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変態女子に囲まれて、ツッコミに追われる毎日です。  作者: ヨエ団
1巻 春眠暁を覚えず、友情を得たり。
5/19

4.事件というか、コントやってまんねん。

 あれから、柚木崎から部の説明を一通りしてもらい、解散となった。

 週末に全員集合するという規則を守ればよいとの言葉に胸をなで下ろした俺は、なんとか続けられるかなー、という期待を胸に秘め、帰路に着く。


「それでやっていけそー?」


 隣を当然のように歩いている蜂巣が話しかけてくる。


「まぁそれなりにはな。どこかの誰かさんが嘘で俺をはめなければの話だが」

「ごめーんちっ♪」


 蜂巣は謝っているのか良く分からない返しをして手を前で合わせ、


「まー結果オーライじゃん?」

「そうだけどよう……」


 1日に2回も騙すとか、エイプリルフールでもないのに良くやるよ。


「嘘なんて常日頃からついてるとー、どれが嘘でどれが本当なのか分からなくなるよー?」

「…………マジか」


 くそ、その言葉自体どこまでが本当でどこからが嘘か、皆目見当が付かない。

 てか、常日頃から嘘ついてたのかよ!!


「マジでマジでマジックデニムでおじゃるよー」


 マジックデニムってなんだ!?

 てか語尾『おじゃる』で外来語っぽい言葉を使うな!!


「嘘から出た真なんてのもあるしー、害のある嘘はついてないから大丈夫だってー」


 待て待て。


「俺は害を受けてる気がするんだが」

「気にしちゃダメス☆」

「気にするわ!!」


 俺の基本的人権も守ってくれよ!!

 すると蜂巣はチッチッチッと舌を打って、


「夫婦は信頼関係によって成り立つんだよー?」

「根本的に間違ってるから!!」


 俺たち夫婦じゃないから!!


「ケチー」


 蜂巣は膨れっ面をしてブーブー言い出した。


「どこらへんがケチなんだよ、ったく。他の部員の事を見習ったら……」


 柚木崎は下ネタメーカーだけど、完璧超人だし。

 部長は準ニートで冬眠中だけど、本気を出したらスゴいらしいし。

 見習ったらいけない所の方が多い気がするが、見なかった事にしよう。

 でもあれ? 確かもう1人居たような……。


「なぁ蜂巣、今日って何人部室に来てたっけ?」

「んー? 僕に良輔でしょー、副部長に部長にー……4人じゃないのー?」

「そうだったっけか」


 なんか忘れてる気がするんだよな……。


「そんな事よりー、今日の夕飯の買い出しだけどー」


 蜂巣は買い物袋を俺に手渡してくる。


「はいはい、荷物持ちだろ?」

「おー、意思疎通が出来るなんてー、やっぱり夫婦」

「じゃないからな!!」


 これを意思疎通とは言わないからな!!

 まあ、忘れたのは忘れてしまったんだし、いいとするか。

 今は荷物持ちに専念する事にしよう。


「早くーこいこいこいもよー」


 商店街に差し掛かり、蜂巣が走り出した。


「ちょ、待てよ!!」


 俺もそれを走り出す。

 明日の体育は筋肉痛で動けないなー。いや、元々動けないか、ははっ。

 俺は泣きべそをかきながら、蜂巣の背中を追いかけるのだった。


◇◆◇◆


 次の日、教室にて。

 登校中、何故か周りの俺を見る目が変わった気がする。

 ディベート部に入った事により、気持ちが高ぶってるからかもな、良い傾向だ。


「おっ、なんかええ事でもあったんか? ヤオやん」


 俺の存在に気付いたのか、俺の隣に座っているエセ関西弁男子生徒が話しかけてきた。

 彼の名は船田安二郎。皆からはジローという愛称で親しまれている。

 おおざっぱでとんでもなくノリが軽く、面白そうだと判断するとすぐに首を突っ込むので『面白い所にジローあり』という言葉も出来た。 親が芸能関係の仕事をしているため、自らも芸能界に憧れており、今ではお笑い同好会の部長にまで登り詰めた。

