助を受けていたネアは、補助器具な魔物に吊るされたままじたばたした。
しかし、先程に最終奥義を繰り出したばかりなので、すぐにぜいぜいしてしまう。
爽やかな柑橘系の果実のゼリーなどをお口に運んで貰わないことには、心が持ち直せそうにない。
「アルテア、俺が代わりますよ。そろそろ何かを着ては?」
「立ち上がれるくらいなら、お前ももっと着込めるだろうが」
「はは、これでも大浴場に敬意を払っているんです。ネア、怖かったな。俺が暫く預かろう」
「…………何という屈辱でしょう。私なのに、私の体が支えられません」
伸ばされた手にひょいと抱き上げられ、ネアは、水着一枚の終焉の魔物に回収された。
こちらもビキニ状の浴室着である。
素肌が触れるのでとても肌の温度を感じるが、目が醒めるまではひんやりとした陶器風のものに抱かれていたネアは、じんわり伝わる温もりにほっとしてしまった。
少しだけ、肌が冷えてしまっていたのだろう。
すりりと寄り添えば、耳元でふっと微笑む気配がある。
見上げたネアに、僅かに前髪の乱れた終焉の魔物は、安心させるように微笑みかけてくれた。
(服……………。服と、檸檬ぜり………)
然し乍ら、ここにいるのは繊細な心を持つか弱い乙女なのである。
出来ればまず、浴室着のままの乙女に着る物を献上していただきたい。
美味しい極上檸檬ゼリーをお口に運んで貰うのは、それからだ。
(あ、……………ここ!)
やっと視界が開ければ、どうやらここはリーエンベルクの大浴場らしいと判明し、ネアは目を瞠った。
見慣れないシャンデリアに困惑してしまっていたが、どうやら大浴場には、普段は大シャンデリアしか意識していなかったものの、奥側に小さなシャンデリアも吊るされていたらしい。
(そっか。……………浴槽のこちら側にいたのだわ)
柳の葉と山査子の実を模した美しいシャンデリアには、現在、明かりが入っている様子はない。
窓から差し込む朝の光が、シャンデリアに飾られた結晶石をきらりと光らせる。
しかし、浴槽にはお湯が張られておらず、浴場内には湯気の気配や水滴の一雫すらない。
からりと乾いた、店仕舞い後の大浴場である。
困惑したように周囲を見回していたディノは、眠りこけていただけで、怪我などはしていないようだ。
胸を撫で下ろして息を吐けば、抱き上げてくれていたウィリアムがくすりと笑う。
「ネアが動けないのは、橇遊びの影響だろうな」
「……………むぐ。それを聞いて、昨晩は私が優勝したのだと思い出しました」
「…………シルハーンの橇操作だろうが」
そう呟いたアルテアは、未だにネアがリズモ目当てに優勝してしまったことを根に持っているらしい。
後で、檸檬ゼリーなどを所望しておこうぞと強欲な人間は頷いた。
「そして、思わぬ敗戦に落ち込んだ皆さんと、職人街の路地裏から地下に下りた場所にある不思議なお店で、美味しいシュプリと地酒と、沢山のサラミやチーズをいただきました」
「ああ。かなり飲んだのは確かだな………」
「お酒をしこたま飲み、へべれけのいい気分でリーエンベルクに戻り、そこで大浴場が開いていたので大喜びで飛び込んだところまでは覚えています」
「……………それで、眠ってしまったのかな」
立ち上がりこちらに来たディノが、不安そうにネアの頬を撫でてくれた。
ディノはウィーム風の浴室着なので、ウィリアムよりも肌色面積は少なめだ。
ネアは大事な魔物が擦り傷などを作っていないのかを詳しく調べ、凝視された魔物は少しだけ恥じらってしまった。
「……………お湯がなくなってしまったのは、営業時間外になったからでしょうか?」
「かもしれないけれど、溺れないように抜いてくれたのかもしれないね。皆、浴槽に浸かったまま眠ってしまったようだから」
「まぁ、それなら大浴場さんにお礼を言わなければなりませんね。大好きなお風呂なだけでなく、優しいお風呂です!」
ネアがそう言えば、きらきらしゃわりと大きなシャンデリアが光った。
嬉しくなってしまった人間は、ウィリアムの腕の中で伸び上がろうとしたところ、腰がまずいことに気付いてひやりとする。
「ネア、大丈夫かい?」
「……………お腰様から、異変のお知らせがありました。ディノ、私の腰を助けてあげてくれます?」
「まずは、部屋に帰ろうか。…………ウィリアム?」
「腰なら、治癒をかけるまでは動かさない方がいいでしょう。シルハーン、ネアは俺が運びますよ」
