あるいていく
アルファポリス主催
第七回絵本・児童書大賞に参加しました。
よろしくお願いします。
目がさめたら、どこかしらないばしょで
そして、せなかには大きなリュック
天気はよくて、風も気持ちがいい
「とりあえず、歩いてみよう」
そういいながら、歩きだした
遠くをみれば、どこまでつづくのかわからないくらい長い道があって
どこに何をしにいけばいいのか、何もわからないけど
「こんなにも気持ちがいい日は、きっとない」
そう思いながら、とにかく歩いた
「いたっ」
つまずき、ころんだ目の前に、石がおちていた
「これでころんじゃったのか」
ゆびさきでつまんで、手のひらにのせる
ぼくの手のひらより、ほんのすこし小さな石
何を思ったのか、ぼくはそれをリュックに入れた
そして、また歩きだす
歩いてみつけるものを、どんどんリュックにしまっていく
せなかのリュックは、そのうちおもたくなって、歩くのがいやになった
こかげで、リュックを下ろしてしんこきゅう
「なんで、こんなものばっかり入れているんだろう」
自分が入れたものなのに、ふしぎだ
けれど、ここにすてていくのもどうしてかしたくなくて
「しょうがないな。入れちゃったのは、ぼくだ」
おもたいそのリュックをまた、よいしょといいながらせおった
どこまでもつづく道
空は青くて、きもちがいい風がふいて、気分だけはよかった
『ご自由に』
オレンジ色に空がそまったころ、たどりついたそのばしょ
そこに、それだけ書かれたかんばんがあった
「何をどう、自由にしろってことなのかな」
オレンジの空は、ゆっくりと夜の空へとかわっていく
「自由にってことは、ここをつかってもいいってことかな」
リュックを下ろして、また大きくしんこきゅう
リュックの中から、こえだやはっぱをとりだし、火をおこす
ひろった石で丸いカタチを作って、そのまん中におこした火をうつした
とちゅうでみつけたりんごをたべて、空をずっとみてすごす
「しずかだな」
虫のこえ、木やはっぱのゆれる音
それと、ぼくのこきゅうの音と、しんぞうの音
ほかには、なにもきこえてこない
さむくもないのに、ぼくは自分にうでを回す
まるでそれは、自分をだきしめているようなかっこうで
さみしいのかな、ぼくは
ひとりでこんなところにどうしているのか、わからないまま
夜をすごすことになってしまった
だきしめているぼくのうでから、じんわりとあたたかさをかんじる
そのあたたかさが気もちよくて、しらないうちにぼくはねむっていた
目がさめると、今日も青空で
「なにもなくなっちゃった」
空になったリュックをせおって、ぼくはまた歩きだした
昨日ひろってきたものに、いらないものはひとつもなかった
ムダなんて、なかったんだ
「今日も、なにかに出あえるのかな」
どうしてここにいて、またあるきだすのかもわからないまま
それでも、道をもどるよりは、前にむかって歩いていけば
あたらしい何かをみつけられる気がした
「今日は、だれかをみつけられるといいな」
そのだれかがどんな人かは、あたりまえだけどわからない
そしてすこし歩くと、ボロボロのかさがおちていた
「これで雨がふっても、きっとへいきだな」
空っぽだったリュックに、かさを入れる
リュックにひとつ、なにかを入れるたび
ぼくの心にも、何かがはいっていく気もちになっていく
「次は、今日のあさごはんが見つからないかな」
次にみつかるかもしれない何かにドキドキしながら
ぼくは、あるいていく