表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変態女子に囲まれて、ツッコミに追われる毎日です。  作者: ヨエ団
1巻 春眠暁を覚えず、友情を得たり。
3/19

2.変態お嬢様は、自嘲というのを知りません。

 いつもと同じ、退屈な学校の時間がやってきた。

 俺は欠伸を堪えながら一号館に移動する。

 次の時間は化学で実験をするらしく、化学教室を使うらしい。


 俺は化学実験は嫌いではない。

 ある物質に色んな物質を入れたり、電流を流したりすることで様々な変化が観測でき、非常に興味深い。

 また、オチコボレの俺であっても手順さえ提示されれば簡単にこなす事が出来るのも利点だ。

 もっとも、誰がやっても同じならば別に体験しなくても良い気がするが。

 当たり前の事を当たり前にする、ということが重要なのだ。

 別に『Venus』のように完璧じゃなくても良いのだ。

 さて、オチコボレの本領発揮と行こうか。

 俺は化学教室に着くと、指定された一番後ろの席に座った。


◇◆◇◆


「えー、みんな教卓の前に集まるように」


 誤算だった。

 今日やる実験は生徒にさせるにはあまりにも『危険な』実験らしく、先生(禿)が前で披露することになったらしい。

 確か、固体のナトリウムを使うんだとか。

 ナトリウムって基本的に固体じゃないのか、それで何が危険なのか、無学な俺には見当が付かないのだが、見学することにし……ダメだ、気が抜けたせいで眠気が。

 まぁ、後ろからも見えない事はないし(大嘘)別に前に行くことはないか。

 立ってるのが面倒くさいし、先生の声は後ろまで聞こえるから別にいいよな。

 一応、実験が本格的に始まったら見に行くことにしよう。


 2分後。

「ナトリウムはNaと表記され……」

 それくらい分かってる、高校二年生舐めるな。


 5分後。

「ナトリウムは周期表では1族に位置し……」

 まあ、それは周期表見たらわかるよな。


 7分後。

「ナトリウムはアルカリ金属に属し、他には……」

 1族とアルカリ金属って同じじゃねえかよ。


 10分後。

「ナトリウムの電子はK殻に2個、L殻に8個、M殻に1個存在していて……混成軌道が……」

 急に何を言い出すかと思えば、大学で習う用語使ってんじゃねえよ。


 15分後。

「ナトリウムというのは水よりも軽く……」

 それは知らなかったけど……なぁ?