 しかし、将来芸人になる事しか考えておらず、勉強は全くしていないので、テストでは赤点、もしくは赤点スレスレの点数を取るほどのバカである。俺も人の事は言えないが。

 そのジローは、一年の頃から俺をお笑い同好会に入部させようとしているのだが、理由は未だ掴めないままだ。


「別に。部活に入っただけだよ」

「ほー、さよか。ワイのお笑い同好会を蹴ったんやさかい、ヤオやんはどないな部活に入ったんでっかー?」


 腕を組みながら目を細め、俺の顔を凝視するジロー。


「ディベート部だよ、柚木崎と一緒の」


 ジローは、俺が柚木崎と言った直後硬直した。


「おんどれ、『Venus』お嬢様の名前を呼び捨てにするんはちょいと頭可笑しいんとちゃいまっか?」


 柚木崎の事をお嬢様と呼んでいるのはお前か!!

 ……まぁいい。


「同級生の事を名字で呼ぶのは別に変じゃないだろ?」

「天罰が降り注ぐことになっても知らへんからな」


 かまへん、かまへん。


「ウチを除けモンにして何を話してはりますの?」


 今登校してきたのだろう、ジローと逆の俺の隣に荷物を置いたエセ京都弁女子生徒が話しかけてきた。

 彼女の名は船田安美。名前から察する通り、ジローの双子の妹だ。愛称はマイコー。(舞妓さんから)

 両親は仕事上夜遅くに帰ってくる事が多く、兄がこんな役立たずなため、船田家の家事は彼女が行っている。

 彼女はあわよくば芸能人になりたいと思っているが、成れなかった保険としてちゃんと勉強をしており、高校二年生にして既に国立大学の推薦をもらっている。

 それもそのはず、彼女は物理の頂点である国際物理オリンピックスにて金メダルを獲得しているからだ。つくづく、とんでもない学校に入ってしまったなと思う。

 そんな彼女もお笑い同好会に入っており、兄と2人で『スヤスヤ』というコンビ名で有名な漫才大会に挑戦し、準決勝まで行った経歴がある。

 因みに、この喋り方は素ではないらしく、場面によって使い分けているらしい。


「おーマイコー聞いてくれやー、ヤオやんが『Venus』お嬢様の事を呼び捨てにすんのや」

「それはいけまへんなぁ、『Venus』お姉様の事を呼び捨てにするなんて極道でおはります?」


 柚木崎の事をお姉様と呼んでいるのはお前か!!

 ……まぁいい。(2回目)


「だからさ、同級生の事を名字で呼ぶのは別に変じゃないだろ?」

「天罰が降り注いでも知りまへんさかい」


 かまへんかまへん。(2回目)

 マイコーは多分、関西弁と京都弁の区別があやふやになっているな。

 にしても、同じ事を言うとは、流石双子といったところか。


「そんで、何の話しとったんやった?」


 ジローが俺に問いかけてくる。


「別になんの話もしてないだろ」


 中身のない話だよ。


「まーええわ、とりま、盗難には気を付けるんやで」


 ジローが俺に念押ししてくる。

 それもそのはず、最近学校内での盗難が多発しており、盗られた中には帰りにアニメのBD&DVDを買いに行こうとしていたヤツも居たらしく(3万円也)、大問題に発展しているのだ。

