表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変態女子に囲まれて、ツッコミに追われる毎日です。  作者: ヨエ団
1巻 春眠暁を覚えず、友情を得たり。
4/19

3.よく騙される人は、良い人です。

 『今日は部活動のある日だから行ってみるー?』という蜂巣の誘いがあり、俺は蜂巣と共にディベート部の部室に行く事にした。

 んじゃま、その道中、ディベート部に関しての情報を教えてもらうとするかね。


「ところで、部員って何人くらい居るんだ?」

「えーっと、幽霊部員ならたくさん居るけどー、精力的に活動してるのはー、ひーふーみーよー……僕を含めて5人かなー?」


 今日は1人が諸事情で来れないみたいだけど、と蜂巣は指を折りながら答える。


 案外少ないなぁ。

 片手一本で足りてしまう。


「だからもう1人欲しかったんだー」


 そんな蜂巣はとびっきりの笑顔を振りまいていた。


「なるほどな……でも別に5人だったとしてもディベートをするのは可能なんじゃないのか?」


 実際、ディベート大会に出て優勝しているわけだし。


「いやー? ディベートって基本的に3対3だからー、5人だと1人足りないんだよねー」

「そうなのか?」

「僕が一年の頃は練習相手が居たんだけどねー、二年になってから練習が出来てないんだー。

 だからディベートの練習するためにもう1人必要だったんだよねー」


 厳密に言ったら審判とか司会進行もいるんだけどねー、と呟いてみせる。


「まぁ、あと1人必要なのは分かったよ。でも、なんで俺なんだ?」


 全国優勝もしているディベート部なら、希望者だって多いだろうに。

 蜂巣はチッチッチッと舌を鳴らし、


「あまあまだねー、幽霊部員ならいくらでもいるって言ったじゃん? でも今は来ていないー、この意味分かるー?」

「何らかの事情がある?」

「鋭いねー良輔、それでこそ僕の許婚だー」

「俺がいつ許婚になった!?」


 初耳だぞ、そんな話!!


「気にしちゃダメス☆」

「気にするわ!!」


 もし本当に俺が蜂巣の許婚なんだとしたら、俺の人生はもう半分決まってるみたいじゃないか!!

 俺は蜂巣を幼なじみとしてしか認識していないし、結婚なんて……。

 死ぬまで一緒にいるのは構わないけど、蜂巣とイチャイチャする様子なんて想像できない。

 ……SMプレイならあるかもしれないが、蜂巣はSっ気が滲み出てるし。

 いやいやいや、結婚するんだったらやっぱり普通にプレイしたいな……って下ネタか!!

 くそ、柚木崎も大概だったが、俺も人の事が言えない。

 とりあえずエロい事を抜きにして……ああ、抜きが卑猥に聞こえちゃう!!


「まー嘘っぱちなんだけどねー」

「嘘かい!!」


 蜂巣の気の抜けた声に反応して、即座に大声でツッコミを入れる。

 俺が、そんな嘘のせいでどんだけ墓穴を掘ったと思ってるんだ!! 慰謝料払え(?)


「どーどー」


 蜂巣は俺を止める動作をする。


「俺は暴れ牛じゃねぇ!!」

「そういうわけじゃなくてー、着いたんだよー」

「着いたってどこに」

「そりゃー、ディベート部の部室に決まってるでしゃろがい」


 話に夢中で、そんな事全く気付かなかった。

 改めて周りの景色を確認し、ディベート部の部室なるものを見る。

 3号館の4階中央に存在するそれは、他の部室となんら変わらない、普通の部室で、特徴があるとするならば、扉の隣にある看板――部活動の成績によって部室がコロコロ変わるので取り外しが簡単になっているのだ――に『やらないか』と書かれているぐらいか。