 早く実験始めろや。

 先生(大禿)は20分経っても一度も実験器具に触ることなく喋り続けていた。

 このままでは実験に入ることなく授業が終わってしまうかもしれない。

 そう思うと、一層眠気が増してきた。

 こうなりゃ寝てやろうか、と机に突っ伏そうとしたその時。


「おい、矢追。話を聞いてるのか?」


 まさかの名指しと来た。

 一斉にクラスのみんなの視線が俺に集中する。

 喜々とした目が俺を見ているかと思うと、萎縮してしまう。

 プレッシャーに弱い俺は、多分この時顔を強張らせていたと思う。


「そ、そりゃ聞いてますよ!!」


 確かに聞いていたには聞いていた。

 今の授業の内容を聞かれたとしても答えられるぐらいには。

 しかし、よく考えてみろ。

 俺以外の生徒は全員教卓の近くに集まっているのだ。

 つまり、俺は周りから果てしなく浮いていたことになる。

 そんな生徒を、先生は見逃したりはしない。


「じゃあ何でお前は前に来ていないんだ」


 先生(激禿)の言及が続く。


「いや、それは、えーっと……」


 実験が始まったら行こうとしていましただなんて、この状態で言えるわけがない。


「やっぱり俺の授業を聞いてなかったんだな? そうだな?」


 決めつけてかかる先生(テラ禿)にイラつきつつも、言い返せない自分への憤りの方が大きくなり、ついにはじけて、暴言まがいの発言を吐きそうになったその時。


「決めつけは良くないわよ、先生」


 群衆の中から力強い、女子生徒の声が聞こえた。

 群集を割って、俺にその姿を現す。

 確か、アイツは……。


 『Venus』。

 容姿端麗、文武両道、確固不抜という完璧超人。

 俺を一打席も打たせることなく打ちとった、張本人(まだ根に持っている)。

 『Venus』と言われる由縁となった大きな胸と、美しい金髪を揺らしながらこう続ける。


「先生は前に生徒を集めつつも、まだ実験をしていないわよね」

「これからやろうと思っていたんだ、柚木崎。お前は関係ないだろう」


 先生(極禿)は声を荒げ、『Venus』を退けようとする。

 しかし、そんなことでは『Venus』はへこたれない。


「いえ、大有りだわ。私もあなたに多少ながら憤りを感じているもの」

「なんだと」


 『Venus』は挑発するような態度で先生へ口論を仕掛ける。


「そもそも、その授業なら別に席に付きながらでもできるわよね」

「確かにそうかもしれないが、それが何なんだ」

「私たちは全員、その横暴のために立つことを強いられているのよ? これは体罰に値するわ、みんなもそう思うわよね」


 すると周りから、そうだそうだと次第に先生に対する不満の声が大きくなってきた。

 周りから仲間につけようという手法か、やるな。


「きっとあの人は実験が始まるまで待っていたのよ、何か問題でもある?」

「……合理的だな! さぁ、授業を続けようか! 今から実験を始めるから矢追も前に来るように!」


 先生(丸禿)は、問題にされるのを恐れたのか、すぐに折れて話を終わらせた。

 今回ばかりは『Venus』に助けられたな、お礼を言わなければ。

 そう思って『Venus』がいた場所を見ると、もうすでに群衆の中に入って行ったのか、姿を確認することはできなかった。


 ♂×♂


 授業後の休み時間。

 俺はさっそく『Venus』にお礼を言うために本人を探す。

 目立つ容姿のためか、すぐに発見することが出来たが、足早に化学教室を去っていったので後を追う事にした。

 しかし、廊下に出たところで早々に見失ってしまった。

 同じクラスだし、別に今じゃなくても会う機会があるか。

 そうして、俺は便意に誘われて男子トイレに立ち寄った。


 ここの男子トイレは、一般の男子トイレと同じく小便器と大便器に分かれ、入り口付近に洗面台がある。

 なにか特色をあげるとするならば、横付けされているウォータークーラーだろう。

 近くの山から湧き水が出ているらしく、それでいつも冷たく美味しい水をしかも無料(ココ重要)で提供してくれる。

 そんな素晴らしいウォータークーラーには目もくれず、俺は小便器へ一直線に走る。

 尿意に勝るものなど、この世に存在しようか(反語)。

 ズボンのチャックを下げ、事を始める。

 溜まっていた時の、この放出する快感はもう……堪らん。

 事が終わり、チャックを上げ、後ろを何気なしに振り向くと。

 女子生徒が大便器の方から俺を覗いていた。

 何故女子だと分かったのかというと、スカートが外にはみ出ていたからだ。


「そこの人、何してるんだ?」


 隠れている女子生徒は気付かれると分かると、諦めて外に出てきた。


「なるほどね、見つかるとは思っていなかったわ」


 金髪をなびかせ、その女子生徒は答える。

 というか『Venus』その人だった。


「ってなんでお前がここに!?」

「なんででしょうね?」


 質問で返してくる『Venus』。


「いや、それを聞いてるんだが」

「知らないわ、別に男子トイレの小便器で女子が立ちながら用をたすことができるかどうかを確かめに来たなんて知らないわ」


 誰が聞いても絶句するような発言だった。


「えーっと……まぁ好奇心は忘れたらいけないよね」

「そうよ、男の子だって中に対する好奇心を忘れたら終わりだもの」


 大きい胸を揺らし、俺に向かって指を差して決めポーズをする。

 …………え、なんだって?(棒)


「そういや、中に出すって矛盾しているわね。外に出すなら分かるのだけどね」

「女の子がはしたない事言うもんじゃない!」

「はしたない事を言わない人の方がどうかしてるわ。そのはしたない事で私たちは産まれたというのに」

「確かにそうだけど!」


 なんだコイツ、初めてちゃんと話したけど下ネタしか言わねえ。


「人々は下ネタを重んじるべきだわ、下ネタを軽んじるから出生率が下がるばかりなのよ」


 そんな事は決してないが、コイツが言うとそうなのかと錯覚してしまう。

 胸に目を奪われるせいなのだろうか。


「でも私は処女よ、アナタが童貞なのと同じくね」


 なぜそこで自分の貞操の話になる。

 てか俺を童貞と決めつけるなよ、童貞だけど!!(やけくそ)


