↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NOフリー 電脳で遊べる  作者: ふじひろ
1.トンネル
PR
1/12

電脳で起動

長い夏休みはクラブに所属してない自分にとっては

苦痛でしかない。田舎に生まれたことに恨みはないむしろ喧騒のない世界は天国だ。だがしかしそれによって発生する悩みと言えばこんな素敵な環境で与えられた自由時間をどう消費するか、目標がみつからない自分は部屋に缶詰めだった。


畳四畳の狭く感じる部屋は不思議と物もなく閉鎖感が逆に居心地がいい、家具はちゃぶ台だけなんて自分は物があれば散らかるって論理を突き通しこの少し物足りない生活も気に入ってる。質素、倹約、無駄がない。大好きな言葉だ、それに反して俺の生活は自堕落過ぎる。繰り返す毎日、変化を欲しがった自分は部屋を物色し始めた。


「暇なら勉強しなさい」が親の口癖だ。受験生なんだから、言われれば当然だ的を得てる。言い返せないが数字と文章に向き合うなんて、自分の頭だ、よく知ってる。できるはずない、部屋の襖を開けて下界に下りる(天国は我が部屋)暑いんだなこれが、風通し良くしようと全ての襖、窓を開けるまではいいとしよう。それにしても無風帯、天井から床まで隙間なく暑い。


ふと見上げた戸棚に置かれた家族写真、思えばここから家族から笑顔が消え自分も人付き合いが変化してしまったと思う。

写真には家族四人の仲良く楽しげな様子が撮られていた。いつだったか、家族旅行に動物園の…パンダの檻の前で撮った写真、パンダはそっぽ向いてるが家族の底なしの明るさが伝わる最後の写真だ。

家族が四人、自分には…兄妹が…妹がいた。














小6の…秋口だ、妹の失踪。ニュースでも取り上げられた。この近辺は治安もいい、だからこんなこと起こり得ないとそう思ってた。

あせる両親の顔は今でも覚えている、自分は困惑してなにも答えられなかったが警察の取り調べでわかったことそれは事件性が高い、疑われたのは両親。


おかしかったこと、それは家族の誰もがいつ頃から妹が消えたかさえ言えなかったのだ。周りの聴き込み調査では見た人なし監視カメラがあれば家の近辺のものは全て見尽くした。目撃情報がない、だが両親の誤解はとけた、動機はないしそれに学校に問い合わせたところ職員も友人でさえ妹が消えた明確な日がわからなかったのだ。


捜査は打ちきり、時効は成立。事件は迷宮入り、それからだ人生が狂い始めたのは。毎日報道陣に追い回された。1度火がついたら止まらないものだ。中傷の電話は夜と昼との区別もなくなり続いた。父親は気を病んで精神病院に送られた今はまともに会話できているが…

母親は毎日写真に涙している。そんな環境で自分は暮らしてきた。思い出したくなかった出来事に開けた冷蔵庫をおもいっきり閉めた。手にはなにもとってない意味なく開けて閉めたそれだけ。


考え事しながら部屋の中を彷徨いていたのか、無意識とはいえ恐ろしいな。灰色の青春だった、友達なんかできずいつも一人、それは今もだ。暇だなんか言ったところで集まる友達なんかいやしない。


母親は仕事で出掛けている。面白くない人生だ実に嫌気がさす。妹を思い出して何気なく妹の部屋の前を通った。自分の部屋は玄関からほど近いところにある。最初妹は自分の部屋がいいと言い出した。両親がそんな妹の身を気遣い家の奥の部屋にした。年頃の娘だ、不審者を警戒する親心だ。


部屋はほとんど何もない捜査資料で持っていかれたりもう誰も使わないと母親が処分したのだ。もぬけの殻となった妹の部屋、みょうに殺風景な空間それは妹が消えた今の家族の実状を写してるようだ。


変に居たたまれなくなり部屋を出ようとした。何かが落ちてきて頭に当たった。しばし悶絶、どんな高さから落下したんだよ!


