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少女の行進。~勇者がいなくなった世界で。  作者: 夢見坂 くう
プロローグ
3/7

魔物をどかそう

 誤字・脱字の指摘、感想などどしどし待ってます。

「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん。早く起きなさい」


 前方から、おじさんのどこか焦った様な声がします。少女は目を擦りながらも目覚めますが、無理やり起こされてどこか不機嫌そうです。


「……なあに、おじさん」


「早く逃げるんじゃよ! 魔物がこっちに迫っておる!」


 おじさんは馬車を走らせている時に、遠くに巨大な魔獣を見かけたのです。


 おじさんは少女の手を引っ張り逃げ出そうとします。魔物の中でも、魔獣は手懐けられていないものを除けば、人や魔人を襲い、食してしまうことがあるそうです。辺境の人々は魔人と魔獣の区別すらつかないことが多いですが、経験として対処の仕方を知っています。


 そのなかでも簡単な方法は食料を置いて逃げ出すということです。魔獣もわざわざ逃げる人間を襲うよりも目の前の食料にありつく方が楽だということ、人前に出れば人間たちはこの方法をとることを学習しています。腹を満たすことさえできれば彼らはなんでも食べるのです。


 少女はそのことを分かっていながらも動こうとはしませんでした。


「何をしておる、逃げるんじゃよ。魔物に食われてしまうぞ!」


 その焦った言葉に、少女はやさしい声で答えました。


「大丈夫、私に任せて」


 その言葉は、おじさんの力を抜くには十分な力を持っていました。おじさんは気付きました、彼女の言葉には確信があることを、何か策があるということに。


 少女は馬車から下りると、ゆっくりとした足取りで魔獣の方へと歩いていきます。その歩みに恐怖は無く――余裕すら感じさせます。


 最初は『どうやって食べてやろうか』とでも言いそうな気配で突進してきた魔獣は、その少女が近づいてくると、何か恐ろしい物に出会ったかのように足を止めました。


「……あんまり、人間においたしたら駄目だよ。さあ、ねぐらにお帰り」


 少女は囁いて、魔獣の額に手を置きます。すると、しばらくして魔獣は踵を返してどこかへと走り去って行きました。


 少女が馬車の中に戻ると、おじさんが心配した様子で少女を見つめます。そして驚きを隠さないままゆっくりと口を開きました。


「……お嬢ちゃん、すっかりたまげたわい。まさか、魔獣を戦わずに追い返すなんてのう。どんな方法を使ったんじゃ? 参考にさせてほしいの」


「……気合と根性と……殺気?」


 少女はよくわからないとでもいうように首をかしげながら答えました。


「それ、答えになっていないんじゃよ……」


 とにかく、馬車は苦難を一つ乗り越え、ゆっくりと次の町へと進み始めましす。


 最後までおじさんは、魔獣の目が、少女に対して怯えるように見つめていたことに気づくことはありませんでした。

今日の用語集


●魔物……魔界という世界より訪れた生き物の総称。僻地では魔人、魔獣ともに混同される。こちらの人間や生き物との違いは魔法を扱うことに長けた生物が多いことである。


 ・魔獣……魔物の人型ではないほうの総称。基本的に巨大で食欲旺盛、知能は低くたいていは人間だろうと魔人だろうと食してしまう。ただし、それらの中には知能が発達して理性を確立している者もいて、それらは幻獣と呼ばれることもある。

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