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世の中はよく出来ていると思う。
凸も凹も度が過ぎれば叩かれ粛正される。
しかし稀にそれを許されたものたちがいる。アイドルやスポーツ選手、政治家など人から注目される人物だ。
僕の父さんは政治家で、お祖父ちゃんも政治家で、曾祖父ちゃんも政治家。でも僕は、許された人物じゃない。
僕は演説するより、種を蒔きたい。
シャンパン片手に華やかなパーティーにでるより、鍬を持って畑を耕したい。
討論するより木を植えたい。
だから僕は、政治家じゃなくて農家になりたい。
それなのに‥‥‥‥
「有知郎いい話があるぞ」
いつも有知郎と会うとき不機嫌な父がニコニコと笑っている。良い話なのだろうが有知郎にとって良い話だったことは、指で数えるほどしかない。しかし毎回聞かされているものは、有知郎のためを思ってしてくれている。有知郎は、それをむげにすることが出来なかった。
「お父さん‥いい話って何ですか?」
「レアメタルがいま輸入している金額よりも安く仕入れられるんだ。日本はそういう資源が少ないからな。安く仕入れて作って安くたくさん売る。世界に遅れをとっていたがこれで返り咲きだ!」
ずいぶん興奮気味に話しているが有知郎との関係性が見えなかった。有知郎は、大学生で農業系を選択している。政治や経済は、他の兄弟が継ぐはずだった。
「お父さん話がわからないんだけど?なにかあったの」
「ミドルフィード王国のアンジェリケ女王とお見合いしろ」
「‥‥お見合いですか?しかもミドルフィード王国‥‥」
ミドルフィード王国は、ヨーロッパにある国。有名な庭園があるので有知郎も覚えていた。あともう一つ覚えていた理由は‥‥。
「あぁ、4000回目だ。350年かけて見合いをするとは驚くばかりだ」
ミドルフィードのアンジェリケ女王は、御歳390で世界最高齢である。アンジェリケ女王は、魔力が途方もなく多く肉体に若返りの呪いをかけてるとかないとか。さらにいえば悪魔の呪いをかけられ、ひどい姿をしているともいわれている。
「日本のために行ってくれるな?」
有知郎には、断ることなど出来ない。
「わかりました」
「さすが佐伯の人間だな」
「お見合いは、いつどこでするんですか」
一国の女王がお見合い出来そうな場所なんて限られる。有知郎が思いつく場所は、だいたい素晴らしい庭園があるのでお見合いが終わったらそこを散歩してもいい。
「ミドルフィードに決まっている。‥‥‥連れてけ」
父の命令と共に、部屋へガタイのよい黒スーツの男たちが現れ有知郎の両脇を掴んだ。有知郎はこんな強制的な方法を使わなくても行くのにと、内心ため息をついた。
「そのままの格好では、アンジェリケ女王の不況を買うかもしれんからスーツでも着せなさい」
「かしこまりました」
執事の黒木が父に頭を下げ、有知郎を掴んでいる男たちと部屋を出た。
「有知郎坊ちゃましばらく堅苦しいことをさせることをお許し下さい」
黒木が眉尻と目線を下げると、胸が掴まれたみたいに苦しい。今年60歳を迎える黒木は、有知郎にとって祖父のようなもの。だから黒木が暗い顔をすると申し訳ない。
「黒木いいんだよ。僕は、農業をしたいっていう我が儘をきいてもらってるんだ。これくらいしなきゃ兄さんと成太郎に申し訳ないくらい」
「ですが‥‥」
「黒木、不安そうな顔をしないで?執事長がそんな顔してたらみんなが困るでしょ。だからいつもみたいに笑ってよ。僕は、大丈夫」
黒木は、一瞬だけ下に目線を落とすと朗らかな笑みを浮かべた。
「‥‥はい、有知郎坊ちゃま」
「有知郎坊ちゃん!」
「上木さんちょうどいいところに」
上木は、佐伯家の庭師でわからないことがあると豪快に笑いながら教えてくれる気のいいおじさんである。