「これは…ゲームのソフトか?ゲーム機なんて…持ってないのに…妹のか?」


ゲームのソフトの角が頭に当たったのか、どこから落下したのか辺りを見渡す。家具も何もない、ソフトが置いとける隙間もない。もし妹のなら捜査資料にはならないだろうが母親は処分するはずだろう。

改めて見てみると聞いたことないゲームだ、制作会社も知らない会社だ。題名は…の冒険なんてRPGのような印象だ。意図的にか何の冒険か読めない、そんいうデザインというか名前なのか。見たところまだ新しいようだ、パッケージの絵も幼稚で全対象年齢なのも頷ける。中を確認すると説明書もあり、ディスクも傷もなく無事なようだ。


売ってしまおう、そう思った。ゲーム機なんてないし二束三文でも捨てるよりかはましだ。有名ではないぶん値段はどうより買い取り拒否なんてならないかな…そう思いながらソフトを持って部屋に戻る。

ステテコにTシャツなんて出で立ちなのでこのまま外に出るわけにも行かずとりあえずジャージに着替えた。財布に定期、それに携帯を確認するとポケットにねじ込む。それだけ入れたら歩くたび揺れてイライラするが仕方ない鞄はないし、通学用の登山用リュックで外に出るのも嫌だ、ソフトだけ手に持ち定期はあるが電車でいこうか自転車で行こうか悩んだとりあえず色々回ることも考え自転車にすることにした。玄関まで歩き靴を履く、信じられない暑さだが自転車をとばせば涼しくもなるだろう。履き終えてソフトを持つときだった。パッケージの裏をよく見ていなかったが丁度目にはいった。


「なっ!?どうして!!」


裏はゲームの説明なんかと一緒に本の少しのプレイ画面がついている。表の安っぽい絵とは違いなかなかリアルな世界観だった。そのなかに見た顔を見つけた。背格好は違うが顔はどこか…妹の面影があった。


「スズ!!」


何年ぶりだろうか、いつも見る写真や記憶にある妹とは違う表情の妹を見るのは。嬉しかった思わず泣いてしまった。感動で両手で持ち上げ掲げた。凛々しい顔つきの騎士、ゲームの中そんなことはどうでもよかった。また会えたその喜びだけで充分だったから。自分は売ることなんて忘れてソフトを持って部屋に戻る。何度も見ている内にまた妹に会いたい気持ちがぶり返す。とりあえずゲーム機はないのでこのゲームについて調べてみることにする。しかしインターネットでいくら検索をかけてもみつからない。制作会社もでてこなかった。それでもなんとか調べていく内にプレイした人の感想が書かれたホームページへとんだ。評価は散々なものでクソゲーらしく評価は災厄だった。どんどん見進める内に書き込みは突如終わっていた。少し残念だが今度は妹に似たキャラ…その検索に入った。画像欄から探し出すがどうでもいい画像ばかりであてにならない。そんななか1つだけそのキャラを発見した。某RPGの

チートキャラ及びそのキャラの装備をした人、その名も…


「アーサー…」


その画面を見たまま固まった。間違いなく妹なのだから…それ以上の説明書きも何もない。この妹の面影のあるキャラ、アーサーに自分は無性に会いたくなった。ゲームの中だけでいい、また妹に会いたかった。ゲーム機を買う決意も固めた。


「どのゲーム機だ畜生!!いくらかかってもいい!探し出してやる!」


結果としてはそれはパソコンゲーム、しばし考えた後パソコンは買わなくても父親が持っていたことを思い出し父親の部屋に入り込む。パソコンは古いものだがゲームが出来なければ…買うまでと意思を固めた。


「なんとかついてくれよ~」


パソコンを起動させパスワードは裏側に付いていた紙に書かれたものを打ち込みホーム画面まで進む。

ソフトを入れてクリック…

バグなのか読み込まない、スタート画面までいくもののスタートをクリックすればホームへ飛ばされるのだ。諦めるまで何度も繰り返す。母親が帰宅するまでずっと続けていた。明日が登校日でなければ朝方までやっていたことだろう。


朝、親に起こされ夏休みの真ん中の日、学校に向けて歩き出した。帰ってからまた起動させてみよう、そう思った。学校へ行く時間になるまでなんとかスタートさせることに成功した。画面が暗くなり右下に~読み込み中~と小さくでていたがフリーズしたのでホーム画面に戻り電源を落とした。


「朝起きたらパソコン、電源入ってローディングしてたよな?フリーズして何度試してもフリーズしてたけど…確かに寝る前に電源落としたはずなんだけどなー?おっかしいな」


歩く途中やたらと警察が巡回している。そしてなにかのニュース番組の記者も…急いでその場から逃げた。その時母親から電話がかかってきた。通学路途中で昨日の夜不審者が出たと言うことで登校日は延期、自宅待機となっていたのだ。この暑い中外へ出てきたのは何のためだ?考えるのもおかしくなり帰路につく。

