「私たちはまだ高校生だから恥じることはないのよ、むしろ今してしまったらまだ未成熟の体を傷つけるかもしれないじゃないの。大人になったときのお楽しみよ」

「そんな酒みたいなことを言われても」


 悶々としてしまう……。


「って、何の話だ!!」


 くそ、ペースを乱されている。

 確かにこいつは俺を助けてくれたヤツなんだよな!?


「何の話って下ネタに決まって……ちょっとこっちに来て」

「こっちに来てって、うわ!」


 『Venus』は何かの気配を察知したのか、俺の手を引っ張って俺を大便器の個室に連れ込み、即座に鍵をかけた。


「そのままじっとしていて頂戴」

「わ、分かった。けど……」


 言われた通り息を殺して身動きを取らないように……したいのだが。


「胸、当たってるぞ?」


 なんと急に引っ張られて連れ込まれたため、個室が狭いということもあり、意図せずして俺は『Venus』を抱擁している形になってしまっているのだ。

 それに気付いたのか、『Venus』は真っ赤な顔をして、


「ンンンンンッ!?」


 声にならない音を発した。

 ……変だな、コイツの事だから『当ててるのよ』ぐらい言うと思ったのに。


「もしかして、2人入ってるのか?」


 ふと、外から声が聞こえた。

 俺の見解では、この状況がバレたら社会的に死ぬ事が確定するだろう。

 こうなりゃ仕方ない。

 外のヤツを惑わせるしかない。


「(俺の言った通りにしてくれよ)」

「(えっ、ンンン!?)」


 俺は『Venus』に耳打ちし、人生をかけた大勝負に買って出た。


「わんちゃん可愛いでちゅねぇ~、よぉ~しよしよしよしよしよし」

「クウゥ~ン♪」


 設定的には、登校中に野良犬を拾ってきた男子高校生がトイレに犬を連れ込んだというもの。


「お腹すいてまちゅよね? ご飯でちゅよぉ~」

「キャンキャン♪」


 昼飯を持ってきて犬に食わせようとしている、という設定だ。

 さて、反応はどうだ。


「うわぁ、俺犬アレルギーなんだよ! 先生呼んで来る!」


 逆効果だった。


「(ヤバいわよ、このままじゃ……)」

「(分かってる! ええと、じゃあ……)」


 『Venus』に次の指令を与える。


「(え、そんなので大丈夫なの?)」

「(だ、大丈夫だって、多分。ほら、外に居る生徒が先生を呼ぶ前に)」

「(わ、分かったわ)」


 ようやく了承され、作戦その2を実行に移す。


「ホントに猫って可愛いなぁ~! ゴロゴロゴロゴロォ~」

「ニャ~オ♪」


 そう、俺はわんちゃんとしか言ってないので猫に配役を変更してもなんとかごまかせるの、だ……自信は無いけどな!

