電脳で苦悩
「ちょっと待て…嘘だろ?」
「そんな王国存在しない、ここは辺境の小国で周囲を山脈が囲っている。隣国と言えど山脈の越えた先だ、その騎士学校があるのはそこだろう」
なるほど、グレイがやたらへたれなのもマリアもそこまで高飛車でいらつくお姫様でもないのはこのゲーム、強いては生き返りを続けているうちに変更されているのか。ストーリーが変質してしまったのか、こんな危険性があったなんて…つまりこれからは対抗策をこうじるために生き返りを続けるのも危険性が上がるとも言える。好転せずに難易度がどんどん上がる…なんてことも起こりうるわけだ。
泣けなしの人員もホロウペッカーに襲われ欠員がでても補充されないとマリアは情けない表情を見せた。本当のストーリー上ではこの国はゲーム序盤の拠点になるはずで何するにしても不自由ない設定だが、過疎が進み本来なら使用できる施設が解放されてないどころかここでは存在すらしないなんて、どうやってギルドに所属すればいい?自宅にする宿や家は?設置型アイテムボックスや加治屋にアイテムショップなどなど序盤こそ必要な設備が…ない…だと?
「君の言う職業騎士を養成する学校はもっと都会にいかないとないな、ここは冒険者ギルドすら無いからあって自警団か俺らと同じ警備兵だな、お前の腕っぷしを活かせる戦闘系の職業は」
「げげっ地域固定職業かよ!さすがにそれはよそ者の俺には勘弁、こんな辺鄙な田舎で…すまない、目指すなら世界中のダンジョンを巡る職業がいいんだ」
ようするに色々なダンジョンにいけないその地域特有の職業、珍しいものであれば限定アイテム入手するときやシステム解放、職業の分岐、特別なキャラを仲間にするとき以外地域固定職業には転職しない。なんの利点もない職業の1つに数えられているのだ。
「若い奴には暇な職業だなー危険なわりに給料は低いし待遇悪いしな。できればすすめたくはないかな、お前の言うとおりどこかの学校に入って職業を固定して専門のギルドかごった煮の冒険者ギルドに入るのが普通だな」
そうだろいつまで経ってもこのゲームクリアできないからな、しかし周りを山脈に囲まれているとは山越えしないと行けないのか?途中モンスターに襲われてそれでいつまで経っても出られない気がする。この辺鄙な国から…うわぁぁぁん(涙)
「まぁ他にも聞きたいことがあるだろうし、歩きながら話しましょうか。まる二日歩いた先に城があるのだがそこで今後の君の行動を決めたらいいそれまでゆっくりしていってくれ。助けていただいたお礼です、こんな(辺鄙な)田舎なのでそこまで客人におもてなしもできませんがぁ?」
「何から何まで得たいの知れない自分をその…城主の許可無しにお世話になっても良いものなんでしょうか?」
「問題ないですよ、私が許可したのだから。それと!アナタに聞いておきたかったのだけど」
マリアは確かに王族の娘って設定なのはしってたけど金がないとここまで大人しいなんて。知ってる情報の中では金を湯水のように使いやがてサポートキャラとして親愛度が上がるとあのイベントに繋がるのだ。全キャラ反逆駆け落ち二人ボッチ
生活に…
「はい?なんでしょうか」
「どこかで会ったことあるの?こう見えて人の名前と顔は忘れない方だと思ってたけど私をマリアと呼ぶ人なんて…本来なら私が気を許せる人だけよ!名乗りなさい!」
すげー疑われるのは当然だが、生き返りの件は話せないんだ…その一瞬の暗い表情を汲み取ってかマリアは眉をひそめる。初めて会って前にも会ってるんだよ。喉まででかかった言葉を静かに飲み込んだ。落ち着け落ち着け…
「むっ昔どこかで聞いたかな~と。マリー・アントワネットと言えば海のごとき大金を川の流れより早く使い干からびさせると聞く金遣いの荒さ、女と言えど鬼女、慈悲もなき女騎士として悪人ともモンスターとも震え上がる勇猛果敢なあのマリー・アントワネットでしょう?はっはっはよもや会えるとは思っとりませんでしたけどな」
