隣のビルに似てきて その7
「生クリーム?」
..なるほど、ただ同じものが出てくるわけじゃないな..。
5分後..。
「さっき話していたケーキじゃないですか?コーヒーだって言ったのに。」
「2杯目の青空コーヒーは同じ値段でケーキがつくんです。」
「それは素晴らしいですね。」
「俺達が会議でここを使わないのは、様々な会社の入る新社ビルが話を聞き取れないようにするためだ。」
「居酒屋の個室とか?」
「それは失礼。」
マスターは言う。
「390円でケーキとコーヒー..。」
「ケーキはスタンダートタイプとその日に出すオリジナルのものがあります。」
「雨で、生クリームの消化が悪そう..そんなときはこうした練乳をお出ししています。」
「へー。」
..まあ、でも個人の店なのだから、あり得るか..。
「でも、なんで異動ってわかったんですか?」
俺は尋ねた。
「雨の日のコーヒー豆の移動先の出荷を30分前、田中さんから聞いたんです。何しろ、部下と異動するから、用意をお願いしたいということでした。」
「なるほど、田中さんでしたか..。」
「出逢いには元手が必要だ、それはどこでも変わらないものでもある・・・。」
「俺は移動先の部下にこの味を覚えて活かしてほしい..。」
「そんな時間を買っていくのは、会社商売そのものだと思う・・。」
「無駄な時間はないと言えば、それまで、でも、くつろげる時間がないというのも、それまで・・。」
「凝縮された一杯は、人生と同じなんだと、ここに来て学ばせてもらった・・。もちろん、いい意味で、実費で・・。それでも、そうした思いが勝っちゃうときもある・・。」
「それが、異動先でも同じ気持ちでいたい俺からのプレゼントだ・・。」




