宿と少年、少女の旅の始まり。
今回はセリフ多めです。忙しかったのであまり書けませんでした。
誤字、脱字、感想をお待ちしております。
「着いた~」
馬車から降りた少女は地面の上を元気よく跳ねまわります。どこにそんな元気が残っているんだか。
「一時はどうなるかと思ったんじゃよ、死ぬことすら覚悟したわい」
少し疲れた様子のおじさんも馬車を降りてきました。
「お嬢ちゃんを運べるのもここまでじゃのう、頑張るんじゃよ。旅は始まったばかりじゃ」
「はい! ここまでありがとうございました」
少女はおじさんにお礼の言葉を言い、町の中を駆けだします。目指すは風雨を凌げるような宿、少女は一軒心当たりがあるようです。
町のはずれにある一軒の宿屋、そこに少女が入っていく。出迎えたのはこの宿の女将、少女の姿を見ると親しげな声で話します。どうやら顔見知りなようです。
「あら? リンネちゃんじゃない。あの人はお元気?」
「うん、元気だよ。たぶん今日も狩りをしてるんじゃないかな?」
「あなたのお母さんは逞しいわね……。で、今日は一人で来たのかしら」
「うん、ちょっとこの世界を旅することにしたの。しばらくお世話になりま~す」
「そう、歓迎するわ。スート! 空き部屋の掃除をしておきなさい!」
「……はいはい、分かったよ母さん」
女将が二階に向かって叫ぶと、どこか呆れたような声が聞こえてきました。
「スートいるの?」
「ああ、この前バカ息子が帰ってきたのよ。まあ、あの子もなんだかんだ言ってこの町が好きだしね」
「じゃあ、ちょっとスートに会ってくる」
少女は二階へと駆け上がりました。女将さんに教えてもらった部屋に入ると、一人の少年がベッドのシーツを整えていました。少年は、少女のを見たとき一瞬驚きます。
「……!? リンネ、お前か」
「私だ!」
少女は腰に手を当て、自信満々に答えます。対照的に、少年呆れたように息を吐き、額を抑えながらしゃべります。
「冗談はいい、何でお前だけがここにいるんだ?」
「私、旅に出ることにしたの」
「……冗談だよな?」
「本気だよ? いろんな場所に行って、いろんなものをこの目で見てみたいの。会いたい人もいるし」
「はぁ……、まあ頑張れよ。とりあえず今日は、俺が夕飯を作ってやるから時間までは外をぶらぶらしていろ」
「やった。スートの作るご飯!」
と言いながら少女は宿の外へと出て行きました。
「…………。ふぅ、さてと。さっさと仕事を終わらせないと、リンネも期待しているわけだしな……」