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赤の女王と無色の僕  作者: 猫田33
菊は虚空と在る
9/13

1

残暑厳しい8月、ミドルフィード王国の建国祭が行われようとしていた。


朝日が昇るのと同時に祝福の花火が打ち上げられる。それからしばらくして朝食をとるために屋台へくり出すものたちが出てくる。普段食べる機会の少ない料理が広場を中心に軒を列ねるからであった。それに今年から女王陛下の婚約者の故郷の国からも出店がでるとの噂がのぼり皆興味津々だった。

それぞれ朝食をとったあとぞろぞろと皆ヘマタイト城へ向かう。顔を見ることはできないが王族と接触する機会の少ない国民は、ここぞとばかりに集まり未来の王となる異国の青年を見にきたのだった。

昼になる前に異国の青年は、アンジェリケ陛下の手をとりテラスへ現れた。異国の青年は、綿のような明るい茶色の髪で人の良さそうな笑みを浮かべている。ときどき知り合いでもいたのか満面の笑みをむけ手を振っていた。その隣に寄り添うようにいるのは、300年という長い統治を行い"赤い魔女"の異名をつけられている女王アンジェリケ陛下だ。

二人は、30分ほどテラスにいたが次の会場へ向かうため下がった。

それと同時に最近建てられた多目的ホールへ足を向ける。今年から武術大会と武芸大会が国主体で行われることとなった。ホールの収容人数は1000人にのぼる。もちろん満席で老若男女みな今か今かと開会式を待っていた。


