少女のお願い
さて、少女がこの町にやって来てから数日が経ちました。今日もまた少女は旅費を稼ぐため、力仕事に精を出そうとしますが……。
「すまんなぁ、リンネちゃん。今日は馬車が故障したらしく資材がこねぇんだよ。急だが今日はしっかり休んで、明日に備えてはくれないか?」
といつもの仕事場のおじさんがばつが悪い表情で答えました。
「私が行ってきて手伝ったほうがいい?」
「いや、手伝ってもらってばかりなのに嬢ちゃんに負担をかけさせるわけにはいかねぇ。こいつは俺たちに任せてくれねぇか?」
「うーん、分かった」
最初は働けないことに少しだけ不満を抱いたようですが、仕方ないと少女は一日の休暇をいただきました。とはいえ、少女がやることはただ一つです。
少女は余裕をもった足取りで、宿に戻っていきます。
「おばさん、何かお仕事は無い?」
と宿に入って開口一番、ちょうど目の前にいた女将さんに訊いてみます。女将さんはちょっと困ったような顔をしていますね。
「あるにはあるんだけど……、たぶんお金にはならないわよ?」
「…………? それに何か問題があるの?」
「…………。リンネちゃん、今日の仕事がなくなったから別の稼げる仕事を探しているんじゃないの?」
「ううん、働ければそれでいいの」
と首を振って少女は即答します。その瞳に嘘偽りはなく、本心の本心で言っていることがうかがえます。
「そう、分かったわ。それでお仕事のほうは、ついさっきこの近くに住んでいる女の子の友達が行方不明になってしまったらしいの。スートも使っていいから、一緒に探してきてくれないかしら」
「分かった!」
「じゃあ、これ。女の子の住んでいる家の地図。そこで女の子が待っているわ」
「うん、じゃあ言ってくるね!」
と少女はそう言って宿から出て駈け出して行きました。