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変態女子に囲まれて、ツッコミに追われる毎日です。  作者: ヨエ団
1巻 春眠暁を覚えず、友情を得たり。
8/19

7.部員の家にて、みんなで決死の看病です。

 奇しくも、部長を除いて部員全員が集まった知識宅。


「なんでこんなに連れて来るかなー、亮輔」

「道に迷ってたら偶然、な」

「偶然で済む問題じゃないねー。せっかくの熟年夫婦設定が台無しになったしー」

「いろいろ通り越して熟した!?」


 蜂巣が会話を放棄したので上がっても良いという事なのだろう、俺達は部屋に入って知識の様子を見ることにした。

 二人とも知識のケガの大きさに驚いたのか、ギョッとした目をして俺の方を見てくる。


「こんな話、全く聞いてないわよ?」


 と、まず柚木崎が俺に怒った様子で問う。


「ここで話すつもりだったんだよ。見てもらった方が早いと思ってな」

「それで、何でこんな風になったか分からないのだけれど。理由は何?」


 度会が俺の顔をガン見しながら聞いてくる。


「それが分かれば苦労はしねえよ。俺だって分かってない」

「そう」


 それ以降、2人が知識のケガについて俺に言及することはなかった。


 ♂×♂


 みんなで話し合った結果、それぞれがそれぞれの仕事をして、俺がそのサポートに回る事になった。


 まずは柚木崎の様子でも見るかね。柚木崎はベランダに干してある洗濯物を取り込んで畳む、場合によってはアイロンをかけるという業務を請け負っている。

 流石に女の子だということあって、柚木崎はテキパキと動いて山のようにあった洗濯物を片付けていく。


「流石だな」

「あんな親を持ってたら自分がちゃんとしないと、ですわ」


 苦労していたんだなー、と柚木崎の背中を横目で見ながら、節々に見える力強さに感服する。

 そんな柚木崎がふと手を止めてコッチを向いた。見ていたのがバレたのだろうか。

 なんてことは無いらしく、彼女はこちらを向くと、洗濯物の中の一つを手に取り、俺のほうに向ける。


「それで、コレは一体何なのでして?」


 柚木崎が俺に見せてきたのは、日曜8時頃にやってそうな魔法少女のような服。それを見せられたところで何なのかは正直わからないのだが、直感でも答えてはいけないと思った。


「多分パーティー用のヤツじゃないか? 奇抜なファッションをしてるヤツは結構いるだろ?」

「なるほどね、社交性のある子なのね」


 どうにかこうにか、手ごわい柚木崎を誤魔化す事が出来た。俺にしてはよくやったほうだと思う。

 また柚木崎はテキパキと手を動かし足を動かし腰を動かし目の前にある物体を見る見るうちに片付けてゆく。


「ってなんで腰を動かしてるんだよ!!」

「手と足と、どこを動かすかといえば腰じゃないかしら?」


 柚木崎は俺の方を向き、意識的に腰を上下に振る。


「おまっ、はしたない事をするのは止めろって、一応女の子だろ?」

「はしたない? 腰を上下に振ることがどういう風にはしたないのか、答えられたら止めても構いませんけど?」


 挑戦的な発言と共に柚木崎の腰の動きの激しさが増してゆく。

 くそ、言わなければ精神的にヤられてしまう!!