 犯人はまだ捕まっていないため、警戒を強めているのである。


「言われなくても分かってるって。それに、こんなに警戒してるんだったらそのうち自然消滅するだろ?」

「それが甘い考えなんどす」


 マイコーも同じように言ってくる。


「根を絶やさないと模倣犯とか出るさかいに、犯人を早よ捕まえんと」


 まぁそりゃそうだとしか言いようがない。

 犯人が捕まるに越した事はないけど。


「生徒がどうこう言おうが、どうしようもないだろ」


 あとは先生に任せるしかないさ。


「まぁそうやねんけどな……」

「そうなんどすが……」


 2人とも下を俯いてボソボソと言っている。

 もしかして、コイツら。


「まさか、盗られた?」

「ワイ達の部費がどこかに行きおって……」

「部費を狙うとは思ってなかったさかい……」


 よりにもよって部費、か。

 財布からは盗れないから、そこまで管理されてない部費を奪いに来たか。


「でも、お前らの部費って辺鄙なとこに置いてなかったっけ?」


 なんとこのジロー、芸人になるには隠す場所でも笑いを取らないといけんとか言って、部室内に野球のボール入れを作ってその中に隠しているのだ。


「せやから、ゴールデンボールで笑いを取れたか見たかったんやけどなぁ」

「金かて大事ではあるんやけんど、そちらの方が気になりおって」


 そう、金の玉でゴールデンボール。

 言われないと気付かないがな。

 俺も初めはキョトンとしてしまった。


「野球の球だから分かりづらいんだと思うぞ? 金色の球を入れるとかだな」

「それやったら部費入れる意味あらへんやんけ」

「直球すぎて可笑しくないどすえ」


 兄妹からダメ出しを食らった。


「てか、部費より笑いを取りにいく方が大切なのかよ」

「命を懸けて、芸をするんが芸人ってもんやあらへんか?」

「私生活でも笑いを取りにいこうとするんが芸人では?」


 いや、知らんがな。

 とりあえず価値観に差異があるってのは分かったから。

 すると、授業開始のチャイムが教室中に鳴り響いた。


「まぁ、ディベート部もその辺、気を付けるよ」

「おぅ、頼んまっせーヤオやん。後、呪いはかけられんようにな」

「ウチらの運命はヤオやんにかかっているんやでー」


 意味の分からない2人の言葉を最後に、俺は授業開始直後、眠りに落ちるのだった。


◇◆◇◆


 授業をそれなりに流し聞きして、お昼休みになった。

 今日は食堂に行く気になれず、かといって教室で寝ているのもあれなので、廊下をトボトボ歩く事にした。

 というのも、昨日蜂巣が『赤飯だー♪』とか言って、俺にたらふく飯を食わせたあげく、朝にも『余り物を処理してー♪』だとか言って、それなりに残っていた赤飯を全てかき込ませたからだ。

 そのせいか、全く満腹感が抜けないため、昼飯は抜く事にしたのだ。

 それとなく歩いていると、俺の視線の先になにやら怪しい影があった。


「私の『悪魔の裁き』を受けろ、『悪魔の裁き』を受けろ」

「忘れてたああああぁぁぁぁ!!」


 そうだ、度会が居たじゃないか、すっかり忘れてたわ。


「私を放置しておいて、何様のつもり?」


 大分お怒りのようだ。

 それならば、俺の伝家の宝刀を使ってやるとしよう。覚悟しろ!!


「その節はスイマセンでした!!」


 俺は、両手を床に付け、正座をして頭を限界まで下げる。

 そう、その名も――土下座。

 その場でカンペキな土下座を披露してやった。

 さぁ、どうくる?


「それで、なんの用?」


 スルーされた。


「なんの用ってわけじゃねぇよ。ただここら辺りをブラブラしているだけだ」

「まるでニートね」


 ほっとけ。


「それで、度会こそこんな所で何をしているんだ?」

「私? 私は新聞部に取材されに新聞部の部室に行っていた」


 度会はそう言って、新聞部の部室らしき場所を指差した。


「へぇ、新聞部なんてモノもあるのか、この学校は」

「知らなかった? 全国の新聞大会で優勝しているのだけれど」


 その新聞大会が何をしているのかの方が気になるわ!!

 まぁ今はいいや。


「それで、取材ってなんの取材?」

「あぁ、それ?」


 すると、度会は若干発育の悪い胸を張り、


「ディベート部の取材よ」


 ドヤ顔をしてみせた。


「1人でか?」

「えぇ、新聞部の人が同じクラスだから、色々聞かれてしまって」


 そうか、まぁこの学校は凄い人達が多いから、取材しがいがあるだろう。


「でも、同じクラスだったら、自分の教室でやればいいんじゃ?」

「それは恥ずかしい」


 さっきのドヤ顔どこ行った?


