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とある下僕の新人案内




「ここはね、会の支部の一つなんだ」



そう説明すれば、新しい会員はへぇと小さく声を上げる。


二人が歩いているのは、真夜中の回廊の一つを改築したもので、連なるシャンデリアは銀水晶の中に、星や月などの深い夜の光を蓄えたものだ。


ざわざわと窓の外で風に揺れるのは、夜を縁取る特別な木々である。

ここは、魔術的な階位の低い会員達は足を踏み入れられない、特別な支部の一つだ。



「だいたいの説明は聞いたかな?」

「会員の割り振りの説明は、君から聞くように言われている。アイザックに意地悪されたかな?」

「どうだろう。…………けれど、会計殿は、君が入会するのは嫌だったみたいだからね」

「俺は、落ちる筈のないウィームを拠点とする魔物がウィームの歌乞いに籠絡されたと聞いていたのだけれど、どうやらアイザックは違うみたいだね」

「…………おや、アクスの代表のお気に入りに近付いてみようと思ったのか?」



この会への入会理由は様々だ。

純粋な下僕もいれば、会長のように、ネア様が伴侶の魔物と幸せに暮らす事を至上とする者もいる。


だが、会員達が唯一許さない動機があるとすれば、それは、ネア様ではなく会員達を目的に入会しようとする不埒者だ。


ウィームには銀狐愛好会を含め幾つかの会があるが、その中でも比較的過激な会員の多いウィーム領主の会と違い、ネア様を見守る会は会員達の多様性を認めてきた。



しかし、入会の動機がネア様でないのなら、そのような愚かしさであの方の名前を拝する場所に踏み入った以上は、生かして返す必要もないだろう。


どのような理由があっても構わないが、その理由の一端には必ずネア様がいなければならない。


当然の事ではないか。



「彼女との出会いの動機はそうだね。けれど、アイザックのお陰で良い出会いをしたよ。もっと個人的な執着だと思っていたけれど、俺と同じような動機でこの会に所属しているのなら尚更、俺も彼くらいの肩書きを貰えるように頑張るかな」



(ああ、…………この瞳だ)



しかし、そう語った山猫の瞳の色を見て、これならば問題あるまいと騒ついた胸を鎮める。


どうやらこの山猫も、ネア様の魅力に引き落とされた哀れな観察者であるらしい。

そのどのような魅力に惹かれるにせよ、この会にはこんな目をした者達が大勢いる。

そして皆、幸福そうに日々を送っていた。


ここには、長く続く退屈な日々に飽き飽きとした無機質な瞳をした者達は一人もいない。

長命高位の者達こそ幼子のように瞳を輝かせて、ネア様の尊さを見守っているのだ。



「……………彼は、ネア様の事を女性として、或いはご主人様として敬愛している訳ではないが、彼女の引き起こす事象を愛する会員なんだ。君もそうかもしれないな」

「ああ、俺はそちらだろうね。彼女は、………何て言えばいいのかな、一級の娯楽のようなものだ。これまでに俺が、恐ろしく悍ましいと思った魔物達が、あれ程甲斐甲斐しく面倒を見ている。そんな光景を見るのはこの上ない愉快さだし、大抵の女達が跪く俺に野生の獣の躾け用のクッキーを食わせる始末だ。こんな楽しみは、他にはないかな」

「……………躾け用のクッキーを」



会長から、この新しい会員は調伏された者なのだとは聞いていた。

しかし、あらためてその内容を聞くと、羨望のあまりに指先が震えてしまいそうになった。

その幸運の大きさにも気付かずに、目の前の緑の瞳の精霊は、ご主人様から授けられた躾け用のクッキーを口にしたらしい。


どうして会長に彼の入会案内を任されたのかを理解し、微笑みを浮かべる仕草で表情の揺らぎを誤魔化した。


このような相手となると、他には副会長のイーザや、肩書きはないものの飛び抜けて高位の会員でもあるミカなどでなければ対処するのが難しくなる。


浅ましくもご主人様に何かを強請ろうとは思わないが、それを享受した者を羨む事までは止められない。



「………君達のような、純粋に興味だけを理由にしてネア様の活動を見守りたいという欲求から会に入った者達を、我々は観察者と呼んでいる。会の中では少数派だが、現在は明確に分類されているだけだと、十四人がこちらに属しているな」