「だから、腰を振ることが性交渉に関わるから、だろ!?」


 自分にしては言えたほうだと思う、多分。体温が上昇していくのが手にとって分かる。脇も汗がダクダクになっていることだろう。

 柚木崎は涼しい顔をして動かしていた腰を地面に落とし、


「素直に●ックスを言えば良いですのに」

「言えるかぁぁぁぁああああ!!」


 頭に血が上り、カッとなって叫んだ。後悔はしている。反省もしている。寒気もしている。


「うるさいわね、コレでも口の中に突っ込んでおきなさい」


 そう言って、柚木崎は小さくて白い布切れを投げて寄越した。

 広げて何かを確かめると、女性の足を2本ほど入れる穴と、腰の近くで維持しておくための穴を発見し、その中央部には少女向けと思われるくまさんが描かれていた。


 俗に言う、『くまさんパンツ』と呼ばれるものである。

 …………うん。


「くぁwせdrftgyふじこlp!?」


 俺は奇妙なようで整った叫び声を残して柚木崎の元から退散したのであった。


 ♂×♂


「ったく、酷い目にあった……」

「お楽しみだったようで何より」


 場所はキッチン。先ほどの約束もあって、度会にはキッチン業務、云わば俺たちの夕食担当を請け負ってもらっている。自分で立候補したこともあってか、なかなかの手際で食材を料理してゆく。


「楽しんでなんかいねえよ。それより、俺に手伝えることはあるか?」

「卵を割るとか?」


 度会はボウルと卵を俺の方へと取って寄越す。

 まさか卵割りか……俺の苦手なジャンルに当たってしまった。いや、その年で卵割れないのプップーとか聞き慣れてるんで大丈夫ですよ?