「みなさんお待たせしました!これから武術大会と武芸大会を開催したいと思います!!」


切れのよい口調の司会の言葉が会場に響く。厳粛に始まると思われたが、楽しめそうだと半数の人物が思った。


「では、最初に私の自己紹介から。ただいま笑顔で家で出迎えてくれる奥様募集中の騎士団所属のライトです!そちらのお嬢さん大会が終わったあとお茶でもいかがですか?」


観客は、ライトにブーイングを返すが特に気にした様子もなかった。図太い性格の人物のようだ。


「そして今回は解説としてアンジェリケ陛下の婚約者で東にある日本からきたサエキ様です!!」


さきほど城で見たのとちがう正装を着ていた。


「こんにちは、サエキです。今日は選手の方は力を出しきり、観客の方は楽しんでいただきたいと思います」


「サエキ様、固いですよ。もうちょっと力を抜いてください。ほらっ」


「うわっ」


ライトが有知郎の肩をもみだした。あまりに有知郎がバタバタするので観客席から笑いと呆れの声が上がる。


「さて、サエキ様をからかうのはこれくらいにしてそろそろ第1回戦を始めたいと思います!」


「僕のことからかってたの!?」


当然ながら有知郎の訴えは、届かず安全のために場外の放送席に連れていかれた。


「では、東ゲートから発表したいと思います。わざわざニッポンからきた美女!ルリカ!!」


観客の歓声と共に東の門から、艶やかな黒髪をトップに結び滝のように流した瑠璃華が現れる。その手には、先の曲がった細長い棒が握られている。


「対して西ゲートからは自称ミドルフィード1!の用心棒ベン!」


西ゲートから現れたのは、筋肉逞しい大男だった。ただでさえ威圧感があるのにスキンヘッドのせいで強面度があがっている。


「ウチロー様この勝負どちらに軍配があがると思いますか?俺的には、ルリカに勝って欲しいですね。目の保養に」


「僕は、ルリカが勝つと思うな」


有知郎が断定したことに会場がざわつく。


「それはなぜでしょうか?何か秘密の策があると踏んでいるんですか?美女vs野獣ですよ」


「魅力的な花ほど身を守るすべに長けてるもんですよ」


「意味深ですね~。では、はじめ!」


誰も声を出す暇がなかった。レフェリーを頼んだ古参の騎士でさえ、驚きのあまり勝敗を言わず立っているままである。


「相手が気絶してるけど勝敗言わなくてもいいのかしら」


瑠璃華の言葉に騎士が正気を取り戻し慌てて勝敗のあがった方に旗をあげる。


「勝者ルリカ!」


たからかに宣言されたその声に会場に音が戻ってきた。


「強いっすね~。何が起きたかわからないくらいでしたよ」


「東洋の戦乙女(ヴァルキリー)とか言われてたけどこんなに強かったんだね」


「東洋の戦乙女だって!?無差別武道世界大会の常連じゃないか。なんだってこんな大物が大会に出てる!!」


「未来の義弟に頼まれたからに決まってるでしょ。ね、有知郎」


「「えぇ!!」」


会場全員が驚きとてもではないが五月蠅い。有知郎は、思わず手で耳を覆った。


「ウチロー様の姉君ですか!」


「今は姉じゃないけど兄の婚約者だからね。でも遠慮は、無用だよ」


騒ぎが収まったので手を外しニコニコと有知郎が答える。


「いきなり優勝候補か!?まぁ、まだまだ強そうな奴がいるからわかんないけどな。さて、次の挑戦者は東ゲートから。城に仕えて30年!騎士のウォルト!!」


白銀の鎧をきた初老の男性が現れた。茶色の髪には、白いものが混じっているが自信ありげな顔が生き生きとした印象を持たせている。


「西ゲートからは、素性不明の仮面!アンリだ!!」


西ゲートから現れたアンリは、猿の面をつけているうえにフードを被りかなり怪しい雰囲気をだしている。唯一わかるのは、使う武器が手に持っている剣であることだけだ。


「あんな格好で暑くないんですかね?」


「こちらに来ている資料では、日光アレルギーでいつも着ているので大丈夫らしいですよ」


有知郎は、アンリを見て誰かに似ていると思う。しかし、面を被りフードを被る知り合いはいないので気のせいかと思った。


「長年鍛えてきた剣の腕ここでぞんぶんに披露する!!」


「…」


アンリは、一言も言葉を発しない。


「勝負はじめ!」


ウォルトが剣と小さな盾を持ちアンリを待つ。 対するアンリは、剣の先を地面に向け動く様子がない。


「なんで動かないんですかね」


「たぶんウォルトさんの場合、騎士というのが原因かなと。騎士は、守る事を第一にした職業。自分から攻めるということがないですから。あともうひとつ考えられるのは、アンリ選手の服装でしょうか。足が隠れるほど長いながいコートですから詳しい相手の情報がえられない」


「それじゃアンリ選手は?」


「うーん(-_-;)。わかんない(*^-^*)」


人選を間違えたかもしれないと有知郎は、内心溜め息をついた。


「アンリ選手なにか仕掛けるみたいですね」


アンリは左右にぐらぐら動いている。しかし有知郎からしてみれば、熱中症で意識が混濁しているのではないかと思ってしまう。その心配も杞憂だったよう。先ほどまでじっとしていた人物とは、思えないほどの速さでウォルトに迫って行った。そして両者は、激突する。アンリは上段から降り下ろし、ウォルトは低姿勢になり剣を受け止めた。ウォルトが剣をつき出すがアンリは、見事なステップで後ろに下がる。するとウォルトは、盾を捨てた。


「なんで盾をとったんだろ?」


「あの様子から見るに盾を持ってた腕が押し負けかけたんじゃないっすかね。両腕対片手っすから」


「なるほど」


有知郎が納得した様子を見せる。それを待っていたかのようにアンリは、またウォルトに向かった。今度は、体勢をギリギリまで落とし振り上げる。ウォルトは、受け止めることはせずに後ろへ下がる。アンリが腕を横に振った途端に二本のナイフが出てきた。ナイフは、ウォルトに当たらず地面に刺さる。


「どうやら奇策は、不発におわったようだな。今度はこちらから・・・!?」


そう言ったウォルトの体が動かない。間違いなく手足が動いているのにも関わらずだ。ウォルトが混乱しているさなかひどくゆっくりとした動きでアンリは剣をウォルトの首に当てた。