「本当に外国に行っちまうんですかい?」
「はい、だからあの子達の世話を頼んでもいいですか?」
「もちろんですとも!この上木泰造、誠心誠意世話をさせていただきます」
「ありがとう、よろしくね」
上木が顔を腕に押し付け男泣きを始めた。有知郎は、上木の背中の摩ってただ笑う。
「有知郎坊ちゃまそろそろ‥」
「わかってるよ」
あれから8時間が経ち、有知郎を乗せたジェット機がミドルフィードの空港に着いた。
「有知郎坊ちゃま空港に着いたようです」
「ありがとう黒木」
有知郎だけでは、色々心配だと父が黒木をつけた。有知郎は、正直一人で他国に行くのが心細かったから助かる。
「有知郎坊ちゃまスーツにシワがよっております」
「ありがとう」
飛行機へ乗る前にスーツを新調した。本当ならばサイズを合わせる必要があるのだが、黒木が事前にサイズを注文した。
「有知郎坊ちゃまは、達郎坊ちゃまや成太郎坊ちゃまとは違う賢さがおありです。不安でしょうが私の言葉を信じてください」
「うん」
「では、いってらっしゃいませ」
黒木に見送られてジェット機から出た。5時間ジェット機の中にいたため少し目が眩む。だが目が慣れる前に、ジェット機の外にいた記者たちの容赦ない質問と撮影がされた。
「4000回目のお見合いの相手だそうですが自信はいかほど!?」
「Talk about a meeting with a view to marriage please!」
「○#@↓△★§¥∽∝∵∫!!」
「外交が関係しているという情報がありますが本当ですか!」
有知郎は、いっせいに質問されて困った。日本語は、わかるがそれ以外はよくわからない。いま降りたらもみくちゃにされそうだ。
「please keep quiet!If your be not quiet,we turn out airport」
黒いサングラスにスーツを着た日本人らしき男性が流暢な英語で答えた。それを聞くと記者たちは、渋々去って行った。
「もうお降りくださっても大丈夫です」
「ありがとうございます」
下に降りると男がかなり高いことがわかる。175センチの有知郎より身長が高い。
「有知郎様、記者に対する対応が遅れ申し訳ありませんでした」
「いえ、謝らないでください。僕がボケッとしているのが悪いんです」
「…そうですか。恐れいります」
「そういえばあなたは誰ですか?お…父の秘書ではないですよね」
「申し遅れました。私はアンジェリケ様の第三秘書と警護をしております西陣薫と申します。父が日本人で日本語が達者なため、この国に滞在中佐伯様に付くように命じられました」
有知郎は、西陣から名刺をもらいながら慇懃な話し方をする人だなと思った。丁寧すぎて実際どう思っているかわからない。
「…丁寧な自己紹介ありがとうございます。付くように言われたということは、僕の自己紹介はいらないととっていいですね」
「はい、納得いただけたなら車にお乗りください。ここは、遮蔽物がありませんから射撃される危険性があります。治安は、良い方ですが日本ほどではありません」
「そうさせていただきます」
飛行機の中は、暖かかったが外は肌寒かった。車に乗れるなら早く乗りたい。そう思ってると西陣のすぐ脇にごく普通な日本車が止まる。
「では、どうぞ」
西陣に扉を開かれて有知郎は、中に入った。やっぱり中も普通。気楽でいいがここは黒のリムジンではないだろうか。
「城まで車で2時間かかります。何かありましたらお申し付けください」
「僕の執事を乗せてくれないかな?ジェット機に乗せたままなんです」
「かしこまりました」
西陣が窓を少しあけ係の人に何か話す。すると係の人は、ジェット機に行き黒木を連れてきて車に乗せた。
「なんで降りてこなかったの?」