 大丈夫だ、俺が卵をうまく割れる確率は5割だから、6個を完璧に割るのは64分の1の確率。

 いや、全く大丈夫じゃない。


「卵は度会が割ってくれないか? 他の事をやらせてくれ」


 俺だって、生命は大事にしたいからな。無性卵だけど。

 度会は俺が卵を割れない事に気付いたのか、ニヤけた顔をして、


「じゃあ卵を割るより簡単な野菜炒めでもやってもらう。カ・ン・タ・ン・な」

「分かったからネチネチ言うのを止めろ!!」


 そう言いながら、度会と立つ位置を変わる。

 卵を割るコツを度会からつかみ取ろうと、野菜を炒めるふりをして様子を窺う。

 すると、度会は上を見上げ何やら拝みだした。何かの儀式だろうか。


「八百万の神々よ、私に力を与え、『白い防壁』を見事破り『黄金の種』を与えたまえ」


 本当にいかがわしい儀式だった。ツッコんだら何をしているんだと言われそうなので継続させておく。

 度会は卵を手に取り、その手を高らかと上げ、ボウルに勢いよく打ちつけた。


「っておい!!」


 そんな事をしたら卵が木っ端微塵に……。

 そう思っていた時代が私にも有りました。今でも認識は変わっていないが。

 度会の絶妙な力で打ち付けられた卵は、簡単に割れそうな感じにひび割れをし、ボウルの上でキレイに割られた。


「何か文句でも?」


 度会は勝ち誇った顔をして、こちらに見せつけるようにボウルの中を傾ける。


「いや、なんでも?」


 本当は言いたい事なんて星の数ほどあったのだが、成功されてしまってはグゥの音も出ない。反論するのは諦めて、自分の仕事に専念しよう。

 度会は味をシメたのか、先ほどと同じように高い所から叩きつけて卵を割っている。

 そして最後の6個目を手に取ったかと思うと、高らかと上げる時に手が滑ったのか、卵が宙に舞った。


 俺の頭めがけて。


「うわっ!!」


 避ける間もなく頭にヒットし、その場で卵が砕け散る。白身らしきものが顔に垂れてきた。

 いつの頃だったか、野球選手がファンに卵を投げつけられたとかの話を聞いた事があるが、ここまで屈辱的だったのかと身をもって体験した。

 度会の方を見ると、滑ったのがよっぽどショックだったのか、手を挙げた状態で静止して、バツの悪そうな顔をしている。


「流石にその発想はなかった、貴方もそう思う?」

「あったら予知能力者かよっぽどのネガティブ思考野郎だよ!!」


 料理をしていて卵が頭に直撃するなんて、まず無いっての。

 度会は挙げていた手を下すと、俺の頭を指差し、


「とりあえず、お風呂にでも入ってきたら?」

「言われなくてもそうするつもりだ」


 そうして、俺はお風呂場に急行した。


 ♂×♂


 脱衣所に入り、服を脱ぐ。

 ったく、エライ目にあったものだ。まー、頭付近しか汚れてないからシャワーを浴びるだけでいいかなー、なんて思っていた、まさにその時。

 風呂の中から何やら水の流れる音が聞こえた。

 なんだ、風呂を沸かしてくれてるじゃないか、誰かがやってくれたのかな、とその誰かに感謝してお風呂の扉を開ける。

 そこに広がっていたのは、白くツルツルな壁と、白くツルツルな床と。


 白くツルツルな女性の裸体だった。


「…………」

「…………」


 一瞬風呂場に静寂が訪れ、水の流れる音がそれを誇張する。

 今の状況を十二分に理解したところで、


「りょ、りょ、亮輔!? ちょっとー、そんな急に迫ってくるなんて、き、聞いてないよー」


 件の蜂巣は顔を赤らめて、隠すべき場所を隠さずに顔に両手を当てて、


「でもー、亮輔がその気ならー僕は良いよー」

「いや、良くないから」


 なんでその気になってるんだ。女の子なら、悲鳴を上げるなり、桶を投げてくるなり、何らかのアクションを起こすはずなのに。

 蜂巣はやはり男よりも男らしいな、と改めて感じた。

 しかし、今の状況になっている時点で既に可笑しい点がある。


「お前、自分の仕事はどうしたんだよ」


 蜂巣には知識に万が一の事態が発生しても対処出来るように、知識の側で看病する業務を請け負ってもらっている。それなのに知識の側から離れ、あまつさえ1人でお風呂に入っているのだ。

 蜂巣は隠していた顔を露わにして、自慢げな顔をし、


「それなら大丈夫ー、ミューも一緒に入ってるからー」


 と、浴槽を指差して言った。


「そうかそうか、それなら大丈夫か……」

「ダイジョブダイジョブー」

「……なわけないだろ!!」


 まだ寝てる怪我人を風呂に入れてどうする!!

 それでもし溺れ死にでもしたら、どう責任を取るつもりだ!!

 そう思い、風呂場に入って浴槽の方を見た。


 しかし、誰もいない。

 え……どういうことだ?


