電脳で懐柔
「何をこそこそしている」
別に隠れてたわけじゃないが…両手に持った金属製の細かい部品を見せる。マリアは手のひらの細かい部品を摘まむと顔をしかめてじっとみつめるとひっくり返してまた眺める。あまり凄さとかはわかってないようだ、こんな「精密部品」作れる技術や技術者はこの世界にはいない。まさに異世界の代物だということに。グレイも不思議がってみるが精巧に作られた小さい部品の評価は二人ともよくわかっていないようだ。
「良くできているね、君が作ったのかい?」
「いや、この部品は違います。拡張してるこの外側、ここからは自分が作りました。中身の機構は自分が生まれた国の…(この場合職人でいいのかな?)職人が作った物です」
「魔法具なのはわかるけど魔力を充填しておく部分の装置はどこなの?私は剣に生きてきたけど魔力も少しだけど持ってるから補充できるわ」
「まっ魔法具?(あぁこのゲームでは科学とは違った魔法ってものがあるんだったな)うーんこれは弓の張力で矢を飛ばすように特別なその魔力?よくわからないけどそういったものでは動いてないよ。ボウガンと同じで」
「あーわかんないわかんないわかんないわかんない。聞いたこっちが悪かったわ」
………そう言ってメニューのポーチのアイテム欄から銃弾となる12番ゲージスラグショットを選択し手に持つ、筒状の弾をマリアに渡す。おっかなびっくり弾を受けとると凝視して驚いたように声を上げた。
「魔力は感じる…けどどうして?火系の魔法、感じたのは威力の弱い爆発系だと思うけどあのホロウペッカーを倒せないほど弱いものよ?一撃で倒せるとは思えない!」
「種明かしはしないよ、それほど危険な武器ってことなんだ。疑ってないが門外不出の技術で作られた武器なんだ」
ゲームバランスを崩壊させる威力なのかどうか、初期装備としては破格の威力であることは違いない。しかしゲームは武器の強さだけでは決まらないだろ。実際何度も死んでるわけだし。
「ボウガンと同じなのにこんなに小型だなんて君の生まれた国はそうとう発展した国なんだろうね?どこの生まれだい?」
「ジパングだよ、西洋の秘境。そこからきたの流人の家系です」
「ジパング?聞いたことないわね…グレイは?」
「間違ってたらすまない、サムライなど職のルーツがある西の大陸ではなかったかな」
「そうです、今は鎖国と言って他の大陸とは外交は断絶してますか昔は自由に交易していましてその時に海を渡ってきた大和民族の末裔です」
「あの大和タウンがあるとこの国の人ね」
たしかどっかの国にある日本人に似たキャラの多い街があったな。そこのことかな?
「おそらくその大和タウン?にいる人たちと同じ大陸の人です」
すると二人とも納得したようだ。二人ともジパングについてはよく知らないようで僕の聞き齧った程度の知識で騙せた。さすがに現実世界からゲームの世界に来たとは言えない。銃も未知の大陸の武器で通さないと異世界の武器なんて言えるか!
あっ…そんな変わらないか。色々この世界の知識はマリアといた城の書庫やマリア自身から少し聞いていたがなにぶん設定が変わってたから…ここも変わってなくてよかった。
「逆に質問こっちからさせてもらうけど2日は歩いてるが途中けっこう村が見えた」
「寄らなかったのはさっしてくれ、他人を1泊させる余裕もないんだ」
グレイは言うにはモンスターの出現で領地の村等はそうとうな被害を受けている。しかしマリアはこの国の王族なのはこれまでの会話で間違いなくそう感じた。2日もグレイはマリアを野宿させるし王族であるマリアもそれを受け入れてる。その理由っていったいなんだ?