「まっ負けました・・・」


ウォルトが膝をつき白旗をあげる。


「勝敗アンリ!!」


レフェリーがアンリの腕を掴み空にかがげた。大きな歓声が会場に轟く。瑠璃華の試合は、よくわからないうちに終わったのでアンリの試合のほうが見所があったからだろう。その証拠に有知るは、さきほどの試合を手に汗握って見ていた。


「いい試合でしたね。それにしてもなんでウォルトさんうごけなくなったんだか」


その疑問は、すぐとける事となる。手を触れていないのにアンリのナイフが地面から抜け手元に戻ってきた。そのときなにかが一瞬光った気がする。


「もしかしてナイフにピアノ線付いてた?でもウォルトさん油断してて気がつかなかったってことかな」


「甲冑を来てたからじゃないかな。普通は、くいこまれるから気がつくけど甲冑じゃそんなことないし」


有知郎の発言は、立派な鎧を着ているなと思ったからこその発想だった。ピアノ線のような些細なものに気がつくわけがない。


「とにかくアンリ選手は、奇策が得意ってことっすかね。ルリ選手とは、真逆で面白い」


「たしかにそうですね」


「こんな感じでガンガン試合をやっちゃいますか!」


ライトの宣言通り試合は、次々と進んだ。中には仮想大会と間違えているのではないかという人物もいた。だが大体の人物が大会の思惑通り人を惹き付ける良い試合をしている。そんななか一際目立っているのは、瑠璃華とアンリだった。瑠璃華は、対戦者を瞬殺させている。アンリは、相手の弱点を巧みに利用し進んでいく。そして勝ち進むに連れて仮面を外れるか外れないか賭けだすものが出てきた。たしかに有知郎も気になるところだが人の秘密は、本人が望まない限りさらすべきではないと考えている。


いろいろと考えているうちに決勝戦になる。ステージには、瑠璃華とアンリの二人が立っていた。二人とも人気らしく耳が痛いほどの歓声と応援の声が大きくなる。


「さぁさぁ、待ちに待った決勝戦!東は、瞬きの時間がもったいない!東の戦乙女ことルリカ!!」


瑠璃華は、名前を呼ばれると笑みを浮かべ観客席に手を振る。男は、とくに熱心に瑠璃華を応援している。瑠璃華は、人懐っこく美人なので男がよりやすく勘違いされやすい。だが瑠璃華に何かしたら身の毛もよだつ報復をされるだろう。その後で悠太郎が社会的に制裁を加えそうだ。


「西は、冷静な判断と予想外の攻撃を繰り出す!仮面のアンリ!!」


アンリは、剣を両手に持ち軽く頭を下げた。途端に"アンリ様"と黄色い声援と応援する声がする。いまだに性別がわからないがアンリの立ち振舞いは洗練とされていて女性の人気が高いようだ。もし男性だった場合あとあとアンリは、苦労するだろうと有知郎は内心苦笑した。


「やっぱり戦う相手は、あなたなのね」


「…」


「あなたの正体を私は知ってる」


「!!」


アンリは、瑠璃華の言葉に初めて反応らしい反応を示した。動揺しているのか動きがとまっている。観客の反応も似たもので静まり瑠璃華の次の言葉を待つ。


「でも今は言うつもりはないわ。ただし私に負けたらバラすから全力で戦ってね?いままでが全力じゃないのはわかってる」


瑠璃華は薙刀を下に向けて防御の構えをとる。今までは、薙刀の基本の型である構えをしていた。それだけアンリの攻撃を注意しているのだろう。対するアンリは、剣を片手で持ち刃先を上に上げた。有知郎は、その構えに見覚えがあるがやはり思い出せない。


「勝負初め!」


決勝戦の火蓋が切って落とされた。


最初に行動を起こしたのは、アンリだった。アンリは、手に持った剣を瑠璃華に向かって投げる。しかし剣は、放物線を描いて飛んでいったために瑠璃華は右にずれることで回避した。


「見たことある構えだと思ったらアレ投げ槍の構えっすね。普通剣でそんなことやらないっすよ」


「あぁ、そういうことか」


見た覚えがあったのは、オリンピックの競技の一つに似た構えだったかららしい。などとゆうちょに考えているとアンリは、瑠璃華に駆け寄りながらナイフを袖から二本とりだす。瑠璃華は、構えを変え刃先を胸元に向けた。