グレイ失笑、マリアも赤面してぷるぷると小刻みに震えている。あながち間違ってなかったか、確かに昔までのマリアならこんな暴言雑多許しはせず、きっと固有スキルギロチンでショッキングなゲームオーバーシーンに突入間違いなしだ。
「はっはは…グレイ?これほどの侮辱に対してまだ!私は我慢する必要があるのか?」
「さっきのことを思い返せばそれが妥当、でしょうなー」
「ぐっ!楽には死ねんぞ貴様!」
「噂を耳にしただけですよ、広めたのは俺じゃぁありませんよ?」
いつだったかな確か動画で上がってたはずだ、マリアのワガママにノンプレイヤーキャラが反逆ゲームオーバー映像が。プレイヤーとの親愛度が上がるにつれて起こるあの強制ギロチンと名高いくそストーリーが…
「ふっ!遅かったのではなくって?」
矢が突き刺さった丘を上って行く。傷だらけの彼女は未だにその輝きは失わず丘の上は後光が刺したように眩しかった。
「あのとき、止まっていればこうはならなかったはずだ!苦しむ国民の気持ちがどうしてわからない!?王子に嫁いでから君は変わってしまったのか?もう僕の知るマリアは君の中にはもういないのか?」
自分のHPも残りわずか、マリアに至っては一桁をきっていた。状態異常の出血が発動しもう風前の灯火、怒りで我を忘れた民衆は雪崩のようにこの丘、一点を目指して向かってくる。自分の説得ももはや火に油を注ぐだけ…彼女の未来は決定されていた。
彼女は顔を合わせようともしない、どこか好き放題したくせにまだ何か足りていない腑に落ちないといったようだ。美しかった金髪についた土埃をそっと手で払おうとしたら拒否するように手首を掴まれた。
「もう他人の妻ですわよ。勝手に触れないでくださる?」
「旦那の王子は捕まって首を落とされた。君も捕まればその後を追うことになる」
表情がパッと明るくなる、目線は合わせようともしないが頬がほんのり紅く染まる。元々嫌いな相手に嫁いだんだ、死んだと聞いて悲しまないのはよくわかる。むしろ正々したはずだ。だからあの時送り出すのも骨がおれた、ずっと一緒に冒険した仲間だ。本当なら嫌がる彼女を無理やり送り出すなんてことはしたくはなかったが…仕方なかったんだ。
「そう…これで未亡人ですわね?ああ..誰かこの麗しきご婦人をもらってくれる殿方はいらっしゃらないかしら?これでは死の間際まで寂しい思いで胸が割けそうですわ」
額に右手を置きくるくると回り始めた。回り終えたと同時にちらっとこちらを見つめてくる。悪いけどそのお誘いには乗れそうにない。心中なんてごめん被る、はずなのに何でだ?走馬灯のようにマリアと過ごした日々が頭を巡り涙で目の前の彼女が霞んでしまう。困った表情の彼女、儚く散る花びらのように見えて胸を締め付け離さない。
昔から甘え下手でワガママでいつも自分の袖を引っ張る彼女がいた。テーブルマナーからダンジョンでの連携まで彼女の指導は多岐にわたった。そして未だネットリと甘ったるい記憶、あの夜の社交ダンスまで…全てが美化される。
どうしてあの夜、ドレスに身を包んだ彼女がいとおしく思えたのだろうか。酒ではなく顔が紅くなったのは君に酔ったからだろうか。どうして唇を寄せる君を拒絶してしまったのだろうか。
なぜ涙流す彼女を受け入れず突き放したのだろうか。まだ彼女を傷つけてるのか、余計なお世話で重なった想いを噛み砕いてしまったのだ。
「私、愛と戦闘では手段を選びませんの!」
「金にものをいわせてるだけだろ絶対午後ティー女…成金め」
「あら、お金なんて私にとっては欲しいものを手に入れるまでの回りくどい手続きに過ぎませんわ。本当の私は」
「盗賊だ」
「まあ!侮辱するとお後が悲惨ですわよ!?よろしくって?」
本当の私はこんなにも我慢していますのに…
ねぇ、もうわかっていらっしゃるのでしょう?でもあの夢のような夜、手に持った指輪をなぜはめてくださらなかったの?私のたった1つの願いはどうなってしまいますの?
震えながら口を開いた。過ちを犯したのはこっちなんだ謝っても遅いかもしれない、戻れるなら!駆け落ちでもしてどうして…彼女の募る想いを無下にはしたくない、今度こそはっきりと彼女が望む言葉で!