「つーかまーえたーっ」


 後ろから蜂巣が力任せに抱きついてくる。

 数秒で関節技などを巧みに使い俺を無力化したのは、さすが柔道有段者というところ。

 しかし、今はそれどころじゃないのだ。


「おい、蜂巣。知識はどうした」

「えー? リビングで寝てるよー?」

「ちゃんと見ておかないとダメだろ!!」

「大丈夫だってー、病気ってわけじゃないんだしー」

「でも!!」

「現時点で一番近くに居る僕が清潔じゃなかったらー、ミューの傷口に細菌が入っても困るでしょー? だから入ってるのー、オーライ?」


 合理的で反論しようがない言葉に、俺は口を紡ぐしか無かった。


「じゃー、一緒にお風呂入ろー?」

「あぁ? ……あ」


 冷静になって改めて今の状況を確認する。

 浴場の中、裸の女が、裸の男に抱きついている。

 背中に伝わる豊潤な感触が、俺の理性を崩壊させようとする。


「お、おま、え、にゃ、にゃに、を、して、りゅ、んだ」

「何って今さらー? さっきから押し付けてるのに無反応だったからー、もう萎えちゃったよー」


 そう言って、蜂巣は俺の胸に回していた手を自ら解いて、湯船に浸かった。


「萎えちゃったってお前、もし俺が襲ったりしたらどうするつもりなんだよ」

「襲ってくれたらー、結婚式だねー」

「……自分の体をもっと大事にしろよ。お遊びで体が傷ついたら嫌だろ?」


 このまま同じ空間に居てはいけないと感じ、サッサと出るためにシャワーのコックをひねり、頭にこびり付いた卵を洗い流す。


「ったくー、僕はいつも本気だって言うのにさ……(ブクブク)」


 蜂巣が独り言を言ったようだったが、シャワーの音で良く聞こえなかった。


 ほんの30秒で汚れを洗い終えた俺は、蜂巣を一瞥することもなく、その場を去るのだった。


 ♂×♂


 お風呂場から退散した俺は、そうは言うもののやはり、知識の体調が気がかりになった。

 蜂巣の話によれば、リビングの真ん中に寝かせているらしいので、リビングに急行することにする。

 大事に至ってないと良いが……。

 服を着るのも煩わしくなり、シャツの上に着ていた服を持って、リビングへと辿り着いたその時、


「あ、やおい先輩。ちっーす」


 知識が普通に立ち上がって、マヨネーズを飲んでました。

 驚きを通り越して呆れ返ってしまった。


「お前、病み上がりでなんてモノ飲んでんだよ」

「あぁ、コレですか?」


 知識は手に持ったマヨネーズのボトルを目の前に掲げ、


「おやつですが何か?」


 キリッっと今にも聞こえてきそうな風に顔を決めてみせた。

 マヨネーズがおやつって、コレステロールとか大丈夫なのかよ。


「まぁ、主食もマヨネーズなんですけどね」

「結局マヨネーズしか食ってないじゃねぇか!!」


 良くそれで病気にならないな!!

 知識は俺の心情を察したのか、


「大丈夫です、現代にはサプリメントという素晴らしい栄養補給方法がありますから」


 そう言って、本の山の上に転がっているサプリメントの入れ物を指差す。


「……お前がそれで納得してるんだったら、別にとやかく言わないって言った事あると思うけど。流石にこの生活は無い」

「じゃあどこに改善点があるんですか!?」

「改善点だらけだよ!! その様子じゃ食堂以外だったらマヨネーズだけで済ませてるだろ!? もっと固形物を取らないと胃が小さくなるんじゃないのか!? あと、サプリメントは確かに優秀かもしれないが、取るべき物質を取り忘れていたらどうするんだ!! 何のための食事だと思っている!?」


 俺は遠慮することなく、言いたい事をまくし立てた。

 いつもの知識なら憎まれ口の一つでも叩くと思ったからだ。

 しかし、知識の反応はこちらが予想だにしなかったものでなく、


「……ヒッ、グスッ……ウッ、ウッ」


 なんとその場で泣き出してしまったのだ。


「え? ちょっと、何で泣いてるんだよ。俺、何か間違った事言ったか? えー、ゴメンって。だから泣き止んでくれ、いや下さい頼みます!」


 この騒動を聞いてか、柚木崎、度会、蜂巣の3人がそれぞれに集まってきた。


「何やら声がすると思えば……」

「どうしてそうなった?」

「なーに女の子を泣かしてるのー? 亮輔」


 3人は口々に俺を責める。仕方ない事だろうけど、理由の分からない俺にはどうしようもない。

 その場を代表してか、蜂巣が先導し、


「とりあえずー、ご飯にするー?」


 その場を落ち着かせるために場面を変えようと提案する。

 助け舟、ありがとうございまする!


「そうだな、食べたら気分も落ち着くかもしれないしな」

「じゃー準備しましょー、料理は出来たー?」


 蜂巣は度会の方をクルリと振り向いて、早急に事を進めるつもりらしい、こいつにしては早口で問うた。


「私の魔力は生け贄たちに分け与えることに成功した」


 なるほど、料理は完成したらしい。色々と何を言ってるか分からないけど、完成したという事はそういう事なんだろう。


「じゃ、みんなお皿並べるの手伝ってー、ほらほらー」


 そう言って蜂巣は、なんだかんだ言っている連中を連れだってキッチンへと向かい、料理の並べられたお皿達をテーブルの上に用意した。

 というわけで、俺達は知識のお宅で食事を食べることになったのである。


 ♂×♂


 知識宅の小さいテーブルで食卓を囲む。小さいがために、4人しか座れないのに気付いたのか、


「じゃー、亮輔は僕の隣でー、良いよねー」


 と言って、蜂巣が無理やり詰めてきて俺の隣に座った。

 テーブルの上には先ほど度会が意味の分からない事を言いながら作った料理たちが並べられ、湯気をそれぞれに上げている。見た目を見ている限り、不味いということはなさそうだ。

