ビスクドール
万華鏡の肉を覗き込む。ガラスの義眼で覗き込む。
腕を曲げたゐ、貴婦人のやうに。
パラソルをさしたゐ、午後の銀座。
硬ゐ鎖が腱を絞める。喉には芍薬、歌うは怨嗟。歩く早さはアンダンテ。
櫛を買おうと、デパートへ。髪は夕べに置いて来た。
帯はゐかがと、エレベーターガール。地下に下りてそう囁く。
飛んでみたゐ、コオロギのやうに。蟲かごに下りてそう囁く。
雨に負けたゐ、風にも負けたゐ。
肉を埋める胎盤になりたゐ。
それすら叶わぬわたしのカラダ
あなたはどうして作ったの。