表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オシャレ・ライダー

作者: スグル

 この世界には、『オシャレ』という言葉が存在する。言葉の意味は、辞書で調べてみれば良いだろう。ちなみに、wikには載ってない。

 あの人の服、オシャレだねー、とか。この部屋、オシャレー、この曲、オシャレー。あの人の拳法の構え、オシャレー。貴様の単車、オシャレやなー、ワレ!!など。世界は、オシャレに溢れている。

 この物語は、そんな『オシャレ』に命を賭けた者たちの激しく切ない物語である。



 西暦2007年、初夏のS玉県Kスカベ市。

 桜が散り、緑の木々の間から、優しい陽気が漏れている。そんな柔らかな日差しの中を、ヴィトンのカバン(メイド・イン・チャイナ)を片手に一人の少女が歩く。彼女は天気が良いから、気分も良いのか、鼻歌を口ずさみながら、軽いスキップで地面を蹴って進む。

 少女の名前は、越島ジェリ。19歳の浪人生のニート。アパート暮らしで、お金がないのに、食費削ってまで、オシャレに費やす、オシャレ好きの少女。今着ている服だって、夏物のどことなくオシャレな服装だ。

 そんな彼女が狙っている大学は、『都立オシャレ大学』。就職率2%、オシャレ率100%の今さえ良ければ、それでいいという思春期な大学。そのオシャレ大学に行くと、ハイレベルなオシャレな勉強をし、オシャレさんになり、うまく行けば、芸能界入り出来る、まさにオシャレのためのオシャレな大学だ。

 しかし、この大学に、入学するには、一つ条件があった。それは、試験の合否で入学させるのではなく、入学手続き金の100万円を払えば、誰でも入学出来るという、斬新な入学手続きをする大学なのだ。

 そのため、越島ジェリは入学資金稼ぎのため、日々、宝くじ、競馬、パチンコをして、資金を稼いでる、たちの悪いニート少女だ。

 そして、彼女は今、さすがにお金がなくなったので、親の仕送りが入っている口座から、お金を引き出しに、銀行へ向かっているのであった。

 しかし、この後、銀行で彼女はとんでもない事件に巻き込まれる。



 彼女が、街中の『ハッピー・ライフ・ジェネレーター銀行』の近くに着くと…。なんと、銀行の周りには、多くの人々、警官、パトカーの姿が。なにやら、深刻な状況のようだ。

「あらら…、なにがあったのかしら…」

と、彼女が近くまで寄り、近くにいた野次馬に話し掛けた。

「なにが、あったのですか?」

「ハッピー・ライフ・ジェネレーター銀行に、強盗が入ったんだよ」

と、野次馬のリーゼントの制服の少年が、そう言う。

「まぁ、ハッピー・ライフ・ジェネレーター銀行に、強盗が!」

「そうだよ、ハッピー・ライフ・ジェネレーター銀行に強盗が」

 彼女は両手を顔に当て、驚く。

「しかも、犯人は集団ではなく、一人で卑怯にも、通りすがりの『東京喫茶・山田』さんを人質にしやがった」

と、リーゼントの彼は言う。

「(誰…?)それは大変ですねー」

と、彼女は自分の口座から、金が盗られてないかだけを心配して言う。

「しかも、強盗は、ただの強盗ではなく、『都立オシャレ大学』卒業生で、芸能界に行きたかったけど、行けなくて、やさぐれて、ニートになり、博打にハマり金が無くなって、強盗になった、『オシャレ強盗(別名、オシャレ泥棒)・ロボットダンス・勝彦』なんだ!」

