魔法の使い方
私、嫌われ者の公爵令嬢であるミシェル・アルランカ。15歳。高1。
・・・まあ、この世界に高校なんてものないんだけどさ。
言いたかっただけだよ。
今日から王立魔法学園に通うのだ。
ミシェルとしてはいつものことだが、私にとっては初めてなのだ。
気合いを入れて行かなくてはならない・・・。
というわけで私は今、朝の支度を終えて馬車に乗り学園に向かっている。
ミシェルには従者が居る。
その従者も魔法学園に同行しているのだが、ミシェルは従者も虐めていたので嫌われている。
今、私の隣に居るので顔を見たら目が合った。
この従者の名前はケレンダル・アホーンという。
アホーンって凄く面白い名前だな。アホみたい。前世飼っていた猫がよく、アホーンと鳴いていたなぁ・・・。
「私の顔に何か付いていますか?」
余りにも長い間眺めていたので話しかけられた。
そっちから話しかけるなんて、滅多に無かったというのに。
「えぇ、ご飯粒が付いているわ。指摘してあげた事に対し感謝なさい。」
これは嘘だ。顔を眺めていたので、その口実を作って言ってみただけだ。
「そうですか。」
「そうよ、貴方の顔に触れるのが嫌だから取ってあげないけど。いつもなら完璧な貴方がご飯粒をつけているなんて珍しい。とても面白いものが見れたわ。」
「そうですか。」
「そうよ、まるでアホみたいね。アホーンだけに・・・フフ」
笑いを堪えるフリをして口元を手が隠した。
「そうですか。」
コイツはもっと自分の意見を持ったらどうなんだ?
「着いたわね。」
「そうですか。」
「アホーン、この私に喧嘩を売っているのかしら。そうですか。と言えば済むと思っているの?」
「そうですよ。」
腹が立ったから、無言で馬車から降りて教室に向かった。いつもはアホーンに手を引かせていたが、今日はそれやりたくない。
教室には第二王子のデューク・シェヘラトンデを中心に取り巻きが沢山居たが、私が教室に入ると一気に離れていく。
「おはようございます!デュークさまぁ~!!」
いつも通りデュークに抱き付く。一瞬、嫌な顔をされるが、別にどうでもよい。
このデューク王子は表側はとても優しい。どんな嫌な相手でも笑顔で対応する。
そんなデューク王子は私のことが嫌いだ。
元々婚約した理由は、家柄とミシェルがデューク王子に憧れていたからだ。
その時からずっとミシェルはデュークにベタベタしていた。
そんなある日、王子は本性を現した。
「お前みたいなクソ女大嫌いなんだよ、ベタベタすんな!死ね!!」
とはっきり言われた。
それでも馬鹿なミシェルは王子にベタベタした。時には寝床を襲ったりした。
余程王子の顔が好きだったんだろう。
「おはよう、ミシェル。」
引き攣った笑顔で言われた。
普段なら色んな話をデュークにするが、話題が思い付けなかったため自分の席に着いた。
そのまま先生が現れて魔法の授業が始まる。
前世に無かった魔法の授業。とてもワクワクする。
小さい頃によく、魔法が使えたら何をしよう?だなんて考えていたのを思い出すな・・・。
魔法の勉強は確か、10歳から習い始めるんだっけ。今15歳だから、今まで真面目にやっていなかった分、かなり遅れていると思う。授業についていけるかどうか不安だった。
___やはり先生の話が何一つ分からなかった。この後の実技の授業も全くダメ。・・・放課後図書館にて勉強しよう。
昼休憩になったのでアホーンを連れて食堂に行った。
いつもアホーンは私の前では食べない。
私と共に食事をするのを拒絶しているのだろう。
私が食べている背後に控えていた。なんだか居た堪れなくなりせっせと食べた。高級料理だというのに何の味も味わう余裕がなかったので残念である。
「放課後、図書室に寄るから馬車の準備を遅らせなさい。」
「そうですか。何か用があるのですか?」
「後で分かることよ。」
どうせコイツも着いてくるのだから分かることだろう。主人に着いていくのが従者の役目なのだから。アホーンは、この私が図書室に行くなんて有り得ないと思っているのだろうか?ふふ・・・アホね、私は変わったのだ。真面目ちゃんになったのだ。
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アホーンと一緒に図書室に来た私は初心者用の魔術関連の本を何冊か取り、熟読していた。
ミシェルの知識は非常に浅かったため、初心者用でもかなりの知識は手に入るだろうか。まずは魔法の使い方のコツ等からページを捲っていく。
魔法を使うには魔力が必要だ。ミシェルには魔力が非常に少ない。これには元々 の力は関係無い。『どれ程伸ばせるか』というのが重要。
魔力の伸ばし方は簡単。魔法を使う事で伸びる。一番伸びやすいのは限界まで使い果たす事だ。
その代わり、魔力を限界まで使うと体力もかなり消耗する。消耗の量は体力の多さで個人差があるようだ。体力を全て使い切ると死ぬ。だから死ぬ事を怖がって誰も試そうとしない。
魔法を使うのには第一にイメージが大事だ。想像力や集中力が必要。同じ魔法でも繰り返す事により、その魔法の属性が強化される。属性魔法には、レベルという判定基準が存在し、威力が増すほどレベルが上がる。意外な事に魔法の名前やら厨二な詠唱やらは無いようだった。レベルについてだが、世界平均標準レベルがLv4で、今のところ世界最高レベルがLv20だった。因みにミシェルはlv1だった。
ミシェルは属性を一つしか持っていないが、複数の属性を持つ人間は高度な複合魔法を使う事ができる。
属性の種類は、火、水、土、風、雷、氷、光、闇・・・その他諸々とあるが、その他とは何かと気になっていたので、その他の属性について記している本を読んでみる。
その他属性は、例えば手元に無いペンを勝手に操ったりとか、人の体も操れたりする。珍しい属性なのであまり種類も少ないようだ。元々使える人も居るが、他の魔法を極めた人がある日使えるようになったという例外があるようだ。
基本的な知識は手に入れたので実際に魔法を使ってみようと思う。ちょっと此処では出来ないので運動場に行ってみようかな。
「アホーン、運動場に行くわよ。」
「そうですか。」
アホーンは少し驚いた顔をされたが、すぐ無表情に戻った。