 先ほどは完璧に犬の鳴き声だったから、どうかと思ったが。


「なんだ猫かよ、ビックリさせるんじゃねぇよ……」


 と言ってトイレを去っていった。

 しばらく人の気配が無いのを確認して、2人で一気に外に出る。


「いや猫でもダメだろ、はあぁ……」


 一応、ツッコミを今はこの場に居ない男子生徒に入れて、大きくため息をつく。


「なんとか、切り抜けたわね……」


 『Venus』も息が切れ切れになっていた。


「にしても、よくとっさにあんな声だせたな。えーっと……」

「柚木崎で良いわよ、みんなそう呼んでるし」


 俺は呼んでなかったけどな。


「私はコスプレプレイにも対応してるから、あれくらい出せるわ」


 そしてこのドヤ顔である。

 俺は柚木崎に最大の疑問をぶつける。


「柚木崎さぁ、なんで下ネタは良いのに、触れられるのはダメなんだ?」


 柚木崎は頭を傾げ、


「自分に危害が加わるのは普通イヤじゃなくて? もしかして、アナタ……M?」

「なんでそうなる!?」

「この前の野球の時だって、絶対無理なのにセーフティーバントしたじゃないの、Mの傾向じゃなくて?」

「急に過去のことを持ち出すなや!!」


 でも、覚えてたんだ。


「絶対無理と分かってても、あの発想は良かったわよ」

「……そりゃどうも」


 一言多い柚木崎の言葉に少々傷つきつつも、一応礼を言う。


「(この人だったら、大丈夫かしら)」

「え、なんだって?」


 聞き取れず、慌てて聞き返す。


「もしよかったらなんだけど……」


◇◆◇◆


 放課後。


 俺は悩んでいた。

 なんと、柚木崎から部活動のお誘いがあったのだ。

『別にキツい部活動じゃないし、来たい時に来てくれれば良いから』

 そう言って去っていった柚木崎の後ろ姿が今も目に焼き付いている。

 まぁ、柚木崎の部活がどういうものなのか、俺は知らないけどな。

 さて、どうしたものか。


「ちょっとー、話を聞いてるのかなー?」


 いつの間に隣に居たのか、蜂巣が俺に話しかけていた。


「聞いてる聞いてる」

「それは良輔を双手刈をしていいっていう合図かなー?」


 もう少し論理的にお願いします。


「まー良いけどさー、部活の件どーするのさ?」


 蜂巣が、聞き捨てならない事をサラッと言った。


「何故お前がそれを知っている?」


 確認のため言及する。

 もしかしたら柚木崎とキャッキャウフフをしたあの場面(そんな事はない)を見られたかもしれないし……。


「柚木崎さんから話は聞いてるからねー、『アナタの彼氏、私の部活動入ってくれるかしら』って僕は良輔の彼女じゃないってーの!」


 いきなりブチギレた。


「僕と良輔はもーすでに一夜を共にした、新郎と新婦の関係なのにー」

「待て、まだ俺は結婚出来る年齢じゃないし、それに一夜を共にしたのは小学校の事だし、ブチギレるベクトルが間違ってる!!」


 全てにツッコミを入れられた、そんな気がした。


「それでー、どーするのさ?」


 どうすると言われても……なぁ?

 柚木崎が入っている部活だろ?

 柚木崎はあれでも完璧超人としてもてはやされる人物だ。

 ならば、その部活のレベルだって高いに違いない。

 それなのに、オチコボレの俺なんかが入っても良いのだろうか。

『別にキツい部活動じゃないし、来たい時に来てくれれば良いから』――か。


「一度、見学してから決めるよ」


 お礼もまだ言えていないしな。

 すると、蜂巣は目を輝かせて、


「じゃあー、上手くいったら僕と同じ部活になるんだねー。これから楽しみだなぁー」


 なんてほざいてみせる。


「って、もしかして柚木崎の部活って……」

「そー」


 蜂巣は一息ついて、


「蘇芳学園ディベート部よ」


 俺の人生の歯車が動き出したような、そんな気がした。

根「第三話更新ダ」

葉「日本語の可笑しかったりー☆ つながりが変だったら教えて下さいねー☆」

根「さて、今回はオシッコの活躍が目立ったわけなのだガ」

葉「活躍と言っても後半下ネタしか言ってないですけどねー☆」

根「というわけで、ワタシも下ネタを話してみようと思ウ」

葉「チャレンジ精神が光りますねー☆」

根「そして行く行くは本文二」

葉「どす黒い欲望しかなかったですねー☆ では、どぞー☆」

根「えー……っと、ウンコ」

葉「小学生乙です☆」

根「何を言っていル、ワタシは蘇芳学園高校二年B組の根堀じゃないカ」

葉「確かに自己紹介は名前だけでしたけどー☆ 今する必要はなかったじゃないですか、私は同じく蘇芳学園高校二年B組の葉堀ですけどー☆」

根「なんだかんだ言って本文に出たいんじゃないカ」

葉「お互い、苦労しますのぅ(人生十六年間を必死に生きた貫禄漂うなんたら)」

根「では、また次回ダ。お便り待ってるゾ」

葉「この次も読んで下さいねー☆ さよーならー☆」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