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赤の女王と無色の僕  作者: 猫田33
菊は虚空と在る
12/13

アンジェリケ*ヘリオトープ

これは、肉親にたいする愛情より深い愛情を求めた俺への罰だろうか?


鈍く銀色に輝く物が眼前に来たとき俺は、そんな場違いなことを考えていた。一番愛する相手となってしまったのは、10歳離れた異母妹。最初は、ただただ生まれてきた時期と立場と生まれてすぐ呪われてしまったのが不憫で面倒をみていた。母は、アンジェリケを嫌っていたが大人しいけれど好奇心旺盛なアンジェリケを見守るのがたのしかった。


アンジェリケには、後見人がいない。城のなかには俺たち兄妹と父、そして乳母のソルト以外味方がいないことを理解していた。そのためか外にでるとき俺か妹のカメリアの後ろに隠れていることが多かった。でもアンジェリケは、魔法と魔術の天賦の才があった。天気を変える魔術など遠い昔に存在した一族しか出来ないことができた。だからこそ有能な者には、国の防衛力を見込まれ。保身と高い地位を望んだ貴族に王にと祭りあげられた。


俺を王にと望むのは、母を中心とする一派。それと人柄に惚れてくれた友人たち。でも俺は、王位争いよりもまったく会えなくなったアンジェリケのことばかり考えていた。


「お兄様がアホだとは、わかっていたけどここまで馬鹿だとは思っていなかったわ」


呆れたという口調でカメリアがいった。カメリアは、王位継承から外れ一番力を持っているサウスフィード侯爵家に降家することになっていた。


「実の妹に恋するなんて。確かに母は、違いますが父は同じ。もし成就したとしても教会に睨まれますわよ」


「それでも好きなんだ。ただ大切というならカメリアも入るけどそれだけじゃない」


アンジェリケに媚びを売る貴族を見ると胸の痛みと貴族に対する怒りが湧いてくる。胸ぐらを掴んで窓から突き落としたいくらいその怒りは、強烈だった。


「滑稽ですこと。・・・・私は、私の家族の幸せを手伝いますわ。私のできることなどたかがしれるといっても」


「反対はしないのか?」


「近親相関は、いまに始まったことではないですわ。それにアンには、ヘリオ兄さんと同じ恋や愛というものを持ってないですし。一番の大敵は本人でしょうね」


などとカメリアがいっていたが事実で兄としか見られていなかった。それでもアンジェリケのそばにいられるのが嬉しいと満足していた。


あのときまでは、


「第一王子ミドルフィード・ヘリオトープ。2000の兵を率いて海より来る招かれざるものたちに死を」


父である王がいったことは、俺を殺す気かと思ったが父も苦々しい顔をしていた。どうやら父の判断ではなく母とその一派が俺を王にするために何か欲しいらしい。

はっきりいって俺は、アンジェリケの家臣になって問題ないのに面倒なことをさせないでほしい。しかも、この戦いアンジェリケの魔術でなければ勝敗が怪しい。どうやら大陸の大国が本気で植民地化を目指し。20槽の船に兵や専門家、武器をのせ攻めてきていることはわかっている。

いままでは、陸と同じ方法で攻めようとしていた。だから海の戦い方を、死という代償で実践でおしえこんできた。しかし今回は、専門家をのせている。普通の戦い方をしたら兵も武器も劣るこちらが負ける。


「戦にでたことないのがほとんどだな・・・」


優秀な奴をひきこみたい。でももし優秀な奴を連れていって全滅した場合。つぎに戦に駆り出されるのは、アンジェリケだ。余計な苦労をかけたくない。


「積んだな…。俺」


せめて思いを伝えたいが最近アンジェリケは、ふさぎこんで自室からでてこない。このままでは、出兵の日まで来ない気がする。そして出兵の日は、忙しく筆談しか出来ないアンジェリケと意思のそつうをはかるのは、難しい。

どうしたものかと出兵の前日まで悩んだ。その結果、貴族でよく使う花言葉で意味を伝えようと花を選んだ。

いよいよ出兵の日

俺と共に行く兵は緊張のためガチガチで役にたちそうにない。空気を和ませようと馬鹿話をふったが兵たちに冷たい視線で返された。 そんなにまずい話だっただろうか大臣の頭がズラだったって話。

と、思ったら兵たちが色めき立つ。どうやら、カメリアがきたためのようだ。カメリアの容姿は、母に似て美しく気品に溢れている。話さなければ美人と言える人物である。


「お兄様、アンはやはり来ていないのですね。まったく男なんですから堂々と砕け散るくらいの態度でいけばよろしいのに!もちろん砕け散ったら一番近い肉親として拾ってさしあげますわ」


「相変わらず棘のある言い方だね。もう少しアンのようにかわいいことがいえないのかい?」


「私は、私ですわ。それに文句は、生きて帰ってきたらいくらでも聞いてあげますわ。それより本当にアンに会わずにいいんですの」


「・・・・うん。いいんだ」


きっと、アンの隣に立つのは俺じゃないだろう。そのとき何の憂いもなくその男と一緒になってほしい。


「さぁ、進軍だ!愛する民よ。自らが愛するがもののために父なる海へ参ろうぞ!!」


「「「「オォー!!」」」」




その後、ミドルフィード王国の第一王子率いる軍は大陸からきた軍により倒された。しかし、第二王女の軍はアンジェリケの魔法の庇護のもと全滅し海の藻屑となる。あまりの力の大きさから"赤い魔女"と呼ばれるのはこれから。そしてその"赤の魔女"は、しばらく赤いゼラニウムが傍らに置かれていたそうだ。


そしてその戦いから250年以上すぎて"赤い魔女"が結婚するとは誰も思っていなかったであろう。



"愛する人よ

あなたを尊敬し、信頼します"

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