「ついつい降りるタイミングを逃してしまいました」
有知郎を乗せた車がゆっくりと動き出す。自分の運転ではこうも揺れが少なく出来ない。
「執事として堂々とでてくればよかったのに黒木」
執事は、日本では職業としての働き先がない。だが外国では、学校があるほどポピュラーな職業である。メディアにでても何も問題ないだろう。
「60の老いぼれよりも私の倅がでた方が華やぐでしょう。見た目の問題です」
「黒木は、僕が見た中で一番立派な執事だよ。背筋がピンとなって足音が出ないで歩くの格好良かった」
「そういえばお小さい時、私や上木の後ろをずっと追いかけてましたね。お懐かしいことです」
黒木は、目を細めて有知郎を見ているが実際見ているのは幼い時の有知郎だろう。それから他愛もない会話をしていると城らしき豪華な建物が見えてきた。
「あれはもしかして…」
「はい、あの城は我が主の住まいでありこの国の政治の要となっているヘマタイト城です。お見合いの会場もこちらとなっております」
突然、前髪に隠れていない有知郎の顔が赤く染まる。するとさっきまで大人しかった人物とは、思えないほど大きな声で話し出した。
「本当ですか!?なら、お見合いの前後でいいですから庭園を見せていただけませんか!5年前に出版された写真集にヘマタイト城の庭園が載っていて見たかったんです!完全なシンメトリーで作られた庭自体美しい!でも一番の魅力が数々の薔薇!珍しいオールドローズである…」
「有知郎坊ちゃまそんなに話されては相手の方がお困りですぞ」
黒木が窘めて有知郎は、話すことを止めた。無表情だった西陣の顔が引きつっている。
「あっ、すみません。どうも好きなことに関することだと勢いよく話してしまいまして‥‥」
実は同じような失敗は、何回もしていた。そのたびにいま西陣がしている苦笑いか呆れ顔をされている。だがそこはプロらしく西陣の顔はキリリと仕事用の顔に切り替わる。
「お見合いは2時間後からになります。陛下の判断が必要な緊急の書類がでてしまったものですから」
「かまいません。一介の学生が王様の邪魔をするのはおこがましいです」
「お気遣い感謝します」
車が通れるように工事を行ったらしく城の門をつかえることなく通過した。そびえ立つヘマタイト城が有知郎の視界いっぱいに広がる。
「ようこそヘマタイト城へ、佐伯有知郎様」
アンジェリケは、伝統よりも効率を重視している女王である。
その証拠に御伽噺にでるような城だがエアコンを完備、照明もLEDを使っている。ヘマタイト城の外観をそこなわずそれを行うことは、簡単に出来る判断ではない。金と時間と人が大量に必要だからだ。だからヘマタイト城に訪れる客人は、意外にも整備がいき届いていることに驚く。実際お見合い会場のサロンに入った有知郎が、うたた寝したくなるほど暖かい。
「坊ちゃま眠ってはなりません」
「わかってる‥‥。でも暇だと眠くなる‥」
アンジェリケ女王は、3時間経っても来ない。何か雑誌があれば気晴らしできるがそういったものはなかった。
「長らくお待たせして申し訳ありません。アンジェリケ様がお見えになりました」
西陣の声に扉の方を向くと黒いヴェールを被った女性がいた。きっとアンジェリケ女王だろう。アンジェリケ女王は、椅子に腰掛けるとホワイトボードに何か書き出し見せた。
【今日は来ていただきありがとうございます。私は、話せないので筆談で話すことをお許しください】
ホワイトボードには、とても綺麗な字で日本語が書かれている。文章の流れがおかしくないことにも驚いた。
「それくらいかまいません。僕‥私こそ馴れない場所なので無礼な真似をしたらすみません」
「佐伯様堅い。リラックス、リラックス」
「あの‥‥?あなたは誰ですか」