 ここでも蜂巣が先導して、音頭を取る。


「ではお手を拝借いたしましてー、よーーーーっ!!」


 その掛け声とともに、皆が一斉に手を叩く。


「やったは良いが、これ一本締めじゃん!!」

「度会、そっちのマヨネーズを取って頂戴」

「分かったけど、まずそのままで食べて」

「てか、このマヨネーズは美羽のですから、マヨネーズを使いたい場合は買ってきてください」

「マヨネーズは冷蔵庫に腐るほどあったからそれ使ったらー?」


 ツッコミを入れたはいいが、総スルーされた。どうやら、食欲によってどうでもよくなったらしい。

 じゃあ俺も早速食べるとするかね。

 ……で、食べたいのは山々なのだが、ここで一つ聞きたい事がある。


 俺のお箸は?


「にしても残念よね、まさかお箸が4セットしかないだなんてね。将来は子供2人ね」

「それは知識の家だから、しょうがない。悪魔を召喚すれば別だけど」

「美羽、1人暮らしですよ? お箸をたくさん持ってる方が不自然じゃないですか」


 三人が俺の方をジロジロと見ながら、時折ほくそ笑む。

 蜂巣はどうなのかと、隣に無理やり座っている幼なじみを見ると、


「えー? 僕にアーンしてほしいのー? 強情な夫だねー」


 と言って、野菜炒めを自分のお箸で摘んで、俺の方へ向けて来た。

 夫ではないが、向けられたからには男として食べなければいけないだろう。

 口を開けて、中に放り込まれるのを待つ。


「はいー、アーン」

「アーン」


 お箸が俺の口の中に入っていき、野菜炒めの香ばしい香りが口中に充満する。

 俺自身が作ったものだが、これまでの中で最高傑作ではないかと言えるほど美味しかった。


「おいしー?」

「そりゃ美味いよ」

「えへへー、僕の亮輔が作ったんだよー?」

「本人に言うな、分かってるから。それと俺はお前のものになった覚えなどない!!」

「お前ってー亮輔、すっかり夫気分ー?」

「だから夫じゃねえって言ってるだろ!!」


 蜂巣がどんどん調子に乗っていくにつれて、皿に残っている料理が減っていく。

 くそ、まだ俺は度会の作った料理を食べてないってのに。

 こんなに近くで夫婦(嘘)漫才(?)をしてるってのにシカトするもんだから、何とも言えない気持ちになった。

 こうなりゃ最終手段だ、と蜂巣のお箸をひったくり、腕をめいいっぱい料理に伸ばし、


「取ったり!!」


 と言って、真ん中にある卵と玉ねぎを煮たやーつ(名称不明)を摘まみにかかる。

 しかし、勢いがありすぎたのか、周りに飛び散ってしまい、あろうことか知識に掛かってしまった。

 知識は呆れた顔をして、


「なにをしてるんですか、やおい先輩。そんなにしても料理は逃げないのに」

「スマン、どうしても食べたくて」

「とりあえずティッシュかハンカチを下さい。3秒ルールです」


 そう言われたので、ポケットの中に突っ込んでいた布切れを寄越してやる。

 いや、もう既に3秒経っただろうというツッコミは、流石に俺に非があるので言えなかったが。

 しかし、俺から布切れを受け取った知識がワナワナとし出した。

 何か間違っただろうか? と渡した布切れをもう一度確認してみると、女性の足を2本ほど入れる穴と、腰の近くで維持しておくための穴を発見し、その中央部には少女向けと思われるくまさんが描かれていた。

 俗に言う、『くまさんパンツ』と呼ばれるものである。

 あ、さっき柚木崎に投げつけられたのをそのままポケットに入れちゃったんだ……!!