 せめてディベート部って書けよというツッコミを自分の中だけでして、話を戻す。


「じゃあこの中に集まってるわけだよな」

「そうだねー、じゃあ早速入ろーか」


 蜂巣はスライド式のドアを開け、蜂巣に続いて入る。

 すると中に広がっていた光景は――――


「ろやも やぴぜ とぞぬゆ

 ぐうや ねいく ごるらぐ

 ぺあう おたひ きみぷそ

 しあび くてり はぱ」

「復活の呪文!?」


 なんと入り口付近でしゃがみこんで復活の呪文をかけている女子生徒がいた。

 って、コイツどこかで見たことがあるような……


「なぜ『緑の悪魔』が再生しない」


 間違いない、コイツ『度重なる出会いに宿りし混沌』の度会だ。


「なんでお前がココにいるんだ、度会」


 すると度会は、復活の呪文を唱えるのを途中で中断し、こちらを向き、


「今危険な実験中、帰って」

「いや、まったく危険に見えないんだが」


 むしろ度会自体が危険だ。


「『純白の右手』から『緑の悪魔』が出なくなったから、復活を試みてる。帰って」

「確か『漆黒の右手』じゃなかったか?」

「え……と、美術の時に入れ替わるからこれで良い」


 今即興で考えただろ。

 まぁ論点はそこじゃないから見逃してやる事にしよう。


「それで、ここにいるって事はやっぱり……」

「そう、私は蘇芳学園ディベート部所属2年B組53番『度重なる出会いに宿りしジュピター』度会宿」


 少し変えよる。


「つまり、度会が精力的に活動している5人のうちの1人って事か」

「そんなところ」


 解せぬ。

 度会は俺と同じ匂いがしたと思ってたのに。


「それで、他の部員は?」

「ああ、それならそこに」


 度会の指差す方を見やると、見慣れた金髪巨乳が手を振っていた。


「来てくれたのね、今日頼んだばっかりなのに」

「あくまで見学だがな」

「それでも構わないわ、ようこそ蘇芳学園ディベート部へ。副部長の柚木崎よ」


 そう言うと柚木崎は深く深くお辞儀をする。


「そりゃ丁寧にどうも、矢追だ。てか副部長だったのな」

「三年生が1人しかいないからね、仕方なくよ」


 やれやれといった態度をとる柚木崎。

 別に好きでやっているわけではないらしい。


「その三年生は今どこに?」

「アソコよ、いや別にイチモツの事を言ってるわけじゃないけどね」

「んな事思ってねぇ!!」


 流石は柚木崎、下ネタをどこからともなく入れてくる。

 とりあえず言われた方向を見ると。

 寝袋にくるまっている人がいた。


「あれ?」

「そう、あれ」

「寝てるのか? あれは」

「いつも寝てるわ、もう寝袋が愛人じゃないのかってぐらいにね」


 どんなんだ。


「じゃああれが部長ってことで良いんだよな」

「ええ、でも寝袋で寝てるときに触れたら殺されかねないから止めておいた方がいいわよ」

「そんなに睡眠が大事か!!」


 なら部活動なんてするんじゃねえよ!


「多分寝袋を寝取られるとでも思ってるんじゃないかしら」


 ……なぜお前は一言多い。


「まあそれでも、本気を出したら凄いらしいわよ」

「『らしい』?」

「今いる部員は誰1人として部長の本気を見たことがないのよ」

「じゃあなんでそんなうわさが流れているんだ?」

「さぁ? 眠れる才能なんじゃないかしら」


 と、おどけてみせる。

 案外容赦ないな、お前。


「じゃあ、今日来れない部員を含めたらこれで全員ってことになるのか?」

「そうなるわね」


 えーと、じゃあ部員は柚木崎と蜂巣と度会と、この良く分からない部長とあともう一人……か。

 キャラ濃い人たちばっかですねー(泣)

 まだ見ぬもう一人にまともな人を期待することにして、他の事でも聞くかね。


「で、ディベート部では普段どんなことをしているんだ?」

「それは私が説明する」


 奥の方で五芒星を描いた紙の上で手をカザして何やら呪文のようなものを唱えていた度会が手を挙げて俺達の近くに寄ってくる。


「何なんですの、度会さん。邪魔しないでもらえるかしら?」


 柚木崎が俺の前に出て度会の行く手を阻む。


「邪魔はどっち? 私は説明しようとしているだけ」


 不快そうな声を上げる度会。


「度会さんより私の方がこの人と親交が深いから私が適任なのよ」

「そんなことはないと思うけど。私とこの人は契りを交わした仲だと知っての発言?」


 事実をねつ造するな。

 確かに美術の時に隣に座るっていう契約をしたが、『契りを交わす』ってのは男女が夫婦になることを約束するという意味で特に使われるから『契約する』とは意味が多少違うのだ。