「……………随分と多いね」

「けれども、少数派ではあるな。最も人数の多いのが、ご主人様に仕えたいと願う正会員達で、俺もこちらに入る。正会員にはその中に細かな区分があるが、これは有事の際などに必要なものなので今は割愛しよう」

「…………有事という事は、あのお嬢さんが危ない目に遭ったりするのかい?」



回廊を歩きながら話をしていると、隣の男が興味を唆られたのか瞳を細めてこちらを見た。

その仕草の滑らかさから細身に見えるが、こうして並んでみればジルクという男は意外に長身である。

こちらは竜種であるのだから、他の種族とこれだけ目線が近いことは滅多にない。



(ネア様は竜がお好きだと聞いていたが、同時に毛皮を持つ生き物もお好きだ。山猫の精霊は山猫姿の擬態を得意とすると言うから、そこに惹かれてお情けをいただけたのかもしれないな………)



だが、山猫は大きな獣だ。

ネア様が最も愛する小さな毛皮の生き物ではない事に密かに安堵し、大切な会の規則を教える事から始めた。



「これは覚えていて貰おうか。我々は、あの方が知り合いとして認識している者達以外が、あの方に接触を図る事は許していない。それでは、汚らわしい野良下僕達と変わらないからな。…………この会は、我々が正しく僕として振る舞えるよう、その規律を求めて作られた組織でもある。…………だからこそ、我々はどれだけご主人様の身を案じていても、大抵の場合はあの方の身の危険にも介入はしない。これは、ご主人様の周囲にはそれを助ける者達がいるという前提の上ではあるがな」




冷静に説明しようとしてもついつい熱が入り過ぎてしまったが、ジルクは短く頷いたので、理解してくれたらしい。



実はこの規則については、清く正しい下僕としての心を持つ正会員となるような者達の他には、この観察者達が最も理解が早いのだ。


盛りのついた階位の低い下僕達は、すぐにご主人様と接触したがる。


それを戒めるのも正しい下僕の役目だが、中にはご主人様の通り道に倒れていたら踏んで貰えるだろうかと考える愚かな者もいるので、その取り締まりは厳しくなる事も多い。



「成る程。下僕という役割だからこそ、ご主人様の身の回りで解決が出来る事の場合は、多少の危険を覚悟の上で、あえて見守る事に徹するんだね」

「勿論、状況を上層部に報告の上、危険を取り除くよう指示を下される事もある。だが、大抵の場合は俺達からネア様に接する事はないな。ただ、君は知り合いだから、そちらの方面からも手助け出来るだろう」


会員の中でも、自分の判断でネア様を助けられる者達もいる。

知らないからこそ不介入なのだと話せば、ジルクは得心したようだ。


何も会としても、ご主人様の危険を放置したい訳ではない。

ただ、本来はご主人様が一人で、或いはその伴侶の方と乗り越えるべきものに、ずかずかと土足で踏み込むような真似はしたくなかった。


例えそれが小さな危機や不快感であっても、時としてそのようなものは絆を育てて愛情を豊かにする。

見ず知らずの他人が、踏み込んで捥ぎ取っていいものではない。


「知り合いでもない奴から急に手助けされたら、あのお嬢さんはまず疑う事から始めそうだ。確か、副会長や真夜中の座の精霊王は顔見知りだったね」

「ああ。自身も顔見知りである君には必要のない事だが、ネア様との接点がない新規会員達には、そのような場合には誰の指示を仰ぐべきかも教えられる。リーエンベルクの騎士達や会長か副会長の判断が一番だが、アイザックや、今は国を出られない季節であるものの氷竜のベージ、夜海の竜のリドワーンなどに相談するのもいい。勿論、俺でも構わないが、俺はそこまで親しくはないからな」