「お前な、その腹黒さは隠せてないぞ?」
「はは、ネアを心配しているのにどうしてそうなるんだ?」
時々、アルテアに向けるウィリアムの言葉は敬語が抜ける。
ネアは、そんな瞬間が仲良しで好きなので、おおっと思いながらそんな様子を窺い、そろそろ誰か義兄の安否を確かめに行って欲しいなとも考える。
(……………ディノも私達も、眠っていただけだったけれど………、)
しかし、奥でうつ伏せのままピクリともしないノアは、果たして生きているのだろうか。
これだけ近くでみんなで話をしていても、一向に起きる様子がない。
へにゃりと眉を下げたネアは、初めて見るお湯のない大浴場をくるりと見回す。
明かりが落ちて朝日の差し込む大浴場を見るのは、初めてだった。
お湯から立ち昇るあのふくよかな香りは微かな芳香となり、色相を変えれば、見知らぬ場所にも見えてしまう。
もし、あの窓を開いてみたら。
そうしたら、外に広がるリーエンベルクの庭はいつの時代のものなのだろう。
そんな事を少しだけ考えてしまうが、帰るべき場所はひとつだけだ。
そして幸いにも、大浴場のどこにもエーダリアとヒルドは落ちていないらしい。
そちらは無事にお部屋に帰れたのかなとほっとし、ネアはくあっと小さな欠伸をする。
「アルテア、ノアベルトを頼みます」
「放っておけよ。自己責任だろうが」
「ディノ、使い魔さんが頼りにならないので、私の義兄を回収してあげて下さい。お顔が無事かどうかも心配なのです」
「うん。……………裸なのだね」
ディノは、浴槽にうつ伏せで落ちている全裸の友人の介抱をするのは初めてなのか、少しだけ困惑していたようだった。
しかし、丁寧に助け起こしてやっているので、ネアはそちらは大丈夫だろうと、少し安心する。
アルテアも、いつの間にか少々の布地を身に付けてくれたようだ。
髪は洗い直しだなと呟いているのは、洗髪したかどうかの記憶がないからであるらしい。
じっと見ていると、指先でぴしりと鼻先を突かれたので、怒った人間は小さく唸る。
いつもなら指先に噛み付くところだが、今は腰回りが深刻な問題を抱えている。
今日は安息日とは言え、売れ残って安くなったイブメリアの紅茶やクッキーなどを仕入れるというとても大切な仕事の為に、体調は万全にしておかなければなるまい。
最後にもう一度ぺこりとお辞儀をして、ネアは、浴室着なネア達と、以下裸の魔物を溺死させないよう、お湯を抜いてくれた大浴場に感謝した。
「……………む?」
「あれ、まだ外が暗くないか?」
「……………おや。時間の亀裂か、あの場所そのものが情景の一つとして朝の光のものを所有しているのかもしれないね」
「もしかして、我々を起こす為に朝の演出をしてくれたのです?」
浴室を出たネア達を待っていたのは、こちらはまだ夜明け前だという驚きの事実だった。
リーエンベルクの廊下は暗く、しんと静まりかえり、窓の外では雪が降っている。
もうイブメリアは終わってしまったのに、ネアは、そんな夜闇にはまだ祝祭の名残りがあるような気がして嬉しくなった。
さすがに廊下に出るまでには衣服を着用してくれた魔物達と、伴侶な魔物にガウンを着せてもらったネアは、誰もいない廊下を歩いてネア達の部屋に向かう事になった。
ネアの運搬係のウィリアムと、一人にはなりたくない選択の魔物、アルテアがいるので、ボールや換毛期用のブラシに溢れた部屋に運び込めない塩の魔物を持ったディノである。
ネアはウィリアムに運ばれている最中から瞼が落ち始めてしまったが、何とか部屋に辿り着くまでは我慢していた。
部屋に帰るとまずは診察を受け、ガウンを脱がされての浴室着での診察は何という屈辱だろうとふるふるする。
本当は浴槽で寝ていたので、さっとシャワーを浴びたかったが、そんな余力がなかったのでディノに魔術洗浄をかけて貰った。
(ノアは、使われていないディノの寝室に寝かせて、毛布もかけておいたし………、アルテアさんはなぜか勝手に浴室を使っているから、お風呂から出たら部屋に戻るのかな………)
「ネア、紅茶だよ」
「……………ぎゅ。私の伴侶が、ポットからカップに紅茶を注いで持ってきてくれました。お砂糖もあります?」
「うん。このような時は、甘いものが良いのだよね」
「ふぁい。ディノ、ディノも疲れているのに、紅茶を有難うございます。体が冷えないように、ディノやウィリアムさんもお好きなものを飲んで下さいね」