 そんな事を言ったら柚木崎が反応するじゃねえか。


「契りを交わしたって、まさか……18禁?」

「いえ、15禁」

「性の低年齢化を象徴しないでくださる?」

「それだったら12禁にまで引き下げないと全ては語れない」

「確かに中学生で妊娠した人はいるにはいるのは分かりますわ。けれど、それはごく限られた人たちの話よ」

「それはそれ、これはこれ。契りを交わしたことに変わりはない」


 なんだこの変な会話。

 蜂巣の方を見ると、やれやれまたかと呆れていたので良くあることらしい。


「じゃあもう童貞を奪ったの?」

「ど、どどどうてい? え、あ、えぇ」


 何故か度会が赤面しながら答える。

 もしかしてコイツ……下ネタ耐性ゼロだな。


「じゃあ何? 度会さんの穴の中をこの人のペニスがズボズボしちゃったわけ?」


 それに気付いたのか、柚木崎はニヤニヤしながら問いかける。


「ぺ、ペニ!? ズ、ズズ、ズボズボ!?」


 頭の上に蒸気が出ているのではないかというほど、度会は顔を赤くした。


「体勢はどうしたの? 正常位でズボズボ? 背面騎乗位でズボズボ? 後背位でズボズボ? 背面立位でズボズボ?」

「あ、う、あ、うぅ……」


 柚木崎の下ネタ攻撃にやられてしまったのか、度会はその場に崩れ落ちた。


「これで邪魔者は居なくなったわね」

「邪魔でもなんでもなかった気がするがな」


 ただ親切に教えてくれるはずだったのに、なんでこんな事になるのかが不思議だが。


「因みに、真相はどうなのかしら?」

「あるわけないだろ? ただ美術の時間に隣同士になるという契約をしただけだ」

「あぁそう。隣が決まってるのって良いわね」

「どういう事だ?」


 気になって柚木崎に問いかける。


「私の隣は、何故かコロコロ変わるのよ。しかも決まって私を『お嬢様』だとか『お姉様』だとか呼ぶの」


 なるほど、人気がある分苦労するなんて事もあるのか。

 『Venus』と呼ばれているのは伏せておいた方がいいかもしれない。


「まぁ、慕われるだけいいんじゃないか?」

「そうよね」


 と、頷き、話が一段落したところで、本題に戻る。


「じゃあ始めましょか」

「じゃあ僕もー、参加して良いかなー?」


 頃合いを見計らっていたのか、柔道雑誌を読んでいた蜂巣がここぞとばかりに会話に加わる。

 柔道雑誌に何が書いてあるのかが気になるところだが、今はそういう話ではない。


「構わないわ。けれど、私が主導でやるわよ」

「りょーかいじゅうにかいりー」


 本当に了解しているのか定かではない返答をするな、と心の中で思いつつ、説明に意識を向ける。


「このディベート部では、ディベートと銘打っているように、ディベートに必要な物を身に付けるため部活動よ」

「早い話が口喧嘩に強くなるための特訓場だねー」


 元も子もない言い方を。


「身に付ける方法は、いろいろあるにはあるのだけれど、私達は基本的には実践で身に付けることにしているわ」

「何事も慣れ慣れー」


 まぁ習うより慣れろとも言うしな、合理的だ。


「でも今年は練習試合をまだ一回もやってないとか?」

「今年は新入部員が1人しか入ってないから、仕方がないわ」

「歴代サイテーだねー」


 1人、だと!?

 こんなに有名なディベート部の、新入部員が1人!?


「『やらないか』って部室前に書いておいたのに、なんでなのかしら?」

「あれはお前がやったのか!!」


 『やらないか』ってそういう意味だったのな!?

 そりゃ部員なんて入ってくるわけないわ!!

 ……むしろ、これで入った部員1人ってなんだ!?