有知郎、黒木、アンジェリケ、西陣の他にもう一人部屋にいた。仕立ての良さそうなスーツを着た中年の男で、顔の形からアジア系であることはわかる。
「私はミドルフィードの日本大使館に勤めている中間と申します。今回佐伯総理から仲人を頼まれました。はい」
「大使館の方ですか。忙しいでしょうにありがとうございます」
「いえいえ、これくらいなんてことありません!」
大使館の人間に仲人を頼むなんてお父さん気合い入ってるな。
「では、お見合いを始めましょう。そうですね。まず手始めに自己紹介といきましょう」
【ミドルフィード・アンジェリケです。ミドルフィード王国の王をしています】
「私は佐伯有知郎といいます。○○農業大学の学生で現在2年生です」
有知郎は、話のネタに困った。いつもは話の聞き手に回り、話上手とは言えなかった。だが有知郎の顔は、前髪に隠れているためそんな心中を知るものはいない。
【ご趣味はなんですか】
アンジェリケの問いは、有知郎にとって天の助けに思えた。
「野菜の栽培と園芸です」
お見合い前に黒木からくれぐれも、勢いよく話すぎないようにと言われたので気をつける。
【エンゲイとはなんですか】
「植物を植えて育てることです。だから花でも木でもいいですし地面や植木鉢、ポットとか種類や楽しみ方は無限大です。最近は、ポットにパンジーを植えたところです。パンジーだけを植えても、ボリュームも色も充分でしばらく楽しめそうだなと思ってます。今度は別の花と一緒に植えてみたいと思ってしらべてますがなかなかこれといったのがないんです…。あっ」
黒木に軽く肩を叩かれると呆けている仲人に気がつく。有知郎は、アンジェリケ女王はきっと呆れているかつまらなかっただろうと思った。
【なぜ、お話をお止めになるの。続けてください】
「つまらなくありませんか。実際に花をみるならともかく僕の話をきくだけなのは」
有知郎が尋ねるとアンジェリケは、ホワイトボードいっぱいに書き始めた。
【あなたのお話は、あなたの植物に対する愛情と知識がにじみ出るようです。きっとあなたがお育てになる植物は、とても素晴らしいのでしょう。ぜひ実際に見てみたいと思います】
「ありがとうございます。そう言われると嬉しいです。日本に来た時は、ぜひ見せたいです」
そういっている有知郎の声は明るく二人に流れる雰囲気は穏やかだった。
「フフフッ、ではここで二人きりになっていただきましょう!ごゆっくり~♪」
中間は、黒木と西陣の襟首を掴んで部屋から出て行ってしまった。
【どうしましょうか】
「この時間を好きに使っていいならこの城の庭園をぜひみたいのですが…」
【我が城の自慢ですのよ。喜んでいたします。ではこちらに】
アンジェリケがテラスの窓を開けると冬の冷たい風が鼻にツンとくる冷気を運んできた。アンジェリケのヴェールが、風を含んではためく。そこで有知郎は、あることに気がついた。
「その格好で寒くありませんか」
アンジェリケの格好は、襟元がある白のドレスで上にコートを着なければ寒そうな姿だった。
【ご存知だと思いますが私の体は悪魔の呪いがかかっています。その為か暑さや寒さ痛みを全く感じないのです】
有知郎は、悪魔の呪いの話を聞いたことがある。しかし、感覚がないというのは初めて聞いた。
「でも私は心配です。あなたの体は、あなた一人のものではない。せめて私のジャケットを着てください」
有知郎が上着を脱ぎ始めるとアンジェリケは、慌てて止め侍女を呼びコートを頼んだ。侍女が持ってきたのは白のポンチョ型コートでとても暖かそうだ。
【お気遣いありがとうございます。今度こそご案内します】
「はい」
それから二人で庭園を散策した。有知郎が何か質問するとアンジェリケがホワイトボードで答える。その様は、恋人同士とはいかなくともとても親密で楽しげだった。
「…ここがあの薔薇園」