「ネアが可愛い………。砂糖を入れながら、三つ編みを引っ張ってくる」
「俺も紅茶を一杯貰おうかな。シルハーン、飲みますか?」
ディノのものはウィリアムが用意してくれ、三人はほこほこと湯気を立てる紅茶を飲み、今夜の出来事に想いを馳せる。
「……………あの階段の下にある、不思議な場所のお店は、お酒も美味しくてとても楽しかったですね」
「………ノアベルトは、あの段階から脱ごうとしていたな……………」
「叱ってくれるヒルドさんがいたので、事なきを得ましたが、すぐに脱ぎたくなる義兄なのです」
「どうして、楽しくなるとすぐに脱いでしまうのかな…………」
「ディノ、あれはどうやら、大事にして欲しいという無意識の欲求が爆発するみたいですよ。着ているものを脱いでしまうと、みんながわぁっと寄ってきて面倒を見てくれるでしょう?」
「……………ノアベルトが」
「ですので、そんな時は、事前に撫で滅ぼしておくのもいいかもしれませんね」
「撫で滅ぼすのだね………」
朧げな記憶によると、エーダリアとヒルドも一緒に大浴場に行ったものの、来年の橇の改良にかかりたいエーダリアがそわそわしてしまい、そんなエーダリアをしっかり寝かしつけるべくヒルドが同行し、二人は先に浴室を出たのだった。
ネア達は、疲労した体をじんわり温める素晴らしいお湯からなかなか出られなくなり、ずるずると長居をしている間にそのまま寝落ちしたらしい。
誰も溺死しなかったのは、やはり大浴場の優しさのお陰だったのだ。
「来年からは、橇遊びの後は早めにお風呂から上がりましょうね」
「うん…………」
「それにしても、私はディノの隣にいた筈なのに、あんな風に離れてしまうなんて。ぷかぷか浮いて端っこまで流れてしまったのでしょうか………」
「浴槽から湯が抜かれても、誰も起きられなかったのだね………」
ちょっぴり悲しい気持ちになり、ネアは、そろそろ最愛の寝台で就寝することにした。
しかしここで、まだアルテアが浴室から出てきていない事に気付き、ぎくりとする。
「ディノ、……………アルテアさんがまだ戻ってないのですが」
「え………」
「……………まさか、また寝ているなんて事はないだろうな?」
慌ててウィリアムが浴室に向かい、まさかの、本日二度目の湯船で寝落ちしていた魔物の第三席を保護してきてくれた。
ネアは最初、安らかにお亡くなりになっているのかと悲嘆に暮れてしまったが、眠り方がとても静かなだけで息はあるようだ。
部屋に届けておくのも心配になり、すやすやと眠る選択の魔物は、ノアの隣に寝かしておくことになった。
「念の為に、俺もこの部屋にいましょう。シルハーン、長椅子を借りても?」
「うん。そうしてくれるかい?」
「まぁ、橇の後で長椅子だなんて!ウィリアムさんも、アルテアさんとノアのお隣で…」
「ネア。悪いが、それはない」
「むぐぅ。では、私の隣です!」
「ん……………?」
「ネアがウィリアムに浮気する……………」
「ここは、また誰かが無意識に浴室に迷い込まないように、遭難時の心得的な雑魚寝とするのです!決して、もう眠たくて堪らないので一番楽な解決方法を選んだのではありません」
「ご主人様…………」
かくしてネア達は、みんなで同じ部屋で眠りにつくことになった。
優しさに包まれているご主人様から各自個別包装にして貰っていたものの、朝になって、全裸の塩の魔物と共に全裸で寝台にいたことに気付いた選択の魔物が、ばたんと寝台から落ちる音がしたが、ネアは起きたのであれば元気なのだろうと、むにゃむにゃと眠りの世界に戻った。
なお、事態を重く見たアルテアの捜査により、ネア達が昨晩に飲んだお酒には、ムグリスの祝福のかかった冬麦のお酒が混ざっていたことが分かった。
ムグリスディノが温めるとこてんと眠ってしまうように、あまり長くお風呂に入ると昏倒してしまう効果があったようで、早めに浴室を出たエーダリアとヒルド以外は皆、保温効果による熟睡の影響を受けてしまったようだ。
イブメリアの翌日だったので遅めに開始された朝食の席では、とても荒んでいる選択の魔物と、どこか無防備な困惑の目をした塩の魔物が、ぽそぽそとヴェンツェルから貰った氷蟹の身を入れた冬ジャガイモのポタージュスープを飲んでいる。
このスープの驚きの美味しさに頬を緩めたネアは、歓喜の中でスープのお代わりを所望したのであった。




