あるいていったら
アルファポリス主催
第七回絵本・児童書大賞に参加しました。
よろしくお願いします。
ふしぎな木がならんでいる
その木のまわりに、白いわたげのようなものがフワフワとまっている
木のねもとに、小さなかんばん
「ポプラ?」
はじめて聞く名前の木
長い長いその道をあるき、今日もぼくは前にすすんでいた
「おっきなわたげ?」
とおくから見てもわかるほどの大きさ
あるいていったら、その大きさはぼくの二つの手のひらにのるくらい
つかんでみれば、気もちよさげにねむっているネコで
「って、ぼくがつかんでいるのに、なんでおきないのかな」
しんじゃってるのかなと、少しドキドキしながらジーッと見てみる
おなかのあたりが、ほんの少しだけうごいている
(生きてる?)
ちゅうブラリンにされていることに気づかないで、ねむりつづけているネコ
ネコをうでにかかえて、またぼくはあるきだす
ゆられているのに、まだねむるネコ
ぼくに、気づかないネコ
「おまえは、いつ、ぼくに気づくのかな」
うでにかかえながら、水をのんでいても、しょくじをしていても
においにも、ぼくのたいおんにも、ちっとも気づかないみたいだ
「……星がみえないな」
今日はくもり
ただ、星が見えないだけで、みょうにさみしい気にさせる
小さくためいきをついた時、うでの中のネコがモゾリとうごいた
「おまえは、あたたかいね」
ぼくのうでに、かおをこすりつけたネコ
たったそれだけなのに
「あったかい、な」
たった今まであった、さみしい気もちがすこしきえた
(早くぼくに気づかないかな)
目をさまして、もしかしたらにげてしまうかもしれない
そんな気もちもあるけれど、ぼくはぼくに気づいてほしくて
「ふわふわだな、おまえ」
ネコの頭を、そっとなでた
またすこしだけ、さみしくなくなった