「アンリ選手なにを考えてるんですかね。リーチの差がありすぎっすよ」


「リーチ?」


「相手に攻撃が当たる範囲のことっす。ルリカ選手の場合あの槍みたいのものの長さがリーチ。アンリ選手は、投てきを無視するとして単純に腕長さがリーチでしょうね」


ライトが解説している間にも試合は、進んでいる。アンリは、瑠璃華の薙刀の刃を右のナイフではね除けた。 そのままアンリが瑠璃華に突き進むかと思われた。しかし、瑠璃華は弾かれた勢いを利用して体を一回転させアンリに柄を叩き込む。会場が驚きの声に包まれる。いままでの戦いでアンリに攻撃という攻撃を出来た選手はいない。それが当たったのだから驚かれるのも無理はない。


「オー!!当たった!って・・・もしかしてコレを狙ってたんっすか!?」


アンリは、体に当たった薙刀を掴んでいた。瑠璃華が押したり引いても動かない。諦めたらしく瑠璃華は、薙刀を手放した。


「普通刃を潰してあるからってこんなに近づかないでしょう!?」


「…」


大会に使用されるはものはすべて刃を潰してある。大会は、己の技能を見せあう場所であるべきだと考えるものたちが多かったからであった。


「本当に信じらんない!」


喋りながら瑠璃華は、アンリに拳を面に向かって叩き込んだ。フードが、拳による風圧で揺れる。それに気がついたアンリは、フードを押さえながら後方に跳んだ。空いてる方のてでおまけとばかりにナイフを投げつけながらである。