 絶対普通の人間じゃないな、残念だ。


「あの看板は直しておけ、絶対に」

「もしかして私が犯されるとでも思ったの? 大丈夫よ、身の危険を感じたらちゃんと逃げるわよ」

「犯されてからじゃ遅いんだよ!!」


 柚木崎の顔が少し強張ったような気がした。

 そんなに大声を出してしまったのか、反省。


「えーと、そのーなんだ? お前、触られると弱いだろ? だから無謀な事は控えるべきだっていう……」

「プッ」


 一度吹いてからクスクスと笑いを止めない柚木崎。


「な、何かおかしかったか?」

「いいえ、おかしくないわ。でも、可笑しいのよ」


 ん? 訳が分からない。


「まぁ、好意として受け取っておくわ。ありがとう」


 柚木崎は先ほどと同様のお辞儀をする。


「お、お礼とか要らないから、看板直しておけよな」


 べ、別にさっきは意識してなかったけど胸がたゆんたゆんと揺れていた事に動揺なんて、してないからな!!


「分かったわ」


 柚木崎はそう言うと少し柔らかい笑みを浮かべた。

 なんだコイツ、ただの女神じゃねぇか。

 『Venus』と呼ばれているのも分かる気がする。


「アツアツだねー、ヒューヒュー」


 ここぞとばかりに蜂巣が指笛を吹いて(はや)し立ててきた。


「そんなんじゃねぇよ」

「そうよ。私達は何でもない、ただのクラスメートで部活仲間(・・・・)よ」


 そう言われると若干悲しいが、実際そうなのだから仕方がない……て。


「部活仲間って、まだ俺は部員じゃねえ……よ?」


 そう言って、蜂巣を見ると無邪気に笑っていた。


「ごーめん、絶対入ると思って入部届出しちゃったー」


 そしてこの謝罪である。


「いつだ?」

「1年前」


 それは誰も予想していなかった。

 てか本人の許可なしに良く入部届が受理されたな、オイ。


「だからー、良輔に逃げ場は無いんだよー?」


 蜂巣の笑い顔がどんどん黒くなっていく。

 1年も前から俺は、蜂巣の蜘蛛の巣に引っかかっていたというわけか……!!

 今くらい、ブチギレても良いよな。


「なんだこの茶番は!! 入ろうとは思ってたけど、こんな風になるとは予想付かなかったわ!!」

「入ろうと思ってんだー、誰目当てー?」


 なんでそんな話になる。


「誰目当てでもねぇよ。ただ、蜂巣。お前を口喧嘩で負かしたい」


 これは本心だ。

 前々から、口でも力でも負けてきたからな。

 いつか、ギャフンと言わせてやりたい。

 他にも入る理由は山ほどあるが、今はこういう事にしておこう。


「言うねー。まぁそういうわけだからー、副部長?」

「えぇ」


 そう言って、柚木崎は俺に紙を渡す。


「これはなんだ?」

「入部届よ」


 スマン、今の状況が理解できない。


「言うなれば、今の話は全部嘘。蜂巣さんがどうしてもというから、仕掛けさせてもらったの。ゴメンなさいね」

「蜂巣!!」


 しかし、当の蜂巣は、


「入部届なんてー、本人のサインなしに受理できるわけないじゃん?」


 開き直りおった。


「くそ……、二度もはめられるとは」

「男は、はめられるじゃなくてはめる方だと思うのだけれど」


 その下ネタが、今となっては清々しいよ。

 渡された入部届にサインをして、柚木崎に渡す。


「じゃあ改めまして」


 そう言うと、柚木崎はコホンと咳払いをして、こう言った。


「ようこそ、蘇芳学園ディベート部へ」


 これが、俺の新たな学園生活の始まりである。

根「第四話更新ダ」

葉「日本語がおかしかったりー、変なところがあったら教えて下さいねー☆」

根「さて、やおいがディベート部に入るところまで来たナ」

葉「これでやっと本編がスタートって感じですねー☆」

根「今後の展開に期待ダ」

葉「それはそうですけどー☆ 我らがクラスメートの『度重なる出会いに宿りしジュピター(笑)』は一体どこにー☆」

根「それは、次回明かされる予定ダ」

葉「予定ワロチュンティヌスー☆」

根「蜂巣に対抗して謎言語を作るナ」

葉「だって本文に出たいじゃないですかー☆ 望みの綱の『度重な(略)』に出てもらわないとー☆」

根「確かにそうだナ。次回に期待しよウ」

葉「では次回も読んで下さいねー☆ さよーならー☆」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