「マリア!諦めない、必ず君を幸せにしてみせるから!」
大きく息を吸い込んだ。遅すぎるかもしれない、いや大遅刻した返事を今君に返すよ。マリアが目に涙を浮かべて走ってくる。今度こそはきっちりと受け止めるんだ!マリアの想いを!
「マリア!君のことがス…」
無情な矢が精確にもマリアを射ぬいた。力が抜け出たマリアはぐらりと体勢を崩すと丘から転がり落ちる。
「マリアー!」
自分も身を乗り出してマリアを抱き寄せると二人は縺れ合いながら落ちていく。マリアを確りと抱き抱えやがて体が止まったとき、恐る恐る胸の下のマリアを
「マリア!確りしろ!ま、マリア!」
矢が突き刺さったマリア、HP0の表示がマリアの顔の横に表示されている訳でもない。それでも返事をしないマリア、出血も止まらず顔も色艶を失っていく。すっかり生気が感じられない。
「好きだ…なあ好きだマリア。愛してる一生君を幸せにしてみせるから、笑わせてみせるからだから…目ぇ開けてくれ…」
温もりが抜けていく、もう戻れない。離さないからだからマリアがいなくなるのが怖い、楽しい記憶も辛い記憶も全部君がいる。僕は君でできているんだ。手を握りしめても握り返してくれるわけじゃない。悲しみも嬉しさも一緒に冒険して分かち合ってこれからも…なあそうだろ?
「好きだ…愛してる、だからマリア…返事聞かせてくれよ…」
涙が止まらない、直視するのが辛くなってくる。後悔以外の余分な感情が出てこない。やっと想いが告げられたのに、だってそうだろ。
報われないなんて嘘だろ?どれほどマリアを待たせたとまた、待たせたのにこれじゃあ!
「マリア!」
「遅いですわ、下僕!でもこれで晴れて…こ…い人ですわね?もちろんよバカ、女性を待たせるなんて配慮に欠けるんじゃなくって?」
「ああ..」
優しく頬に触れる手に温もりがないが不思議な暖かさのようなじんわりとしたものに包まれる。その上からそっと手を重ねる。
「どこにいたって聞こえるように毎日風がよく通る高い丘に上りますの、(貴方の愛の囁きを聞くためですわ)お返事が届くと思って飯使いに半刻に一度は聞きますの(あの人からお手紙は届いてないかしらって)夕暮れまで城壁から貴方のいる街を眺めますの、もしかしたらがあるかもしれませんでしょ?(来たらすぐ貴方の胸に飛び込めますもの)それをずっと毎日、雨の日も風の日ももちろん風邪の日もですわ」
そこまで、マリアは思ってくれていたのに、自分ってやつはつくづく情けないやつだ。死に行く彼女を助けることもできないなんて…
「話が長くなりましたわつい嬉しくって…」
涙が止まらない、弱々しくなる彼女なんて見ていられなかったしかし彼女は満足そうに顔を引き寄せる。今一番彼女が何をしてほしいのか、それで安らかに眠られるのなら…
「大だいだいだいだーい大す……き……でしたわ貴方に…会え…てこのマリー・アントワネットの人生、大華を咲かせられたのですもの、この巡り合わせに感謝ですわ。すき…よ…す……」
静かに目を閉じた彼女、頬に触れていた手に力がなくなって必死にしがみつき泣きすがることしかできなかった。慟哭が止まない、この衝動が抑えられない。こんなことって…
「マリアーーーーーーーーーー!」
雨が降りだす、泥沼のようになった大地で一人泣き叫ぶことしかできなかった。
マリー・アントワネット 17歳の若さだった。
とまぁ親愛度が上がるとバッドエンドになるわけだ、だから仲良くなってはいけない。仲良くなると民衆の怒りかって反逆され死にます。せっかく親愛度上げても死にやがりますこいつ。無意味ですこいつと仲良くなるの。
「さっきから人の顔をジロジロ見るな!気持ち悪いんだよ!名前のことといい得たいの知れない力といいいったいお前は何者だ!」
「いえ、なんでもないです…目的地で話しませんか?ほら、またホロウペッカーとまではいかなくてもモンスターは出現しますしお寿司」
ジッ…
おう…めっちゃ警戒されている。でも安心してほしい、仲間にするなら他を当たります。こうして鬼門のエピソード1は越せたんじゃないかな?




