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赤の女王と無色の僕  作者: 猫田33
ニゲラは嵐を耐える
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2

***********

城下のとある建物に老若男女が集まっていた。全てがバラバラだが服が上等なことだけが一致している。


「どういうことだ、サウスフィード侯爵!赤い魔女の呪いが解かれつつあるぞ」


「わしにもわからん!フリージアが魔女が話せるようになったと突然いいだしたのですからな」


「それより赤い魔女とあの日本人ずいぶん仲が良いではないか!仲があまりよくないと言っていたはずだ。まったく昔のわしと妻を思いだしてしまったぞ」


そう言った老人の隣の老婆は、扇で顔を隠す。その後ろにいた栗色の髪の青年が前に出てきた。


「お前は誰だ?いままで見た覚えがないが」


「閣下、申し遅れました。サルファン男爵を父より譲り受けました。オリバーと申します」


オリバーは、笑みを浮かべて言った。サウスフィード侯爵は、閣下と呼ばれて気をよくしたらしく顔が紅潮している。


「サルファンの息子か!?こんな大きな息子がいたのだな」


「15歳になったと同時に留学していたので閣下がしらなくとも当然かと存じます」


「そうか。それでサルファン何か聞きたいことがあったのではないのか?」


「はい、計画ではフリージア様と日本人を結婚させる。そして赤い魔女がフリージア様に王位を継承させるように仕向け、摂政としてサウスフィード公爵がたつんでしたね。しかし、なぜ日本人と結婚させるのです?若輩者でそこらへんの事情がわからないのですが。御教授願えますか」


「赤い魔女と婚約までした男が婚約を取りやめフリージアと結婚した。赤い魔女がフリージアに王位を継承させない場合、元婚約者をとられて嫉妬していると流せば赤い魔女の外聞が悪い。それに日本としては、この国との繋がりが欲しいようだからフリージアに王位を継いでもらわなくてはならない状況にもなる」


「なるほど赤い魔女に内と外の圧力をかけるわけですか。しかし、残念ながらそんなことにはなりませんよ?」


人の良さそうな笑みから一変して小馬鹿した笑いを浮かべた。そしておまけに押し殺すように笑い出す。


「ククッ、あなたのような馬鹿にしてやられるほど俺の主は、間抜けじゃない。ここにいるあんたたちは主が作ったザルの穴から出なかった連中だ。意味がわかるか?」


オリバーの言葉に逃げ出そうとする者と襲いかかろうとする者がでてきた。


「皆さまお逃げしようとなさったら黒こげになりますわよ?」


帽子を深めに被った女が一つしかない扉の前に立っていた。かまわず逃げようとした男の髪が燃えてすぐ消える。続いて逃げようとしたものたちは足を止めざるをえなかった。


「話のわかる方々でよかったわ。人が焼けるところを好きこんで見たくありませんもの」


「あの女は、誰だ!止められるものはいないのか!!」


「いや、ですわ。ずっと3日に1回は、我が家で食事をとるのにお忘れですの?」


サウスフィードは、女が言いたいことがわからなかった。しかし、隣にいたサウスフィード夫人が悲鳴と叫びの中間のような声をだした。


「アンジェリケ陛下!?」


「なんだって!」


「いかにも私は、ミドルフィード・アンジェリケですわ。私に勝てる魔術師は、この国にはいないですから大人しく捕まってください」


「私らは悪いことなど何もしていない!」


「おかしいですね~。ここにいる人たちは、みんな何かしら罪状がありますよ。洗いざらい言うのは、一苦労ですよ。陛下」


「私の情けがあるうちに降参したほうがよろしいと思いますわ。120年前の惨状を見たいなら残って構いませんわよ?」


その言葉に全員が両手を上げ膝をついた。アンジェリケが一声かけると外から部屋へ兵がなだれ込んできたのだった。




「陛下なんでみずからでてきたんですか。いくら強くても危険です」


「だって、有知郎さんと話していたら暴れん○将軍という話を聞いてぜひ真似をしたかったの。予想以上に楽しいわ」


懲りる様子のない主にオリバーは内心溜め息をつく。そして話すことがなかった主がこんなにおてんばだと想像もしていなかった。


「ところで」


先ほどの明るい雰囲気が一変し王者の纏う絶対的な何かに変わる。オリバーは、瞬時に膝を折り臣下の礼をとった。


「サルファン・オリバー長い諜報と潜入操作ご苦労。おかげで不穏分子は一掃できました。このまま諜報を行うか本来の第三秘書に戻るか選びなさい」


「第三秘書に戻りたいですね。諜報や潜入操作をしてると女の子いても口説けないですから。それに俺みたいないい男が声もかけないなんて世界中の女の子が嘆きますよ」


「有知郎の方が男前と思うわ」


「人のまえでノロケはやめてくださいよ‥‥」


「それも最近よく言われるわ?仲がよくても不仲でもいわれるのね」


アンジェリケは、首を傾げて言う。アンジェリケの周りで堂々と惚気る人物など西陣夫妻しかいなかったためどれほど恥ずかしいかわかっていない。


「とりあえず三日後に城へ登城なさい。第三秘書へ任命したのは七年前ですが城の臣下と会うのは初めてでしょう?」


「はい」


「三日間で自分の立場とこれからの働き方を西陣から教わりなさい。やれますわね?」


出来るかではなくやれるかと聞いた主に抜け目がないと苦笑する。出来るかは、失敗を考慮している場合であり。やれるかは、失敗を許さないということ。

最初から失敗することを前提にしていないのは、自分への信頼の証。


「はい、陛下。三日後、御前でお会いしましょう」


その三日後サルファン・オリバーは、長く各地を転々としていたが今後城で第三秘書として働くことになったことを発表されたのだった。

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