変わらないもの
このページを開いていただきありがとうございます。
「たまもや」と申します。
二日ほどお休みしていました、もし楽しみにしてくれている方がいましたら申し訳ないです。
今後も何かない限り、毎日更新頑張っていきますのでよろしくお願いします。
今回は三題噺企画、第七弾となります。
お題は、
「ポニーテール、三日月、駄菓子」です。
お楽しみいただけると幸いです。
河川敷に座ってみると、夏はすっかり過ぎ去ったのだと感じる。セミの声は鈴虫の声になり、半そででいると少し肌寒く感じる。そして何より、日が落ちるのが早くなった。この間まではまだ明るい時間だったのに、今日はもう奇麗な三日月が出ている。
「なにやってんの?」
後ろから声をかけてきたのは、僕の同級生で幼馴染、そしてさっき呼び出した相手だ。
「お月見」
「いや、完全に三日月なんだけど」
そういうと隣に座る。ふわっと揺れるポニーテールが月明かりに照らされている。
「別に満月じゃないとお月見しちゃいけないって決まりはないだろ?」
「まぁ、そうだけどさ」
そういうと彼女は月を眺め始めた。
「もうすっかり秋だね」
「そうだな」
「仕事は順調?」
「ん、まぁ、いつも先輩に怒られてるよ」
「でしょうね」
「お見通しかよ」
「何年の付き合いだと思ってんのよ」
「かれこれ20年くらいか」
彼女とは幼稚園で出会った。それから大学を卒業するまで一緒で、家が近いことから社会人になっても付き合いは続いている。
「それで、何があったの?」
「まぁ、お月見団子でも食べようか」
そういって、白、ピンク、緑の団子が串にささった駄菓子を取り出し彼女に渡す。
「あ、ありがと」
「飲み物もあるぞ」
「ニッキ水か」
「そうそう」
「なんで駄菓子ばっかりなの?」
「まだまだあるぞ」
僕は、先ほど買ってきた袋の中身を見せた。
「さすがに買いすぎでしょ」
「全部で1万円ちょい」
「大人買いが過ぎるわよ」
そういうと彼女は先ほどのニッキ水を開け、乾杯を求めてきた。僕はそれに応じるようにもう一つのニッキ水をぶつける。
「「乾杯」」
一斉にのどに流し込む。
「私やっぱ苦手だわ、これ」
「おれは結構好きなんだけどな」
「ラムネ派だったなぁ、私は」
「知ってた」
「そうですか」
そういいながらも彼女はそれを飲み干した。
「それで、どうしたの?」
彼女は再度尋ねた。
「あの駄菓子屋、今日で店じまいなんだと」
というと、川を挟んだ先に見える見える古びたお店を指さした。
「そうだったんだ」
「よくみんなで行ったなぁって思ってさ」
「行ってたね、小学生のころとか特に」
「こうやって少しずつ変わっていくんだろうな」
「そうだねぇ」
長い沈黙が訪れた。普通なら気まずい雰囲気なのだが、相手が彼女だからだろうか、特に息苦しくはなかった。
「家の近くの公園も、駐車場になっちゃったしね」
「あぁ」
「淋しいね」
「…あぁ」
また訪れた長い沈黙の後に、彼女は言った。
「まぁでも、変わらないこともあるでしょ」
「例えば?」
「んー、私がいること?」
「たしかにな」
「なんで笑うのよ」
「いや、なんか恥ずかしいこと言ってんなと」
「あれ、そういう雰囲気じゃなかった?」
「間違ってはないかもな」
「でしょ?」
「お前が超絶美女だったら惚れてたかもな」
「悪かったですね、可愛くなくて」
「美人は三日で飽きるらしいからそれでいいんじゃね」
「褒められてるのか、貶されてるのかわからないんだけど」
「どっちも」
「はいはい、ありがとうございます」
彼女は立ち上がり、僕の目の前に移動した。月と重なる彼女がほんの少しだけ綺麗に見えた。
「私はずっと側にいてあげるからさ。心配しないの」
「超絶美少女だったらなぁ」
「ぶん殴るよ?」
「まぁ、我慢しとくか」
げんこつが降ってきた。
「失礼な奴め」
そういうと彼女は川の方へと走っていった。
「今日も言えないままか」
彼女を追うように、僕も走った。
今回はこれまでとすこし違って雰囲気を重視して書いてみました、
なんとなく誰もが経験したことがあるような、なんとも言い表しにくい「空気間」を感じていただけたら幸いです。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
どんな些細なことでも構いません。
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三題噺のお題に関しましては、以下のホームページを参考にさせていただきました。
http://youbuntan.net/3dai/