パソコンに電源が入る。起動…パスワードは自動で打ち込まれる。ホーム画面で矢印は迷いなくゲームを起動させる。スタート画面をクリック、読み込み表示が出て消える。そして音声がそこに挿入されていた。


「ようこそ…よよ、よよ、ようこそ…」


「あなたの冒険へ」


画面が眩しく輝いた。



















「ん?誰か呼ぶ~わけがないか、ゲームのし過ぎかこれだから健康によろしくない」


携帯を切ったところでポケットに入れたつもりが落としてしまいそのまま側溝に消えた…運がないと言えばそれまで、でも何とか腕は入る隙間はあるので腕をねじ込んだ。触った感覚だと泥は溜まっているが水は流れておらず乾燥している。この猛暑を初めて感謝したかもしれない。指の感覚から携帯を探し当てる。ふう…なんとか引きずり出す。汚れてるが見ずに浸かるよりましだ。


「まだ買い換えには早いからな」


「現実と虚構が混じり合う」


「へっ?」


誰か…居た気がして振り返ると誰もいない。頭に過ったのは不審者が出没してると言うこと。よくない考えを頭をふって払拭し、足早に家に帰ることにした。


「混沌」


「誰ですか!?」


今度は確実に聞こえた。人の声が、しかし辺りは誰もいない。おかしいことに気づくどうしたらいいかわからなくなる。声から少し間を置いて銃声、悲鳴そして怒号に奇声!!

混乱してた頭を回転させ悲鳴は記者や警察が集まっていた通学路からだと理解した。不審者が現れたのかな?あの場にいなくて良かったと胸を撫で下ろしたのもつかの間…通学路方向の住宅が倒壊した。普通じゃない、ヤバイ!!しかし足は止まる。逃げたいのに…目の前に文字が浮かぶ、異常だ、けど受け入れてる。どうしてだ?


(最初の異変)


わからないがそんな文字が浮かび上がり行きたくない通学路に向かって走り出す。行きたくないのに操られてるかのように止められない!!


「(あっ…あれと一緒だ)」


ゲームでもスキップ出来ずに映像を見せられるそんなとき、キャラはプレーヤーの意思とは関係なくストーリーにそって動く、それが今自分の身体で起きている!!

現場は惨劇だった、逃げ惑う人々と必死になって戦う警察官の姿が見える。警察官が訳のわからない方向に発砲している…と思った先、巨大な虫?がいるそれは翼竜のような形で虫のような姿。警察官が撃ってるのが豆鉄砲のように滑らかな虫の甲殻に弾かれトラックほどの大きさのある虫は針のような腕で警察官を串刺し、ミンチにしていく。自分の身体は金縛りのように動かない。


「嘘だろ、こんなのどっかのB級映画の話だろ?」


そこで体が自由に動く、その場に倒れ顔を打つ。目の前には死体、死体死体死体…なんとか這いずり回りパトカーの下に潜り込んだ。ガタガタ震えながら携帯で連絡する方法を思い付いた。しかし落とした衝撃からか電源がつかない。


「なんでだよ!!クソ!!クソ!!」


近くにあった警官の無線機に手を伸ばすも繋がる様子がない。そのとき頭の上で大きな音がした。何かが降ってきた。ズルリと音をたて落下する。千切れた警官の死体。必死に口を押さえた。悲鳴が出ないように。幸い虫はこちらの存在に気がつかない。頭を落ち着かせようと考えた矢先に虫がこちらに迫ってくる。命運つきた…終わりを覚悟した…けど目はパトカーの少し先、拳銃が落ちてるのに気がついた落下した警官の物なのか落ちている。効かないのは知っているでも力が…丸腰よりかはましだ!


虫が足をつかいパトカーを持ち上げる。覗き込んだ虫の一瞬の隙をついて走った。足がもつれ転ぶ後少しで手が届く距離…必死になって手を伸ばすも虫の針が足を突き刺した。痛みが足から頭へ抜けていくのがわかった。虫はそのまま引きずり寄せる。


「嫌だぁぁぁぁ!!離せぇ!!離せよぉ!!」


虫の顔を正面から見た、蚊のようなストローの口を突き刺そうとしている…


(ワールドアクションを起動させますか?)


「はぁ?」


(ワールドアクションを起動させますか?)


目の前に文字が広がる。意味がわからない、わからないが迫る口が眉間に突き刺さる前に叫んだ。


「やるならやれよ!!早くしろー!!」


「(ワールドアクション)」


家のパソコンが光と同時に火を吹いた。体の感覚が消えていく。どこかへ流されているようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。