「尤もな理由だと思うよ。ただ、接触を許された者達が限られていると、それを不満に思う会員が出てきたりはしないのかな?」



そう尋ねたジルクに、小さく頷いて回廊の奥に飾られた縄の前に立った。

これは、運命的に沢山の縄を下賜される事が多かったベージから、会に寄付された一本の縄だ。


あの縄を見る度に、ネア様から貰ったチーズの包装にあった麻紐を収めた胸ポケットに触れ、その慈悲深さに胸を震わせる。

自分に贈られた縄がこの手にあるのだと思えば、世界は明るく心は軽やかだ。



「幸い、我々は下僕だからな。陽の下に出る事を好まず、ひっそりとご主人様を見守る事を望む者達が多いんだ。ただ、要観察者と呼ばれる特定の会員については、監視者と呼ばれる担当者をつけて厳しく監視している。……………これは主にニエークだ。階位の低くご主人様との接点もない会員であれば、排除して終わらせるばかりなのだが、さすがに雪の魔物を崩壊させる訳にはいかない」

「……………会長からも、雪の魔物は少し独特だと言われたよ。管理する為に在籍を許しているという感じなんだろうね」

「高位の魔物だから、有用な知識や経験があるのは確かなんだがな。ウィームと雪が切り離せない関係にあることも理由の一端だ。会報や活動報告書を与えておけばそれで満足もしてくれるから、最近はあまり騒ぎになることはない。……………それに、正会員の多くはそのようなもので満たされるんだ。よく、ご主人様の軌跡を追う催しも行われる。シュタルトのブランコは人気だから、一度体験ツアーに参加してみるといい」

「……………おお、あの高位の魔術師の滑落事故も多いブランコに、お嬢さんは乗ったのか…………」

「ああ。ご主人様のお気に入りだ。片手を離してブランコに乗りながら狩りをするらしい」



そう教えてやれば、山猫は目を丸くしていた。

実際に乗ったことがあればどれだけ危険なものか分かるのだが、ご主人様はそれに乗って狩りをしてしまうのだから凄い。



「会員の区分は、これくらいかい?」

「いや、他にもウィーム保全型と呼ばれる会員もいる。これは、ネア様を調律機能として見ていて、リーエンベルクの騎士達の様に厄除けの信仰として見ている者達と、ネア様が興味を示した分野に注視し、今後の災厄などの予測を図る者達だな」

「ほお、目利き達だな。観察者にも近そうだ」

「更には職人型。これは、ネア様のご贔屓の店などの職人や料理人が多いな。他には、家族信仰型。これは、伴侶である契約の魔物や、ウィーム領主との関係性を含め、リーエンベルクの現機能そのものを支持し、その上でネア様の存在の重要性に感謝を捧げる者達だ。会長もそうだし、ウィーム領主の保護会の幹部もこのような形で二重在籍しているが、彼等は最近になって所属したばかりなんだ」

「……………会員数が妙に多いと思ったけれど、そのような者達も内包しているのか。もう少し閉鎖的な組織だと思っていたから、意外だった」

「厳密な線引きはあるが、そこまで間口を狭めないことで、第三者的な視点も補えるからな」



実は、この下僕ではないがネア様を尊重する者達の入会を受け入れるか否かは、正会員達には判断が難しかった部分である。

主に会長と会計などが主導し実現した新たな取り組みで、確かにそちらとの連携を図るようになったことで、多方面からの情報が入るようにもなってきた。


外部機関の者を兼務者として駐在させるような仕組みなのだが、思っていたよりも上手く回っており、ネア様の思わぬ情報も得られるので、会員達からも安堵や喜びの声が上がってきている。



「ところで、ここに飾られている、割れた瓶のようなものは何なんだ?」

「ああ、これはご主人様が踏み滅ぼした、牛乳瓶の精霊の残骸だ。あの方はこれ迄にも多くの者を踏み滅ぼしてきたが、視覚的に美しく音も素晴らしかったと会員達に好評なんだ」