「姑息な手段ね」


瑠璃華が屈んでナイフをよける。 そして捨て置かれた薙刀を掴んだ。だが次の瞬間瑠璃華の姿が消えた。次に現れたのは、アンリのすぐ近く。


「もらったわ!」


瑠璃華が薙刀をアンリに降り下ろす。そのことで勝負がついたと誰もが確信した。アンリの持ち物である剣もナイフもない。薙刀は、大きく振られ避けられるはずもなかった。

しかし、いまフィールドに立っているのはアンリのほうだった。手には、剣をもち地面に突っ伏した瑠璃華の首に刃を当てている。


「…参りました」


瑠璃華は、悔しそうな声音をさせて負けを認めた。レフェリーがアンリの腕を持ち上げる。


「勝者アンリ!!」


歓声が会場を包み色とりどりの紙テープが投げられる。瑠璃華が立ち上がりアンリに手を差し出した。アンリは、それを見て首を傾げる。


「見てわからないの?握手よ。握手」


そういって下がっていたアンリの手を無理やりとり握った。


「いい試合だったわ。最後は、ナイフに仕込まれたもう一本のテグスの存在に気がつかなかった。しかもそれで剣を一瞬で手元に持って来るなんて」


どうやら最後の剣の瞬間移動の種明かしのようだった。


「くやしいけど優勝をあげるわ。アンジェリケ女王様?」


「結局バラしてしまうのね。せっかくうまく騙せていたのに」


会場の全員の人間が呆気にとられる。謎の優勝者がまさか自国の王だとは誰も思うまい。


「ウチロー様このこと知ってましたか!?」


「ライト。有知郎は、このことは知らないわ。有知郎は、私が今日の夜会のの準備をしているはずだと思っているんだもの」


「うん、それにしてもひどいな。僕に内緒なんてさ」


「話したらみんなで私を止めるでしょう。それに我が国の騎士を一度叩き直すいい機会でした。戦争の心配がなくなっても国を守るという指名が騎士にはあるのですから」


その言葉にアンジェリケの初戦の相手だったウォルトが泣き出した。


「さすがは我らが王!正すべきところをまさか尊き御身でなさるとは」


その言葉に次々と騎士の面々が泣き出した。そういえばアンジェリケが騎士と当たる確率が多かった気がする。


「といいつつ全てが謎の参加者ってかっこいいかな。なんてね」


「話せるようになった途端にお茶目になったね」


「そう?」


アンジェリケは、おどけて返事を返す。有知郎は、笑みを浮かべて手にもったものをアンジェリケに載せた。


「優勝おめでとうございます。優勝の王冠を勇敢なる選手に」


会場が王冠を見ようと身を乗り出している。王冠は、女性の参加の可能性も考え繊細な造りになっている。ミドルフィード王国の鍛職人の渾身の作だ。


「それともうひとつ王家で用意できる品も贈呈します」


会議にアドバイザーとして出席してみんなで考えたが良い商品が見つからなかった。


「王家の人間である私が優勝したのですから商品は不要かと」


アンジェリケの控えめな意見は、ブーイングによって観客に返された。たぶん優勝した人物がなにを望むかを楽しみにしていたのかもしれない。たしかにこのままだと盛り下がりそうだ。予定よりちょっと早いけどコレ渡しちゃおうかな。


「僕からの商品は、いらないかな?」


「有知郎から?」


僕は、正装のポケットから手のひらに乗るくらい小さな箱をアンジェリケに手渡した。


「あけていいんですの?」


「うん」


アンジェリケが箱を開けた。中には銀色の光を放つ指輪が2つ並んで入っていた。


「コレ・・・」


呆然といった声でアンジェリケが呟く。有知郎は、そんなアンジェリケに微笑みを向ける。そしてアンジェリケの前で膝を折りアンジェリケの手をとる。


「結婚式でその指輪をつける栄誉をぼくにくれませんか」


有知郎は、これ以上ないくらい顔を赤くして聞いた。その顔の赤さは、アンジェリケの顔に張れるほどだ。


「えっと・・・つまり結婚をしたいと」


アンジェリケの呟きに状況を理解した観客は、固唾をのんで見守る。野次馬根性丸出しと言ってもいいが女王の婚礼は、祝い事以外の何物でもなかった。それに異国の青年と婚約してから女王の話が流出するようになった。そしてもたらされた話は、女王も自分たちと同じで血もあれば傷つくこともわかる人物だということだ。女王は、決して魔女として罵られるような人物ではなく長い間為政者として支えてくれた人物とも。

だからこそ自分たちの認識を変えてくれた異国の青年と敬愛すべき女王の婚礼は、行われて欲しかった。


「呪いのかかった恐ろしい姿の私でもよろしいのですか」


「あなたがどんな姿であろうとこの決意はかわりません。どちらかの寿命が尽きる日まで僕は貴女と共にいます。貴女なしではいられないくらい僕の色は染められているのですから」


「それは、私の台詞です。私もあなたのそばにいます。死が二人を別つ日まで永遠にいてください。愛しております有知郎」


「僕も愛してます」


有知郎がアンジェリケの手にキスを落とすと会場が割れんばかりの歓声と拍手が起こった。誰がしたのかわからないが簡単な火の魔法で花火のようなものをあげたものもいる。さすがにこんな大勢の前でプロポーズをしたことに有知郎の顔は依然赤いままである。アンジェリケは、ちょっとイタズラ心を発揮して有知郎の頬に口付けた。有知郎は、驚いた顔をアンジェリケに見せるがすぐに決心した顔をみせる。

そしてそれは起こった。


「おぉ!!熱血キス!一人身には、辛すぎる光景っす」


アンジェリケの腰を持って着けていた仮面をずらし(それっぽいところ)にキスをした。ここまでは兄と弟の話を聞いていてわかるが離すタイミングがわからない。相手の表情を見ればわかると言っていたがあいにくアンジェリケには、顔がない。

しかし、突然アンジェリケが光だしたので慌てて体を離した。奇妙なことに体を離したのにも関わらずアンジェリケは、体を一センチほど浮いていた。てっきり何か魔法を使うのかと思ったが会場がざわめきこれが魔法の産物ではないことを知る。


そして光が終息するとアンジェリケの体が崩れ落ちる。アンジェリケの体が地面に叩きつけられるまえに有知郎は、抱き止めた。


「え!?」


アンジェリケには、大きな変化が訪れていた。


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