「まぁそんな事より」


 流された。


「面白い話があるの」


 急やな、おい。

 というか、その話は本当に面白いんだろうな。


「『呪いのゴールデンボール』って知ってる?」


 嫌な予感しかしないが、とりあえず聞く事にしよう。


「それがなんなんだ?」

「実はね」


 度会の言うには、お笑い同好会の野球ボール入れの中に血の付いていたボールが入っていたらしく、『呪いのゴールデンボール』だとジローがわめいていたらしい。

 その時、部費が盗られていることに気付いて、事件が発覚したとか。


「……というわけだけど、私の話カットされてない?」

「気にするな」


 ただただ淡々と話してるのに面白いわけ……ゲフンゲフン。

 つまりは、さっきのジローの意味が分からない発言はこういう事なのか、納得納得。


「それで、これからどうするよ?」


 偶然、昼休みに出会ったんだ、時間をつぶしたい。

 ついでにこの前に放置したお詫びも込めて。


「とりあえず、食堂で何かを奢ってもらうって事でどう?」


 度会は不敵な笑みを浮かべて、手をお金の形にする。

 結構ガメツいな、オイ。


「あぁいいぜ、だけどラーメン限定な」

「私が何を食べようと、アナタには関係ないはずだけど」

「良いじゃねぇか、ラーメン良いぜラーメン。食べたら分かるってラーメンの良さが」

「まぁ、タダより高いものはないと言うし、そうさせてもらう」


 そうと決まれば、思う存分ラーメンの布教をさせてもらうとするかね。

 というわけで、度会と一緒に食堂へと向かった。


◇◆◇◆


 昼休みも残すところ半分となり、食堂は大繁盛を見せていた。

 俺達はいつもと同じ、何故か空いている一角に座り、俺が事前に買っておいたラーメンの食券で醤油ラーメンを度会に食わせている。

 その度会の反応はと言うと、


「この醤油ラーメン、なかなかイケる」

「だろ?」


 というわけで、ラーメン信者を1人増やす事に成功したのである。

 しかし、少し気がかりな件がある。

 何気なく、いつもなら埋まっているはずの席の方を見る。

 なんと、今日はマヨネーズ妹が居ないのだった。

 マヨネーズ妹って誰かって? 知識美羽とかいう、ラーメンにマヨネーズをかける味覚異常者だよ。

 まぁ、アイツを見てると胸焼けしそうだから別に良いんだけどさ。


「そこがどうかした?」


 度会が俺の視線に気が付いたのか俺に問いかけてくる。


「いや、別になんでもないぞ」


 度会に言ってもどうしようもないしな。


「なら、替え玉はどうするのか聞きたいのだけれど」

「お前もう食べたのか!?」


 そこに驚きだよ、クソ!!

 なんか、色々どうでも良くなってきた。

 ラーメンについて熱く語らおうじゃねぇか!!


「この食堂の良いところはな、ラーメンの替え玉がタダって事なんだよ。おばちゃんに言えばタダでくれるんだ」

「それで経営が成り立つ?」

「採算度外視らしいからな、俺たちにラーメンを食べて欲しいというおばちゃんの愛だ」

「そうやってメタボリックシンドロームの患者が増えていくと」

「ほっとけ」


 それから俺たちは、ラーメンとはなんたるか、メタボリックシンドロームの曖昧さについて語り合い、昼休みを過ごしたのだった。

 結局、度会はメタボリックシンドロームとか言いつつ三回も替え玉をしたというのは秘密である。

根「第五話更新ダ」

葉「わーパチパチ」

根「今回から『呪いのゴールデンボール編』が始まるとかデ、シリアス展開もあるかもだとカ」

葉「『呪いのゴールデンボール』ってただの金●の事ですよねー☆ なんでわざわざゴールデンボールなんて言うんですかー☆」

根「つまりはダ、ただより高いものはないって事ダ」

葉「何がやねんー☆」

根「関西弁キャラとか止めておくんなシ」

葉「そっちだってー☆ こんなんだから、『度重な(略)』を取材に呼んだのに出番が一個もなかったんですよー☆」

根「あれは不覚だったナ、しかし『度重な(笑)』も我々の名前くらい言って欲しかったものダ」

葉「ま☆ 次頑張りましょー☆」

根「そうだナ、じゃあ早速『呪いのゴールデンボール』について聞き込みダ」

葉「ラジャー☆ ではではこの辺でー☆」

根「次も読むようにナ」

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