「……………新しい世界の扉が開いたぞ。……………その、滅ぼされた者も、羨望の対象になるんだね」

「勿論だとも。俺も、寿命が来た時にはご主人様に踏み滅ぼされたいが、そのような浅ましさをあの方に向ける訳にはいかないからな」

「……………となると、踏まれた者達も羨望の対象に?」

「なるとも。俺はかつて万象の魔物に狩られ、あの方の命令で捨てられた竜だが、俺の王は、ネア様に踏まれたばかりではなく危うく逆鱗を損なわれそうになったらしい。……………実に羨ましいことだ」


この会の領域の中では、会員達は自由だ。

だからこそ素直にそう言えば、ジルクは少しばかり呆然としたままゆっくりと頷いた。



「……………ああ、それと忘れていたが、保護者型の会員も一人いる」

「保護者型……………」

「山猫商会の者なら、スープの魔術師という人物を知っているだろうか?」

「……………ああ、よく知っているよ。砂猫商会も山猫商会も、決して手を出してはならない人物の一人として、従業員達に徹底させている。……………まさか、いるのかい?」

「ああ。ネア様を娘のように思っているらしいな。伴侶である契約の魔物も義理の息子のように感じているそうで、会長とも仲がいい」

「……………娘?……………あの、敵味方関係なく、気に入らなければ滅ぼしてスープにしてしまう気難しい災厄の魔術師が、……………娘?」

「そちらの評判を聞いていると、驚くのも当然だろう。俺も驚いたが、スープの飲み方が満点なのだそうだ。因みに、彼はウィームにスープの店を持っていて、店に行けば普通に彼のスープを飲む事も出来るが、スープをしっかり味わうことを肝に銘じておくといい。ネア様が好きなスープだからと冷やかしで店に行った準会員が、そのまま行方不明になったこともある」

「……………それはそうなるだろう。何しろ、凶悪なあのスープの魔術師だからな。俺の仲間の一人も、いい出汁が出そうだとスープにされてしまった」



会についての説明をしながら展示室を巡り終えてしまうと、ネア様のお気に入りの食材だけを集めた食堂で休憩することになった。

藍色の夜霞みの鉱石を床石に使い、霧の結晶石を壁に使った広い空間は、会合がある時には食堂になったりもする場所で、今日のように大勢の会員が集まっていない時にも、誰かしらはいることが多い。


注文用のカウンターに歩いてゆけば、今日の料理人は知り合いだったようだ。

こちらを見て笑った、同じ時期に会員になった彼は、普段はウィームの市場で生花の店の搬入担当をしていて、一日の半分は会の施設で料理などを作っている。


「やあ、ワイアート。新人研修はどうだい?」

「彼は飲み込みが早くて助かるよ。我々の会計と同じように観察者だ」

「ああ、観察者側の会員は大歓迎だよ。兼務者達と違って同志という感じが強いし、一文字違いの要観察者と違って問題を起こさないからな」

「歓迎されるなら幸いだ。これから、宜しく頼むよ」

「今日は、ネア様のお気に入りのメニューが幾つか並んでいるが、どれか食べてゆくかい?小海老サンドは今の時期だけのものだし、リーエンベルクの朝食セットと鴨肉のメニューは必ずある」

「この時期なのに、雪菓子も置いてあるんだね」

「勿論だとも、ネア様のお気に入りの菓子で、ここにはアイザックやワイアートがいるからな」



ジルクが頼んだのは、小海老サンドと小さめのクネルグラタンのセットだった。

食後にメランジェを飲むのが正会員の作法だが、このように湖水メゾンの葡萄酒の組み合わせも悪くない。



「こういう楽しみ方もあるとは思わなかったよ。彼女が、あちこちで食べたり飲んだりしたメニューが再現されているとなると、ここに来れば随分と珍しいものも味わえるんだろうね。……………ああ、この湖水メゾンの葡萄酒はいいね。あまり数が出回らないが、やはり格別だ」