「仮にも王族だろう、わざわざマリアが村を避けて通る理由を教えてほしい」
マリアはうつ向く、そんなマリアの代わりにグレイが説明する。やはり突かれたら痛い部分か、自分が最初にお世話になった村人と重ねて気づいた違和感を告げた。
「王族であれば村ももてなすために余計な苦労をかけてしまう。もう限界なのにそれ以上の苦労はかけたくないと言う…」
「何を隠している?」
マリアもギクリと肩を震わし額にはぶわっと汗の粒が浮かんでいる。グレイも攻撃用のスキルを発動する前兆をみせた。これ以上回りくどいやり方をする必要もないか。
「隠し事はなしってことだ…腹を割って話そう」
「どこまで知っている!」
グレイが声を荒げた、先までの口調が嘘のようだでもこっちは特に驚きもせず推測を淡々と語る。
「魔法具って言ったな、なんて言ったかこのゲームの…失敬この世界の頂点12人、人外の力を持ちし12人の…総称が12神の一人、で至高の」
「ザウスよ…」
うつ向きながら観念したようにマリアが重たい口をようやく開いたが、その様子にグレイも驚きを隠せず振り返る。
「そう、ザウスの作った魔法具。『ノアの箱庭』だったかな?ノアと呼ばれる祝福者がザウスより与えられた魔法具をあんたの先祖は受け継いたんだ、そして現在の所有者はマリー・アントワネットあんただったよな?」
ふぅー
マリアはもう隠す理由は無いわねと静かに漏らすとそうだと堂々と答えた。
「この国の人は毎日命令された通りの毎日しか行動しない。たとえ外部からモンスターが侵入してきても命令されなければ逃げもせず戦いも決してしない。これだけ被害が出てもこの『ノアの箱庭』を外部の人間に知られる可能性があるから下手に周辺の国に助けも呼べない、ギルドへの依頼もしかりだ」
箱庭で贅沢していたマリアは嫁いでからも自国にいたときのような贅沢をした。けど箱庭の住民は反乱なんてしない、他人の不幸を知らないからマリアは住民の不満に気づかず死んだ。それが物語改編までのマリアの死んだ理由。
「お人形さんの住民が死んでもあんたは動こうとはしなかった。ここまでいいか?」
「のこのこ城から出てきた理由?それを聞きたかったの?」
「そんなの知ってる、箱庭の閉じかただろ?」
無頼の喧嘩師と呼ばれる外部の人間がどこからかわいてきてどういうわけか自分も知らない箱庭の住民への命令の上書きができる。ならばこの自分をこの土地へ縛る箱庭の閉じかたを知っていると思い、探して城に招待するつもりだと。
「そう、完璧な代物なはずの箱庭の閉じかた。なんせあの12神の作品なんだから誰も操作できないと思ってた。それを可能な人が偶然にも迷い込んで来てくれた」
さあどうするかな、V5C8は見ての通りバラバラな訳でこうなりゃシャドウしか残ってないな…いやまだ残ってるな…
「結論から言えば『ノアの箱庭』を閉じられる。しかしだ、それで自分になんのメリットがあるのかだろ?力ずくか?悪いが二人だけで勝てると思ってるのかだとしたら…甘いんじゃないか?」
元のストーリーをなぞるなら一度断る。強引に連れ去られる、そんで箱庭を狙う刺客を倒す。箱庭を閉じる、マリアを仲間にはせずそのまま立ち去り騎士養成学校へっというのが主な流れ。
「悪いが「お願いします」ええー聞いて」
「腹を割って話しましょうか?端的に言うと城内にどこから嗅ぎ付けたのか『ノアの箱庭』を狙う輩が入り込みました。どういった勢力なのかはわかりませんが」
「なんとしても渡すわけにはいかない。12神の作ったものは国一つ簡単に引っくり返せるほど危険なものだ」
グレイが話に割ってはいる、確かに危険なものなのはわかる。手軽に運べる国そのものとか…少し悩んだあと口を開いた。
「これから言うことを信じてくれたらな。長い付き合いを取るか、どこからか現れた得体の知れない自分を信じるか。その答えで『ノアの箱庭』を閉じる」
「信じるかどうかはまだ…」
うーん、難しいね