 何故か、強盗の事情に詳しい彼は頼んでもないのに、勝手にベラベラ喋り始めた。

「『オシャレ強盗』ですって!」

 オシャレ好きの彼女は、その言葉に、かなり反応した。同時に、自分の現在の状況と、彼の事情が被っていて、耳が痛かった。

 犯人は、彼女が憧れているオシャレ大学の卒業生。そして、わけのわからないアダ名を付けられている。これは、大変だ。


「ヘイ!ユー!!お金出しちゃいなよ!!」


と銀行から、大声が響いた。その声は、『オシャレ強盗・ロボットダンス・勝彦』だ。

 その声を聞いたジェリは、リーゼント君から離れ、野次馬を掻き分け、犯人が見える位置まで行った。

 銀行の前に、オシャレ強盗・ロボットダンス・勝彦(めんどくさいので、以下、『オロ勝』と略させてもらう)が、東京喫茶・山田さんの体を盾に、彼の頬に銃を向けていた。

「見てて痛々しい、本当に無駄な抵抗はやめて、おとなしく人質を解放しろ!」

 刑事が、メガホンを片手に彼に呼び掛ける。

「ヘイ!ユー!!お黙りなさい!さっさと、お金持ってこないと、『東京喫茶・山田』の頬に、新たな1ページを刻むぜ!」

と、そんな呼び掛けを無視し、オロ勝は金を要求している。

「ひぃー、刻まないでー!!」

と、わざとらしいリアクションを、今年で30歳の公務員の男性、東京喫茶・山田はした。

 そんな様子を見て、彼女は、これは大変な事態だと感じた。

 そして、彼女は、この場から離れ、近くにあった、本当に適当な公衆トイレに入って行った。



 ジェリは、公衆トイレに行き、持っていたカバンの中から、ある衣服を取り出した。それは、暴走族の特効服。

 今、着ているオシャレな服を脱ぎ捨て、その特効服に、彼女が着替えた。

 すると…。


バキン!


 公衆トイレのドアを蹴り壊し、どこかから持ってきた木刀を片手にトイレから出た。

 さっきまで、可愛げなショートカットだった髪の毛をオールバックにし、さっきまで、大きく見開いていた目は細長い凶悪なメツキになっている。さっきのオシャレな彼女とは、まったくの別人だ。


 説明しよう!越島ジェリは、多重人格者(辞書か、仮面ライダー電王、参照)である。着ている服で、自分の人格、性格を変わる斬新な多重人格の切り替え能力を持っている。

 普段の彼女は、オシャレな服を着ていたため、キュートな性格であるが、特効服に着替えたことにより、彼女の人格は凶悪な暴走族のレディース番長になったのだ。


 木刀を片手に、何故か、トイレの前にあった愛車、カワサキ・Z400FXにまたがり、彼女は銀行へ、再び戻った。

 どうやら、この凶悪な性格で、人質を取っているオロ勝と戦おうとしているのだ。



 「ヘイ!ユー!お金持ってきなよ!早く持ってこないと、豪華お笑い芸人たちがレギュラーの『リンカーン』の再放送が始まるぜ!!」

と彼女は、バイクで銀行に戻っても、状況は固定されたままであった。

 キキィ!とバイクを、その場に停め、彼女は木刀を片手にバイク降りた。

「なんだね、君は!」

 一人の警官が、彼女に近寄る。

「邪魔だ!!」

と、前振りなしに、レディース・ジェリは警官を蹴り飛ばす。蹴られた警官は、数メートルくらい吹っ飛んだ。

 そして、野次馬たちを払い避けながら、銀行の前、オロ勝の目の前に現れた。

「ヘイ!ユー!なんだね、チミは!?」

と、ジェリの登場にオロ勝は驚く。

「人質を解放しやがれ!!ドサピンが!!」

と、犯人に向かい、彼女は啖呵を切る。

「嫌だね!」

 直ぐ様、断られた。

 これには、短気な人格の今の彼女はキレた。

「なんだと!ボケナス!!」

 木刀を片手に、ジェリはオロ勝を殴りかかろうとしていたが、警官達に体を抑えられ止められた。

 どうやら、この人格では無理だとジェリは思った。

 彼女は、警官の手を振りほどき、どこからか、またカバンを取出し、特効服を、その場で脱いだ。人目も気にせず。


 そして、彼女は、今度はキャリアウーマンぽいリクルート姿に着替えた。オールバックから、髪の毛を、後ろ髪をまとめた落ち着いた髪型になり、眼鏡を掛け、倫とした出来る女性に変身した。

「ヘイ!ユー!なんの真似だね!」

と、いきなり着替えた彼女に向かいオロ勝は叫ぶ。

 すると…、ジェリは…。

「おやめなさい!」

と、冷静で静かに怒鳴る。

 これには、オロ勝は怯んだ。

「こんなことをして、なんになると言うのですか?馬鹿な真似は、おやめなさい!大体、人質を盾にした強盗が成功する確立は…」

と、リクルート服を着たことにより、冷静になった彼女は、ベラベラとウンチクみたいな知的なことを話し始めた。

 そのウンチクをベラベラ喋りは、なかなか止まらない。これには、オロ勝は呆然とした。

 すると…。


カシャン!!


 ウンチク語り中のジェリの両手に、警官が手錠を掛けた。

「えっ?」

 彼女は、驚いた。

 一人の警部が、ジェリの目の前に現れ…。


「公務執行妨害、バイクを無免許運転、目の保養になったけど、猥褻罪などで、逮捕する…」


と、彼女に言った。

 そして、ジェリは強制的にパトカーに乗せられた。

 こうして、多重人格オシャレ少女、越島ジェリは逮捕された。



 このあと、オロ勝の持っていた銃が玩具だとバレ、そのまま、逮捕されました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 登場人物や状況などから生まれる、どうしようもない感じが非常に面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