「今はソースを切らしていてメニューにないが、サナアークの串焼肉もお勧めしておこう。秋からはホットワインや揚げ菓子なども出されるようになる。君が料理人達と話していたメニューも、近い内にメニューに並ぶだろうな」

「役に立てたようで何よりだ。せっかくだったからね」



ジルクから提供されたのは、ネア様が夏夜の宴で食べていたという、黒パンのサンドイッチの情報であった。


物語のあわいの中のザハのメニューでもあったらしく、そう言えばザハには黒パンのサンドイッチがあったなと料理人も手を打っていた。

具材などは少し変わっているようなので、そのあわい仕様のサンドイッチも人気が出るに違いない。


その後は、ジルクと少しだけ会の活動とは別の話をした。

商人をしているだけあってジルクは様々なことを知っており、思わず質問を重ねてしまったりと、なかなか興味深い時間になる。


氷竜程ではないにせよ、雪竜も閉鎖的な一族には違いない。

こうして本来なら知り合えないような者と出会えるのも、ネア様が齎した可能性であり喜びなのだ。



「ああ、リドワーンは知っているよ。正確には、彼の兄と仲が良くてね」

「であれば今度、彼にも紹介しよう」

「しかし、その為にウィームに永住を決意するとは、かなりのものだなぁ……………」

「海竜達は、実際にネア様の粛清を目の前で見る事が出来ているからか、彼の他にも海竜の会員もいるんだ。とは言え、海を離れられる者達はあまりいないから、会報誌を取り寄せるだけの者が多い。夏の系譜や海の系譜の者達は少ないから、会でも大事にされている」

「確かに相性の悪い系譜は多いかもね。春と夏は合わなさそうだ」

「黎明や正午の系譜とも、そこまで相性は良くないかもしれないな。砂の系譜もあまり聞かないし、竜種の中でも地竜との相性もあまり良くないだろう」

「……………一つ気になったんだが、女の会員はいないんだね」


周囲を見回しそう尋ねたジルクに、ワイアートは首を振った。



「何人かいるが、正会員ではない。領主の会からの兼務者や、ウィーム保全を目的として入会した女性達だな。元々、女性の入会については、周囲に高位の方々が多いこともあり審査はかなり厳しいようだ」

「ああ。会員や、彼女の周囲の者達が目当ての女が入り込みかねないんだな」

「実際、過去に一度そういう事があった。ネア様に危害を加える可能性ありということで、ミカが排除してしまったようだが……………」

「はは、そりゃ手厳しい。だが、女が少なくて助かるよ。今の雰囲気が気に入っているから、出来ればこのままであって欲しい」


聞けば、この山猫の王は女達を過分に引き寄せる体質であるらしい。


それはもう資質に近いもので、面倒なので一晩に複数とということも珍しくはないのだとか。

女性と過ごす時間も嫌いではないようなのだが、ここでは男仲間とあれこれ話したいのだと嬉しそうに話しており、ネア様の狩りのリストを捲る手は四周目に入っている。



「……………ああ、俺もそのくらいに生まれたんだ」

「何だ、同じくらいの歳じゃないか。それにしては階位が高いんだね」

「竜は、卵のままの時間も長いからな。だが、数年前まではまだ身の内の魔術が整わず、幼体だった。やっと階位も上げて、ネア様のお役に立てるようになってきたところだろうか……………」



ジルクとはその後、年齢が近いと分かり意気投合した。

今度の新月の夜に、リドワーンと三人で飲みに行くことになり、今から楽しみにしている。



だが、そんな予定もネア様次第だ。

ネア様に何か動きがあるようであれば、会員は勿論、ご主人様の動向を最優先とするだろう。










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― 新着の感想 ―
[良い点] この、ネア様の会のお話が何度読んでも大好きです。推しがいることで生き甲斐になり、またそのファン同士で交流するのもとても楽しいですよね。長命な人外者達がそんな楽しみを得て、生き生き活動してい…
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