「何故、美羽のパ、パパ、パンツをやおい先輩が持ってるんですか?」

「えぇとそれは柚木崎がだな!!」


 そう言って柚木崎の方を振り向くと、柚木崎は、


「流石の私でも、人に迷惑のかかる事はしないわよ。……あまり」

「柚木崎先輩もそう言ってるじゃないですか。やっぱり犯人はやおい先輩ですよね」

「いやいや!! 今『あまり』って言ったぞ!!」

「知りません、もし『あまり』と言っていたとしても犯人だという証拠はありません」


 確かにそうだけど、本当に俺じゃないんだと、主張したかったが、何となくさっきのようになる気がしたので、折れる事にした。


「……まぁ、持ち歩いていたのは俺だしな。スマン」

「分かれば良いんです、分かれば」

「その代わりと言っては何だが、教えてくれないか?」

「犯人なのに交渉をするんですね。良いでしょう、マヨネーズに免じて一回だけ答えましょう。何を話せば良いんです?」


 何故かマヨネーズに助けられたが、そんな事は気にしない。


「その包帯の事とか何故泣いたのか……と言いたいところだが、単刀直入に聞く。お前の身に何があった?」


 その言葉を聞いて、知識はやはりというか何というか、固まってしまった。


「別に無理に話せとは言わない。けどな、はぐらかしてるって事は何かあったんだろ? 他人に話してみた方が楽になるって事もあるぞ?」

「そうよ、1人で抱え込んじゃダメよ」

「悪魔が心を蝕む」

「ミュー、言っちゃいなよー」


 そこに柚木崎、度会、蜂巣が追い討ち(?)をかける。

 すると、知識はハァーとため息をつき、


「もし話さなかったら、家に居座る気ですよね?」


 もちろんそんな気は毛頭無かったのだが、同調しておく方が得策だろうと思い、


「あぁ、話してもらえるまでテコでも動かないからな」

「分かりました……じゃあ掻い摘んで説明します」


 知識はもう一度ハァーとため息をついて、こう切り出した。


「美羽……野球で頭打っちゃいました☆」


 その場に居る全員がズッコケた。


「流石にボールが頭に当たって怪我したとか言うのは恥ずかしいじゃないですか。だから秘密にしていたんです」


 知識は頭を掻きながら、そう告げると、立ち上がって、


「皆さん、今日のところは帰ってもらえますか?」


 玄関へと手招きした。

 俺はこんな説明で納得出来るワケがなかったが、ここぞとばかりに柚木崎が荷物を持って立ち上がり、


「じゃあ、私はバカ両親の世話をしないといけませんので、ココでお暇致しますわ」


 と言い残して帰って行った。

 続いて度会が、コックリさんの紙を丸めた物を脇に挟んで、


「夜が、私を呼んでいる」


 と意味不明な理由を付けて、外へと消えていった。

 さらに蜂巣も立ち上がり、俺の手を引いて、


「おま、俺にはまだ話したい事が」

「じゃー、またねー」


 半ば強制的に外に放り出された。

 扉が閉まろうとしていた時、一瞬だけ、知識の悲しそうな顔が見えた。

 そして、知識はこう言った。


「サヨナラ」


 と。


 ♂×♂


 次の日。

 マヨネーズ妹こと知識美羽は学校を休んだ。

根「第8話更新ダ」

葉「実は前に投稿したヤツをただ纏めただけってのはココだけの話ですよー☆」

根「えっとだナ、とりあえず気になったので言わせてもらウ。部長はどこに居るんダ?」

葉「牟田口部長ですかー☆ それなら……ってネタバレになるんでその話はNGです☆」

根「じゃあワタシ達の出番は何時になるんダ?」

葉「それは……どうでしょうね☆」

根「……もういイ、次回に期待するだけダ。ではまた今度」

葉「部室で会いましょう☆」

根「ダウト」

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