【薔薇園は、私の即位100年を祝って造られました。春と秋には、白・黄・ピンクなど様々な色が咲きます】
「そうなんですか?てっきり白薔薇だけかと思いました。それだけの種類があるのになぜ赤薔薇はないのですか」
そもそも赤薔薇は、薔薇の中でも数が多い。たぶん薔薇の色はと聞かれれば一番に出てくるのは赤だと思う。
【赤薔薇が嫌いなのです。醜い自分を思い出して】
「醜いなんてことは‥」
ないと言いたいがアンジェリケの顔は、厚いヴェールがかけられて見えない。
【お優しい人。私は、有知郎様と一緒にいるのが楽しい。有知郎様とならよい家庭を築けそうな気がします。でも私の頭を見てなんて思われるか怖い】
「なら見せなければいい」
【それは私の心が駄目なのです。嘘や偽りを見せているみたいで苦しくなります】
字がアンジェリケの状態を表すように少し揺れていた。そのアンジェリケの弱さは、会って半日も経っていないのにとても信頼されたようで少し嬉しかった。
「植物は大切にすればそれに答えてくれます。だから僕も、もらったものは返します。それは、アンジェリケ女王の場合も同じです。アンジェリケ女王は、僕を信頼してくれました。今度は、僕があなたを信じます。だから見せてください」
有知郎は、自分の言葉が不思議だった。普通なら無理にさせるようなことは言わない。しかしこぼれ落ちるように出てきてしまった。対してアンジェリケは、ドレスにシワが出来そうなほど強く裾を握っていた。だが心を決めたのだろう裾から手を離しヴェールを上げる。
有知郎は、現れたアンジェリケの"頭"に驚いた。
頭部には凹凸がなくのっぺりしていてさらに肌の色が赤黒い。それはマッチ棒の先端にそっくりであった。
【醜いでしょう。でも見た瞬間に逃げられなくてよかったです】
「逃げるような人もいるんですか‥?」
有知郎は、驚くが逃げるほどではないと思った。そもそもモダンアートと呼ばれるものに似たような絵があった気がする。
【二番目のお見合い相手です。力自慢で将軍も務められている王子様でした】
「一番目の方は‥‥」
【侍女と駆け落ちしました。三番目の方は気絶。四番目は、失禁。五番目は、叫んで逃げられました】
有知郎は、ホワイトボードを見て自分のしようとしたことを後悔した。このアンジェリケが自分を失望して、お見合いが破談すればいいと思っていた。だがそれは4000回目のお見合いが失敗し、アンジェリケが傷つくということだ。
【佐伯様のような方は初めてです】
顔もなければ声も聞こえないのでアンジェリケが、喜んでいるのか驚いているのかまったくわからない。でも自分は、見ることが出来ないがアンジェリケが笑ってくれたらいいと思った。
【お尋ねします】
「はい」
【私と婚約していただけませんか】
「僕でいいんですか」
【どういうことでしょうか】
アンジェリケが首を横に傾げる。
「僕がひどい人間かもしれません。あなた以外を好きになって駆け落ちしたり、知らないうちにあなたを傷つけるかもしれない。そんな可能性があるのに僕と婚約してもいいんですか」
アンジェリケは、ホワイトボードいっぱいに"YES"と書いた。
「なら僕の返事は‥‥‥はいということで」
有知郎がそういうとクラッカーが鳴り響いた。
「「「アンジェリケ様おめでとうございます!!」」」
どこに隠れていたのかと問いたいほどの人数が現れて次々祝辞を述べる。これらの人物は、城仕えの使用人たちでずっとアンジェリケを応援していた。それからが大変で軽く祭りのような賑わいになる。
「有知郎坊ちゃま!」
「黒木」
「本当にご婚約なさるのですか。ご婚約されるということは、結婚すると同義ですぞ」
黒木が有知郎の腕を掴む。有知郎は、そんな黒木をなだめるように言った。
「ありがとう黒木。僕は大丈夫」
「坊ちゃま‥‥」




